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           看護職員の養成に関するカリキュラム等改善検討会中間報告NO.1

      看護職員の養成に関するカリキュラム等改善検討会中間報告

           平成8年3月28日

    看護職員の養成に関するカリキュラム等改善検討会

            目   次

はじめに ……………………………………………………………………   1
第1  主な改正の内容 ……………………………………………………  3
第2  カリキュラム改正の概要(第1の1、2、3関係) …………   4
  I   看護婦課程カリキュラム …………………………………………   4
    1  看護婦(士)教育の基本的考え方 ……………………………   4
    2  改正の基本的方向 ………………………………………………   4
  II  保健婦課程カリキュラム …………………………………………   6
    1  保健婦(士)教育の基本的考え方 ……………………………   6
    2  改正の基本的方向 ………………………………………………   7
  III 助産婦課程カリキュラム …………………………………………   7
    1  助産婦教育の基本的考え方 ……………………………………   7
    2  改正の基本的方向 ………………………………………………   8
第3  統合カリキュラムの概要  (第1の4関係) …………………   8
  I   統合カリキュラムの必要性 ………………………………………   8
  II  統合カリキュラムの内容 …………………………………………   9
  III 保健婦・看護婦統合カリキュラム ………………………………   9
  IV  助産婦・看護婦統合カリキュラム ……………………………… 10
第4  指定基準等の改正について(第1の5、6、7関係) ……… 10
  I   専任教員 …………………………………………………………… 10
  II  養成所の長及び長を補佐する者 ………………………………… 11
  III 1学級の定員 ……………………………………………………… 11
  IV  養成所の施設・設備 ……………………………………………… 11
  V   実習施設 …………………………………………………………… 12
第5  適用の時期について ……………………………………………… 13
おわりに …………………………………………………………………… 13

参考
  I   検討会の過程における議論の内容 ……………………………… 15
  II  看護婦2年課程カリキュラムについて ………………………… 16
資料
 1看護婦課程・保健婦課程・助産婦課程・統合カリキュラム一覧表
 2看護婦・保健婦・助産婦養成所指定基準
はじめに

 平成6年12月にとりまとめられた「少子・高齢社会看護問題検討会」報告書におい
ては、我が国の看護をめぐる状況の変化として次のような点があげられている。(1) 高
齢化と長期慢性疾患患者の増加に伴って、在宅医療のニーズに対応した訪問看護サービ
スの拡充や人々のセルフケア能力を高める教育的な働きかけの必要性が高まってきたこ
と、(2) 医療の高度化・専門化の進展に伴って、看護には従来にもまして緻密な観察、
的確な判断と技術が求められ、また患者の精神的緊張や不安の緩和、患者や家族が自分
の意思を表現することの支援の必要性が高まってきていること、  (3) 18歳人口の急
激な減少と高学歴志向のなかで、看護の分野に優秀な人材を確保するためには、養成施
設を魅力あるものとする必要があること等である。これらの変化に対応していくために
は、看護職員の資質の向上を図ることが重要であり、そのための具体的方策の一つとし
て、看護基礎教育の充実が必要であると指摘されている。
 さらに、平成3年12月に策定された「看護職員需給見通し」については、平成6年
末の就業者数が約96万2000人となり、供給は順調に推移してきており、看護職員
確保の今後の課題としては、量的な確保のみならず質的な向上にも十分配慮していく必
要がある。

 一方、少子・高齢社会に対応するため、近年保健・医療・福祉の分野においてはさま
ざまな改革の動きが見られる。
 平成6年には地域保健法及び同法に基づく基本指針が制定された。地域保健を推進す
る、最も基礎的な自治体である市町村は、住民の多様なニーズに対応した生活者主体の
サービスを提供していくため、身近で利用頻度の高い保健・医療・福祉サービスを一元
的に提供するとともに、ケア・コーディネーション機能の充実等を図ることとされてい
る。また、都道府県は広域的な保健活動の企画やケアシステムの構築等の調整機能及び
専門的な業務の推進等の役割を担うこととされている。現在、平成9年4月からの同法
の完全実施にむけ準備が進められているところであるが、地域保健対策を円滑に実施す
るためには人材確保及び資質の向上が求められている。 高齢者に対する保健福祉施策
は、平成元年12月に策定された「高齢者保健福祉推進十か年戦略」(いわゆる「ゴー
ルドプラン」)に基づき推進されてきたが、高齢者介護施策のさらなる充実を図るため
、平成6年12月に「新ゴールドプラン」が策定され、実施に移されている。新ゴール
ドプランにおいては、訪問看護ステーションを平成11年度末までに全国で5000か
所を整備することが目標とされており、平成8年1月末現在では1120か所が指定さ
れ、その設置が急速に進められている。さらに保健・医療・福祉にわたる高齢者介護サ
ービスを総合的に提供する新たなシステムの制度化も検討されているところであり、介
護サ−ビスを担う人材の養成・確保、質の向上が重要な課題となっている。
 また、近年の国民の健康に対する意識の高まり、医療ニーズの多様化、高度化、医療
内容の専門化・複雑化に伴い、医師、看護婦等の医療を提供する者は、患者に対し医療
の内容について十分な説明を行うことが求められている。こうした状況を踏まえ、現在
関係審議会において検討が進められている医療法改正においては、医療提供に当たって
医師、看護婦等による患者への説明を位置付けることが検討されている。

 このように21世紀を目前に控えて、看護を取り巻く環境は急速に、しかも大きく変
化しており、看護職員の基礎教育においても科学的思考を基盤とした看護の実践力、保
健・医療・福祉全般にわたる広い視野、高い教養を備えた豊かな人間性を育てることが
必要とされている。
 本検討会は看護に対するこれらの社会的ニーズを踏まえ、「少子・高齢社会看護問題
検討会」における提言を具体化するため、看護婦等のカリキュラムの改善と看護婦等養
成所(以下「養成所」という。)の教員、施設・設備の基準の改善について幅広く検討
を行った。9回にわたる検討の結果、保健婦、助産婦、看護婦3年課程及び統合カリキ
ュラムならびに指定基準についての結論を得たのでここに報告する。
 なお、看護婦2年課程、准看護婦課程のカリキュラムや指定基準については「准看護
婦問題調査検討会」において准看護婦養成の在り方について検討が行われていることか
ら、その検討結果を踏まえ必要に応じ引き続き検討を行うこととする。
第1.主な改正の内容

 今回のカリキュラム及び教員、施設設備、実習施設等の指定基準の改正の主な内容は
以下のとおりである。

1 教育科目による規定から教育内容による規定に変更
  養成所が独自に教育科目を設定できるようにするため、科目名を指定せず教育内容
  で示し、カリキュラムの弾力化を図る。
2 教育内容の充実
  専門科目の教育内容として在宅看護論及び精神看護学を新たに設定する。
3 単位制の導入
  養成所が学生の自己学習能力を高める教育方法を工夫し、独自性のある教育ができ
  るよう、時間数だけの規定から単位制を導入した規定とする。
4 統合カリキュラムの提示
  施設内の看護と地域の看護とを視野に入れた看護サ−ビスを提供できる能力を有す
  る看護職員を育成するとともに、養成所の魅力を向上させるために、現行制度を前提
  として、3年6月以上で看護婦(士)と保健婦(士)又は助産婦の国家試験受験資格
 が同時に取得できる統合カリキュラムを提示し推進することとする。
5 専任教員の配置基準を学級担当から専門領域の担当へ変更教育体制の強化を図るた
 め、看護婦3年課程においては専任教員は専門領域を担当することとし、それに合わ
 せ教員数は現行の4人以上から8人以上とする。
6 施設設備の見直し
  必要性の低い施設設備の必置義務を緩和することにより、新たな看護のニーズに応
 えられる教育施設への転換、整備をすすめ、施設設備の面でも養成所の魅力を向上さ
 せる。
7 実習施設の充実と拡大
  実習施設の基準を病床規模の面からではなく、看護の質の面から規定することとし
 、また、訪問看護ステーション等看護の場の拡大に対応して実習施設を拡大する。

第2.カリキュラム改正の概要
          (第1の1、2、3関係)
I 看護婦3年課程
  3年間の修業年限で修得すべき能力について検討し、これに基づいて 必要な教育
 内容、単位数等を検討した。

 1.看護婦(士)教育の基本的考え方
 (1)人間を身体的・精神的・社会的に統合された存在として、幅広く理解する能力
   を養う。
 (2)人々の健康を、自然・社会・文化的環境とのダイナミックな相互作用及び心身
   相関等の観点から理解する能力を養う。
 (3)人々の多様な価値観を認識し、専門職業人としての共感的態度及び倫理に基づ
   いた行動ができる能力を養う。
 (4)人々の健康上の問題を解決するため、科学的根拠に基づいた看護を実践できる
   基礎的能力を養う。
 (5)健康の保持増進、疾病予防と治療、リハビリテーション、ターミナルケア等、
   健康の状態に応じた看護を実践するための基礎的能力を養う。
 (6)人々が社会資源を活用できるよう、保健・医療・福祉制度を総合的に理解し、
   それらを調整する能力を養う。

 2.改正の基本的方向
 (1)教育内容での表示
   養成所がそれぞれの実状に応じ弾力的に教育科目を設定できるようにするため、
  科目名を指定せず教育内容で示すこととする。
  ア 基礎科目
   ・幅広い人間理解と科学的思考力を高められるよう、「科学的思考の基盤」とし
    て従来の人文科学、自然科学、社会科学等の中から、人間と人間生活の理解」
    として、人間関係論、家族論、カウンセリング理論と技法、外国語等から選択
    して科目を設定できるようにする。
  イ 専門基礎科目
   ・ 学生が人体を系統だてて理解し、健康・疾病に関する観察力、判断力を強化
    できるよう、「人体の構造と機能」と「疾病の成り立ちと回復の促進」とし、
    従来の解剖生理学、生化学、栄養学、薬理学、病理学及び微生物学の内容を含
    むものとする。
   ・ 人々の社会資源活用に関するセルフケア能力を高めるために必要な教育的役
    割や、地域における関係機関等の調整を行う能力を強化するため、「社会保障
    制度と生活者の健康」とし、従来の公衆衛生学、社会福祉及び関係法規の内容
    を含むものとする。
  ウ 専門科目
   ・ 各看護学においては、看護の対象及び目的の理解、健康の保持増進及び疾病
    ・障害の看護の方法を統合して学べるよう従来の概論、保健、臨床看護の区分
    を外し各看護学名のみの教育内容による規定とする。
 (2)専門科目の充実
   ア 各看護学においては、各々の看護学の対象及び看護の特徴を学ぶこととし、
    共通的な内容は「基礎看護学」で学べるよう単位数を調整する。
   イ 在宅療養者に対する看護ニーズの増大に対応して、「在宅看護論」を設定す
    る。
   ウ 精神の健康の保持増進と精神障害者の看護を身につけるように従来の成人看
    護学の一部、精神保健の内容等を統合して「精神看護学」として設定する。
 (3)臨地実習の充実
   ア 病院での実習のみならず、看護が行われるあらゆる場で直接患者、家族等に
    接する実習を推進するため、「臨床実習」を「臨地実習」に改める。
   イ 専門科目で新たに設定した「在宅看護論」及び「精神看護学」についても臨
    地実習を規定する。
 (4)単位制の導入
     3年課程については、93単位(2895時間)以上を修得することとし、
    基礎科目13単位(360時間)、専門基礎科目21単位(510時間)、専門
    科目36単位(990時間)、臨地実習23単位(1035時間)以上を修得
    するものとする。
     単位数を定めるに当たっては、現在標準的に行われている授業時間数を勘案
    し、1単位の授業は45時間の学習を必要とする内容をもって構成することと
    する。授業の方法に応じ、当該授業による授業効果、授業時間外に必要な学習
    等を考慮して、次の基準により単位数を計算するものとする。
    1 講義及び演習については、15時間から30時間までの範囲を1単位とす
     る。
    2 臨地実習については45時間を1単位とする。
     なおこの基準は、保健婦課程、助産婦課程においても同様に適用するもので
    ある。

II 保健婦課程
  6か月以上の修業年限で修得すべき能力について検討し、これに基づいて必要な教
 育内容と単位数等を検討した。
 1 保健婦(士)教育の基本的考え方
 (1)人々の健康並びに疾病・障害の予防、発生、回復及び改善の過程を社会的条件
   の中で把えることができる能力を養うとともに、これらの人々を援助する能力を
   養う。
 (2)地域の人々が自らの健康状態を認識し、健康の保持増進を図るため健康学習や
   自主・自助グル−プ活動を実施し、また社会資源を活用できるよう支援する能力
   を養う。
 (3)地域に顕在している健康問題を把握するとともに、潜在している健康問題を予
   測し、それらの問題を組織的に解決する能力を養う。
 (4)保健・医療・福祉行政の基礎的知識を踏まえ、地域の健康問題の解決に必要な
   社会資源の開発や保健・医療・福祉サ−ビスを評価し調整する能力を養う。

 2 改正の基本的方向
 (1)「公衆衛生看護学」は市町村及び保健所を中心とした保健予防活動に焦点をお
   いた公衆衛生看護と在宅療養者に焦点を当てた継続看護とを含む「地域看護学」
   とする。
 (2)従来の「健康管理論」は「地域看護学」の活動論の一部を成すものと考え、こ
   れに統合する。
 (3)従来の「疫学」は「疫学・保健統計」(情報処理を含む。)とし、単位数を増
   加し内容の充実強化を図る。
 (4)臨地実習については、従来、地区活動論、家族相談援助論、健康教育論及び保
   健指導総論・各論の各科目ごとに時間数を定めていたが、これを統合して「地域
   看護学実習」として位置づける。
 (5)単位制の導入については、21単位(675時間)以上を修得することとし、
   地域看護学12単位、疫学・保健統計4単位、保健福祉行政論2単位、地域看護
   学実習3単位以上を修得するものとする。
III 助産婦課程
  6か月以上の修業年限で修得すべき能力について検討し、これに基づいて必要な教
 育内容と単位数等を検討した。
 1 助産婦教育の基本的考え方
 (1)妊産褥婦及び胎児・新生児の健康水準を診断し、妊娠・出産・産褥が自然で安
   全に経過し、育児がスム−ズに行えるよう援助できる能力を養う。
 (2)女性の一生における性と生殖をめぐる健康問題について、相談・教育・援助活
   動ができる能力を養う。
 (3)安心して子供を生み育てるために、個人及び社会に対して必要な地域の社会資
   源の活用や調整を行える能力を養う。

 2 改正の基本的方向
 (1)教育の弾力化を図り、科目設定の自由度を高めるため、従来の「助産概論」、
   「生殖の形態・機能」、「性と生殖に関する心理・社会学」及び「乳幼児の成長
   発達」の4科目を統合し、「基礎助産学」とする。
 (2)助産診断学・助産技術学は関連づけて学習できるよう、「助産診断・技術学」
   とする。
 (3)臨地実習については、従来、助産診断学、助産技術学、地域母子保健及び助産
   業務管理の各科目ごとに時間を定めていたが、これを統合して「助産学実習」と
   する。
 (4)正常分娩の取扱件数は10例程度を目安とし、分娩の自然な経過を理解し、分
   娩介助の実際を体験することを重視する。
 (5)単位制の導入については、22単位(720時間)以上を修得することとし、
   基礎助産学6単位、助産診断・技術学6単位、地域母子保健1単位、助産管理1
   単位、助産学実習8単位以上修得するものとする。

第3.統合カリキュラムの概要
          (第1の4関係)

 少子・高齢社会看護問題検討会報告書の提言を踏まえ、3年6か月以上で看護婦(士
)と保健婦(士)又は助産婦の国家試験受験資格を同時に取得できる統合カリキュラム
について検討を行った。

I  統合カリキュラムの必要性
 1 高齢者、障害者、慢性疾患患者等の増加に伴い、看護に対するニ−ズが施設のみ
  ならず地域にも広がってくると同時に、従来は主として地域で必要とされてきた社
  会資源の活用、保健医療福祉分野の他職種との調整、自主・自助グル−プ活動の支
  援等が病院等の施設内でも必要とされるようになってきた。一方、少子化・核家族
  化、女性の社会進出等により、子どもを産み育てる環境は大きく変化し、妊娠、出
  産、育児に対する人々のニ−ズも多様化している。
   こうした看護ニ−ズの変化を背景として、今後、看護職員には健康・疾病及び障
  害を生活や人々の生き方との関連の中で把握、判断し、適切な看護を提供できる能
  力を一貫した教育により推進することが求められている。
 2 少子化の進行とともに高学歴志向が強まる中で、将来においても安定して看護職
    員を確保するためには、養成所の教育を魅力あるものにすることが重要である。そ
    のための一方策として、看護婦養成所が保健婦養成所又は助産婦養成所を併設し、
    二つの国家試験受験資格を同時に取得できるような統合カリキュラムを履修できる
    こととし、総合的、効果的に学習できる養成所を設置することが求められている。

II 統合カリキュラムの内容
 1 修業年限は3年6か月以上とする。
 2 統合カリキュラムによる教育は、看護婦学校養成所の指定基準及び保健婦学校養
    成所の指定基準又は助産婦学校養成所の指定基準を満たすものとする。
 3 二つのカリキュラムを統合することにより、必要単位数を減少させ独自の教育内
    容を取り入れることができるものとする。

III 保健婦・看護婦統合カリキュラム
  看護婦3年課程カリキュラム93単位と保健婦課程カリキュラム21単位、合計1
  14単位のうち、111単位以上は統合カリキュラムにおいても学習するものとする
  。教育を統合することによって単位数を減少し得る例としては、以下のものがあげら
  れる。
 1 「保健医療福祉行政論」を「社会保障制度と生活者の健康」の中に統合する。
 2 「在宅看護論」を「地域看護学」の中に統合する。

IV 助産婦・看護婦統合カリキュラム
  看護婦3年課程カリキュラム93単位と助産婦カリキュラム22単位、合計115
  単位のうち、114単位以上は統合カリキュラムにおいて学習するものとする。教育
  を統合することによって単位数を減少し得る例としては、以下のものがあげられる。
 1 「基礎助産学」の一部を「人体の構造と機能」、「小児看護学」又は、「母性看
      護学」の中に統合する。


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