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平成9年12月12日

血液行政の在り方に関する懇談会報告書について


 本懇談会は、平成8年7月の「医薬品による健康被害の再発防止対策に関するプロジェクトチーム」の報告の指摘を踏まえ、血液行政の新たな展開に向けての在り方に関し幅広く検討することを目的として平成8年10月に設置され、9回に及ぶ論議を経て血液行政の在り方に関する懇談会の報告書としてまとめられたものである。(別紙「血液行政の在り方に関する懇談会」報告書概要)

「血液行政の在り方に関する懇談会」報告書概要

I はじめに

(略)

II 血液製剤の特性を踏まえて

○ 血液製剤は、以下の特性を有し、一般の医薬品とは性格が異なる。

(1) 人体の組織の一部である血液を原料としていること
(2) それが故にウイルス感染症等を伝達する可能性を有すること
(3) 原料である血液に国民の善意からなる献血が用いられていること
○ こうした特性を踏まえた血液事業の展開が要請される。

1 国内自給の推進

・ 血液製剤は人体の組織の一部である血液を原料とすることから、倫理的な見地から、できる限り自国民の血液を用いた血液製剤を製造し、使用する体制を築いていくべき。
・ 我が国が自助努力を十分行わないまま他国に依存することは国際的な公平性の観点からも問題。

2 安全性確保

・ 血液製剤は絶えず危険性をはらんでいることから、日本赤十字社及び民間製造業者等は、献血時の問診、各種ウイルスの検査、製造工程におけるウイルス不活化・除去等を含め、可能な限りの安全対策を講ずる等、安全性の確保に関し不断の努力が必要。
・ 医師は、輸血用血液製剤等を投与する際には、血液製剤が絶えず危険性をはらんでいるということを十分認識した上で、患者に対し安全性、必要性等に関する十分な説明をし、同意を得て投与する必要がある。

3 適正使用

・ 血液製剤はウイルス感染等の危険性を絶えずはらんでいることに加え、献血者の善意に支えられた有限で貴重な資源であるという特性を有することから、医療上は有効であっても安易に第一選択の治療法として用いるべきではなく、他に代替的な手段がなく真に必要な場合に必要量に限って使用されるべき。

4 有効利用

・ 血液製剤の原料となる献血血液は有限かつ貴重なものであることから、献血血液を有効利用するとともに、採血から製造及び供給に至るすべての段階において事業の最大限の効率化、合理化が必要。

5 透明性の確保
・ 血液製剤は国民の共有財産ともいうべき善意の献血血液を原料とし、また国内自給を推進する必要があることから、広く学識経験者、献血者、消費者等が参画する審議の場を設け、日本赤十字社、民間製造業者等の事業の実施・運営状況の報告を求めるとともに、血液事業に係る重要事項について調査審議することとし、情報公開を行うことにより血液事業の透明化を図るべき。

III 血液事業を支える体制

1 国の役割

・ 国内自給の達成に向けた将来の展望と目標を明らかにし、中期的な血液製剤の需給の見通し、献血をはじめとする血液事業の方向に関する基本的な指針を策定。
・ 安全性確保の見地から、関係事業者に対する監視指導体制を強化するとともに、現在の薬事法に基づく一般の医薬品の規制にとどまらず、遡及調査等の義務を事業者に課する等必要な規制を講ずるべき。
・ 日本赤十字社及び民間製造業者が血液製剤の安全性を確保するために講じている技術を定期的に評価する体制の整備等により、絶えず安全性確保のための技術革新に努めるよう指導すべき。
・ 適正使用の促進を図るため、使用基準の必要な見直し等を行う。
・ 原料血漿について日本赤十字社及び民間製造業者への適正な配分を管理。
・ 国内自給の推進及び適正な事業運営を確保する観点から、採血、血液製剤の製造、供給、使用の全過程を通じて、関係主体に対し指導監督。

2 地方公共団体の役割

・ 地域の実情に応じた献血の推進計画を策定すべき。
・ その計画を円滑に実施するために地域住民の理解と協力を得るよう努めるとともに、献血が円滑に行われるように献血場所の提供等環境の整備を行うべき。
・ 地域での医療機関における適正使用を推進すべき。

3 血液事業者の役割

(1)献血

・ 献血に係る事業は、日本赤十字社のこれまでの取組みに対する国民の信頼等にかんがみ、日本赤十字社が責任をもって実施することが適切。
・ 日本赤十字社は、国内自給を達成するために、輸血用血液製剤のみならず、血漿分画製剤に用いるために必要な量を確保するよう努めるべき。

(2)輸血用血液製剤の製造

・ 輸血用血液製剤は有効期間が短く、献血による採血と輸血用血液製剤の製造は一体的に行うことが効率的であることから、その製造は日本赤十字社が責任をもって行うべき。

(3)血漿分画製剤の製造

・ 血漿分画製剤については、ウイルス等の不活化・除去の技術開発力の維持向上、効率的な体制の構築、有効かつ安全な製剤の確保の観点から、日本赤十字社及び民間製造業者が、それぞれの責任において競ってその研究開発力を最大限に発揮し、効率的に製造することが適切。

(4)血液製剤の供給

・ 輸血用血液製剤は、日本赤十字社が直接又は地域医療の実情に応じ搬送能力を有する者を介して、血漿分画製剤については、医療機関の需要に柔軟にこたえるために卸売販売業者を通じて供給することが適切。

(5)輸入の取り扱い

・ 今後、国内自給を推進する観点から国内献血由来の血液製剤の増加を図るに当たっては、患者の治療に支障を来すことがないよう十分配慮しつつ、その増加に応じて輸入量を減らしていく方策を講ずる等輸入について必要な措置をとることも検討すべき。

(6)日本赤十字社の体制

・ 日本赤十字社は、事業を実施する上で高い技術水準を確保するとともに、安全性を確保するための迅速かつ責任ある対応を一層図るためには、各血液センター間の連携を一層強化するとともに、センター間の格差を是正し、より柔軟な事業の展開を図れるよう積極的に組織体制を見直していくことが望まれる。あわせて日本赤十字社が行う血液事業につきその法的な位置付けを明確にすることが求められる。
4 医療機関の役割
・ 医療機関は、安全性の確保と適正使用を進めるため、血液製剤の保管管理、適正使用等を推進する院内体制を確立すべき。

IV 国内自給推進のための具体策

○ 国内自給を達成するためには、血液製剤の使用適正化、遺伝子組換え製剤の開発を前提として10年後には年間延べ1000万人分の献血血液が必要と推計され、これを目標として、国、地方公共団体、日本赤十字社の三者が可能な限りの推進策を講ずるべき。この目標は定期的に見直しを図るべき。

○ 具体策としては、

(1)計画の策定

・ 国は製剤ごとの国内自給の見通し等を示した基本指針を策定。
・ 地方公共団体は地域の実情に応じた献血の推進計画を策定。
・ 日本赤十字社は国・地方公共団体の計画に即して献血量を確保すべき。

(2)献血量の確保

・ 400ml献血、成分献血を原則とする。
・ 献血推進運動、献血ルームの増設、献血者登録制度等を一層推進。

(3)献血血液の有効利用

・ 日本赤十字社及び民間製造業者は、収率の向上や原料血漿の有効活用等に努力。
・ 国は科学的知見を踏まえて血液製剤の有効期間の延長についても検討。

(4)医療現場における適正使用の推進

・ 国は関係学会と連携しつつ使用基準の必要な見直しを行う。
・ 適正使用に関する医師の卒前・卒後の教育を強化。
・ 輸血療法委員会の設置等、医療機関における体制整備を進める。

V 安全性確保の具体策

・ ウインドウ・ピリオドの危険をできる限り排除するため、献血時における問診の充実、新たな検査技術の開発等が必要。
・ 遺伝子組換え製剤や人工血液等を含めたより安全性の高い製剤の開発が必要。
・ 国、日本赤十字社、製造業者等による情報の把握、評価、提供を行う体制の整備と危機管理体制の充実が必要。
・ 遡及調査の実施と、そのための記録の保管管理体制の整備が必要。
・ 献血者に対する普及啓発、問診の充実、保健所における検査の勧奨等により検査目的の献血が行われないようにする一方、HIVの検査結果については、今後は陽性者には原則として通知を行うこととする。
・ ウイルス感染等の危険性を排除するために自己血輸血の一層の推進が必要。

VI 法制度の整備

・ 血液事業における国、地方公共団体、日本赤十字社、民間製造業者、医療機関等の役割と責務を法的に明確にすることが必要。
・ 時代の要請にこたえる新たな法制度の整備が必要。


問い合わせ先 厚生省医薬安全局血液対策課
   担 当 榎本、山本(内2902、2905)
   電 話 (代)[現在ご利用いただけません]
       (直)03-3595-2395


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