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              輸血用血液成分製剤と輸血後GVHD

輸血用血液成分製剤と輸血後GVHD

1  輸血後GVHDの報告状況
 (1) 輸血医療は、生命の危機に臨んで、他に代替する方法がないため、緊急にとらざ
  るを得ない医療である。
 (2) 安全課適正使用推進室に、マイクロサテライト診断法が確立された1993年
  以降現在までに29例の輸血後GVHD症例が報告されている(全例死亡)。担癌
  患者の手術や心臓手術などで輸血が必要と思われる状況において発生した症例が2
  5例であるが、担癌患者手術後の貧血などで使用されていた例もあった。
 (3) 全例、放射線照射が行われていない輸血用血液成分製剤が使用されていた。

2 これまでの輸血後GVHD対策について
 (1) これまでの日赤における対応
  ・ 日赤血液センターに照射装置を設置(国庫補助でリース、現在全国に74台あ
   り)。医療機関の希望により血液に照射を行って出荷している。
  ・ 輸血後GVHDについて使用上の注意、警告への記載を行った。
  ・ 輸血後GVHDについてのパンフレットなどによる紹介。

 (2)  これまでの厚生省における対応
   ア 照射装置設置の補助
   イ 通知指導により日本赤十字社における放射線照射行為は無許可製造とはみな
    さない旨通知
   ウ 照射についての保険適用
     先天性免疫不全症患者、骨髄移植後の患者、出生体重1500g未満の患者
    (但し生後60日までを限度とする)、人工心肺の使用を伴う心臓血管外科手
     術患者(但し手術当日に使用する輸血血液に使用する輸血血液について照射
     を行った場合)

3 今回の副作用調査会における症例報告等の評価等に基づく輸血後GVHD対策
 (1) 平成8年4月12日、中央薬事審議会の副作用調査会においてこれらの症例を検
 討した。手術時の患者ばかりではなく、貧血の治療などに輸血を行った患者などで輸
 血後GVHDが発現していることから、輸血を行う場合は適応を十分に考慮し、必要
 不可欠な場合にのみ必要な量に限って使用するよう医療関係者に注意を促す。
  また、全例が放射線照射を行っていない輸血用血液成分製剤の使用により発症して
 いることから、輸血後GVHD予防手段として放射線の照射が有効であり、可能な場
 合には実施すべきことを情報提供する。
  あわせて自己血輸血の採用を考慮するべきことを再度注意喚起する。
  なお、今回の措置は、出血により生命の危機に瀕するなど輸血の適応状況での未照
 射輸血用血液の使用については、何等言及するものではない。

  注意:照射された血液は寿命が短く、さらにカリウムを含むことから適応が狭い。
  (照射後はすぐ使用する必要がある。照射しない製品は21日間の保管が可能)

4 具体的には下記の対応を行う
 (1) 日本赤十字社
   輸血を行っている医療機関に対して輸血後GVHDに関する情報提供を繰り返し
  行ってきたが、今回改めて周知徹底するために緊急安全性情報を医療機関に配布し
    、輸血の特性、GVHDに関する注意と放射線照射についての啓発を行う。
   血液センターなどにおける放射線照射の充実を図る。
  また、放射線照射した輸血用血液成分製剤の承認取得を図る。
 (2) 日本輸血学会
  会誌による情報提供等による会員への輸血後GVHDに関する情報や放射線照射に
  ついての情報の普及啓発を改めて行う。
 (3) 保険局医療課
   「照射の必要があると医師が判断した場合」については、保険適用を実施する。
 (4) 薬務局審査課
   照射製剤の承認申請を日本赤十字社に指導し、迅速に承認する。
 (5) 薬務局安全課医薬品適正使用推進室
  ・ 緊急ファクスの発出(内容は緊急安全性情報とほぼ同じ。国が行う)
   全国医療機関から薬局を除いて施行
  ・ (1) 〜(4) の措置の依頼等
[参考]
1 輸血後GVHD
 (1) 症状
   輸血1〜2週間後に発熱・紅斑で発病し、続いて肝障害・下痢・下血などの症状
  が続き、最終的には骨髄無形成・汎血球減少症を呈し、致死的な経過(致死率
  約95%)をたどる病態である。輸血された血液中にあるリンパ球が、患者の骨髄
  ・皮膚、肝臓などの組織を攻撃することが原因である。
 (2) 輸血後GVHDを起こす可能性のある医薬品
   分裂増殖能力のあるリンパ球を含む全ての血液成分製剤(例:全血製剤、赤血球
  製剤、血小板製剤など)が、輸血後GVHDを起こす可能性を備えている。
 (3) 対応の方法
   いったん発症した輸血後GVHDに対しては確実な治療法がない。そのため輸血
  を考慮する場合には、輸血後GVHD発現の危険性と、生命維持的な措置、緊急避
  難的な状況などにおける輸血の効果および他の治療法の有無などを比較考量し、適
  応決定を行う。また、大量に輸血することによるリスクの増加を避けるため、必要
  量の投与に止める。
   また予防処置として15Gy以上50Gy以下の線量で照射することにより輸血
  後GVHDを減少させ得るので、照射に要する時間を許容できる場合には照射を行
  い、また供給者(日本赤十字社)に照射を求めるなどの対応を考慮する。また自己
  血輸血が可能な場合には、これを計画実施することが予防的対応となる。
 (4) ハイリスク・グループ
   輸血後GVHDのハイリスク・グループは、先天性免疫不全症、造血幹細胞移植
  患者、胎児・未熟児、胎児輸血後の交換輸血例、心臓血管外科手術例、担癌症例の
  外科手術例、近親者(親子、兄弟)からの輸血例とされている。
   また、ホジキン・非ホジキンリンパ腫患者、白血病などの造血器腫瘍の患者、強
  力な化学療法、放射線療法を受けている固形腫瘍を持つ患者、臓器移植を受け免疫
  抑制状態にある患者、採血後72時間以内の血液の輸血を受ける場合などは、放射
  線照射などにより輸血用血液に含まれるリンパ球を不活化することが望ましいとさ
  れている。
 (輸血後GVHD:Post Transfusion Graft VersusHost Disease、輸血後移植片対
 宿主病)

2 外国での放射線照射の取扱い
  米国では、医療機関において医師から特定の患者に輸血の処方がなされた場合、
 その処方に従った製品に血液銀行において24Gyの照射を行うことが行われている
  。
3 日赤における照射血供給能力
  71センターは400ml・7バッグ一括を8分で処理可能
   3センターは400ml・6バッグ一括を3分で処理可能
                     6年度     7年4〜12月
   対象(契約済)医療機関数     224      518
   対象患者数           5138    15330
   放射線照射した血液の数量   11878    28982

   平成7年供給本数(輸血用血液製剤) 18,385,591本(200ml換算)

   なお、国庫補助を平成5年度より行っている。補助率1/2
   年間 1億6464万8000円 (機器リース費用)

本件照会先
1 社団法人 日本輸血学会 事務局
       電話 03ー5485ー6020
2 日本赤十字社 事業局血液事業部血液安全課
       電話 03ー3438ー1311
3 厚生省薬務局安全課医薬品適正使用推進室
       担当 網岡、黒川
       内線 2756
       直通 03ー3501ー4507

    問い合わせ先 厚生省薬務局安全課医薬品適正使用推進室
     担 当 網岡、黒川(内2756)
          電 話 (代)[現在ご利用いただけません]
                  (直)3501-4507


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