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平成9年6月2日

食品衛生調査会食中毒部会
食中毒サーベイランス分科会の検討概要

本日、食品衛生調査会食中毒部会食中毒サーベイランス分科会が開催され、最近のサルモネラ等による食中毒について、次のとおり、調査結果のとりまとめ並びに分析及び評価が行われた。


平成9年6月2日

最近のサルモネラ等による食中毒に関する分析及び評価について

食品衛生調査会食中毒部会

食中毒サーベイランス分科会

食品衛生調査会食中毒部会食中毒サーベイランス分科会は、最近のサルモネラ等による食中毒について、次のとおり、分析及び評価を行った。

I サルモネラ関係

1.発生状況等の傾向

(1)わが国における発生状況等

(1) 平成8年の食中毒発生状況をみると、サルモネラによるものは事件数で350件(病因物質判明総数(以下同じ。)の33.5%)、患者数で16,334名(44.2%)、死者数で3名(20%)に及んでいる。(別添1)
(2) 本年の発生状況を以前の3年間の同時期(5月現在(本年分は5月28日までの集計))の事件数、患者数及び死者数と比較すると、平成6年は24件549名(うち死者0名)、平成7年は20件1,109名(うち死者1名)、平成8年は37件2,158名(うち死者2名)、平成9年は31件1,461名(うち死者1名)であり、近年、事件数、患者数とも増加傾向を示している。(別添2)
(3) 血清型別の発生状況をみると、近年、エンテリティディスは増加傾向をみせている。また、エンテリティディス以外の血清型(血清型が判明していないものを含む。)については、平成8年における発生が過去に比べて多かった。他方、後述する欧米諸国で増加傾向のあるティフィムリウムについては、平成4年から平成8年までの5年間において減少傾向をみせている。(別添3)
(4) エンテリティディスのファージ型別分析結果をみると、平成元年以降、8型及び34型による患者数は減少し、1型による患者数が増加傾向をみせ、現在では1型及び4型の患者が多い。なお、これらの患者から検出された菌ファージ型の推移は、食品中及び環境中等から検出された菌のファージ型の推移と同様の傾向を示すとの報告がある。(別添4)
(5) 原因食品として推定・特定されたものについては、事件数、患者数とも「その他」が多い。なお、「その他」とは、食材が特定されたものを一部含むが、これは家庭料理、宴会料理等まで特定されているものの、個別のメニューまで特定されていないものがほとんどである。
これを除くと主な原因食品は「複合調理食品」(2種以上の原料が混合調理又は加工されているものであって、そのうちいずれが原因食品か判明しないもの)、「卵類及びその加工品」、「菓子類」の順である。なお、患者数でみると平成6年以降「卵類及びその加工品」が増加している。(別添5)
(6) 平成4年から平成8年までの5年間で原因食材の流通経路の遡り調査を実施し、汚染源を特定した事例は厚生省にほとんど報告されていない。
(7) わが国及び諸外国においてエンテリティディスに汚染された卵類及びその加工品に由来する食中毒が増加傾向をみせたことにかんがみ、平成3年以降、厚生科学研究における卵の汚染実態調査結果(別添6)等を踏まえ、「動物性食品に関する病原微生物汚染防止対策検討会」においてサルモネラ対策を検討し、平成4年には卵及びその加工品の衛生管理についてその留意事項を示したほか、平成5年には液卵製造施設等の衛生指導要領を作成し通知した。

(2)諸外国における発生状況

(1) 米国、英国(イングランド及びウェールズ。以下同じ。)、オーストラリアにおいては、わが国に比べて発生が多い。また、英国、オーストラリアでは、1985年から1990年頃にかけて患者数が急増した時期があった。(別添7)
(2) 米国では増加傾向を示している。また、血清型別にみると、エンテリティディスによるものが増加傾向をみせており、全体の約25%程度を占めている。(別添8)
(3) 1993年から1995年にかけて、英国を含む欧州7か国では減少傾向をみせている。しかしながら、血清型別にみると増加傾向をみせているもの(ティフィムリウム)と減少傾向をみせているもの(エンテリティディス)がある。英国で検出されるティフィムリウムのほとんどは多剤耐性菌であり、ドイツやオーストリアなどのその他の欧州諸国でも同様の傾向がみられはじめている。(別添9)
(4) エンテリティディスのファージ型別をみると、近年わが国で高頻度に分離される1型がオランダで、4型が英国およびオーストリアで高頻度に検出されている。また、米国では8型が多い傾向がみられている。(別添10)
(5) 卵の流通・保管時の管理、鶏肉の生産農場や鶏の輸入時における細菌学的点検を実施したことや食品製造施設において卵の取扱いに注意を払ったことにより、サルモネラによる食中毒の減少に寄与している可能性をWHOが指摘している国もある。(別添11)

2.評価

(1)近年、わが国において、(1) サルモネラによる食中毒が増加傾向を示していること、(2) 血清型が判明したもののうちではエンテリティディスによる食中毒が増加傾向をみせていること、また、(3) 欧州諸国においてはティフィムリウムが増加傾向をみせていることから、わが国においては今後もサルモネラによる食中毒が多発する可能性があり注意を要する。

(2)サルモネラによる食中毒の今後の発生予防対策に資するために、食中毒事件発生時に原因究明のための疫学的及び微生物学的調査を徹底し、具体的な原因食品及び原因食材の推定・特定を行うとともに、汚染源、汚染経路を特定するため遡り調査を徹底することが必要である。さらに、食品の汚染実態調査を進め、その実態を詳細に把握する必要がある。

(3)サルモネラの血清型の分析を確実に行うとともに、国立感染症研究所を中心としてファージ型別分析等を実施し、これらのデータについて、諸外国のデータとの比較等を行うことにより、食中毒の国内における発生状況を疫学的に分析し、今後の発生の予測を行う必要がある。

(4)今後、食中毒発生が増加する時期を迎えることから、サルモネラによる食中毒を予防するため、これまでに厚生省で作成した家庭及び大規模調理施設の衛生管理マニュアル等の遵守を徹底するとともに、「卵及びその加工品の衛生対策について」(平成4年7月8日衛乳第128号)、「液卵の製造等に係る衛生確保について」(平成5年8月27日衛食第116号、衛乳第190号)に基づき、卵に由来するサルモネラ食中毒の防止対策をさらに徹底する必要がある。

(5)また、サルモネラによる食中毒を予防するための衛生管理について、原因究明、汚染実態調査の結果等を踏まえ必要な対策を食品衛生調査会でさらに検討する必要がある。


II 腸管出血性大腸菌O157関係

本年3月に関東南部及び東海地方でみられたような時間的、地域的集積性をもつ発生は、4月及び5月にはみられていないが、各地の家庭における散発的な事例が発生し、両月とも60人を越える発生(4月の有症者68名、5月の有症者74名)をみており、依然注意を要する状態にある。(別添12)
なお、前回の食中毒サーベイランス分科会(平成9年4月25日開催)以降に判明したDNAパターン分析の結果をみると、特定のパターンの集積等特段の傾向はみられていない。(別添13)

III その他

その他、食中毒処理要領の速報の対象とされたエルシニアエンテロコリチカO8、カンピロバクタージェジュニ/コリ、腸管出血性大腸菌(O157を除く。)、ボツリヌス菌による食中毒の4月及び5月の有症数累計は、平成9年5月30日現在、それぞれ0名、326名、28名、0名である。(別添14)

IV 終わりに

梅雨の季節に入り、食中毒の多発シーズンを迎えることから、厚生省で作成した衛生管理マニュアル等を参考として、食品関係営業施設、集団給食施設、家庭等における食中毒予防を徹底していただきたい。

(別添略)


 問い合わせ先 厚生省生活衛生局食品保健課
        堺 食品保健課長
    担 当 南(内2445)、新木(内2444)、中山(内2450)
    電 話 (代)[現在ご利用いただけません]

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