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平成8年11月1日
「国立病院・療養所の再編成・合理化の基本指針」見直しの概要
1.国立病院・療養所の担うべき医療について、量から質への観点から見直す。
・ エイズ、難治性の免疫異常、感覚器障害、代謝性疾患を明示
・ 結核病棟の集約(原則として都道府県に1か所とする。)
・ 精神疾患に対する医療について、他の設立主体では対応困難な精神科救急、薬物
依存症、合併症に重点化
2.統廃合及び経営移譲の終了していない施設については、引き続き再編成計画の対象
施設とし、平成12年度末までに施設の廃止を含む対処方策を決定した上、速やかに
実施する。
3.現在、再編成の対象施設となっていない施設についても、その果たすべき役割を適
切に遂行できないものは、統廃合又は経営移譲の対象施設としての追加を検討する。
4.経営の合理化の方策を引き続き推進し、効率的な経営体制の確立を図る。
(参考)現行の再編成計画は、昭和61年度当初における239施設(注)を統廃合・
経営移譲により165施設とするもの。
(注)国立ハンセン病療養所13施設を除く。
国立病院・療養所の再編成・合理化の基本指針
昭和60年3月28日策定
平成8年11月1日改定
厚 生 省
1 趣旨
昭和20年以来国民医療の確保に大きな役割を果たしてきている国立病院・療養所に
ついては、適切かつ効率的な医療供給体制の確立という国民的課題の中で昭和60年に
策定された「国立病院・療養所の再編成・合理化の基本指針」に基づき、国立医療機関
にふさわしい役割を果たせるよう機能強化を図るため、昭和61年度を初年度とする国
立病院・療養所の再編成計画(以下「昭和61年度再編成計画」という。)により今日
まで再編成を進めてきているところである。
しかしながら、再編成については、最近は加速する兆しを見せ始めているものの、全
体として計画どおり進んでいない。一方、昭和61年度再編成計画策定以降今日までの
間をみると、都道府県の医療計画策定による医療供給体制の整備の進展を始めとする国
立病院・療養所を取り巻く環境は変化しており、これを受け、平成8年5月には、医療
機関と一体として社会福祉施設等を整備する目的の場合においても減額譲渡の対象とす
ること等を内容とする「国立病院等の再編成に伴う特別措置に関する法律の一部を改正
する法律」が公布施行され、より円滑な再編成の実施のための条件整備が図られたとこ
ろである。
これらを踏まえ、今後国立病院・療養所は他の医療機関と連携を図りながら国立病院
・療養所が担った方が最も資源活用上望ましい分野に一層集約、集中し、量的なカバー
から質的な充実を図ることにより、国立医療機関としてふさわしい役割を果たしていく
ことが必要である。また、その運営についても、引き続き公共性と効率性の両立の観点
から経営の合理化等の方策を積極的に進めなければならない。
このため、国立病院・療養所全体としてその期待される役割を適切に果たし得る施設
群として機能強化するため、以下の方針に基づき、再編成・合理化を一層積極的に実施
するものとする。
2 国立病院・療養所の果たすべき役割
地域における医療供給体制の中で基本的・一般的医療の提供は私的医療機関及び地方
公共団体立等の公的医療機関に委ねるものとし、国立病院・療養所は、次のような機能
を果たしながら、その有する能力の範囲内で地域にとって必要な医療を行うものとする
。
(1) 政策医療
その時代において国の医療政策として国立病院・療養所が担うべき医療(以下「
政策医療」という。)を実施する。現時点における政策医療は次のとおりである。
ア 国民の健康に重大な影響があるがん、循環器病、成育医療、腎疾患等の分野に
おける高度先駆的医療
イ 結核、重症心身障害、進行性筋ジストロフィー、ハンセン病等、その対応につ
いて国が中心的役割を果たすべきことが歴史的、社会的に要請されている疾病に
対して実施する医療(具体的には以下の点を踏まえる。)
1. 結核については、都道府県域の結核医療の基幹としての役割を果たす。
2. 重症心身障害については、障害者保健福祉施策推進の観点から将来における
患者の望ましい処遇を見据えて、中長期的な視点に立った見直しを進める。
ウ 神経・精神疾患の分野における高度先駆的医療及び他の設立主体では対応困難
な領域に対する医療
エ 長期にわたり苦痛や日常・社会生活上の制約を伴う難治性の免疫異常、感覚器
障害及び代謝性疾患、エイズ並びに原因の究明及び治療法の確立の急がれている
難病等を克服する医療
オ 他の公私立医療機関が実施する救急医療等を補完して行う高度(第三次)の医
療、都道府県の区域を超えて対応すべき広域災害に対応する医療
カ 新たな社会的ニーズに対応する医療のモデル的実施
キ 開発途上国からの研修生受入れ、医療スタッフの派遣等の国際医療協力の展開
、国際的な感染症への対応
(2) 政策医療に直接必要な臨床研究
(3) 地域の開業医、勤務医のための病院の開放、高度医療機器の共同利用、高度専門
検査の受託
(4) 医療内容の高度化・多様化に応じた臨床研修、医療専門職の養成、地域の医療従
事者の生涯教育、経営管理等の教育研修
(5) 疾病等に関する各種の保健医療情報、治療研究結果の集積と普及
(6) 先駆的な医療政策等の実践
3 実施体制の整備
(1) 前記2の役割を果たすため、国立病院・療養所を次のように類型化し、必要な医
療スタッフ及び施設設備を配置する。
ア ナショナルセンター
高度先駆的医療の実施、臨床研究、教育研修、情報発信等の全国の中心機関と
して、既存のナショナルセンターの充実を図るとともに、時代の要請に応じて新
たなナショナルセンターの整備を検討する。
イ 基幹医療施設
特定の疾患を対象とした医療を提供するブロックの中心機関として、必要に応
じてナショナルセンターとの連携の下に高度先駆的医療の普及等を図るため、臨
床研究、教育研修等の機能を備えた施設を整備する。
ウ 専門医療施設
特定の疾患を対象として、必要に応じてナショナルセンターや基幹医療施設と
の連携の下に専門医療を提供し、教育研修等の機能を備えた施設を疾病の特性等
に応じ整備する。
これらのうち、政策医療の実施とともに、高度で総合的な医療機能と災害時に他
の施設の診療支援を行い得るなどの機能を持つ施設(高度総合医療施設)をブロッ
クごとに整備するものとし、また、政策医療の分野によっては、全国の国立病院・
療養所の中核となる機能を持つ施設(高度専門医療施設)を整備する。
(2) 国立病院・療養所相互間における専門医等の医療スタッフの人事交流を促進する
とともに、診療支援、臨床研究、教育研修、経営面での有機的連携を図るため、他
の設立主体との連携を図りつつ効果的なネットワーク化を推進する。
(3) 再編成の実施による国立病院・療養所の機能強化を踏まえ、国立病院、国立療養
所の区分を撤廃することを今後検討する。
4 国立病院・療養所の再編成
前記2及び3による国立病院・療養所の整備は、施設の再編成を通じて実現を図る
ものとし、このため、次により統廃合、経営移譲等を行う。
(1) 再編成の指標
ア 統廃合の対象とする国立病院・療養所
次に掲げる要件のいずれかに該当するものは、統廃合の対象として検討するも
のとする。
1. 近隣(注1)に類似の機能を有する相当規模の医療機関がある場合で、病床
数等からみて国立病院・療養所としての機能を果たすことが難しいもの(注2)
。
2. 近接して国立病院・療養所があり、統合したほうがより機能充実が図れるも
の。
(注1) 医療法により都道府県が定める医療計画における二次医療圏内をいう
(注2) 通常、病床数300床を下廻る程度の規模の施設を検討の対象とする
ただし、300床という目安は、担うべき政策医療の内容等によって弾
力的に考える。
イ 経営移譲の対象とする国立病院・療養所
地域住民の一般的医療の確保の役割は果たしているが、病床数、診療機能、診
療圏等を総合的に勘案して国が直営するよりも他の経営主体が経営することが適
当と考えられるものについては、経営移譲の対象として検討するものとする。
(2) 再編成計画
ア 統廃合又は経営移譲の終了していない昭和61年度再編成計画対象施設につい
ては、引き続きその対象とし再編成を積極的に推進する。
イ 統廃合及び経営移譲の対象となっていない施設についても、昭和61年度再編
成計画策定以降の国立病院・療養所を取り巻く環境の変化等に対応し、その果た
すべき役割を適切に遂行する観点から見直しを行い、統廃合又は経営移譲の対象
施設を追加することを検討する。
この場合、政策医療に関する患者数、そのうち二次医療圏外からの患者の割合
、専門医数を基本とし、他の医療機関との役割分担、医療計画との関係、国立病
院・療養所の地域偏在の是正等を前記 (1)の再編成の指標も踏まえつつ総合的に
勘案する。また、精神疾患医療を行う施設については、精神科救急への対応、薬
物依存や合併症を有する患者への対応の状況等を総合的に勘案する。
重症心身障害に対する医療を行う施設については、中長期的な視点に立った見
直しの一環として、将来における患者の望ましい処遇を見据えつつ社会福祉法人
等への経営移譲をモデルとして実施することを検討する。
ウ 結核医療を行う施設については、都道府県ごとに原則1か所とする集約化を図
るものとする。
(3) 再編成の推進方策
ア 地方公共団体等関係者との協議
国立病院・療養所の再編成に際しては、関係地方公共団体の長その他地元の関
係者と協議し、経営移譲後の施設の経営の安定等に十分配慮するものとする。
イ 患者への配慮
再編成によって患者の診療に支障を来さないよう、統廃合後の受診先の確保、
福祉施設との連携等に配慮する。
ウ 職員への配慮
職員の身分、給与処遇等に関する勤務条件について十分配慮する。
エ 資産の譲渡に伴う支援措置
再編成の円滑な実施を図るため、平成8年5月に改正された「国立病院等の再
編成に伴う特別措置に関する法律」等に基づき、移譲の場合や職員を一定以上引
き継ぐ場合に係る資産の譲渡の特例、資産の譲渡を受けて医療機関を開設する公
的医療機関の開設者等に対する国庫補助、国立病院・療養所に勤務する医師等を
派遣する等各種の支援措置を講じる。
(4) 再編成の実施目標
昭和61年度再編成計画に基づき引き続き統廃合及び経営移譲を行う施設につい
ては、これらの土地、建物等の資産の利用方法について施設の廃止を含め平成12
年度末までに対処方策を決定した上、速やかに実施するものとする。
5 経営の合理化
国立病院・療養所の運営については、公共性と効率性の両立の観点から、次のよう
な経営の合理化の方策を引き続き推進し、効率的な経営体制の確立を図るものとする
。
(1) 経費の負担区分の明確化等
国立病院・療養所の運営については、経費の負担区分を明確化したいわゆる一般
会計繰入基準により、政策医療等本来採算にのらない経費は一般会計からの繰入で
、その他の経費は診療収入等でそれぞれ賄い、これにより効率的経営を図るものと
する。
(2) 経営努力
実効ある経営改善を図るための経営管理指標の一層の活用、病院情報システムの
導入等積極的に経営努力を行う。
(3) 業務委託
技能労務職員等が携わっている共通管理的業務については、患者に対する医療サ
ービスの低下を招くことのないよう配慮しつつ、民間委託等の合理化施策を積極的
に促進するものとする。
(4) 主体的経営
各施設の経営努力を一層促進するため、各施設において事業計画を作成すること
により施設の主体性を強化するとともに、経営努力がその施設に還元されるような
システムの活用により各施設の自主的な努力を促進するものとする。
6 再編成・合理化による国立病院・療養所の強化
再編成・合理化の推進によって生じた施設の定員等の余裕については、必要に応じ
医療スタッフを中心に再配置するなど、それによって国立病院・療養所の機能強化を
図るものとする。
7 職員団体の理解と協力の上にたった計画の推進
職員団体に対し再編成・合理化の必要性について理解を求め、計画の円滑な遂行に
協力が得られるよう努めるものとする。
問い合わせ先 厚生省国立病院部運営企画課
担 当 熊本(内2604)
電 話 (代)[現在ご利用いただけません]
(直)03-3595-2261
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