日本赤十字社による血漿分画製剤の自主回収について
本日、日本赤十字社より以下のとおりアルブミン製剤及び第VIII因子製剤の自主回収に関する報告がありましたので情報提供いたします。
平成9年11月28日
報道関係各位
血漿分画製剤の回収について
1.概要
- 日本赤十字社血漿分画センターが民間製薬メーカーに送付した血漿分画製剤の中間原料(ペースト)の受入れ試験を同メーカーが実施したところ、EIA法でHBs抗原検査陽性であったとの連絡が平成9年11月5日にありました。血漿分画センターにおいて、保管されている当該ペーストを再検査したところ、EIA法並びにHBV−PCR法で検査陽性を確認しました(血漿分画センターにおける当該ペースト出庫時のRPHA法による検査結果は陰性でありました)。
当該ペーストを用いた製品については、赤十字アルブミンは加熱処理、クロスエイトMはS/D処理によってウイルスの不活化処理がなされており、さらに最終製品のPCR検査でも、いずれも陰性でした。
加熱処理されたアルブミン製剤及びS/D処理された第VIII因子製剤によるHBV感染の報告は、過去世界的に一例もないことから、仮に当該ペーストを用いた製品を使用することがあっても安全であると考えておりますが、日本赤十字社といたしましては、当社の過誤により発生した事態を深刻に受けとめ、当該原料血漿から製造したロットについて念のため自主回収を実施することといたしました。
なお、原因について調査したところ、今回の問題はHBs抗原検査の陽性結果のコンピュータへの入力エラーにより陽性血漿を送付したことによるものと判明しました。
2.関係業者
-
・ 製造業者: |
日本赤十字社
〒105 東京都港区芝大門一丁目1番3号 |
3.回収対象製品の製造番号、出荷時期、供給数
製 品 名 |
回収対象品の製造番号/有効期限
出荷時期 |
供 給 数 |
赤十字アルブミン |
2A528/平成11年6月8日
平成9年8月〜11月 |
17,206本 |
赤十字アルブミン |
2A529/平成11年6月8日
平成9年8月〜11月 |
10,542本 |
クロスエイトM1000 |
2M174/平成11年5月13日
平成9年6月〜11月 |
3,223本 |
4.日本赤十字社の対応について
- 日本赤十字社は、当該製造番号の製品を出荷した医療機関に回収のお知らせ文書をファックスで送信するとともに、本日より医療機関での在庫の調査及び回収を開始しました。
当該製剤を使用された患者さんへは、主治医の先生方を通じて連絡をとっていただき、患者さんが検査を希望される場合は、各地の血液センターにおいて検査を行わせていただくか、若しくは血液センターの負担で検査を行っていただくこととしております。
5.今後の対策について
- 事務的過誤によりHBs抗原陽性血漿を送付した血液センターについては、厳重な注意をするとともに、改善すべき事項を指導しているところです。
また、他の血液センターについても、改めて適正な業務の遂行を徹底してまいる所存です。
なお、血漿分画センターでは、血漿分画製剤のより一層の安全性を確保するため、従来のロット単位での血清学的検査に加えて、原料血漿について500検体ごとにプールしてPCR検査を実施する準備を従前より進めておりましたが、HBV、HCV、HIV全てについて平成9年11月より実施しております。この方法は、現時点で実行可能な最も感度の高い検査法であります。
日本赤十字社といたしましては、これまで血液の安全性についてできる限りの対策を
講じてまいりましたが、今回、このような過誤が発生したことにより、患者の皆様に不安を与え、また多くの献血者の方々の善意を無にする結果になってしまったことにつきましては、極めて重く受けとめております。
このようなことを二度と生じさせることがないよう、今後とも血液の安全性確保に努めてまいる所存です。
本件の問い合わせ先 |
日本赤十字社 |
事業局 |
血液事業部 企画課 |
TEL |
03−3437−7605、7506 |
FAX |
03−3459−1560
03−5402−7627 |
|
参考資料
(参考1)
製品の概要
製 品 名 |
一 般 名 |
承認番号・承認年月日 |
供給開始年月 |
赤十字アルブミン |
人血清
アルブミン |
44E第459号
昭和44年12月24 |
昭和60年6月 |
クロスエイトM1000 |
乾燥濃縮人血液
凝固第VIII因子 |
03AM第667号
平成3年8月27日 |
平成4年2月 |
※ 今回回収する製品の有効期間は国家検定合格日から2年間です。
(参考2)
効能・効果
- ・ 赤十字アルブミン
- アルブミンの喪失(熱傷、ネフローゼ症候群など)及びアルブミン合成低下(肝硬変症など)による低アルブミン血症、出血性ショック
- ・ クロスエイトM1000
- 血液凝固第VIII因子欠乏患者に対し血漿中の血液凝固第VIII因子を補い、その出血傾向を抑制する。
(参考3)
当該製品の安全性について
<赤十字アルブミンについて>
- 赤十字アルブミンは、60度,10時間の液状加熱処理を施すことにより、ウイルスを不活化しております。
この方法は、昔から細菌汚染防止対策として最も一般的であり、1940年代から米国において検討がはじまりましたが、最終的に60℃,10時間という条件が採用された1945年には、ウイルス肝炎感染防止対策も目的とされました。その後現在まで、HBVスクリーニング導入以前の時代も含めて約50年間にわたり、60度,10時間の液状加熱処理を施したアルブミン製剤は、世界中の37ヵ国以上の国々で使用されています(1994年の統計によると世界中で年間約1,900万リットルの血漿から製造されたアルブミン製剤が供給されています)が、アルブミン製剤によるHBV感染の報告は過去世界的に一例もなく、当製剤は安全と考えられております。
<クロスエイトMについて>
- クロスエイトMは、有機溶媒/界面活性剤処理(S/D処理)を施すことにより、HBV等のウイルスを不活化しております。
1985年にS/D処理が導入されて以来、世界中でS/D処理第VIII因子製剤の投与によるHBV、HCV、HIVの感染例の報告はありません。
New York Blood Center のHorowitz, Princeらの報告によると、S/D処理は米国、
アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、チェコスロバキア、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イスラエル、イタリア、日本、韓国、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、サウジアラビア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、ベネズエラ等の国々において採用され、S/D処理第VIII因子製剤は、スクリーニング導入以前の時代も含めて、1993年までの間に世界中で延べ36万人に3,040万回の投与が行われましたが、HBV、HCV、HIVに感染したという報告はありません。その後も現在まで、S/D処理第VIII因子製剤によるHBV、HCV、HIV感染例の報告はありません。
- S/D処理されているクロスエイトMは、HBVをはじめこれら脂質膜(エンベロープ)のあるウイルスについては、極めて安全性の高い製剤と考えられます。さらにカラムクロマトグラフィーによるウイルス除去を行っており、一層の安全性向上を図っております。
- 血漿分画センターでは、製造工程中でウイルスが効果的に不活化/除去されることを、モデルウイルスを用いて確認しております。
さらに、最終製品においてPCR検査を行い、HBV等のウイルス遺伝子の混入の無いことを確認して出庫しております。
問い合わせ先: 厚生省医薬安全局血液対策課
山本、江原
TEL [現在ご利用いただけません]
内線 2905、2908