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97/02/13 テルフェナジン錠(商品名:トリルダン)の適正使用


平成9年2月
No.96−6


緊急安全性情報



トリルダン錠(テルフェナジン)投与中の
QT延長、心室性不整脈の発現について


発売5年間でトリルダン錠使用による重篤なQT延長、心室性不整脈の副作用が7例認められましたので、1995年1月「警告」欄を設けるとともに使用上の注意を改訂致しました。しかしながら、その後2年間で同様な死亡に至るおそれのある副作用としてQT延長、心室性不整脈が10例認められています。これらの副作用はいずれも禁忌、及び慎重投与に該当するハイリスク患者で発現しております。したがって、本剤の使用にあたっては、下記の点に十分ご注意下さい。

  1. 次のハイリスク患者には投与しないこと
    • イトラコナゾール、ミコナゾール、エリスロマイシン又は
      クラリスロマイシンを投与中の患者
    • 重篤な肝障害のある患者
    • 先天性QT延長症候群のある患者
    • QT延長を起こしやすい患者(低カリウム血症、低マグネシウム血症、透析中、β遮断薬を除く抗不整脈薬、利尿薬、向精神薬(フェノチアジン系、三環系・四環系抗うつ薬)、プロブコールを投与中の患者)・心不全、心筋梗塞、徐脈のある患者

  2. 次の患者には慎重投与すること
    • フルコナゾール、ジョサマイシン又はオレアンドマイシンを投与中の患者
    • 肝障害のある患者
    • 心疾患のある患者
    • 高齢者

  3. 異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと
    ふらつき、めまい、動悸、失神等があらわれた場合には、重篤な不整脈が発生している可能性があるので、直ちに投与を中止し、心電図検査を含む適切な処置を行うこと。

注)ゴシック部分は今回新たに禁忌に追加された事項です。
   使用上の注意等を内面のとおり改訂致しましたので、あわせてご連絡致します。
     お問い合わせ先:日本ヘキスト・マリオン・ルセル株式会社
             市販後調査管理部
             〒107 東京都港区赤坂2−17−51
             TEL 03-5571-6417 FAX 03-5571-6234


「警告」及び「使用上の注意」

「警告」及び「使用上の注意」を下記の通り改訂致しました。改訂理由は国内副作用発現状況、テルフェナジン米国添付文書及び類薬添付文書との整合性に基づいた改訂です。[下線部:改訂箇所]

[警告]
本剤は未変化体及び肝臓で代謝されたカルボン酸型代謝物が薬理作用を持つ。下記の(1)又は(2)等の要因により代謝が阻害され、テルフェナジン未変化体の血中濃度が上昇した場合、QT延長、心室性不整脈(torsades de pointesを含む)などの心血管系の副作用があらわれることがあり、外国では心停止(死亡を含む)があらわれたとの報告がある。下記の患者には投与しないこととし、また適応患者の選択を慎重に行うこと。
  1. イトラコナゾール、ミコナゾール、エリスロマイシン又はクラリスロマイシンを投与している患者
  2. 重篤な肝障害のある患者
  3. 先天性QT延長症候群のある患者
  4. QT延長を起こしやすい患者(低カリウム血症、低マグネシウム血症、透析中、遮断薬を除く抗不整脈薬、利尿薬、向精神薬(フェノチアジン系、三環系・四環系抗うつ薬)、プロブコールを投与中の患者)
  5. 心不全、心筋梗塞、徐脈のある患者

なお、本剤服用中の患者に失神があらわれた場合には、重篤な不整脈が発生している可能性があるので、直ちに投与を中止し、心電図検査を含む適切な処置を行うこと。また、本剤の使用にあたっては使用上の注意を熟読のこと。

[使用上注意]

  1. 一般的注意
    (1)本剤を服用した患者で、QT延長、心室性不整脈(torsadesde pointesを含む)、あるいは外国では心停止(死亡を含む)などの心血管系の副作用が報告されているが、ほとんど下記の場合に限られている。
    • テルフェナジン未変化体の血中濃度が上昇した場合
    • QT延長を起こしやすい患者又は心疾患のある患者に使用した場合
    従って、本剤の投与に際しては
    1. 肝臓の薬物代謝酵素の阻害作用のあるイトラコナゾール、ミコナゾール、エリスロマイシン又はクラリスロマイシンを投与している患者には投与しないこと。
    2. 重篤な肝障害のある患者には投与しないこと。また、肝障害のある患者には慎重に投与すること。
    3. 先天性QT延長症候群のある患者には投与しないこと。
    4. QT延長を起こしやすい患者(低カリウム血症、低マグネシウム血症、透析中、遮断薬を除く抗不整脈薬、利尿薬、向精神薬(フェノチアジン系、三環系・四環系抗うつ薬)、プロブコールを投与中の患者)には投与しないこと。
    5. 心不全、心筋梗塞、徐脈のある患者には投与しないこと。また、それ以外の心疾患のある患者には慎重に投与すること。
    6. 高齢者では、一般に肝機能が低下している場合が多いので慎重に投与すること。
      なお、本剤服用中の患者に失神があらわれた場合には、重篤な不整脈が発生している可能性があるので、直ちに投与を中止し、心電図検査を含む適切な処置を行うこと。
    (2)本剤は気管支拡張剤並びに全身性ステロイド剤と異なり、すでに起こっている喘息発作を速やかに軽減する薬剤ではないので、このことは患者に十分説明しておく必要がある。

  1. 禁忌(次の患者には投与しないこと)
    (1)イトラコナゾール、ミコナゾール、エリスロマイシン又はクラリスロマイシンを投与している患者
    [肝臓の薬物代謝酵素の阻害作用により、テルフェナジンの代謝が競合的に阻害され、未変化体濃度が上昇し、副作用を起こすおそれがある。]
    (2)重篤な肝障害のある患者
    [テルフェナジンの代謝が阻害され、未変化体濃度が上昇し、副作用を起こすおそれがある。]
    (3)先天性QT延長症候群のある患者[心血管系の副作用を起こすおそれがある。]
    (4)QT延長を起こしやすい患者(低カリウム血症、低マグネシウム血症、透析中、遮断薬を除く抗不整脈薬、利尿薬、向精神薬(フェノチアジン系、三環系・四環系抗うつ薬)、プロブコールを投与中の患者) [心血管系の副作用を起こすおそれがある。]
    (5)心不全、心筋梗塞、徐脈のある患者[心血管系の副作用を起こすおそれがある。]
    (6)本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者



  1. 慎重投与(次の患者には慎重に投与すること。)
    (1)フルコナゾール、ジョサマイシン、オレアンドマイシンを投与中の患者[肝臓の薬物代謝酵素の阻害作用により、テルフェナジンの代謝が競合的に阻害され、未変化体濃度が上昇し、副作用を起こすおそれがある。]
    (2)肝障害のある患者[テルフェナジンの代謝が阻害され、未変化体濃度が上昇し、副作用を起こすおそれがある。]
    (3)心疾患のある患者[心血管系の副作用を起こすおそれがある。]
    (4)高齢者(「高齢者への投与」の項参照)

  2. 相互作用
    (1)併用しないこと
    イトラコナゾール、ミコナゾール、エリスロマイシン又はクラリスロマイシン
    [QT延長、心室性不整脈を起こすことがある。]
    (2)併用に注意すること
    アゾール系抗真菌剤のうちフルコナゾール又はマクロライド系抗生物質のうちジョサマイシン、オレアンドマイシン[QT延長、心室性不整脈を起こすことがある。]

  3. 副作用(まれに:0.1%未満、ときに:0.1%〜5%未満、副詞なし:5%以上又は頻度不明)
    (1)重大な副作用
    1)循環器
    QT延長、心室性不整脈(torsadesde pointesを含む)があらわれることがある(「一般的 注意」の項参照)ので、異常が認められた場合には投与を中止すること。なお、失神があらわ れた場合には心電図をとり、QT延長、不整脈の存在を確認すること。
    2)ショック
    ショックを起こすことがあるので、観察を十分に行い、症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

                          − 中 略 −
    9.過量投与
    外国の過量服用症例報告では、一般に症状はないかあるいは軽症(例えば、頭痛、嘔吐など)であるが、本剤の1日360mg以上の投与によって、QT延長、心室性不整脈があらわれるとの報告がある。したがって、過量服用の例においては、吸収されずに残っている薬物を通常の方法(例えば催吐、胃洗浄、活性炭吸着など)で除去するとともに、少なくとも24時間は心臓のモニタリングを行うことが望ましい。なお、急性期経過後の治療は対症的、補助的なものとする。


                      − 以下略 −

症例のリスクファクター別分類

 重篤なQT延長、心室性不整脈が認められた17例の症例は全て、禁忌又は慎重投与に該当するリスクファクターを1つあるいは複数有する患者でありました。以下に各リスクファクター別の分析結果を示します。

リスクファクター 症    例    No.
 1  2  3  4  5  6  7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17
禁忌薬物相互作用
 イトラコナゾール併用                   2例
 クラリスロマイシン併用                    1例
重篤な肝障害              5例
先天性QT延長症候群
 QT延長                  2例
QT延長を起こすおそれのある患者
 低カリウム血症                4例
 低マグネシウム血症                    1例
 透析中                     1例
 利尿剤投与中             6例
 抗不整脈剤投与中                     1例
心不全、心筋梗塞、徐脈             6例
慎重
投与
上記以外の心疾患                      2例
高齢者(75歳以上)          8例
 過量服用 *                    1例

*:No.14の症例は、副作用発現前日にトリルダンを2倍量(240mg/日)服用した可能性があります。

症例概要
    患  者
1日投与量
投与期間
          副   作   用
性・
 年齢
使用理由
(合併症)
          経 過 及 び 処 置
12男・88 老人性皮膚掻痒症

(慢性気管支炎、慢性びらん性胃炎、S状結腸癌、慢性腎炎)

テルフェナジン

 120mg

 8日間

クラリスロマイシン

 200mg

 63日間

クラリスロマイシンを投与約2ヶ月目に、テルフェナジンを8日間併用したところ、めまい感が発現した。ECG所見はQT延長、心室頻拍、Torsades de pointesを示した。内服薬全て中止し、ECGモニター下で、リドカイン及び硫酸アトロピンを静注した。その後、ECGモニターより心室頻拍認めるも、失神等の症状の発現は認めなかった。翌日、第I度AVブロックが残るが心室性期外収縮の発現は減少した。失神症状はなく、血圧等のvital signsも異常なかった。翌々日、ECG所見は正常化した。
併用薬:クラリスロマイシン、マレイン酸イルソグラジン、酸化マグネシウム、耐性乳酸菌、
    オキサトミド、フルオシノロンアセトニド

心電図所見(省略)


  問い合わせ先 厚生省薬務局安全課
     担 当 市川(内2757)
     電 話 (代)[現在ご利用いただけません]

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