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                             平成8年版厚生白書の特徴

I.厚生白書の特色

  《キ−ワ−ド》

    ο少子・高齢化
     ο人口転換期世代
     ο家族の多様化
     ο女性の社会進出と男女の役割分担意識の変化
     ο高齢者の世紀
     ο家族の変容に対応し個人の尊厳と自由を確保するための社会保障制度の確立
     ο効率的で公平な社会保障制度の確立

 1)「家族と社会保障」をテ−マに

   −戦後50年が経過し、家族の姿が変容する中で、新たなニ−ズに対応した社
   会保障制度の確立が求められている。平成8年版厚生白書は、「家族と社会保
   障」をテ−マとして取り上げ、家族との関わりにおける社会保障制度の意義を
   明らかにした。厚生白書において、総論として社会保障をテ−マに取り上げる
   のは昭和63年版以来7年ぶりである。−

 2)家族の変容について幅広いデ−タに基づく客観的な分析

   −出産、結婚、夫婦関係、離婚・再婚、子ども、高齢者等について、幅広くデ
   −タを集め、戦後から現在に至るまでの家族構造の変遷について客観的な分析
   を行った。−

 3)縦軸として、戦後の社会保障制度の歩みを家族の視点から紹介

   −戦後日本の社会経済の歩みとともに、現在に至る社会保障制度の発展過程を
   家族の視点から紹介し、今後の施策展開における課題を提示。特に、家族が多
   様化し、育児及び介護支援策の必要性が高まっていることに鑑み、近年の介護
   ・育児支援施策の沿革についても詳しく紹介した。−

 4)横軸として、「世界の社会保障制度」を記述

   −昭和52年以来本格的に「世界の社会保障制度」を取り上げた。欧米諸国に
   おいては、効率的で安定的な社会保障制度確立のための努力が行われており、
   わが国の社会保障制度の在り方を考える上で参考となることが少なくない。ま
   た、「家族と社会保障」を考える上で有益であるとの観点から、アジア諸国の
   社会保障制度についても取り上げた。−

 5)高齢者介護保険制度と少子化に対応した育児支援策に焦点

   −高齢者介護保険制度の創設に向けた動きについて、平成8年4月の老人保健
   福祉審議会の報告まで直近の動きをフォロ−。育児支援策についても詳細に記
   述し、特に少子化の問題について、その影響を含め本格的に取り上げた。−

 6)新たな社会保障制度の確立の必要性を提示

   −家族の変容や社会経済条件の変化に対応し、高齢者介護等の新たなニ−ズに
   対応した社会保障制度を構築するためには、既存の制度の枠組みを大胆に見直
   し、効率的で公平な社会保障制度を確立する必要性を提示した。−

 7)第1編第2部「主な厚生行政の動き」も問題意識に沿った記述

   −第2部も、「障害者施策の新たな展開」、「社会経済の変化に対応した年金
   制度の確立」、「エイズ問題への取組み」、「戦後五十年を迎えた援護施策」
   、「災害対策の再編成」等にみられるように、厚生行政の動きに関する平板な
   報告ではなく、問題意識に沿った記述とした。−

 8)その他

   −第1部では、図表を多く掲載して家族の変容が目で見てわかるようにした。−
   −コラムでは「育児などの無償労働の評価」、「社会保障制度と私的扶養の関
      係」など新たな視点や課題を提起した。−
   −表・裏表紙、各編・各部・各章の冒頭の絵は、各種コンク−ルで入選した児
      童の描いた絵を用いている。−

II.メディアの多様化

 1)インターネットへの掲載

   −厚生白書の概要版をインターネットに掲載した。(国立がんセンターのホー
      ムページの中の「厚生省関連の情報」に掲載〔アドレス http://www.ncc.go.
      jp/mhw/0sj/indexj.html〕)−
       ゼロ

 2)CD−ROM版厚生白書の作成

   −初めてCD−ROM版厚生白書を作成し、市町村別基礎的デ−タなど本には
      ない情報を盛り込んだほか、用語の検索やデ−タの加工などCD−ROMなら
      ではの機能を活用出来るようにした。−

 3)ビデオの作成

   −第1部のテ−マ「家族と社会保障」を映像でわかりやすく紹介できるよう、
      中学生の目を通して家族と社会保障の関わりを考える厚生省広報ビデオ「小春
      ちゃんちの人々」を作成した。−

               平成8年版厚生白書の概要

1.第1部「家族と社会保障−家族の社会的支援のために−」の構成とねらい

 (1)第1章「戦後日本の家族変動−戦後、家族はどのように変容したか−」

   第1章では、戦後、我が国の家族がどのように変容し、現在どのような状況に
  あるかを、客観的なデータに基づき紹介した。結婚、出産、離婚・再婚といった
   家族の形成・変動を表す事柄のみならず、その背景にある人口構造や世帯構造の
   変化、さらには女性の社会進出などを含め、戦後50年を経過した今日、我が国
  の家族及びこれに関連する事柄がどのように変化してきたかを出来るかぎり幅広
   く提示した。
   まず、第1節では、「人口転換期世代」によって我が国の家族形態の変容が引
   き起こされ、多世代同居世帯が減少した反面、核家族世帯や単独世帯が増加し、
   家族の小規模化・家族形態の多様化が進むとともに、共稼ぎ世帯や単身赴任の増
   加、離婚・再婚の増加等家族の姿も多様化していることを指摘している。特に、
   女性の社会進出は、家族の姿のみならず、男女の役割分担意識も変化させつつあ
   り、男女がどのような形で社会に関わっていくかは、今後の大きな課題となって
   いる。

     次に、第2節から第5節にかけて、人間の誕生であると同時に家族の構成員の
    誕生でもある出生構造の変化から始め、新しい家族の形成である結婚、そして結
    婚した後の夫婦関係、さらには家族変動の要因である離婚・再婚がどのように変
    化してきたかを、国際比較を交えながら概観している。特に、第2節では、近年
    急速に進んでいる出生率の低下に焦点を当て、その要因が結婚の減少にあること
    を明らかにしている。

       その上で、第6節では、家族の重要な構成員であるとともにこれからの少子
     ・高齢社会を担う子どもと家族及び子育てをめぐる状況について述べている。

     さらに、戦後の家族の変容は、高齢者に最も大きな影響を及ぼした。第7節で
    は、国民の4人に1人が高齢者という状態が続く「高齢者の世紀」たる21世紀
    を目前に控え、我が国特有の高い同居率が低下し、老親扶養に関する意識も変化
    する中で高齢期の生活の支えは年金等の社会的扶養が中心となっており、経済的
    には高齢者世帯は若齢と比べても遜色がないこと等が示されている。老後の最大
    の不安は、病気や介護の問題となっている。

 (2)第2章「戦後の社会経済の変化と社会保障制度の発展」

     第2章では、戦後の社会経済の変化と社会保障制度の発展過程をたどり、それ
    らと家族との関わりを概観している。
     我が国は、敗戦の混乱からめざましい経済発展を遂げ、世界屈指の経済力を持
    つに至り、国民の生活水準も著しく向上した。しかし、戦後の経済成長は、人口
    の都市部への集中を生み、地域間格差を拡大するとともに、国民のサラリーマン
    化をもたらした。これは家族の在り方にも大きな変化をもたらし、家族の扶助機
    能が低下する中で、社会保障制度への要望は高まっていくことになる。

     社会保障制度も戦後の混乱期から立ち上がり、皆保険・皆年金を始めとする制
    度の充実・発展を遂げていく。しかし、オイルショックを契機として高度経済成
    長はかげりをみせ始め、また、高齢化の急速な進展は分立した制度の枠組みの見
    直しを避けられないものとした。このような状況の下、老人保健制度や基礎年金
    制度の創設等の改革が行われることになるが、近年における急速な少子・高齢化
    の進展は、高齢者の介護及び少子化に対応した育児支援という社会保障制度の新
    たな課題を提起している。

 (3)第3章「少子・高齢社会に対応した新たな社会保障制度の確立に向けて」

     第3章では、家族が変容する中で緊急かつ重要な課題となっている高齢者介
    護保険制度の創設及び少子化に対応した育児支援策のあり方という2つの課題
    を取り上げている。これらのいずれもが家族の小規模化、多様化等による家族
    機能の低下を補うためのものであり、戦後の家族の変容がその背景にある。

     これらの課題を概観した上で、最後に家族の機能を補完し、新たなニーズに対
    応するため、効率的で公平な社会保障制度を確立することの必要性と課題につい
    て述べている。既存の制度の枠組みを見直し、民間活力を生かすなどにより効率
    的な制度を構築するとともに、高齢者も応分の負担をするなど、社会保障に関す
    る負担のあり方などを見直し、公平性の確保に努めなければならない。目前に迫
    った21世紀に向けどのような社会保障制度を確立すべきかについて、国民的な
    議論が求められている。

2.第2部「主な厚生行政の動き」の概要

 (1)第1章「障害者施策の新たな展開」

   第1章では、障害者施策をとりまく現状を紹介した上で、昨年12月に策定さ
  れた障害者プランの意義、内容及び策定に至る経緯並びに昨年5月に成立した精
  神保健福祉法の施行について詳細を紹介した。また、今後の課題として、ア)障
  害者保健福祉施策を一体的に推進するための厚生省組織の改正、イ)障害者保健
  福祉施策をいかに地域において確実に実現していくか、について述べている。

 (2)第2章「社会・経済の変化に対応した年金制度の確立」

      第2章では、年金制度をとりまく社会・経済情勢、公的年金制度の意義と仕組
  み、平成6年年金改正の概要を紹介した後、公的年金制度の一本化、企業年金制
  度と国民年金基金の動向等年金制度をめぐる最近の動向に言及している。

 (3)第3章「よりよい医療を目指して」

     第1節「新しい時代の医療サービス」

   医療提供体制の今後の在り方について、本年4月に医療審議会で取りまとめら
    れた意見具申を紹介するとともに、医療提供体制整備のための施策として、患者
    に対する説明と医療機能の評価、患者の療養環境の整備、救急医療対策、へき地
    医療対策及び医療サービスを担う人材の確保と資質の向上について述べている。

  第2節「転機を迎えつつある医療保険制度」

   これまでの経緯を紹介したのち、昨年8月に取りまとめられた医療保険審議会
    中間とりまとめを取り上げ、医療保険制度をめぐる今後の動きについて言及して
    いる。

   第3節「国立病院・療養所の目指すべき方向」

   これまでの経緯及び昨年11月の「国立病院・療養所の政策医療、再編成等に
    関する懇談会」最終報告を踏まえ、国立病院・療養所の新たな展望を紹介してい
    る。

  第4節「医薬品・医療機器の安全性確保」

   医薬品・医療機器の安全性確保に向けた取組みと研究開発の振興、医薬分業の
    推進等の薬務行政をめぐる最近の動向を説明している。

  第5節「エイズ問題への取組み」

   感染予防対策、患者や感染者が安心して医療を受けられる体制づくり、研究・
    相談体制の確立等の取組みとともに、非加熱血液製剤による血友病患者のHIV
    感染問題に対する取組みについて本年4月までの動きを述べている。

  第6節「『らい予防法』の廃止」

    これまでのハンセン病予防対策の反省と本年3月のらい予防法の廃止等を紹介
    している。

  第7節「難病への新しい取組み」

   これまでの難病対策の見直しの必要性と対策の新たな展開について言及してい
    る。


(4)第4章「生活の安全性と快適さを求めて」

   第1節「増えつづけるごみへの取組み」

    一般廃棄物をめぐる現状と課題、リサイクルの推進、廃棄物処理施設の整備、
    産業廃棄物対策及び合併処理浄化槽の整備促進について述べている。

   第2節「安全でおいしい水の確保」

   地震・渇水につよい水道づくり、安全で良質な水の供給確保、水道に関する規
    制緩和等について紹介している。

   第3節「多様化時代の『食』の安全」

   「食」をめぐる最近の動向、「食」の多様化時代に対応した最近の制度改正及
    び今後取り組むべき課題について記述している。


(5)第5章「急速に進む技術の進歩と国際協調」

      厚生科学研究の進展と情報化の推進とともに、政策強調、保健医療分野の国際
    協力及び第4回世界女性会議(北京会議)の開催等女性の地位向上に向けての国
    際的動向について説明している。

(6)第6章「戦後五十年を迎えた援護施策」

  戦後五十年を迎えた、戦傷病者戦没者遺族に対する援護施策等について紹介して
  いる。

(7)第7章「災害対策の再編成」

  阪神・淡路大震災に対する厚生省のこれまでの取組みとこれを踏まえた災害対策
  の再編成について述べている。

3.第3部「世界の社会保障制度」

    以下の国々について、社会保障制度の概要のほか、高齢者施策及び児童・家庭施
  策を重点的に紹介した。また、それぞれの国が抱える社会保障制度の課題も記述し
  ている。

(1)第1章「欧米諸国の社会保障制度」

  フランス・ドイツ・イタリア・スウェーデン・イギリス・アメリカ

(2)第2章「アジア諸国の社会保障制度」

  インドネシア・マレーシア・フィリピン・韓国・タイ

4.第2編

  制度・施策の体系を平易に解説した「概要」、基礎統計・資料を「詳細データ」
  、「詳細資料」として掲載している。

    I 厚生全般  II 保健医療  III 生活環境  IV 薬事  V 社会福祉・援護
      VI 児童福祉  VII 医療保障 VIII 年金保障 IX 老人保健福祉
      X 参考(1 成立した法律  2 厚生行政関連の動き  3 厚生省の機構
               4 年表  5 主な厚生統計調査一覧)

   問い合わせ先 厚生省大臣官房政策課調査室
      担 当 江口(内2256)、須田(内2258)
            電 話 (代)[現在ご利用いただけません]
                    (直)3595-2159


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