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96/12/18


生活習慣に着目した疾病対策の基本的方向性について(意見具申)

1. はじめに
   成人病対策は、昭和30年代以降、脳卒中、がん、心臓病のいわゆる3大成人病を中心として、各種の施策が講じられてきた。
 その後、国民の生活環境、生活習慣の変化や成人病対策の成果として、脳卒中、胃がん、子宮がんなどの死亡率が減少する一方、糖尿病のように、直接死因としての死亡率は必ずしも高くなくとも、他の疾患を惹起したり、合併症により著しく生活の質(以下、「QOL」という。)の低下を招く疾患の増加がみられる。
 これまでの成人病対策は、診断技術や治療技術の発展を背景として、疾病やその危険因子の早期発見を目的とする検診などを中心とした公的保健サービスの実施及び成人病患者の救命や延命を主眼とした医療技術の開発・普及が図られ、大きな役割を果たしてきた。
 成人病には疾病の発症や進行に個人の生活習慣が深く関与していることが明らかになってきているが、生活習慣の改善や患者のQOLに着目した疾病予防への取り組みは必ずしも十分であったとはいえないとの意見がある。
 今後は、疾病別に明らかになった生活習慣との関連を集約し、国民に対して、生活習慣改善のための実行可能な手法を提示し、その定着を促すとともに、患者のQOLの向上に重点を置いた対策をより一層推進する必要がある。
 このため、当審議会において、「加齢」という要素に着目して用いられてきた「成人病」を生活習慣という要素に着目してとらえ直して、今後の疾病対策の基本的方向性について検討を行った。

2. 成人病及び対策の現状
 
(1) 成人病の現状
 
ア. 主要疾患の死亡者数(平成7年厚生省「人口動態統計」から)
   主要疾患別にみた死亡者数は、がんが第1位で26万3千人となっており、以下、脳卒中15万人(第2位)、心臓病14万人(第3位)、腎炎等1万6千人(第9位)、糖尿病1万4千人(第10位)となっており、これらの総死亡に占める割合は、約63%である。
 がんによる死亡を部位別にみると、胃及び子宮が減少傾向である一方、肺、大腸、乳房が年々増加している。
 循環器病による死亡については、脳出血の著しい減少がみられる一方、脳梗塞はここ数年横ばいであり、虚血性心疾患については若干の増加傾向がみられる。
イ. 主要疾患の患者数(平成5年厚生省「患者調査」から)
   主要疾患別にみた総患者数は、高血圧性疾患640万人、心臓病161万人、糖尿病157万人、脳卒中142万人、気管支喘息107万人、がん91万人などとなっている。ただし、患者調査では、医療機関で受療していない患者の把握ができないことに留意する必要がある。
 未受療の患者も含めると、高血圧(従来の境界域を含む)は約3,400万人(堀部博,1996)、糖尿病は約500万人(赤澤好温,1991)、気管支喘息は約500万人(牧野荘平,1996)とも推定されている。
ウ. 主要疾患の一般診療医療費(平成6年度厚生省「国民医療費」から)
   主要疾患別の一般診療医療費についてみると、脳卒中が約1兆9千億円で第1位となっており、以下、がんが1兆7,600億円(第2位)、高血圧症1兆6,200億円(第4位)、糖尿病8,700億円(第7位)、腎炎、ネフローゼ及び腎不全8,500億円(第8位)、虚血性心疾患
 6,600億円(第10位)などとなっており、これらを合計すると約7兆7千億円で国民医療費に占める割合は約35%にのぼっている。
 
(2) 成人病対策の現状
 
ア. 一次予防対策
   国においては、昭和63年からアクティブ80ヘルスプランを策定し、栄養、運動及び休養に関する指針を順次策定し、その普及を図ってきた。
 また、老人保健事業では、健康教育、健康相談を実施するとともに、基本健康診査で要指導とされた者を対象に生活習慣改善指導を行うなど、成人病の発症予防に努めている。
イ. 二次予防対策
   成人病の早期発見を目的とした二次予防対策については、各省庁が対象者別にそれぞれ事業を実施している。
 厚生省においては、老人保健事業として、市町村が実施主体となり、40歳以上(但し、乳がん及び子宮がん検診については30歳以上)の者で他の検診事業の対象とならないものを対象に、基本健康診査及び各種のがん検診が実施されており、その他18歳から39歳までの女性を対象に、婦人健康診査等の事業が実施されている。  社会保険庁においては、政府管掌健康保険の加入者等を対象に、検診事業が実施されている。
 また、労働省においては、労働者の健康管理を目的として、労働安全衛生法に基づく検診事業等が実施されている。
ウ. 三次予防対策二次予防対策
   老人保健事業として、市町村が機能訓練、訪問指導などを実施する他、老人保健施設等においてデイ・ケアを実施するなど、リハビリテーションの推進を中心に三次予防を推進している。
エ. 成人病等の調査
   成人病患者の実態を把握するため、人口動態統計、患者調査、国民栄養調査などの調査の他に特定の疾病に着目した調査が実施されてきた。
 がんに対しては、昭和33年に実施された「第1次悪性新生物実態調査」をはじめ、これまで5回の実態調査が行われてきている。また、循環器病に対しては、昭和36年に実施された「第1回成人病基礎調査」をはじめ、これまで4回の実態調査が行われている。
 これらの調査により、がんや循環器病の実態が把握され、各時代での有効な成人病対策を推進するための資料として大いに役立ってきた。

3. 疾病の要因とわが国の生活習慣の現状及び課題
 
(1) 疾病の要因と生活習慣
 
ア. 疾病の要因と対策のあり方
 
要因

図に示すように、遺伝子の異常や加齢を含めた「遺伝要因」、病原体、有害物質、事故、ストレッサー等の「外部環境要因」、食習慣、運動習慣をはじめとする「生活習慣要因」等さまざまな要因が複雑に関連して疾病の発症及び予後に影響している。
 発症要因別の対策としては、「遺伝要因」に対しては、ヒトゲノムや加齢の機序の解明を踏まえた手法が必要であるし、「外部環境要因」に対しては、有害物質の規制や感染症対策などの手法が、「生活習慣要因」に対しては食習慣の改善や適度な運動、飲酒・喫煙対策などの手法が必要となってくる。
 また、対策を講ずる主体を考えた場合、「遺伝要因」や「外部環境要因」に対しては個人で対応することが困難である一方、「生活習慣要因」は個人での対応が可能である。
イ. 健康と生活習慣
   健康と生活習慣との関係については、ブレスローの7つの健康習慣が代表的なものとしてあげられる(Belloc N.B.and Breslow J.,1972)。ブレスローは、健康習慣から以下の7つを選び、実施している健康習慣の数の多い者ほど疾患の罹患が少なく、また寿命も長かったことを明らかにした。
1) 適正な睡眠時間
2) 喫煙をしない
3) 適正体重を維持する
4) 過度の飲酒をしない
5) 定期的にかなり激しいスポーツをする
6) 朝食を毎日食べる
7) 間食をしない

 このことは、疾病予防を図っていく上で、休養、食生活、運動、喫煙、飲酒などの生活習慣に対する手法が重要であることを示唆している。
 したがって、成人病対策を検討するにあたっては、わが国における生活習慣の現状とその問題点を踏まえた検討が重要である。
 
(2) 国民の生活習慣の現状(平成6年「国民栄養調査」から)及び課題
 
ア. 栄養摂取等について
   平成6年における国民1人1日あたりの栄養摂取量は、前年と比べてほぼ横ばいであるが、エネルギー、炭水化物が減少の傾向に対して、動物性たんぱく質、動物性脂質は依然わずかながら増加傾向にある。
国民1人当たりの栄養摂取量を、平均栄養所要量に対する充足率でみると、エネルギーはほぼ適正摂取となっており、カルシウムを除く栄養素については所要量を上回っている。
 エネルギー摂取量は、平均的にほぼ適正量となっているが、摂取エネルギーに占める栄養素別構成比をみると、糖質エネルギー比率が減少傾向にあるのに対し、脂質エネルギー比率は、昭和63年に適正比率の上限とされる25%を超え、その後も漸増傾向を示している。
イ. 栄養摂取等について
   全国平均の1人1日当たりの食塩摂取量は、昭和62年まで減少傾向にあったが、昭和63年以降、逆にやや増加し、ここ数年13g弱と横ばいが続いている。食塩の目標摂取量である1日10g以下から比べると隔たりが大きい。
ウ. 運動習慣について
   運動習慣のある人(運動を週2回以上、1回30分以上、1年以上継続している人)の割合は、各年代において増加傾向を示しているものの、全体での運動習慣のある者は30%以下である。
エ. 飲酒習慣について
   平成6年国民栄養調査によれば、飲酒習慣のある人(週3回以上、1回に日本酒1合以上またはビール大ビン1本以上飲んでいる人)の割合は、男性43.6%、女性6.0%である。
 一方、平成6年度の成人1人当たり酒類販売(消費)量は101.6リットルと10年前の約1.2倍に増加している。
 また、内閣広報室の世論調査によれば、女性の飲酒者の割合は、昭和43年の19.2%から昭和62年の43.2%と2倍以上に増加している。
 さらに、未成年者の飲酒について、日本アルコール医学会の調査によれば、高校生の29.4%は月に1回以上飲酒する習慣があるという調査結果があり、後述する喫煙と合わせて、未成年者の飲酒、喫煙習慣は社会問題としてとらえる必要がある。
オ. 喫煙習慣について
   喫煙習慣のある人の割合は、男性43.8%、女性9.1%であり、男性では年々低下しているが、女性では横ばいである。年齢階級別にみると他の全年齢階級で喫煙率が低下傾向あるいは横ばいであるのに対し、20歳代女性の喫煙率は増加している。また、平成7年総務庁の調査では、男子中学生の2.6%、女子中学生の1.0%、男子高校生の19.4%、女子高校生の6.5%の者が毎日喫煙しているという結果が得られている。

4. 「生活習慣病」という概念の導入について
 
(1) 生活習慣に着目した疾病概念の導入の必要性
   「成人病」という概念は、医学用語ではなく、昭和30年代に、「主として、脳卒中、がん、心臓病などの40歳前後から死亡率が高くなり、しかも全死因の中でも上位を占め、40〜60歳くらいの働き盛りに多い疾病」として行政的に提唱されたが、その後、加齢にともなって罹患率が高くなる疾患群という意味として国民の間に定着している。
 「成人病」という概念は、加齢という現象はやむを得ないものであり、一定の年齢になった段階で早期発見・早期治療を行うことが効果的であるという認識を醸成してきており、国民の検診に対する受診行動を推進する上で大きな役割を果たしてきたことは、評価されるべきである。
 一方、前述したように、成人病の発症には生活習慣が深く関与していることが明らかになっており、これを改善することにより疾病の発症・進行が予防できるという認識を国民に醸成し、行動に結びつけていくためには、新たに、生活習慣に着目した疾病概念を導入し、特に一次予防対策を強力に推進していくことが肝要である。
 また、生活習慣は、小児期にその基本が身につけられるといわれており、このような疾病概念の導入により、家庭教育や学校保健教育などを通じて、小児期からの生涯を通じた健康教育が推進されることが期待できる。
 さらに、疾病の罹患によるQOLの低下が予防されるとともに、ひいては、年々増大する国民医療費の効果的な使用にも資するものと考えられる。
 但し、疾病の発症には、「生活習慣要因」のみならず「遺伝要因」、「外部環境要因」など個人の責任に帰することのできない複数の要因が関与していることから、「病気になったのは個人の責任」といった疾患や患者に対する差別や偏見が生まれるおそれがあるという点に配慮する必要がある。
 
(2) 生活習慣に着目した用語の例
   近年、わが国において生活習慣に着目した疾病の呼称としては、「習慣病(日野原重明,1978)」、「生活習慣病(川久保清,1991)」などの用語が認められる。
 一方、諸外国においては、いわゆる「成人病」や生活習慣が関与する疾患群についていくつかの呼称が認められる。
 米国においては「chronic disease(慢性疾患)」が、英国においては「life-style related disease(生活様式関連病)」や「chronic degenerーative disease(慢性退行性疾患)」が、フランスにおいては「maladie de comportement(生活習慣病)」が用いられている。
 また、ドイツにおいては、心臓病、循環器病、腎臓病、糖尿病等の「Zivilisationskrankheit(文明病)」という記載がある他、スウェーデンにおいては、生活が裕福になるほどかかりやすい病気という意味で
 「valfardssjukdomar(裕福病)」という用語がみられる。
 
(3) 「生活習慣病」の定義、範囲及び「成人病」との関係
   以上のことから、今後、生活習慣に着目した疾病概念の導入にあたっては、「生活習慣病(life-style related diseases)」という呼称を用い、「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」と定義することが適切であると考えられる。
 「生活習慣病」の範囲については、以下に例示するような生活習慣と疾病  との関連が明らかになっているものが含まれる。
 
食 習 慣: インスリン非依存糖尿病、肥満、高脂血症(家族性のものを除く)、高尿酸血症、循環器病(先天性のものを除く)、大腸がん(家族性のものを除く)、歯周病等
運動習慣:  インスリン非依存糖尿病、肥満、高脂血症(家族性のものを除く)、高血圧症等
喫  煙:  肺扁平上皮がん、循環器病(先天性のものを除く)、慢性気管支炎、肺気腫 歯周病等
飲  酒: アルコール性肝疾患等
 
 「成人病」との関係については、「成人病」は加齢に着目した疾患群であり、生活習慣に着目した「生活習慣病」とは概念的には異なるものである。
 一方、それぞれの疾病概念に含まれる疾患については、いずれも年齢あるいは生活習慣の積み重ねにより発症・進行する慢性疾患であり、また、その発症には複数の要因が大なり小なり関与するものと考えられるので、「成人病」に含まれる疾患と「生活習慣病」に含まれる疾患は重複するものが多い。

5. 今後の疾病対策に係る検討課題について
   生活習慣に重点を置いて今後の疾病対策を考えていくに当たっては、国民に正しい情報を提示し、社会的支援策を用意した上で、その取り組みについては個々の状況に応じて国民が選択するという基本的な姿勢が重要である。
 
(1) 一次予防の推進
     喫煙と肺がんの関連や、肥満と糖尿病の関連など、個々の疾患と生活習慣  との関係についての知識はかなり普及してきているが、高齢者になるほど多  疾患を有することが多いことから、今後「生活習慣病」という観点から疾病  を横断的に整理し直し、疾病予防のための包括的な指針をとりまとめる必要  がある。    また、高血圧症、耐糖能異常、高脂血症等、成人病の危険因子を有する者  に対しては、それぞれの病態に応じた日常生活指針を別途策定することも必  要である。    一方、知識の普及だけでは必ずしも生活習慣の改善に結びつくとは限らな  いので、教育法の改善のみでなく、社会的な分煙対策、適正飲酒の推進、食  品の栄養成分表示、健康増進施設や健康保養地の整備など、個人での対応だ  けではなく、むしろ社会全体として、「生活習慣病」を予防するための環境  を整備することについても検討する必要がある。
 
(2) 効果的な二次予防対策の実施
   二次予防については、前述したように、市町村、保険者、事業主等が関係各法などの規定に基づいて各種の検診事業を実施しており、検診項目などの内容は年々充実されてきている。
 今後は、検診の意義、費用対効果、個人の選択性などの観点から、より充実した検診サービスの提供体制や検診結果に基づく生活習慣改善指導の充実についても検討する必要がある。
 
(3) 患者のQOLの向上を目指した医療技術の開発
   超音波診断装置、CT、MRIをはじめとする診断技術の発展は、多くの疾患のより正確・迅速な診断に貢献してきており、麻酔法、各種治療薬などの開発をはじめとする治療技術の発展とあいまって、これまで、患者の予後の改善や患者の救命、延命に大きな恩恵をもたらしてきた。
 しかし、治療法の改善により循環器病、糖尿病等の罹病期間は長期化しており、疾病の重症化や合併症の防止などの三次予防対策は重要な課題となっている。
 また、終末期医療をめぐる問題にみられるように、国民の生命に対する価値観や医療に対する要求は多様化している。
 今後は、疾病の重症化や合併症の防止対策を推進するとともに、終末期医療などの充実を図るためにも、患者のQOLの向上を目指した医療技術の開発・普及について検討する必要がある。
 
(4) 研究の推進
   前述した、一次予防、二次予防や診断・治療技術対策を推進するため、現在実施されている健康増進研究やがん、循環器病、糖尿病、腎不全などに対する研究などにおいて、今後、集団を対象とした生活習慣改善に係る介入研究、ハイリスク者に対する生活改善に関する指導の手法に関する研究、ハイリスク者に対する予防投薬の効果に関する研究、検診の評価に関する研究、低侵襲性診断・治療など患者のQOLを考慮した医療技術の開発研究などについて検討する必要がある。
 また、生活習慣は文化によっても異なっており、国際研究協力の推進によって新たな示唆が生まれる可能性があることにも留意する必要がある。
 
(5) 拠点機能等の整備・充実及び情報化への対応
   生活習慣病対策を進めるためには、研究機能、高度医療の提供、情報収集及び提供等の機能の整備・充実が必要であるが、厚生省の機関として、国立がんセンター、国立循環器病センター、国立健康栄養研究所等は、これまで成人病対策に大きく貢献してきていることから、今後も必要に応じて、厚生省を含め公的な機関を中心とした拠点機能の整備・充実を図るとともに、民間施設の活用についても合わせて検討する必要がある。
 さらに、拠点施設を中心とした医療施設間の情報交換による診療機能の水準の向上を図り、国際交流を進めるためにも、医療情報システムの整備について検討する必要がある。
 
(6) 地域における支援体制及び拠点機能の整備
   一般住民や特に疾病に罹患した者が自分の健康問題を認識し、健康回復への意欲を持ち続け、生活習慣を変えていく行動を支援する体制の充実や、国民が「生活習慣病」に対する偏見を持たず、患者を支援するような理解を広げるような取り組みが重要である。
 このため、今後市町村における健康づくりの拠点である市町村保健センターの整備や広域的・専門的・技術的拠点としての保健所の機能の充実をはじめ、都道府県における健康科学センター等の整備など、地域社会における支援体制や拠点機能の整備につき検討するとともに、家庭教育及び学校保健教育との連携についても検討する必要がある。
 
(7) 健康増進及び保健医療従事者の資質の向上
   これまで、治療は薬物療法や手術療法などが中心であったが、「生活習慣病」に対しては食事療法や運動療法が効果的である場合が少なくない。一方、健康増進活動はややもすると健康人のみを対象としたものになりがちであった。
 このため、健康増進活動従事者は、疾患に着目した食事療法・運動療法の向上に対しても健康増進のノウハウを生かしていくことが必要である一方、保健医療従事者は、健康増進という概念を重視した活動に積極的に関与していくことも必要であり、そのための教育・研修体系などについても検討する必要がある。
 

6. おわりに
   本審議会において、生活習慣に着目した疾病対策の基本的方向性について審議を行い、「生活習慣病」という概念の導入が適当であること及び今後の疾病対策における検討課題を示したところである。
 今回とりまとめた意見により、国民の間に「生活習慣病」という呼称が定着し、生涯を通じた生活習慣改善のための努力がなされることを期待する一方、このような個人の努力を社会全体で支援する体制を整備するとともに、個人の責任を強調するあまり疾患や患者への偏見が生じないような取り組みも合わせて期待するものである。
 今後は、疾病対策の諸課題について、さらに具体的に検討することとしているが、今回の意見によって国民の健康増進への関心が高まり、実効性の高い疾病予防対策の構築の基礎となることを期待するものである。


[参考文献]
 
 
赤澤 好温 糖尿病の疫学に関する研究,平成3年度厚生省糖尿病調査研究事業報告書,厚生省,p13,東京,1991
Belloc N.B. and Breslow J. Relationship of physical health status and health practices.Internal Prev. Med 1:p409-421, 1972
日野原重明 成人病に代わる「習慣病」という言葉の提唱と対策,教育医療,Vol5,No3,p1ー3,財団法人ライフプランニングセンター,東京,1978
堀部  博 本邦における高血圧の現状(頻度、予後),循環器疾患基礎調査成績に基づく医療のガイドライン作成事業報告書,(社)日本循環器管理研究協議会,p60,東京,1996
川久保 清 生活習慣病といわれる成人病,厚生,45巻1号、p17ー20,1990
牧野 荘平 気管支喘息に関する研究,平成7年度厚生省長期慢性疾患総合研究事業研究抄録集


  問い合わせ先 厚生省保健医療局疾病対策課
     担 当 塚原・中山(内2353)
     電 話 (代)[現在ご利用いただけません]

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