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                                                      平成8年9月4日


             医薬品開発受託機関のあり方に関する研究班報告書について


 平成7年度厚生科学研究費補助金(厚生科学特別研究事業)により行われた標記研究
班の報告書が取りまとめられたので、公表します。
 なお、要旨は参考のため作成したものです。


            医薬品開発業務受託機関のあり方に関する研究班 報告書要旨

1.研究班設置の背景
  ・製薬企業等から委託を受けて、医薬品の開発にかかわる業務を行う組織で、医薬品
    の臨床開発、承認申請、再審査、再評価、副作用情報の収集・評価、適正使用情報
    の伝達等の業務の一部あるいはすべてを、業としてあるいは学術的、又は公益的見
    地から受託する組織を医薬品開発業務受託機関(Contract Research Organization:
    CRO)という。
  ・米国IND規則(1987年)、EC−GCP(1991年)、ICH−GCP(案)でほぼ同様
    の定義がなされている。
  ・治験の質の向上、医薬品の適正使用の推進など、製薬企業の業務量の増大に対処す
    るため、我が国でもその必要性が指摘されてきている。
  ・「21世紀の医薬品産業のあり方に関する懇談会」、「医薬品開発受託機関のあり
    方に関する研究班(本間班)」、「医薬品安全性確保対策検討会」での議論の経過を
    踏まえ、将来的なCROの活用を含む実践的な検討を行う。

2.問題点の明確化
  ・欧米諸国の状況を見ると、CROにより提供されるサービス内容が科学的に評価し
    得るものであり、データについても信頼性確保の手段が講ぜられていたので、製薬
    企業、医療機関・治験担当医師及び行政に受け入れられてきたものと評価できる。
  ・我が国では、治験国内管理人にCROを選んでいる例もある一方、医薬品の共同開
    発という形でCROが参画することは認められておらず、CROの法的位置付けを
    明確にする必要がある。
  ・CROが人的にも物的にも整備され、その能力が現在よりも相当程度向上し、適正
    な治験の遂行ができるようになれば、CROを活用することは医薬品の治験を効率
    的に行う上で貢献するものと考えられる。一方、CROへの業務委託を安易に認め
    ることは、製薬企業の治験に対する責任があいまいになる恐れがある。
  ・外国のCROは市販後の使用成績や臨床試験のモニタリング業務より発展したもの
    で、我が国でも委託したい業務の上位をモニタリングが占めている。
  ・CROが今後モニタリングを実施する場合の問題点として、1.法規制上の位置付け
    、2.CROの実施するモニタリングの質の担保、3.企業秘密保持・責任範囲・費用
    に対する製薬企業側の懸念、4.製薬企業との信頼関係の希薄化・迅速な情報交換が
    損なわれることへの医療機関側の懸念、5.患者・被験者の権利保護、の5点が考え
    られる。

3.今後の対応
  ・現行法においてもCROの業務のすべてが否定されているとは考えられないが、C
    ROの定義、位置付け、義務等を一層明確に規定するために、ICH−GCPと整
    合性のある国内GCP、GPMSP及び改正薬事法に基づく省令等による明確化が
    必要である。
  ・具体的には、CROの行い得る業務範囲、CROも査察対象になるか、データの保
    存義務、GCP違反の場合の罰則などが明確化されることが必要である。
  ・改正薬事法第14条の4及び第14条の5に設けられた再審査及び再評価の資料の
    収集若しくは作成の委託を受けた者の秘密厳守規定にCROが該当することの明確
    化及び治験にCROが参加した場合の秘密厳守規定の適用の明確化も必要である。

4.結語
  ・我が国では、CROは発足後日が浅く、製薬企業からの委託実績も未だ少ない。C
    ROの質の確保、業務内容、製薬企業の責任下での活用及び規制のあり方などの課
    題がクリアされ、法令上の位置付けがされれば、製薬企業からCROに委託される
    業務も、比較的熟練度が要求されない業務から高い熟練度が要求される業務へ、ま
    た、小規模試験から大規模試験へと段階的に拡大されていくと考えられる。
  ・CROの組織としての信頼性の確保、CROが作成した製造承認申請データの質の
    チェック方法を行政として考える必要がある。
  ・治験の補助業務(スタディーナース等の派遣、症例調査記録用紙とカルテとの照合
    など)がCROにより行われることになれば、医療機関にとってもCROの参加は
    有意義であろう。
  ・CROが単に経済的理由のみで活用されるのでなく、治験及び市販後調査の質的向
    上という側面からCROの活用が図られ、有用な医薬品が早く患者に届き、適正使
    用されることを第一義的に考えるべきであり、患者不在の利用に終わってはならな
    い。

    問い合わせ先 厚生省薬務局研究開発振興課
     担 当 森口(内2791)
          電 話 (代)[現在ご利用いただけません]
                  (直)3595-2430


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