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                                         平成8年7月1日

 「腸管出血性大腸菌に関する研究班」第1回会議の開催結果について

 本日15時より、「腸管出血性大腸菌に関する研究班」第1回会議が開催され、別紙
のとおり、今後の研究方針がとりまとめられた。

(別紙)
           腸管出血性大腸菌に関する今後の研究方針について

  腸管出血性大腸菌(いわゆる「病原性大腸菌O−157」)による感染の続発に対応
し、原因の究明、発生予防及び被害拡大防止のため、緊急に「腸管出血性大腸菌に関す
る研究班」を設置し、以下の調査研究を行う。

1.病原菌のDNAパターンの分析等による菌株間の相同性に関する調査研究
    これまでわが国で検出され、現在地方衛生研究所、保健所、医療機関等に保有され
  ている腸管出血性大腸菌を地方衛生研究所を通じて収集しているところであるが、そ
  のDNAパターンを分析し、本菌の疫学的分布パターンを明らかにし、感染経路を解
  明する上での参考に資するための調査研究を行う。DNAパターンが異なれば、菌の
  由来は異なると考えられるが、DNAパターンが同一であれば、菌の由来が同一であ
  る可能性がある。
    なお、分析法として次の方法をとる。
    1. DNA断片のパターンを分析する方法
        培養増殖した菌のDNAを抽出し、これを適当な酵素で切断後、その断片をパ
      ルスフィールド電気泳動することにより、DNA断片のパターンを比較解析する
      方法。
  2. 菌のDNAを大量複製し、DNAパターンを分析する方法
        菌のDNAの数か所の特定部位をPCR法(DNAを連鎖的に大量に複製する
      方法)を用いて大量に複製し、その結果産生されるDNA断片のパターンを解析
      する方法。
    3. その他

2.原因の疫学的究明に関する調査研究
(1)食品の流通経路に関する調査
   今回の一連の食中毒事件の中で喫食された食品の流通経路については、既に関係
    自治体あて調査結果を提出するよう要請しているところであるが、とりまとめた調
    査結果を解析し、流通経路等の共通点を明らかにすることにより、感染源の疫学的
    究明を行う。
(2)検食のあり方に関する調査研究
   今回の一連の食中毒事件において原因究明が困難となる一つの要因として、有症
    者が確認された段階で、喫食された食品が保存されていないことがあげられている
    。このため、発症までの潜伏期間を考慮し、検食の保存期間と保存方法(温度条件
    、保存する食品の選択条件、保存料等)のあり方について調査研究を行う。

3.食肉の汚染実態に関する調査研究
    これまで行われてきた諸外国の調査では、食肉の他、水、野菜の汚染が疑われてい
  るが、当面、検出頻度の高い食肉について汚染実態の調査を行い、その対策について
  調査研究する。
(1)輸入食肉における腸管出血性大腸菌検出状況の調査
      輸入食品検疫検査センターにおいて、畜種別、形態別に輸入食肉の汚染実態につ
    いての調査研究を行う。
(2)と畜場における汚染実態調査
      と畜場に搬入されてくる獣畜の腸内容物、枝肉等の製品及び施設内排水等につい
    て、腸管出血性大腸菌の汚染実態調査を行う。
(3)食鳥処理場における汚染実態調査
      食鳥処理場に搬入されてくる食鳥の腸内容物、枝肉等の製品及び施設内排水等に
    ついて、腸管出血性大腸菌の汚染実態調査を行う。

4.診断治療に関する調査研究
(1)診断法の確立に関する調査研究
      腸管出血性大腸菌感染患者を迅速に診断するため、患者糞便を用いるPCR法に
    よる毒素遺伝子の検出方法や免疫学的方法による毒素の検出方法等、患者の迅速診
    断に関する調査研究を行う。なお、診断の補助手段として、患者血清を用いる血清
    診断法についても調査研究を行う。
(2)治療方法に関する研究
      平成2年度厚生科学研究「腸管出血性大腸菌の疫学的、臨床医学的研究」等を参
    考に、今回の一連の腸管出血性大腸菌患者の治療経過の分析等を通じて、患者の病
    期や年齢等に応じた抗生物質の使用方法や脳症、溶血性尿毒症症候群の早期診断等
    に関する調査研究を行う。
(3)患者の治癒判定条件等に関する研究
      患者の安静期間等を合理的に決定するため、患者の治癒判定の判断条件設定に関
    する調査研究を行う。また、二次感染症例の分析等を通じ、その予防対策について
    調査研究を行う。

    問い合わせ先 厚生省生活衛生局食品保健課
     担 当 新木(内2444)、中山(内2450)
          電 話 (代)[現在ご利用いただけません]
                  (直)3595-2326


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