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         中央薬事審議会の審議結果について

1.中央薬事審議会常任部会は、平成8年6月13日に開催され、10の案件について
  審議のうえ、中央薬事審議会としての答申がなされた。

2.主な審議案件は次のとおり。
(1)新医薬品の承認   3件(参考資料1〜3)
1)成分名 アルグルセラーゼ
2)成分名 乾燥BCG(膀胱内用)
3)成分名 クエン酸タンドスピロン

(2)放射性医薬品基準の改正 (参考資料4)

参考資料1 中央薬事審議会常任部会で審議された新医薬品の概要

  成分名  アルグルセラーゼ
  販売名  [製剤] セレデース注50U、同400U〈輸入承認〉
                      (ジェンザイム・ジャパン)

1.効能・効果
 ゴーシェ病I型の諸症状(貧血、血小板減少症、肝脾腫及び骨症状)の改善

2.薬の特長
1.対象疾患のゴーシェ病は、細胞の糖脂質水解酵素グルコセレブロシダーゼの遺伝的欠
損のため、その基質である糖脂質が臓器に蓄積し、主として肝・脾の腫大、骨髄・造血
器の障害、神経障害などを引き起こす進行性の疾患である。予後不良であり、多くの患
者は10歳以下の小児である。
2.本薬は、ヒト胎盤から抽出・精製されたβ−グルコセレブロシダーゼを酵素処理によ
って吸収性を高めた改良型酵素であり、ゴーシェ病患者における欠損酵素の補充療法と
して用いられる。
3.患者数は全世界で約5000人、国内では約50人と推定されている。
4.本薬は、平成5年11月15日に希少疾病用医薬品に指定されている。

3.臨床試験の結果
1.国内ではゴーシェ病I型患者6例を対象に臨床試験が実施された。有効性は、貧血の
改善、血小板数の増加、肝・脾腫の縮小、骨症状の改善などを総合的に判定した結果、
全例有効(著明改善5例、軽度改善1例)であった。副作用は、蕁麻疹(1例)、嘔吐
(1例)が見られた。
2.海外(米国)ではゴーシェ病I型12例を対象に臨床試験が実施され、貧血の改善、
血小板数の増加、肝・脾腫の縮小、骨症状の改善が観察された。副作用は、静注部位の
不快感・腫脹及び灼熱感(7例)、悪寒(1例)、腹痛(1例)、吐き気・嘔吐(1例
)、発熱(1例)であった。

4.中央薬事審議会の答申
 本薬はヒト胎盤を原料としているが、胎盤提供者の血液検査が義務づけられていない
ため、ウイルス混入の危険性が考えられる。この点について中央薬事審議会において慎
重な審議が行われた。
 本薬の製造工程はウイルスを不活性化除去出来るように設計されていることから一応
の安全性は確保されている。ウイルスの除去を確認するために、4ロットの製剤につい
て高感度のウイルス核酸の検出法であるPCR法により、HIV、HBV及びHCVに
ついて試験を行った。その結果、HIVについて1ロットで陽性であったので、培養細
胞を用いたHIV感染試験を行ったところ、PCR試験陽性のロットについても陰性で
あった。このため、HIVの核酸の混入は認められるものの、製造工程において不活性
化され感染性を失っているものと考えられた。
 本薬はこれまで全世界で1500名以上の患者に投与されているが、ウイルス感染例
は報告されていないこと、また、これまで治療薬のない重篤な疾病であり本薬による効
果が期待されていることから、以下の条件において承認して差し支えないとのこととな
った。
1.HIV、HBV及びHCVについて、PCR法による試験を行い、陽性のロットは供
給しない。
2.インフォームドコンセントを徹底し、本薬投与によるメリットが危険性を上回る場合
のみ使用するようにする。
3.投与に際し、患者の了解のもとに主要なウイルス抗体を定期的にモニターする。
4.全世界での本薬の使用によるウイルス感染症の情報の収集に努め、迅速に提供するよ
うにする。
5.現在開発中の遺伝子組換え製剤に出来るだけ早く切り替えられるように努める。
 1の条件は世界的にもっとも厳しい承認条件である。なお、5の遺伝子組換え製剤は米
国において生産されているが、生産設備が小規模のため生産量が少なく、米国、イスラ
エル、スウェーデンの一部の患者に供給されており、現在、大規模生産に向けて設備を
調整中である。

5.既存薬との比較等
1.同種効能の医薬品はない。
2.対症療法としての脾臓摘出や、骨髄移植がある。

6.諸外国での承認等
1.アメリカ、イスラエル、オーストラリア、欧州医薬品委員会、オランダ、ドイツ、フ
ランス、イギリス、ポルトガル、イタリア、ニュージーランドで承認されている。
2.遺伝子組換え製品はアメリカ、イスラエル、スウェーデンで承認されている。

参考資料2                中央薬事審議会常任部会で審議された新医薬品の概要

  成分名  乾燥BCG(膀胱内用)
  販売名  [製剤] イムノブラダー膀注用   (日本ビーシージー製造株式会社)
 <製造承認>

1.効能・効果
   表在性膀胱癌、膀胱上皮内癌

2.薬の特徴
    本薬の本質は、結核の予防に用いられるBCGワクチンと同じものである。
    本薬を生理食塩液に溶解し、膀胱内に挿入した尿道カテーテルを通じて膀胱内投与
(
 通常、週1回8週間)する。
    本薬の抗腫瘍効果は、本薬が炎症反応を誘発し、これによってマクロファージが腫
瘍
 組織に浸潤し、腫瘍細胞を障害することによるものと考えられている。

3.臨床試験の結果の要点
  原発性又は再発性表在性膀胱癌及び膀胱上皮内癌(CIS)を対象とした第II相試
験
 の有効率(CR(腫瘍が完全消失)+PR(腫瘍が50%以上消失)の率)は89.
3
 %(CR率:67.3%、PR率:22.0%)であった。
  なお、無作為比較試験による再発防止投与試験が行われた投与群と対照群の間には
有
 意差がなく、本薬による再発防止効果を示す結果は得られていない。
    副作用については、第II相試験を通して症例の約80%で発現しており、排尿痛、
頻
 尿、肉眼的血尿、排尿困難等の尿路系の副作用及び発熱がその大部分を占めている。
ま
 た、臨床検査異常としては、尿蛋白、尿潜血、尿沈渣(WBC、RBC)などが30
〜
 60%生じている。
  なお、臨床試験での投与例244例中BCG感染が疑われる症例が18例(死亡例
2
 例を含む。)に認められた。このようなことから、使用上の注意において、次のよう
な
 内容を含む警告欄を設けるともに、本薬の投与に際しては患者等にインフォームド・
コ
 ンセントを図る旨の注意が行われている。
  ・本剤の投与は緊急時に十分措置できる医療施設及び膀胱癌の治療に十分な経験を持
つ
 医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与すること。
  ・本剤の臨床試験において、咳嗽及び皮疹等を伴ったアナフィラキシー様症状に起因
し
 たと考えられる死亡例が認められているので、このような症状が現れた場合は本剤の
投
 与を中止し、直ちに抗ヒスタミン剤又はステロイド剤の投与とともに抗結核剤による
治
 療が必要である。

4.中央薬事審議会の答申
  今回、本薬による「表在性膀胱癌、膀胱上皮内癌」の効能・効果が確認されたとして
  、中央薬事審議会より厚生大臣あて答申がなされた。

5.既存薬との比較等
  現在、同一の作用機序を有する医薬品は国内では承認されていない。
  なお、膀胱腫瘍に対する膀胱内注入療法には、次のような既存のがん化学療法剤を
 用いる方法がある。
  (参考)
   ファルモルビシン注(協和発酵)、アドリアシン注(協和発酵)、キロサイド注(日本新薬)、
   マイトマイシン協和S(協和発酵)、テスパミン注射液(住友製薬)

6.諸外国での承認状況等
   同種の製剤について、米国においてTheraCysTM(コンノート研究所)及びTICETM
  BCG(オルガノンテクニカコーポレーション)が、カナダにおいてImmuCyst(コンノート研究所)がい
  ずれも1990年に承認されている。
    その他、イギリス、フランス、ドイツ等でも承認されている。

参考資料3                中央薬事審議会常任部会で審議された新医薬品の概要

  成分名  クエン酸タンドスピロン
  販売名  [原体] セディール原末、セディール原末住友
         (住友化学株式会社、住友製薬株式会社) <製造承認>
       [製剤] セディール錠5、同10(住友製薬株式会社)<製造承認>

1.効能・効果
  神経症における抑うつ、恐怖
 心身症(自律神経失調症、本態性高血圧症、消化性潰瘍)における身体症候ならびに
 抑うつ、不安、焦燥、睡眠障害

2.薬の特徴
  本薬はセロトニン1A受容体作動薬であり、アザピロン誘導体としては本邦初、世界
 的にもブスピロンに続いて2番目である。ベンゾジアゼピン系抗不安薬のような中枢
 抑制や三環系抗うつ薬のような抗コリン作用の軽減が期待できる。

3.臨床試験の結果の要点
 <神経症に対するジアゼパムとの第III相比較試験>
 ・全般改善度の解析では、本剤は神経症に対してジアゼパムと同等の改善効果がある
  ことが示された。
 ・症状別改善度の解析では、本剤はジアゼパム群に比べ抑うつ気分症状で有意に高い
  改善を示した。
 ・薬物依存性を示す訴えはジアゼパムに比べて有意に低かった。また、三環系抗うつ
  薬でみられるような抗コリン作用による副作用(口渇、便秘、排尿障害等)は1%未
  満であった。
 ・重症度別改善度の解析では、重症度の高い例での本剤の改善効果はジアゼパムに比
  べて有意に低かった。
  本剤はジアゼパムに比べて中枢抑制作用(鎮静作用)が弱いため、重症例、罹病期
  間の長い例、前治療のある例には本剤の効果が見られないことがあり、この点につい
  て使用上の注意に反映している。
  また、ベンゾジアゼピン系誘導体から切り替えて使用する場合に、ベンゾジアゼピ
  ン系誘導体の退薬症候が引き起こされ、症状が悪化することがあるので、この点につ
  いても使用上の注意に記載している。

4.中央薬事審議会の答申
  今回、本薬による「神経症における抑うつ、恐怖/心身症(自律神経失調症、本態
  性高血圧症、消化性潰瘍)における身体症候ならびに抑うつ、不安、焦燥、睡眠障害
 」の効能・効果が確認されたとして、中央薬事審議会より厚生大臣あて答申がなされ
 た。

5.既存薬との比較等
  現在、同一作用機序の医薬品は国内では承認されていない。
 (参考)
 ・ブスピロン(ブリストルマイヤーズ スクイブ):承認国 独(85),米(86),豪(86),ブラジル
  (87),韓国(87),仏(88),スペイン(88),南ア(88),英(88),ベルギー(89),伊(90)
 デンマーク(92)

6.諸外国での承認状況等
 海外における開発は行われていない。

参考資料4                         放射性医薬品基準について

1 制度概要
  薬事法(昭和35年法律第145号)第42条第1項の規定に基づき、厚生大臣は
  生物学的製剤、抗菌性物質製剤その他保健衛生上特別の注意を要する医薬品につき、
 中央薬事審議会の意見を聴いて、基準を設けることができる。
  放射性医薬品基準は、放射性医薬品のうち体内に用いるものについて定められた基
  準で、通則、製剤総則、一般試験法、医薬品各条の部からなる。医薬品各条の収載品
 目数は、現在49品目であるが、今後流通する可能性がない6品目を削除するため、
 改正後は43品目となる。

2 改正経緯
  放射性医薬品基準は、昭和34年に定められたもので、過去4回(昭和41年、4
  6年、54年、60年)に全面改正を行っている。また、新規有効成分を含有する放
  射性医薬品の承認の際には、医薬品各条の追加を随時行っており、平成4年〜平成8
  年には、10品目の追加が行われた。
  今回の全面改正は、平成7年12月より中央薬事審議会の放射性医薬品調査会で審
  議され、その後、医薬品特別部会及び常任部会における審議を経て答申に至ったもの
  である。

3 改正の要点
  通則:  計量の単位、容器の規定等について、日本薬局方との統一をはかる。
       新しい単位記号を追加する(ギガベクレル、シーベルト等)。
  製剤総則:貯法を「別に規定するもののほか、冷所」から、「別に規定するものの
         ほか、なるべく室温」に変更する。
         注射剤について、エンドトキシン試験を設ける。
  一般試験法: 液体クロマトグラフ法、鉄試験法、油脂試験法を追加する。
         エンドトキシン試験法については、日本薬局方のゲル化法を準用す
                  る。
  医薬品各条: 一部のテクネチウム製剤に規定されていた動物を用いた試験(体内
動
                  態試験)を削除する。
         有効期間は、個々の承認において規定し、基準からは削除する。
         一部の品目について、基準名を変更する(p-→4-、メタ→3-、m-→3-
)

    問い合わせ先 厚生省薬務局審査課
     担 当 森(内2789)
          電 話 (代)[現在ご利用いただけません]


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