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一次予防の推進
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喫煙と肺がんの関連や、肥満と糖尿病の関連など、個々の疾患と生活習慣 との関係についての知識はかなり普及してきているが、高齢者になるほど多 疾患を有することが多いことから、今後「生活習慣病」という観点から疾病 を横断的に整理し直し、疾病予防のための包括的な指針をとりまとめる必要 がある。
また、高血圧症、耐糖能異常、高脂血症等、成人病の危険因子を有する者 に対しては、それぞれの病態に応じた日常生活指針を別途策定することも必 要である。
一方、知識の普及だけでは必ずしも生活習慣の改善に結びつくとは限らな いので、教育法の改善のみでなく、社会的な分煙対策、適正飲酒の推進、食 品の栄養成分表示、健康増進施設や健康保養地の整備など、個人での対応だ けではなく、むしろ社会全体として、「生活習慣病」を予防するための環境 を整備することについても検討する必要がある。
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効果的な二次予防対策の実施
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二次予防については、前述したように、市町村、保険者、事業主等が関係各法などの規定に基づいて各種の検診事業を実施しており、検診項目などの内容は年々充実されてきている。
今後は、検診の意義、費用対効果、個人の選択性などの観点から、より充実した検診サービスの提供体制や検診結果に基づく生活習慣改善指導の充実についても検討する必要がある。
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患者のQOLの向上を目指した医療技術の開発
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超音波診断装置、CT、MRIをはじめとする診断技術の発展は、多くの疾患のより正確・迅速な診断に貢献してきており、麻酔法、各種治療薬などの開発をはじめとする治療技術の発展とあいまって、これまで、患者の予後の改善や患者の救命、延命に大きな恩恵をもたらしてきた。
しかし、治療法の改善により循環器病、糖尿病等の罹病期間は長期化しており、疾病の重症化や合併症の防止などの三次予防対策は重要な課題となっている。
また、終末期医療をめぐる問題にみられるように、国民の生命に対する価値観や医療に対する要求は多様化している。
今後は、疾病の重症化や合併症の防止対策を推進するとともに、終末期医療などの充実を図るためにも、患者のQOLの向上を目指した医療技術の開発・普及について検討する必要がある。
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研究の推進
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前述した、一次予防、二次予防や診断・治療技術対策を推進するため、現在実施されている健康増進研究やがん、循環器病、糖尿病、腎不全などに対する研究などにおいて、今後、集団を対象とした生活習慣改善に係る介入研究、ハイリスク者に対する生活改善に関する指導の手法に関する研究、ハイリスク者に対する予防投薬の効果に関する研究、検診の評価に関する研究、低侵襲性診断・治療など患者のQOLを考慮した医療技術の開発研究などについて検討する必要がある。
また、生活習慣は文化によっても異なっており、国際研究協力の推進によって新たな示唆が生まれる可能性があることにも留意する必要がある。
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拠点機能等の整備・充実及び情報化への対応
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生活習慣病対策を進めるためには、研究機能、高度医療の提供、情報収集及び提供等の機能の整備・充実が必要であるが、厚生省の機関として、国立がんセンター、国立循環器病センター、国立健康栄養研究所等は、これまで成人病対策に大きく貢献してきていることから、今後も必要に応じて、厚生省を含め公的な機関を中心とした拠点機能の整備・充実を図るとともに、民間施設の活用についても合わせて検討する必要がある。
さらに、拠点施設を中心とした医療施設間の情報交換による診療機能の水準の向上を図り、国際交流を進めるためにも、医療情報システムの整備について検討する必要がある。
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地域における支援体制及び拠点機能の整備
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一般住民や特に疾病に罹患した者が自分の健康問題を認識し、健康回復への意欲を持ち続け、生活習慣を変えていく行動を支援する体制の充実や、国民が「生活習慣病」に対する偏見を持たず、患者を支援するような理解を広げるような取り組みが重要である。
このため、今後市町村における健康づくりの拠点である市町村保健センターの整備や広域的・専門的・技術的拠点としての保健所の機能の充実をはじめ、都道府県における健康科学センター等の整備など、地域社会における支援体制や拠点機能の整備につき検討するとともに、家庭教育及び学校保健教育との連携についても検討する必要がある。
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健康増進及び保健医療従事者の資質の向上
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これまで、治療は薬物療法や手術療法などが中心であったが、「生活習慣病」に対しては食事療法や運動療法が効果的である場合が少なくない。一方、健康増進活動はややもすると健康人のみを対象としたものになりがちであった。
このため、健康増進活動従事者は、疾患に着目した食事療法・運動療法の向上に対しても健康増進のノウハウを生かしていくことが必要である一方、保健医療従事者は、健康増進という概念を重視した活動に積極的に関与していくことも必要であり、そのための教育・研修体系などについても検討する必要がある。
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