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                        狂牛病Q&Aの配布について

 牛海綿状脳症(いわゆる「狂牛病」)について、海外渡航者、一般市民からの問い合
わせに対応するため、別添の「狂牛病Q&A」を各都道府県、保健所設置市及び特別区
の衛生主管部局並びに全国の海空港の検疫所に配布した。
 このQ&Aは伝達性海綿状脳症に関するWHO専門家会議報告、英国の狂牛病諮問委
員会発表、専門書等に基づき作成したものである。

                              狂牛病に関するQ&A
・基本的事項に関する質問

  Q1  狂牛病(牛海綿状脳症:Bovine Spongiform Encephalopathies、以下「BSE
        」という。)とは、どのような病気か?

A  1996年4月2〜3日に開催された世界保健機関(WHO)の専門家会議の報告
  書  (「Report of a WHO Consultation on Public Health Issues related to Human
  and  Animal Transmissible Spongiform Encephalopathies 」以下「TSEに関する
  WHO専門家会議報告」という。)によると、BSEは、伝達性海綿状脳症
(Transmissible  Spongiform Encephalopathies 以下TSEという。)の一つとして
  、1986年に英国で初めて確認された牛の病気とされています。TSEとは、伝達
  性の因子と関係する病気のグループを指し、その本質についてはまだ十分に解明され
  ていません。


  Q2  BSEの原因は何か?

A  TSEに関するWHO専門家会議報告によると、BSEの伝達因子は、ウイルスに
  似た多くの特徴を示しますが、熱、紫外線、オゾン殺菌、化学的な不活化等に極めて
  抵抗性であることが通常のウイルスと異なっていると指摘されています。
    また、「スローウイルス感染とプリオン」(近代出版)によると、BSEの伝達因
  子は、これらの疾患に特異的なプリオン蛋白が認められることから、プリオンが原因
  とされています。


  Q3  ヒトや他の動物に似たような病気はあるのか?

A  TSEに関するWHO専門家会議報告によると、人の伝達性海綿状脳症には、散発
  性遺伝性、医原性のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、いずれも遺伝病である
  ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症侯群及び致死性家族性不眠症並び
  にパプアニューギニアの儀式的な食人と関係しているクールー病等があります。
    また、「スローウイルス感染とプリオン」(近代出版)によると、羊ではスクレイ
  ピー及びこれが他の動物に広がったものとして、ミンクの伝達性ミンク脳症などがあ
  ります。


  Q4  イギリスのBSE発生の原因はなにか?

A  TSEに関するWHO専門家会議報告によると、牛へのBSEの伝達は、スクレイ
  ピーに感染した羊肉及び骨粉を濃厚飼料として再利用し、牛に餌として与えたために
  起こったとされています。


  Q5  イギリス以外の国でBSEは発生しているか?

A  食糧農業機関(FAO)、国際獣疫事務局(OIE)、WHO発行による「ANIMAL
  HEALTH YEARBOOK 1994」によると1995年10月現在で、発生頭数の累計は、英国
  ( 144,793頭)、スイス( 118頭)、アイルランド(99頭)、ポルトガル(33頭)、
  フランス(11頭)の他、6カ国での発生が認められています。
    また、TSEに関するWHO専門家会議報告によると、イギリスはBSE発生率の
  高い唯一の国とされていますが、BSEの世界的な分布は明確に把握されていません
  。


  Q6  クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)とはどのような病気か?

A  人で主に中年以降に発症し、進行性痴呆、ミオクローヌス(持続時間が極めて短い
  、痙攣様の反復する動き)、錐体路・錐体外路症状(腱反射の亢進、筋緊張の異常な
  ど)を呈する予後不良の脳疾患です。
    クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)や、その遺伝性亜型であるゲルストマン・
  ストロイスラー症侯群及びパプアニューギニアのクールー病などでは、程度の差はあ
  るものの、いずれにおいても感染性を有する異常プリオン蛋白が脳の中に証明された
  ため、これが病因と推測されるようになり、「プリオン病」と総称されます。
  (平成8年4月11日食品衛生調査会の資料(厚生省保健医療局疾病対策課作成))


  Q7  イギリスにおいてCJDとBSEの関連性がなぜ疑われたのか?

A  英国の狂牛病諮問委員会の3月20日の発表及び英国の医学雑誌ランセット(1996
  年4月6日版)において、英国で新たに確認された10名のCJD患者について調査
  した結果、これらの患者は今まで確認されたタイプのCJDとは、発症年齢が若いこ
  と、臨床所見、従来のタイプのCJDで見られる典型的な脳波が見られないことなど
  から、異なるタイプのCJD(V−CJD)であることが確認されました。
    また、TSEに関するWHO専門家会議報告では、このV−CJDでは遺伝等の理
  由が考えられないことから、狂牛病とV−CJDとの関連について直接的な証拠はな
  いものの、現時点においては、89年の狂牛病感染部位の使用禁止以前におけるBS
  E病原体への曝露(exposure) が、発病と関連している可能性が高いとされているた
  めです。


  Q8  BSEや羊のスクレイピーは人に感染するのか?

A  TSEに関するWHO専門家会議報告では、BSEと人のV−CJDの間には、明
  確な関連性はないとしながらも、状況証拠としてはBSE病原体への曝露(exposure)
  がV−CJDの原因である可能性があるため、更なる調査を急ぐべきであるとされて
  います。
    また、羊のスクレイピーについては、「スローウイルス感染とプリオン」(近代出
  版)によると、文献的には18世紀初期からその発生が記録されているにもかかわら
  ず、スクレイピーとCJDの間では地理的分布が一致せず、スクレイピーが完全に撲
  滅された国でもCJDが発生していることや、スクレイピーが発生し、かつ羊の肉や
  脳をよく食べる国でCJDが多いとの疫学的な報告がないことから、現時点では、羊
  のスクレイピーがヒトへ感染してCJDを起こすことについては、きわめて考えがた
  いとされています。


・食品に関連する質問

  Q9  牛肉やその加工品はイギリスから輸入されているのか?

A  平成8年3月25日EU委員会は常設獣医委員会を開催し、英国産牛肉等について
  すべてのEU加盟国に対する輸出禁止措置を採択し、27日のEU委員会において、
  英国から他の同盟国及び第3国への牛肉等の輸出の禁止を決定しました。
  厚生省では、同年3月26日以降英国産の牛肉及びその加工品については輸入を自
  粛するよう検疫所を通じ輸入者の指導を行っています。また、それ以前に既に輸入さ
 れたものについては平成8年4月11日付で食されることのないよう、各都道府県等
 に対し指示をしています。
  なお、ここでいう加工品とは骨粉、ゼラチン、ケーシング(※)等も含まれています
 。
  また、農林水産省においても、英国からの生きた牛や英国本島からの牛肉について
 のこれまでの輸入禁止措置に加え、3月27日からは、今まで英国から輸入が可能で
 あった下記の畜産物の輸入を禁止しています。
      英国本島      :牛由来ソーセージ・ハム・ベーコン、加熱処理牛肉・
           牛臓器、牛精液、反芻動物由来の肉骨粉等
      北アイルランド:牛肉及び牛臓器、牛由来ソーセージ・ハム・ベーコン、
           加熱処理牛肉・牛臓器、反芻動物由来の肉骨粉等

    ※ケーシング:ここでいうケーシングとは、コラーゲンより作られた可食性の食用
                包装材で、主にソーセージの被覆に用いられています。


 Q10 輸入禁止措置以前にイギリスから牛肉やその加工品は輸入されていたのか?

A   英国本島からの牛肉、牛臓器については、家畜伝染病予防法に基づき農林水産省
  において1951年以来輸入禁止となっていましたが、北アイルランドからの牛肉及び
  牛臓器については輸入は可能でした。
   また、加工品については輸入禁止の対象とはなっていませんでした。
      なお、厚生省の調べによると平成7年においては、北アイルランドから牛胃が約
  160トン、牛舌が約16トン、牛横隔膜が0.9トン、英国本島からコラーゲンケーシン
  グが約3トン、粉末牛気管が約8トン、牛骨粉が約180トン、プロテインが約20ト
  ン輸入されていました。また、平成8年では3月25日までに北アイルランドから
  牛胃が約88トン、コラーゲンケーシングが約3トン、英国本島から粉末牛気管が約
  4トン、牛骨粉が約6トン、ゼラチンが約3トン輸入されていました。


 Q11  イギリスから輸入された牛肉は危険ではないのか?また、イギリスから輸入さ
   れた牛肉が日本人の口に入ることはないのか?

A  BSEとVーCJDとの関連については、感染牛との接触がVーCJDとの発病
  と関連性が高いとの英国の狂牛病諮問委員会からの声明が出されたのみであり、牛
  肉等を摂食することにより、CJDが発症するとの報告はないため、現時点では食
  品衛生上の問題は確認できていません。(平成8年3月26日厚生省公表資料)
   また、TSEに関するWHO専門家会議報告においても、その関連性について明
  確ではないとしています。
     厚生省においては平成8年3月26日よりに英国からの牛肉加工品等の輸入の自
  粛を要請し、4月11日には各都道府県に対しこれらが食されることのないよう指
  導を行うよう通知しました。
   また、農林水産省においては平成8年3月27日に英国本島及び北アイルランド
  からの牛肉加工品等について輸入禁止の措置を行いました。このため、現在日本に
  おいては英国産の牛肉加工品等の販売はなされていません。


 Q12 牛由来の食品や羊由来の食品からはCJDに感染する事はないのか?


A   平成8年3月20日英国農業大臣の諮問機関である狂牛病諮問委員会において、
  発症年齢が従来のCJDと比べ若年である等、従来のCJDとは異なるタイプのC
  JD(VーCJD)に罹患した10人の患者が確認され、BSE病原体への曝露(
  exposure)が発病と関連している可能性が高いとの声明が出されました。
   TSEに関するWHO専門家会議報告によると、牛へのBSEの伝達は、濃厚飼
  料中の汚染された羊及び牛の肉又は骨粉に由来するものであろうとしていますが、
  狂牛病とVーCJDとの関連については直接的な証拠はないものの、現時点におい
  ては、89年の狂牛病感染部位の使用禁止以前におけるBSE病原体への暴露(ex
  posure)が、発病と関連があるとすることが最も可能性が高いとされています。
   このため、BSEとVーCJDの早急なる調査が必要であると報告されています
  。



 Q13  乳製品からは感染することはないのか?

A  TSEに関するWHO専門家会議報告によると、動物や人の海綿状脳症において
  も乳はこれらの病気を伝達しないこととされており、したがって、BSEの発生率
  が高い国であっても、乳及び乳製品は、安全と考えられるとされています。
     なお、CJD患者の母乳をマウスの脳内に接種したところ、CJDと類似の症状
  を呈したとの研究報告がありますが、この結果をもって直ちに母乳による経口伝達
  が証明されたものではないとしています。(平成8年4月23日厚生省公表資料)


 Q14  イギリスに旅行した際に牛肉を使用した料理を食べたがCJDに感染すること
   はないのか?

A  TSEに関するWHO専門家会議報告によると、狂牛病とVーCJDとの関連に
  ついて直接的な証拠はないものの、現時点においては、89年の狂牛病感染部位の
  使用禁止以前におけるBSE病原体への暴露(exposure)が、発病と関連があると
  することが最も可能性が高いとされています。
      しかし、我が国において現在のところ、VーCJDの患者は報告されていません
  。なお、本年度からクロイツフェルト・ヤコブ病の緊急全国調査が行われることと
  なっています。


 Q15  現在イギリスで流通している牛肉及び羊肉やその加工品を食べても安全
   なのか?

A    TSEに関するWHO専門家会議報告によると、狂牛病とVーCJDとの関連に
  ついては直接的な証拠はないものの、現時点においては、89年の狂牛病感染部位
  の使用禁止以前におけるBSE病原体への暴露(exposure)が、発病と関連がある
  とすることが最も可能性が高いとされています。
    平成8年4月3日EU緊急農相理事会の決定において、狂牛病の発生の可能性の
    高い30ヶ月齢以上の英国牛については、人や動物の食物連鎖に入れたり、化粧品
    及び医薬品の原料としては使用しない等の措置が決定され、英国では30ヶ月齢以
    上の数万頭以上にのぼる牛の処分が決定されるなどの安全対策を打ち出しています
    。


 Q16  現在イギリスで流通している乳・乳製品を食べても安全なのか?

A   Q13でも述べたとおり、TSEに関するWHO専門家会議報告によると、BS
  Eの発生率が高い国であっても、乳及び乳製品からの感染のおそれはないとされて
  います。

・行政対応に関する質問

 Q17  日本ではBSEに対してどのような対策を打ち出し、厚生省では食品衛生上ど
   のような対応をとったのか?

A   平成8年3月25日欧州委員会は常設獣医委員会を開催し、すべての英国産牛肉
  及び牛肉加工品等についてすべてのEU加盟国に対する輸出禁止を採択しました。
   厚生省ではこのような状況を重視し、3月26日付で英国産の牛肉及びその加工
  品については輸入を自粛するよう検疫所を通じ輸入者の指導を行っています。
   また、4月11日に食品衛生調査会を開催し、英国産牛肉加工品等については食
  されることのないよう指導をすることが適切であるとした厚生大臣あて意見具申を
  受け、各都道府県等に対し英国から既に輸入された牛内臓等については、廃棄する
  ことを含め、食されることのないよう適切な措置をとるよう関係営業者を指導して
  います。

 Q18 日本ではBSEに対してどのような法的な対応がとられるのか?

A   日本ではこれまでにBSEの発生の報告はありませんが、TSEに関するWHO
  専門家会議報告によるサーベイランスを行うため、と畜場施行規則の一部の改正を
  行い、検査対象疾病に「伝染性海綿状脳症」を追加しました。この措置は、農林水
  産省の家畜伝染病予防法において「伝染性海綿状脳症」を「家畜伝染病」に準ずる
  伝染病として政令指定を行うことと連携し行われました。

 Q19 BSEについての厚生省関係の問い合わせ先は?

A   食品衛生に関連すること
    厚生省生活衛生局乳肉衛生課          TEL [現在ご利用いただけません](内)2474

      医薬品に関連すること
        厚生省薬務局安全課                  TEL [現在ご利用いただけません](内)2756

      CJDに関連すること
        厚生省保健医療局疾病対策課          TEL [現在ご利用いただけません](内)2361

      問い合わせ先  厚生省生活衛生局乳肉衛生課
            担 当  加地(内2473)
            電 話  (代)[現在ご利用いただけません]
                 食品保健課検疫所業務管理室
            担 当  道野(内2464)


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