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                   「ティシール」の治験に係る調査について

 血漿分画製剤の安全性を確認するため、既に調査を行っている血液凝固第ヲ及び第
IX因子製剤を除く血漿分画製剤について、製造工程においてHIVが不活化される工
程について調査した。なお、調査対象は昭和53年以降市販されている製剤とした。

 その結果、個々の血漿分画製剤の製造工程には、HIVが不活化される工程が含まれ
ているが、日本臓器製薬株式会社が輸入販売を行う「ティシール」(生物学的組織接着
剤、昭和63年1月20日承認)については、新薬承認申請のために行った治験の初期段階
において、HIVが不活化される工程を含まない製剤(以下、「非加熱ティシール」と
いう。)が使用されていることが判明した。なお、その他の製剤については治験時にお
いても承認時と同様HIVが不活化される工程が含まれていた。

 この件について中央薬事審議会血液製剤調査会の意見を伺ったところ、ティシールは
手術時の組織の接着用として局所で凝固する製剤であり直接血中に入れるものではない
こと、通常使用量が少ないこと、及び反復使用される頻度が低いことを考慮すると、非
加熱ティシールによるHIV感染の危険性は極めて低いと考えられるが、非加熱ティシ
ールを治験時に使用した患者について、HIV感染の有無の追跡調査を実施しておくこ
とが望ましい旨の意見であった。

 このため、日本臓器製薬株式会社に対し、非加熱ティシールを治験時に使用した患者
についてHIV感染の有無の追跡調査を実施し、その結果を11月中旬を目途に厚生省
に報告するよう指示するとともに、併せて、治験を実施した15大学病院に対し、調査
への協力方を依頼することとした。

(注1) 「ティシール」の治験概要
 非加熱ティシールは、昭和56年11月から昭和59年10月にかけて15大学におい
て治験が実施されている(556例)。その後、加熱ティシールが開発されたため、昭
和61年8月から昭和62年7月にかけて27大学に於て加熱ティシールの治験が実施
された(46例)。

(注2) 血液製剤−+−−輸血用血液製剤(全血製剤、血液成分製剤)
          +−−血漿分画製剤

(参考)   「 ティシール」について

承認申請者 日本臓器製薬(株)  製造元 イムノ社(オーストリア)

承認申請日 昭和59年12月14日
   当初、非加熱ティシールが申請されたが、昭和60年初頭にイムノ社が加熱製剤
  に切り替えたことから、加熱ティシールの治験を行い、申請内容の変更・資料提出
  を行い、加熱工程が含まれる製剤として承認されたものである。

承認年月日 昭和63年1月20日

キット構成(主成分) ティシール用フィブリノゲン(ヒト血液由来)
           ティシール用トロンビンS(ウシ由来)トロンビン500単位/ml
                             ティシール用トロンビンL(ウシ由来)トロンビン
                                   4単位/ml

効能・効果
   組織の接着・閉鎖(但し、縫合あるいは接合した組織から血液、体液又は体内ガス
 の漏出をきたし、他の適切な処置法のない場合に限る。)

用法・用量
    溶解したフィブリノゲン液と、トロンビンS又はトロンビンLの等容量を、同時に
  滴下・噴霧又はあらかじめ混合して患部に用いる。通常本剤1mlは5平方センチメー
  トルの組織に適用する.なお、接着・閉鎖部位の状態、大きさに応じて適宜増減する
  。

製造方法
 ティシールに用いられるフィブリノゲンは血漿を遠心分離して得られるクリオプレ
シピテートに緩衝液を加えて攪拌して生じた沈殿物を緩衝液を加えて溶解し、pH、
蛋白質濃度を調整した後、メンブランフィルターでろ過滅菌後凍結乾燥し、さらに加
熱処理したものである。

 非加熱ティシールは、加熱処理の工程がない。

(説明資料1)

    血漿分画製剤の製造工程におけるHIV不活化工程の確認について

1 血漿分画製剤の安全性を確認するため、既に調査を行っている血液凝固第VIII及び
  第IX因子製剤を除く血漿分画製剤について、製造工程においてHIVが不活化される
  工程について調査した。なお、調査対象は昭和53年以降市販されている製剤とした
  。

2 調査の結果は、次のとおりである(別紙参照)。
    (1)人血清アルブミン製剤
        生物製剤基準に収載されており、同基準において原血漿からアルブミンを製造
        する工程にHIVが不活化される液状加熱工程が含まれている。
    (2)グロブリン製剤
        原血漿からグロブリンを分画製造する工程にHIVが不活化されるエタノール
        処理又はリバノール硫安処理が含まれている。
    (3)トロンビン製剤、フィブリノーゲン製剤、その他
      個々の製剤の製造工程にHIVが不活化される工程であるエタノール処理、乾
        燥加熱、高圧滅菌、液状加熱又はリバノール硫安処理が含まれている。
    (4)(1)〜(3)の製剤について治験時の製法を調査したところ、ティシール
      については、新薬承認申請のために行った治験の初期の段階において、HIVが
      不活化される工程を含まない製剤が使用されていたが、その他の製剤については
      治験時においても承認時と同様、HIVが不活化される工程が含まれていた。



(1) 人血清アルブミン製剤

      名  称          承認日           一般名         製造業者等  HIVが不
                                                                    活化される
                                                                    主たる工程

  加熱人血漿蛋白          −               −             7社     液状加熱


  人血清アルブミン        −               −            13社     液状加熱



(2)  グロブリン製剤

      名  称          承認日           一般名         製造業者等  HIVが不
                                                                    活化される
                                                                    主たる工程

  グロブリン製剤          −               −            14社   エタノール処
                                                                  理又リバノー
                                                                  ル硫安処理
(エタノール処理又は
  リバノール硫安処理)


(3)  トロンビン製剤、フィブリノゲン製剤、その他

          販 売 名            承認日            一般名                     製造業者等  HIVが不
                                                                                         活化される
                                                                                         主たる工程

    フィブリノゲン−ミドリ     51・4・30      乾燥人フィブリノゲン           ミドリ十字  エタノ-ル処理、
                                                                                         紫外線照射

    フィブリノゲンHT−ミドリ   62・4・30      乾燥人フィブリノゲン           ミドリ十字  エタノ-ル処理、乾
                                                           燥加熱一変(S
                                                                                         D処理追加、6・
                                                                                         8・12)


           販 売 名            承認日           一般名                     製造業者等  HIVが不
                                                                                         活化される
                                                                                         主たる工程

  フィブリン膜(柔軟)−ミドリ   43・5・21      人フィブリン膜                 ミドリ十字  エタノ-ル処理、高
                                                        圧蒸気滅菌

  トロンビン歯科円錐−ミドリ   44・6・25      歯科用トロンビン               ミドリ十字  エタノ-ル処理(S6
                                                                                         0から加熱トロン
                                                                                         ビンを使用)

  トロンビン−ミドリ           61・3・12      トロンビン                     ミドリ十字  エタノール処理、乾
                                                         燥加熱
                                                                                         一変(SD処理
                                                                                         追加、4・7・24)
                                                                                         一変(ウイルス除去
                                                                                         膜処理追加、7・
                                                                                         10・20)

  トロンビン化血研              2・6・7       トロンビン                     化血研      エタノール処理、
                                                                                         乾燥加熱
                                                                                         イオン交換クロマト
                                                                                         精製

  献血トロンビン−ニチヤク      6・3・15      トロンビン                     日本製薬    エタノール処理、
                                                                                         乾燥加熱
                                                                                         一変(ウイルス除
                                                                                         去膜処理追加
                                                                                         、8・1・22)

  ゲラトロンビン               49・12・28     トロンビン(ゼラチン被膜)       ミドリ十字  エタノール処理、
                                                                                         乾燥加熱

  ハプトグロビン注−ミドリ     60・11・5      人ハプトグロビン               ミドリ十字  エタノール処理、
                                                                                         液状加熱

  ノイア-ト                    62・3・31      乾燥濃縮人アンチトロンビンIII  ミドリ十字  エタノール処理、
                                                                                         液状加熱

  アンスロビン                 62・3・31      乾燥濃縮人アンチトロンビンIII  ヘキスト    エタノール処理、
                                                                                         乾燥加熱

  アンスロビンP                62・8・21      乾燥濃縮人アンチトロンビンIII  ヘキスト    エタノール処理、
                                                                                         液状加熱

  アンスロビンP−ベーリング     5・12・1      乾燥濃縮人アンチトロンビンIII  ヘキスト    エタノ-ル処理、
                                                                                         液状加熱

  ファイバ「イムノ」           58・5・27      乾燥人血液凝固因子抗           日本臓器    イオン交換クロマト精製
                               体迂回活性複合体                           一変(含湿加
                                                                                         熱追加、61・8・4)


           販 売 名            承認日           一般名                     製造業者等  HIVが不
                                                                                         活化される
                                                                                         主たる工程

  オ-トプレックス              60・8・22      活性化プロトトロンビン複合     バクスター  エタノール処理
                                              体濃縮製剤                                 一変(乾燥
                                                                                         加熱追加、63・3
                                                                                         ・4)

  フィブロガミン               55・10・25     乾燥濃縮人血液凝固第           ヘキスト    リバノール硫安
                                                                                         処理
                              XIII因子                                  一変(液状
                                                        加熱追加、61・
                                                        11・29)

  フィブロガミンP               6・3・4       乾燥濃縮人血液凝固第           ヘキスト    液状加熱
                              XIII因子(血漿由来)

  ベリナートP                   2・6・29      乾燥濃縮C1−インアクチベータ   ヘキスト    液状加熱

  ティシール                   63・1・20      生体組織接着剤                 日本臓器    乾燥加熱
                                                                                         一変(含湿
                                                                                         加熱に変更、
                                                                                         3・3・29)

  ベリプラストP                63・1・20      生体組織接着剤                 ヘキスト    液状加熱

  ベリプラスト                  7・3・8       生体組織接着剤                 ヘキスト    液状加熱

  ボルヒール                    3・3・4       生体組織接着剤                 化血研      乾燥加熱

  ジーティーサーティーン        4・10・2      人血液凝固第XIII因子           ユニチカ    フィブロガミンと
                                                                                         トロンビン-ミド
                                                                                         リの組合せ
                                                                                         製剤
                                              ・トロンビン

  ケレス                        5・6・25      人血液凝固第XIII因子           ユニチカ    フィブロガミンと
                                                                                         トロンビン−ミドリ
                                                                                         の組合せ製剤
                                              ・トロンビン

    問い合わせ先 厚生省薬務局審査課
     担 当 成田(内2742)
          電 話 (代)[現在ご利用いただけません]
                  (直)3503-7358


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