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第1 次世代育成支援対策の推進

 急速な少子化の進行等を踏まえ、次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、かつ、育成される環境の整備を図る「次世代育成支援」に重点的に取り組む。
 このため、子育て家庭支援対策の充実を図るとともに、多様な保育サービスの推進、子育て生活に配慮した働き方の改革、児童虐待防止対策、母子保健対策、母子家庭等の自立への支援など各種施策を総合的に推進する。
 また、平成15年度税制改正に関連した「少子化対策の施策」に要する経費(国と地方を通じて総額2,500億円の枠内)については、児童手当支給対象年齢等の見直しのほか、地域における子育て支援事業の充実、児童虐待防止対策の充実、不妊治療の経済的支援及び新たな小児慢性特定疾患対策の確立について、事項として要求し、予算編成過程で検討する。(41,42ページ参照)

 子育て家庭支援対策の充実 2,235億円(2,126億円)
注:括弧内は15年度予算額

(1)地域における子育て支援体制の強化  14億円
※地域における子育て支援事業の充実について、予算編成過程で検討

 次世代育成支援対策推進法の制定及び改正児童福祉法における子育て支援事業の法定化等を踏まえ、地域における子育て支援事業の推進を図るための基盤整備を行う。

(2)地域子育て支援センターの整備  50億円
 子育てサークルの支援や育児相談を行う地域子育て支援センターの整備を推進する。
2,700か所 →  3,000か所

(3)放課後児童クラブの拡充  87億円
 大都市周辺部を中心に、放課後児童の受入れ体制を平成16年度までに全体として15,000か所とすることを目標に、国庫補助対象の放課後児童クラブを800か所増加させる。
 また、地域の人材を活用した伝統的遊びや自然体験等の事業を創設する。
11,600か所 → 12,400か所

(4)ファミリー・サポート・センターの設置促進  21億円
 地域の子育て支援機能を強化するため、子育て中の労働者や主婦等を会員として、地域における育児の相互援助活動を行うファミリー・サポート・センターの設置を促進する。
355か所 → 385か所(本部)

(5)シルバー人材センターによる子育て支援事業の拡充  19億円
 高齢者の就労機会・社会参加の場を提供するシルバー人材センターにおいて、乳幼児の世話や保育施設との送迎などの育児支援、就学児童に対する放課後・土日における学習・生活指導等の支援を行う実施活動拠点を拡充する。

(6)児童手当国庫負担金  1,975億円
※支給対象年齢等の見直しについて、予算編成過程で検討

 多様な保育サービスの推進  5,085億円(4,855億円)

(1)保育所の待機児童ゼロ作戦の推進  364億円

  ○ 保育所の受入れ児童数の増大  339億円
 待機児童ゼロ作戦を推進するため、保育所受入れ児童数を約5万人増やすとともに、施設整備を推進する。

(2)多様な保育サービスの提供  4,721億円

  ○ 延長保育の推進
   11,500か所 → 13,500か所  322億円

  ○ 休日保育の推進
      500か所 →    750か所  3.8億円

  ○ 一時保育の推進
     4,500か所 →  5,000か所  26億円

 子育て生活に配慮した働き方の改革  15億円(15億円)

  ○ 育児休業制度等の見直し  22百万円
 「次世代育成支援対策に関する当面の取組方針」を踏まえ、より利用しやすい仕組みとするという観点から、育児休業制度等について、関係審議会における検討の結果を受けた見直しを行う。

  ○ 育児休業取得等の目標達成に向けた集中的な取組  9.9億円
 男女別育児休業取得率、勤務時間の短縮等の措置の普及率及び子どもの看護休暇制度普及率について設定した目標値の達成に向けた各種助成措置や普及啓発等により、平成16年度末までの集中的な取組を実施する。

  ○ 育児等離職者の再就職支援の充実  4.2億円
 育児等の理由で離職した再就職希望者のニーズに対応した支援を行うため、キャリアコンサルタントの活用や職場体験講習の実施により、きめ細かな計画的支援を行う「チャレンジサポートプログラム(仮称)」を実施する。

  ○ 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の策定に対する支援(新規)  24百万円
 一般事業主行動計画の策定を支援するため、具体的な取組の実施に当たって参考となる好事例集及びモデル行動計画の作成、講習会の実施、事業主に対する相談等を行う。

 児童虐待への対応など要保護児童対策等の充実  61億円(62億円)

(1)児童虐待防止対策など児童の保護・支援の充実  45億円
※児童虐待防止対策の充実について、予算編成過程で検討

 虐待を受けた児童をはじめとする要保護児童に対する支援のあり方についての関係審議会における検討の結果を受け、児童福祉法等の見直しを行う。

(2)配偶者からの暴力(ドメスティック・バイオレンス)への対策の推進  16億円

  ○ 婦人相談所(一時保護所)への主に同伴乳幼児の対応を行う指導員の配置(新規)  29百万円
 乳幼児を伴って婦人相談所に一時保護された被害者が心理療法等を受けられるようにするとともに、被保護者が同伴した乳幼児の対応を行うための指導員を配置する。

 子どもの健康の確保と母子医療体制等の充実  226億円(229億円)

(1)子どもの健康・医療の確保  53億円

  ○ 小児救急医療体制の整備  14億円
 小児救急医療拠点病院等、小児救急医療体制の整備を引き続き推進する。

  ○ 小児科・産婦人科若手医師の育成  1億円
 小児科・産婦人科医の意識や勤務の現状を踏まえ、若手医師の確保や資質の向上のための研究を行う。

(2)周産期医療体制の充実  76億円
 周産期医療体制(母胎が危険な妊産婦や低出生体重児に適切な医療を提供する医療体制)の整備を推進するとともに、不妊専門相談センターの充実を図るなど、出産を望む女性に対する医療面の支援を拡充する。
周産期医療ネットワーク 37都道府県 → 47都道府県
不妊専門相談センター 42か所 → 47か所

(3)不妊治療の経済的支援(新規)
※不妊治療の経済的支援について、予算編成過程で検討

 次世代育成支援の一環として、不妊治療の経済的負担の軽減を図るため、医療保険が適用されず、高額の医療費がかかる配偶者間の不妊治療に要する費用の一部を助成する。

(4)新たな小児慢性特定疾患対策の確立  96億円
※新たな小児慢性特定疾患対策の確立について、予算編成過程で検討

 小児慢性特定疾患治療研究事業を見直し、小児慢性特定疾患を持つ患者に対する安定的な制度として、法整備を含めた制度の改善・重点化を行う。

 母子家庭等自立支援対策の推進  2,829億円(2,694億円)

  ○ 母子家庭等の子育てと生活の支援の推進  17億円
 子育てや生活支援策として、日常生活支援事業等の着実な推進を図る。

  ○ 母子家庭等の自立のための就業支援  25億円
 母子家庭等就業・自立支援センター事業の定着・推進を図るとともに、新たにブロック別にセミナーを実施する。
 「母子家庭の母の就業の支援に関する特別措置法」の施行を踏まえ、就業支援について一層の推進を図る。

  ○ 母子寡婦福祉貸付金の充実  61億円
 就学支度資金の貸付限度額の引上げ等、母子寡婦福祉貸付金を充実する。

第2 雇用再生に向けた労働市場政策の推進

 依然として厳しい雇用失業情勢及び構造改革が加速される中での雇用への影響に対応し、早期再就職を強力に促進するとともに、官民による労働力需給調整機能の強化を進める。
 あわせて、民間を活用した長期失業者対策の強化、地域の自主性を活かした雇用創出の促進、産業別、職業別の労働移動支援等、失業者の特性に応じたきめ細かな雇用対策を推進し、雇用再生の実現を図る。

 早期再就職促進のための支援策の強化  596億円(538億円)

  ○ 非自発的求職者一人一人を対象にした「就職実現プラン(仮称)」の策定及びこれによる個別総合的な就職支援の実施(新規)  16億円
 会社都合による離職者や自営廃業者であって家計の担い手である35歳以上の求職者に対し、再就職に向けた求職活動計画(就職実現プラン(仮称))を個人毎に作成し、これに基づき個別総合的な相談援助を実施する。

  ○ 早期就職の緊要度が高い求職者に対する就職支援の強化  44億円
 早期就職の緊要度が高い求職者に対し、求人開拓から就職に至る一貫した就職支援を個々人ごとにきめ細かく実施する専任の支援員(就職支援ナビゲーター)を増員し、効果的な就職支援を行う。

  ○ 未充足求人へのフォローアップの徹底等求人者サービスの充実を通じた就職促進  5.9億円
 公共職業安定所に申込まれた求人が未充足となっている事業主に対し、求職者情報の提供、事業所見学会等の求人充足に向けたフォローアップを徹底し求職者の就職促進を図る。

  ○ 雇用関係情報の積極的提供  7.8億円
 官民連携した雇用情報システムである「しごと情報ネット」について、求職者情報の提供、職業能力開発情報に係るホームページとの接続等の機能の拡充を行う。

  ○ サービス分野等における雇用機会創出の推進  2.6億円
有識者、関係業界及び関係省庁代表者からなる「雇用創出企画会議」を開催するとともに、新たに地域に密着した事業(コミュニティビジネス)に関して、関係者交流会の実施、関連支援サービスの一体的な情報提供を行う相談窓口の試行的開設を行う。
「サービス分野等に係る人材育成プロジェクト」により、今後求められる人材ニーズ等を把握分析して情報提供を行うとともに、官民連携してサービス分野への就職等を目指した能力開発に関するガイダンス講習を実施する。

 失業者の特性に応じたきめ細かな就職支援の実施  709億円(605億円)

(1)長期失業者対策の充実・強化  49億円

  ○ 成果に対する評価に基づく民間委託による長期失業者の就職支援(新規)  12億円
 公共職業安定所での求職活動により就職に至らなかった1年以上の長期失業者について、就職支援から就職後の定着指導までを民間事業者に包括的に委託し、安定した就職の実現を図る事業を大都市圏において先行的に実施する。  事業の委託に当たっては、成果に対する評価に基づく報酬の誘因を付与する。
実施地区数  平成16年度 10地区

  ○ 「長期失業者支援アドバイザー(仮称)」の配置等による効率的かつきめ細かな就職支援(新規)  67百万円
 大都市圏以外の公共職業安定所における長期失業者に対し、民間における再就職支援業務の経験者等を「長期失業者支援アドバイザー(仮称)」に委嘱し、民間のノウハウによる効果的かつきめ細かな就職支援を行う。
 また、公共職業安定所において、長期失業者に対し、「離職者支援資金貸付制度」の訓練受講の際の特例措置を含め同制度の積極的な周知を行う。

(2)地域主導による雇用対策の推進  96億円

  ○ 地域の自主性を活かした雇用創出の促進  46億円
 地域の特性や自主性を活かした効果的な雇用創出の促進を図るため、新たに、地域雇用開発促進法に基づく雇用機会増大促進地域の市町村及び地元経済界による雇用創出のための事業に対する支援を行う。
 また、求職活動援助地域におけるミスマッチ解消事業(地域求職活動援助事業)について都道府県の企画・立案による実施方式に改める。

  ○ 公共職業安定所と地方公共団体との共同・連携による効果的な職業紹介、情報提供の推進  11億円
 地方公共団体の行う無料職業紹介事業について、要請に応じて公共職業安定所の求人情報を提供するとともに、地方公共団体との共同により国の職業紹介と地方公共団体の生活相談等を一体的に提供するサービスを実施する。

  ○ 地域の労使による就職支援事業の推進  24億円
 地域の民間の労使団体が雇用の改善のために相協力して行う求人・求職ニーズ調査や求人の働きかけ、求職ガイダンス、求人・求職情報の作成・提供、就職面接機会の設定、その他の再就職の促進に資する事業を支援する。

(3)産業別・職業別の労働移動、人材確保対策の推進  556億円

  ○ 建設労働者の円滑な労働移動に対する総合的支援(「建設雇用再生トータルプラン(仮称)」)  23億円
 過剰供給構造の是正に向け企業の連携・再編が進められている建設業において、業界内外での円滑な労働移動の支援や新規・成長分野への進出の促進、労働移動等に関する相談窓口の設置等の施策を総合的に実施する。

  ○ 農林業等への多様な就業の支援(「農林業をやってみよう」プログラムの推進)  91百万円
 農林業等就職相談コーナー等により、農林業等への多様な就業希望に応えるべく、農林水産省との連携のもとに求人情報の提供、職業相談の紹介、農林業等関連各種情報の提供等を行う。

(4)失業者向け生活関連情報の公共職業安定所による一元的提供体制の整備  8.2億円
 大都市部の公共職業安定所において、失業に直面した際に生ずる社会保険・税制、住宅・教育・育児、心の悩み等の生活関連情報について各分野の専門家による相談・助言を一元的に行う生活関連情報相談コーナーを設置、運営するとともに、ハローワークインターネットサービスを活用し、全国の失業者に同様の情報提供を行う。

第3 若年者を中心とした人間力の強化

 我が国にとって人材が国家の基礎であることから、経済社会の活力の維持・向上を図るため、今後の時代を担う若年者の人間力の総合的な強化を図る「若者自立・挑戦プラン」を推進するとともに、労働者個人が主体的なキャリア形成を図ることができるようにするための条件整備や厳しい雇用失業情勢の中で再就職を促進するための効果的な能力開発システムの構築を図る。

 「若者自立・挑戦プラン」の推進  330億円(252億円)

(1)教育段階から職場定着に至るキャリア形成・就職支援の実施  53億円

  ○ 中高生仕事ふれあい活動支援事業の拡充  13億円
 学校等と連携して、中高生自らが職業に関する取材活動、職業体験、ボランティア体験等を行うことにより、在学中からの職業に対する意識を啓発する「中高生仕事ふれあい活動支援事業」の対象地域を拡充する。
16都道府県 → 32都道府県

  ○ キャリア探索プログラムの拡充等による職業意識形成支援の推進  18億円
 企業人等働く者を講師として学校に派遣し、職業や産業の実態、働くことの意義、職業生活等に関して生徒に理解させ自ら考えさせるキャリア探索プログラムについて、早い段階からの職業意識形成を支援するため、高校のほか小中学校を新たに対象に加える。

  ○ 若年者ジョブサポーターによる新規学卒者等のマッチングの強化  17億円
 在学中の早い段階からの職場見学等による職業理解の促進から就職後の職場定着までの各段階を通じてマンツーマンによる一貫した支援を行う若年者ジョブサポーターを全国の公共職業安定所に配置し、中学・高校卒業者の円滑、的確な就職を実現する。

  ○ 学卒就職者の早期離職防止対策モデル事業の実施(新規)  31百万円
 就業意欲や職業能力の向上の動機づけ、職場でのコミュニケーション能力の付与等を内容とする業界単位の集団研修、職場定着のための事業所内の相談、助言体制の整備等を内容とするモデル事業を地域の事業主団体等に委託し、実施する。

  ○ 職業意識啓発や就業に係る基礎的知識等の能力開発支援の拡充  4.1億円
 フリーター等の若年者に対し、民間教育訓練機関等を活用し、グループカウンセリングによる職業意識啓発やマナー講習等に加え、新たに企業での職業体験を実施する。

(2)日本版デュアルシステムの導入(新規)  89億円
 若年者を対象とした新たな人材育成システムとして、企業と教育機関をコーディネートし、企業実習と一体となった教育訓練を行うとともに、修了時に実践力の能力評価を行うことにより一人前の職業人を育成する「日本版デュアルシステム」を導入する。当面は学卒未就職者や近年急増しているフリーターを中心に広範に推進する。
訓練計画数  平成16年度 4万人

(3)若年者向けキャリア形成支援の推進  9.3億円

  ○ 専門的なキャリア・コンサルタントの養成・活用(新規)  1.2億円
 若年者向けの専門的なキャリア・コンサルタントに必要な能力基準等を策定するとともに、必要な能力付与を行うための訓練を職業能力開発大学校等で実施し、若年者対策での活用を推進する。

  ○ フリーター等が相互に職業意識を高めるための拠点づくりの推進  8.1億円
 フリーター等が相互に職業意識を高めるための拠点として大都市部に開設している「ヤングジョブスポット」について、民間団体への運営委託を進めるとともに、企業や大学等を含めた関係者との連携を強化し、より効果的な運営を図る。

(4)若年労働市場の整備  129億円

  ○ 学卒、若年者向けの実践的能力評価・公証の仕組みの整備  6.6億円
 学卒、若年者向けの能力評価として技能系から事務系にわたる幅広い職種を対象とした実践的能力評価、公証の仕組みの整備を行う。

  ○ 企業における若年者の採用・育成方針の集約と情報開示等の推進(新規)  20百万円
 企業が若年者に求める能力要件を調査・分析して取りまとめ、若年者への情報提供を行うとともに、若年者の人材育成に積極的な企業の事例の収集及び分析を行う。

  ○ 若年者試行雇用事業の推進  88億円
 学卒未就職者等の若年失業者に実践的な能力を取得させ、常用雇用へ移行するため短期間の試行雇用を実施して、若年者の雇用を推進する。

  ○ フリーターから正社員への登用制度の普及促進(新規)  18百万円
 フリーターに対して安定就労の動機付けや職業生活に必要な知識・技能の付与等をしつつ、正社員として登用する制度を有する企業の事例を収集、分析するとともに、これを活用した事業主に対する普及促進のためのセミナー、相談・援助を実施する。

(5)地域との連携・協力による若年者就職支援対策の展開(新規)  31億円
 若年者のためのワンストップセンター(通称ジョブ・カフェ)や地域の経済団体等に対し、企業説明会や職場見学会等の事業を委託し、地域との連携・協力による効果的な就職支援対策を推進する。

 キャリア形成支援のための条件整備の推進  49億円(61億円)

(1)多様なニーズに応じたキャリア・コンサルティング実施体制の整備  30億円
キャリア形成(職業経歴を通した能力形成)についての相談支援を強化するため、民間機関、職業能力開発大学校等においてキャリア・コンサルタントの養成を推進するとともに、公共職業安定所や民間企業等での活用を図る。
労働市場や心理学、キャリア形成等に関する理論、実践にわたる高度専門的な能力に基づき、より専門性の高いキャリア・コンサルティングを行う人材の養成に向け、その能力要件の明確化と学習カリキュラムの検討を行う。

(2)幅広い職種を対象とした職業能力評価制度の整備  6.5億円
 労働者のキャリア形成や労働市場の機能強化を図るため、ホワイトカラーを含め、幅広い職種を対象とした職業能力評価基準の策定を業界団体等との連携の下で進めるとともに、策定された評価基準等の普及促進を図る。

 高度かつ効果的な職業能力開発システムの整備  246億円(234億円)

  ○ 民間を活用した効果的な職業訓練と就職支援の推進  238億円
 専修学校や大学・大学院等の民間を活用して職業訓練から就職支援まで一貫した支援を推進する。このうち民間への訓練委託については、就職率向上を図るため、訓練委託費を就職実績を踏まえて交付する仕組みを導入する。また、求人事業所等を活用した求人ニーズに即したオーダーメード型訓練の推進を図る。

  ○ 産学連携による大学等を活用した高度かつ実践的教育訓練の開発(新規)  8百万円
 大学及び事業主団体等からなる産学協議会を設置し、大学・大学院等を活用した社会人向けのモデルカリキュラムを開発するとともに、そのモデル実施、効果測定を行い、今後の高度な人材養成に活用する。

  ○ 新たなものづくり等に向けた先端的な取組  7.4億円
起業や新分野展開に係る相談援助、人材育成を行う創業サポートセンターにおいて、離職者向け訓練の実施や創業人材と支援者等とのマッチング、ネットワークづくりを図る等の拡充を行う。
技術・技能の変化に即応し、創意工夫も出来る実践力のある人材を育成するため、技能五輪の機会を活用した若年者のものづくり教育の推進や集積地における地域の事業主団体等が行う人材育成に対する支援を行う。

第4 多様な働き方を可能とする労働環境の整備

 経済環境が著しく変化し、少子・高齢化が進行する中、個々の労働者がそれぞれの状況に応じて自律的に働き方を選択し、仕事と生活の調和を実現できるよう、多様で柔軟な働き方を可能とする環境整備を推進する。
 また、賃金不払残業の解消など誰もが安心して働ける環境づくりを推進するとともに、男女雇用機会均等の確保や不当労働行為事件にかかる審査の迅速化・的確化の促進など、公正な働き方を推進する。

 多様で柔軟な働き方を可能とする労働環境の整備  17億円(17億円)

(1)仕事と生活の調和のとれた働き方を可能とする環境整備  9.7億円
 労働者が仕事と生活の調和を図りつつ、多様な働き方を自律的に選択できるよう、年次有給休暇の取得促進、柔軟な労働時間管理等の推進を図るとともに、労働環境の整備について検討を行う。

(2)パートタイム労働者と正社員との均衡処遇の推進  5.1億円
 パートタイム労働者と正社員との均衡の確保に向けた先駆的、モデル的な取組を行う事業主を支援すること等により、パートタイム労働者と正社員との間の均衡処遇の浸透・定着に向けた環境整備を図る。

(3)ワークシェアリングの導入推進

  ○ 多様就業型ワークシェアリング導入モデル開発事業の実施  2.4億円
 個人の生活設計に応じた柔軟で多様な働き方を選択できる「多様就業型ワークシェアリング」について、短時間正社員制度導入モデルの開発を進めるとともに、ワークシェアリングに関する普及啓発を行う。

 誰もが安心して働ける環境づくり  290億円(281億円)

(1)賃金不払残業の解消に向けた取組の推進  1.6億円
 監督指導体制の一層の強化を図るとともに、無料電話相談窓口の開設、「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」の周知・啓発等により賃金不払残業の解消に向けた取組を促進する。

(2)過重労働による健康障害防止対策、メンタルヘルス対策の推進  6億円
 過重労働による健康障害防止を徹底するため、所定外労働の削減を促進するとともに、労使による自主的取組の促進、労働者自身の健康管理を促すチェックリストの普及を図る。
 また、労働者の心の健康づくりを推進するため、メンタルヘルス指針の普及定着を図るとともに、精神科医の活用による相談体制の強化を図る。

(3)未払賃金立替払制度の適正な運営  282億円
 企業倒産により賃金が未払のまま退職させられた労働者に対する未払賃金立替払制度について、迅速かつ適正な運営を行う。

 公正な働き方の推進  17億円(16億円)

(1)男女雇用機会均等確保対策の推進

  ○ 男女間の賃金格差解消に向けての支援  87百万円
 男女間の賃金格差の解消に向けて、労使が自主的に取り組むためのガイドラインの周知・啓発を行うとともに、格差の要因となっている男女間で差がみられる配置、昇進や業務の与え方等の改善を図るため、男女の固定的な役割分担意識を解消するプログラムの開発・企業への情報提供を行う。

(2)不当労働行為事件にかかる審査の迅速化・的確化の促進  1.9億円
 労働者の団結権等の侵害から救済するために設けられている労働委員会による不当労働行為審査制度について、司法制度改革の一環として、審査の迅速化・的確化を図るための見直しを行う。

(3)総合的な個別労働紛争の解決の促進  14億円
 厳しい雇用情勢等を背景に増え続ける事業主と個々の労働者との間の紛争を解決する個別労働紛争解決制度において、紛争調整委員会によるあっせんの迅速かつ適切な処理を確保するため、紛争の実情調査を行う専門の調査員の新設等により体制の充実を図る。

第5 活力ある高齢社会の実現と安定した年金制度の構築

 少子化等社会経済情勢の変化に柔軟に対応できる、長期的に安定した年金制度の構築を図る。
 また、雇用と年金との接続を強化し、少なくとも年金支給開始年齢までは働き続けることができるよう、65歳までの雇用の確保や中高年齢者の再就職支援を強化するとともに、高年齢者の多様な就労を促進する。
 さらに、介護保険制度の安定的な運営を確保するとともに、介護サービスの質の向上や提供体制の整備、痴呆性高齢者対策の推進、介護サービスの適正化の推進等を図る。

 長期的に安定した信頼される年金制度の構築  5兆7,539億円(5兆6,393億円)

  ○ 少子化等社会経済情勢の変化に柔軟に対応できる長期的に安定した年金制度の構築
次期通常国会への年金改革法案の提出に向けて検討する。
平成12年年金改正法附則に規定された基礎年金国庫負担割合2分の1への引上げの取扱いについては、今後の予算編成過程において検討する。

  ○ 年金給付費国庫負担金  5兆7,393億円
※物価スライドの特例措置に係る所要額は、別途要求

平成16年度の年金等の物価スライドの取扱いについては、政府経済見通しにおける15年度の物価下落率△0.4%分を引き下げて要求する。今後、物価、賃金、公務員給与の状況、年金改革における給付と負担の見直し、社会保障全般における給付と負担の状況等を総合的に勘案し、予算編成過程で検討する。
年金等の物価スライドの特例措置(1.7%)に要する経費の16年度における所要額は、概算要求基準の枠外で要求する。
厚生年金及び国民年金に関する過去の国庫負担繰入れ及び厚生年金等の業務取扱費財源繰入れの特例措置に係る取扱いについては、今後の予算編成過程において検討する。

  ○ 国民年金保険料収納対策の推進  145億円
 国民の年金権を確保するとともに、公的年金制度を安定的に運営していくため、国民年金推進員による戸別訪問活動の強化、コンビニエンスストアでの保険料収納の実施、未納者に対する納付状況の通知など保険料収納対策を推進する。
国民年金推進員の増員  1,948人 → 2,651人

  ○ 年金通算協定の推進  38百万円
 国際的な人的交流が活発化し、また、企業間の国際競争が激しさを増す中で、年金制度への二重加入の防止及び年金受給権の確保を図る年金通算協定について、締結に向けた取組を着実に推進する。

 高年齢者等の雇用・就業対策の強化  886億円(931億円)

(1)65歳までの雇用機会の確保 〜雇用と年金との接続〜  506億円
 60歳以上の高齢者が、その希望に応じて、待遇を変更されることなく短時間労働を選択できる「高齢短時間継続待遇制度(仮称)」を導入・実施した事業主に対する助成措置を講じる等、65歳までの雇用機会の確保を図る。

(2)中高年齢者の再就職支援の強化  113億円

  ○ 年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けた基盤づくり事業の創設(新規)  3億円
 年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向け、高年齢者等の募集・採用から職場定着するための体制づくりに係る好事例の収集・分析、事業主との共同研究等を行い、これを活用した個別企業に対する相談・援助等の支援を行う。

(3)高年齢者の多様な就労の促進  268億円

  ○ シルバー人材センター事業の拡充  155億円
 高齢者が生きがいを持って地域社会で生活するため、定年退職後等において、軽易な就労を希望する高齢者に対し、高齢者の意欲や能力に応じた就労機会、社会参加の場を総合的に提供するシルバー人材センター事業を拡充する。

 介護保険制度の着実な実施と関連施策の推進  2兆820億円(1兆8,929億円)

(1)介護保険制度の安定的運営の確保  1兆8,378億円

  ○ 介護給付に対する国の負担等  1兆7,521億円

(2)介護サービスの質の向上  29億円

  ○ 介護サービスの第三者評価モデル事業の実施(新規)  3.7億円
 介護サービスの質の向上を促し、利用者による良質なサービスの選択を支援するため、第三者による介護サービスの質の評価、利用者への評価結果の開示等をモデル的に実施する。

  ○ ケアマネジメントの質の向上  15億円
 介護支援専門員(ケアマネジャー)に対する現任研修等を着実に実施するとともに、ケアマネジャーに対する指導・助言等の援助を行うケアマネジメントリーダーの養成や、ケアマネジャーに対する個別相談やケアプランの作成支援等を行う「ケアマネジメントリーダー活動等支援事業」を推進する。

(3)介護サービスの提供体制の整備  2,303億円

  ○ 特別養護老人ホーム等の整備  1,302億円
各自治体の第2期介護保険事業計画を踏まえ、特別養護老人ホームや老人保健施設等の整備を計画的に行う。
施設の持つ機能を高齢者の在宅生活への支援にも活用していくため、施設が地域にデイサービス拠点を置き、施設職員が出向いてサービスを行うサテライト方式を推進し、新たに民家改修経費などについて必要な支援を行う。

  ○ ユニットケアの普及  1億円
 ユニットケアの特徴を活かしたサービス提供を確保するため、ユニットケアを導入する特別養護老人ホームの管理者等に対して研修を実施する。
ユニットリーダー実地研修施設  10か所 → 15か所

  ○ 在宅介護支援センターの機能の充実  226億円
 介護予防対策や地域ケア体制づくりの拠点としての機能の充実を図るとともに、地域型在宅介護支援センターに担当地域ケア会議を新設する。

(4)痴呆性高齢者対策の推進  6.4億円
 痴呆性高齢者が住み慣れた地域で安心して生活することができるよう、地域の見守り・支援体制の構築を進めるとともに、グループホームの開設予定者に対する研修の実施、外部評価機関の立上げ支援等を新たに実施する。

(5)適正化の推進等  103億円
 介護保険の円滑かつ安定的な運営を確保するため、介護サービスの適正化を推進するとともに、事業の広域化を図る市町村等に対し、システムの構築経費等への支援を行う。

第6 安心で質の高い効率的な医療の提供と健康づくりの推進

 安全で安心な患者本位の医療が提供されるよう、平成16年度から始まる医師の臨床研修必修化の円滑な実施を図るとともに、医療安全対策や医療情報の提供、医療のIT化等を推進する。また、救急医療の充実など質の高い効率的な医療提供体制の構築を図るとともに、医療保険制度の安定的な運営を確保する。
 さらに、国民に健康上の不安がないよう、16年度から新たに始まる第3次対がん10か年総合戦略をはじめ健康づくり施策を推進するとともに、SARS等の感染症対策の充実等を図る。

 医師等の臨床研修必修化の円滑な実施  229億円(59億円)

  ○ 医師臨床研修の推進  212億円
 平成16年度から始まる医師の臨床研修必修化の円滑な実施に向けて、教育指導体制の充実を図るとともに、研修医の処遇改善を含めた環境整備を推進する。

  ○ 歯科医師臨床研修の推進  11億円
 平成18年度からの歯科医師臨床研修必修化に向け、所要の準備を進める。

 安心で質の高い医療提供体制の充実  619億円(585億円)

(1)医療安全対策や医療に関する情報提供の推進  22億円

  ○ 医療事故に関する情報の収集・分析・提供事業の実施(新規)  1.6億円
 医療事故の発生予防・再発防止のため、「第三者機関」において、医療機関等から幅広く事故に関する情報を収集し、これらを総合的に分析した上で、その結果を医療機関等に広く情報提供していく。

  ○ 医薬品表示コード化による医療事故防止対策の推進(新規) 8百万円
 医薬品の名称や外観が類似している製品の取り違えによる医療事故を防止するため、医療機関において処方情報をバーコード表示化するシステムを検討するとともに、医薬品の名称や外観に関する情報データベースを整備する。

  ○ 「医療安全支援センター」への総合支援  1.1億円
 医療に関する患者・家族等の苦情や相談に迅速に対応するため、都道府県等に設置された「医療安全支援センター」に対する支援を実施する。

  ○ 根拠に基づく医療(EBM)、医療のIT化等の着実な推進  11億円
 根拠に基づく医療(EBM)が実践できるようインターネット等を利用し、最新の質の高い医療情報を医療関係者や国民に提供する。
 また、電子カルテシステムを導入し地域の医療機関がネットワークを構築することにより、地域の特性に応じた医療機関の連携を図る。

(2)救急医療の充実をはじめとする地域医療の確保

  ○ 救急医療体制等の整備  459億円
 10床規模による必要な機能を備えた新型救命救急センターの整備やドクターヘリの配備を推進する。

(3)質の高い看護の提供  138億円

  ○ 訪問看護推進事業の創設(新規)  13億円
 ALS等人工呼吸器を装着しながら在宅で療養している患者等への訪問看護の充実に向けたモデル事業の実施、がん末期患者等の在宅ホスピスケアの推進及び訪問看護ステーションと医療機関の看護師の相互交流による研修など、訪問看護の推進を図る。

  ○ 専門性の高い看護職員の育成  3.3億円
 がん看護や感染管理など専門性の高い研修に対する支援を行うことにより、質の高い看護職員の育成を重点的に促進する。

 がん等生活習慣病対策の推進  982億円(944億円)

(1)第3次対がん10か年総合戦略の推進  97億円

  ○ がん研究の推進  70億円
 がんの罹患率と死亡率の激減を目指して、発がんの分子機構等に関する研究を更に進めるとともに、革新的な予防・診断・治療法の開発、がん患者の生活の質の向上、がんの実態把握とがん情報の発信に関する研究に取り組む。また、効果的な医療技術の確立を目指した臨床研究を推進する。

  ○ がん予防の推進  15億円
 生活習慣等の行動変容を図りがんの罹患率を減少させるため、がん予防に関する知識の普及啓発を推進する。

  ○ がん医療の向上とそれを支える社会環境の整備  12億円
 全国的に質の高いがん医療が提供できる体制を整備するため、地域がん診療拠点病院の整備を促進するとともに、がん診療施設情報ネットワークの対象施設の拡充等を図る。
地域がん診療拠点病院  50施設 → 80施設

(2)健康づくり施策の推進  885億円

  ○ 健康づくりのための「食育」の推進  4.5億円
 糖尿病等を予防するため食生活の指針を策定するとともに、外食料理の栄養成分表示や健康に配慮したメニューの提供等を普及する。
 また、健康づくり支援者(ヘルスサポーター)による地域における健康づくりのための活動を支援する。

  ○ 未成年者の喫煙防止対策の推進  9百万円
 未成年者の喫煙率が依然として高いことを踏まえ、各地域において幅広い関係者の参加のもと、未成年者の喫煙防止対策が推進されるよう、地域での連携手法等の方策について検討する。

  ○ 「健康日本21」の中間評価に向けた取組の推進  11百万円
 「健康日本21」の目標項目等を踏まえた評価を行い、その後の運動の推進に反映させるため、2005年の中間評価に向けた取組を進める。

 SARS等感染症・疾病対策の推進  1,834億円(1,807億円)

(1)SARS等感染症対策の充実  89億円

  ○ 感染症発生動向把握システムの構築  1.4億円
<「基本方針2003」における「モデル事業」として要求>
 保健所に届出のあった感染症に関する情報を全国規模で迅速に収集し、国民、医療関係者等に還元するためのシステムを構築する。

  ○ 医療提供体制の充実  23億円
SARS等重篤な感染症の初期診療を行う機関として、感染症患者とその他の患者との接触を避けるための専用外来部門の整備を推進する。
感染症指定医療機関の維持・運営に対する財政支援を強化し、良質かつ適切な医療提供体制の確保を図る。
感染症指定医療機関のスタッフを対象とした院内感染防止等に関する実地研修を行う。

  ○ 動物由来感染症対策の強化  72百万円
 国内外の動物由来感染症の発生状況に関する情報の収集・分析・提供、予防のための正しい知識の普及等を行う。

  ○ 検疫体制の強化  1.4億円
 SARS等新たな感染症の国内侵入を防ぐため、迅速なウイルス検査ができるリアルタイムPCR装置を検疫所に導入するなど、検疫体制の強化を図る。

  ○ SARS等新興・再興感染症研究の推進  19億円
 SARSの診断法やワクチン開発等、新興・再興感染症に関する研究を推進する。

(2)肝炎対策の推進  64億円
 老人保健法に基づく健康診査など各種健康診査の場を活用した肝炎ウイルス検査の実施、肝炎・肝硬変・肝がん等の予防及び治療法の研究、肝炎ウイルス感染者に対する保健指導や肝炎に関する正しい情報提供など、C型肝炎等緊急総合対策を引き続き推進する。

(3)ポリオ予防接種による2次感染者への対応(新規)  9百万円
 野生株によるポリオ症例がなくなった後(1980年以降)のポリオ生ワクチンによる2次感染者に対し、医療費等を支給する。

(4)移植対策の推進  29億円

  ○ 臓器移植対策の推進  5.2億円
 医療関係者とあっせん機関の連携を強化するとともに、一層の普及啓発の推進を図る。

  ○ 造血幹細胞移植対策の推進  19億円
 骨髄移植コーディネーターの専任化を進め、骨髄移植のあっせん体制を強化するとともに、骨髄ドナー登録者の拡大を図る。また、より移植に適した細胞数の多いさい帯血の確保を図り、さい帯血提供体制の充実を図る。

(5)難病対策の推進  1,059億円
 難治性疾患に関する調査・治療研究の推進により原因の究明や治療法の確立等を目指すとともに、難病相談・支援センターの整備の推進など難病患者のニーズを踏まえたきめ細かな保健医療福祉施策の充実連携を図る。

(6)ハンセン病対策の推進  467億円
 ハンセン病療養所入所者の療養を確保し、退所者の社会生活に対する支援などにより福祉の増進を図るとともに、ハンセン病資料館の充実等、ハンセン病患者・元患者の名誉回復を図る観点から普及啓発の充実を図る。

(7)エイズ対策の推進  107億円
 正しい知識の普及啓発や検査・相談体制の充実を図るとともに、医療の提供、研究開発等の推進を図る。特に、青少年を対象とした教育及び啓発事業を文部科学省と連携しながら新たに実施するとともに、大都市における休日のHIV検査・相談事業をモデル的に実施する。

(8)リウマチ・アレルギー対策の推進  16億円
 リウマチ、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症、膠原病などの免疫アレルギー疾患の発症機序の解明、診断・治療法の開発を推進するとともに、正しい情報の普及啓発を図る。

(9)シックハウス対策の推進  3.4億円
 シックハウス症候群の原因分析、診断・治療法の研究等の対策を関係省庁と連携しつつ、総合的に推進する。

 安定的で持続可能な医療保険制度運営の確保  8兆1,421億円(7兆7,521億円)

  ○ 政府管掌健康保険、国民健康保険、老人保健制度等に係る医療費国庫負担  8兆1,421億円

第7 障害者の自立・社会参加の推進と良質な福祉サービスの提供

 障害者の自立と社会参加を推進するため、新障害者プランに基づき、住まいや働く場の確保、地域における自立の支援等を推進するとともに、支援費制度の着実な実施を図る。また、精神障害者の保健福祉施策や、障害者雇用及び職業能力開発を推進する。
 さらに、ホームレスの自立支援等基本方針を踏まえた施策を推進するとともに、福祉サービスの質の向上など、良質な福祉サービスを提供するための体制整備を進める。

 障害者の地域生活を支援するための施策の推進  6,613億円(6,186億円)

(1)新障害者プランの推進  1,472億円
 ノーマライゼーションの理念の下、共生社会の実現を図り、障害者が身近な地域で自立した生活を送れるよう、グループホーム等、個人の多様なニーズに応じた各種の福祉サービスの充実を図る。
地域生活援助事業(グループホーム)  3,085人分増

(2)支援費制度の着実な実施  3,606億円
 障害者がサービスを選択できる支援費制度を着実に実施するため、ホームヘルプサービスなど各種のサービスに必要な経費を確保するとともに、都道府県及び市町村の支給決定事務の円滑化・適正化等を支援する。

(3)障害者の社会参加の推進  69億円
 障害者のIT利用による情報バリアフリーに積極的に取り組むため、障害者ITサポートセンターを整備し、障害者を対象としたパソコン教室の開催やパソコンの利用方法を教えるボランティアの養成・派遣等を推進する障害者IT総合推進事業を実施するとともに、身体障害者補助犬の育成や視聴覚障害者の情報・コミュニケーション支援事業の推進を図るなど、障害者の社会参加推進のための事業を総合的に推進する。

 精神障害者保健福祉施策の充実  629億円(570億円)

  ○ 精神障害者の社会復帰対策の推進  243億円
 精神障害者の社会復帰を促進するため、居宅生活支援事業及び社会復帰施設の充実を図るとともに、いわゆる社会的入院患者の退院を支援するための事業を実施する。

  ○ 適切な精神医療の推進  22億円
在宅の精神障害者の症状悪化に対し、身近な地域において早期に適切な医療を提供できる体制を確保するため、休日・夜間対応の精神科初期救急医療輪番システムの整備を促進する。
重度の精神障害者の安定的な地域生活の実現や入院の減少を図るため、多職種からなるチームにより医療・福祉・リハビリ等の包括的な訪問型地域ケアを提供する事業を新たにモデル的に実施する。(3か所)
幻覚・妄想等の激しい症状を呈する統合失調症の急性期患者等に短期集中的な治療を行い、速やかな症状の改善と退院を図る高度急性期ユニットの施設を新たに整備する。

  ○ 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に関する医療体制の整備  52億円
 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療等のため、指定入院医療機関の整備、精神保健判定医の養成等を行う。

 障害者雇用対策の推進  90億円(82億円)

(1)雇用と福祉の連携による重度障害者対策の推進  12億円

  ○ 障害者就業・生活支援センター事業の充実  9.1億円
 障害者に対する就業及び日常生活に係る相談、助言等を実施する「障害者就業・生活支援センター」の設置箇所を増大する。
47か所 → 80か所

  ○ ITを活用した在宅就労支援事業者(バーチャル工房)への支援(新規)  2.4億円
 在宅重度障害者を対象にITを活用した仕事の受注・分配等を行う在宅就労支援事業者(バーチャル工房)に対する補助事業を創設するとともに、工房を利用する障害者の技術習得等にかかる支援を実施する。

(2)精神障害者対策の推進  3.1億円

  ○ 精神障害者の職場復帰支援事業の創設(新規)  39百万円
 休職中の精神障害者の円滑な職場復帰に向け、精神障害者及び事業主への専門的な相談援助等を行う事業を実施する。

(3)障害者の雇用機会の拡大  76億円

  ○ 障害者試行雇用事業及び職場適応援助者(ジョブコーチ)による事業の拡充  31億円
 事業主に障害者雇用のきっかけを提供するとともに、障害者に実践的な能力を取得させ常用雇用へ移行するため試行雇用事業を拡充する。
 また、授産施設等と連携して、障害者の就職先に職場適応援助者(ジョブコーチ)を派遣し、職業的自立のための実践的な支援を行う事業を拡充する。

  ○ 求職者情報のインターネットによる提供(新規)  80百万円
 公共職業安定所に求職登録している障害者の求職者情報(障害種別、部位、資格経験等)をインターネットにおいて公開する。

 多様かつ効果的な障害者職業能力開発の推進  69億円(48億円)

(1)公共職業能力開発施設における障害者訓練の拡充  55億円
 障害者職業能力開発校が設置されていない地域において、職業能力開発校を障害者職業能力開発のモデル校に指定し、地域における障害者訓練機会の拡大を図る。また、訓練支援サポーター等を配置することにより、障害者訓練の拠点整備を図る。

(2)事業主や社会福祉法人等の民間を活用した実践的な就業訓練の拡充  13億円

  ○ 多様なニーズに対応した委託訓練の実施(新規)  13億円
 特例子会社、重度障害者多数雇用事業所、社会福祉法人等の多様な委託訓練先を開拓し訓練を実施するとともに、個々の受講生に対応した訓練カリキュラムの調整を行う障害者職業訓練コーディネーターを配置する。

  ○ IT技術付与のための遠隔教育の推進(新規)  33百万円
 遠隔教育を実施している民間教育訓練機関と障害者等の居住地のNPO等のパソコンボランティアとの連携により、重度身体障害者等の訓練施設への通所が困難な者に対して、民間教育訓練機関を活用した訓練機会の提供を図る。

 福祉サービスの質の向上等  64億円(64億円)

  ○ 福祉サービスの第三者評価等の推進   3.6億円
 都道府県が第三者評価機関の育成支援や評価調査者の養成研修などを積極的に実施できるよう支援するとともに、新たに指導者養成研修事業を実施するなど、第三者評価事業の普及・定着の促進及び均質化を推進することにより、良質な福祉サービスの提供を図る。
 また、運営適正化委員会における苦情解決事業の推進を図る。

  ○ 福祉に携わる人材の養成、確保及び資質の向上  11億円
 日本社会事業大学に新たに福祉マネジメントに関する専門職大学院を設置し、幅広い視野と高度な知識・技術を持った福祉専門職業人を養成するなど、質の高い福祉人材の養成・確保を図る。

  ○ 地域福祉権利擁護事業など地域福祉の推進  49億円
 痴呆性高齢者等判断能力の不十分な者に対し、福祉サービスの利用援助や日常の金銭管理等を行う地域福祉権利擁護事業を推進する。
 また、生活福祉資金貸付制度について、より活用しやすい制度となるよう資金種類の整理統合、貸付手続きの簡素化等の見直しを行う。

 ホームレスの自立支援等基本方針を踏まえた施策の推進  32億円(27億円)

  ○ 自立支援事業等の拡充  21億円
 生活相談・指導、職業相談・紹介、健康診断等を行う自立支援事業や、巡回相談活動等を行う総合相談推進事業、都市雑業的な職種の情報収集・提供等を行う能力活用推進事業を拡充するとともに、広域的な事業の展開が可能となるよう事業主体の拡大を図る。
 また、自立支援事業について、ホームレス数が少ない自治体等においても事業に取り組みやすいよう運営の弾力化を図る。

  ○ 保健衛生の向上(新規)  73百万円
 ホームレスの衛生状態の改善や保健・医療の確保を図るため、シャワー、散髪等のサービスを提供する衛生改善事業、保健所等による健康相談等を行う保健サービス支援事業を新たに実施する。

  ○ 求人開拓、求人情報の提供の充実  46百万円
 自立支援センター設置地域の公共職業安定所に「ホームレス就業開拓推進員(仮称)」を配置し、ホームレスの個々の就業ニーズや職業能力に応じた求人開拓や求人情報等の収集・提供を行うとともに、事業主に対する啓発活動を行う。

  ○ シェルター入所者に対する職業相談・技能講習の実施(新規)  68百万円
 就業による自立の意思のあるホームレスに対し、シェルターを巡回してのきめ細かな職業相談や資格・免許の取得等を目的とした技能講習を実施する。

 生活保護制度の適正な実施  1兆6,770億円(1兆5,217億円)

  ○ 自立生活の支援等の取組
 被保護人員の増加等に伴う必要額を確保するとともに、自立生活支援事業の創設など生活保護適正実施推進事業の内容を見直し、就労の促進や居宅生活への移行の促進等により被保護者の自立への支援を図る。

第8 医薬品・食品の安全性等の確保

 平成14年の薬事法及び採血及び供血あつせん業取締法の改正や16年4月の独立行政法人医薬品医療機器総合機構の設置等を踏まえ、市販後安全対策の充実強化、審査体制等の整備、血液の安定供給の確保など、医薬品・医療機器の安全対策等の充実を図る。
 また、国民の健康保護の観点から、新食品衛生法等に基づき、残留農薬基準の策定や食品添加物の安全性確認、消費者等とのリスクコミュニケーションの充実、輸入食品等の安全対策の強化など食品安全対策を引き続き推進する。

 医薬品・医療機器の安全対策等の充実  137億円(137億円)

(1)医薬品・医療機器の市販後安全対策等の充実強化  7.6億円

  ○ 独立行政法人医薬品医療機器総合機構の設置による安全対策業務の充実強化  3.4億円
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「新機構」という。)において、従来国が実施していた副作用等報告の受理・収集業務を行うとともに、集積した副作用等情報に基づく解析等の調査を実施するなど、安全対策業務の充実を図る。
医薬品と同様、医療機器に関する安全性情報等の提供業務を行うとともに、消費者に対する相談窓口を設置する。

  ○ 市販後安全対策等の充実強化  1.6億円
薬事法改正により医療機関及び薬局からの副作用等報告が法定化されたことを受けて、副作用等報告の質的・量的拡大を図るための普及啓発や電子報告システムの開発、報告内容・範囲の標準化等を推進する。
特定の医薬品で健康被害が発生した場合に、同様の副作用等が発生する蓋然性が高いと思われる薬効群に属する医薬品を供給する企業に対して、臨床薬理学的知見に基づいた評価を実施させる手法を新たに開発する。

  ○ 生物由来製品感染被害救済制度の創設(新規)  20百万円
 医薬品副作用被害救済業務に加えて、新たに生物由来製品を介した感染等による疾病、障害又は死亡に対し、医療費等の救済給付等を行う生物由来製品感染被害救済業務を実施する。

(2)医薬品・医療機器の審査体制等の整備  18億円

  ○ 独立行政法人医薬品医療機器総合機構の設置による審査業務の充実  6.9億円
 これまで国立医薬品食品衛生研究所医薬品医療機器審査センター、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構及び財団法人医療機器センターで行ってきた医薬品・医療機器の審査関連業務を新機構において一元的に行うとともに、バイオ・ゲノムの時代に対応できる質の高い審査を行い、より有効でより安全性の高い医薬品・医療機器等をより早く提供するための体制整備を行う。

  ○ 第三者認証制度の導入に向けた体制整備(新規)   4百万円
 人体へのリスクが比較的低いと考えられる医療機器・体外診断薬について、厚生労働大臣が基準を定めて、登録認証機関が当該基準への適合性を認証する第三者認証制度の導入に向けた体制整備を行う。

(3)血液の安定供給の確保等  18億円

  ○ 血液製剤の国内自給に向けた献血の推進  2.2億円
 安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律の施行に伴い、血液製剤の安定供給と国内自給に向けた献血の推進を計画的に実施するため、都道府県、保健所政令市等における血液確保目標量の達成に向けた効果的な取組を一層推進する。

(4)化学物質の安全性対策の強化  30億円

  ○ 化学物質情報基盤システムの構築(新規)  59百万円
 化学物質について、効率的な安全性評価の推進を図るため、審査情報、安全性点検情報及び事業者から報告された有害性情報等を一元的に管理する情報基盤システムを、関係省庁と連携し、整備する。

  ○ 難分解・高蓄積性化学物質の毒性調査の実施  86百万円
 平成15年5月に改正された化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律に基づき、第一種監視化学物質として指定される難分解性・高蓄積性の既存化学物質(平成16年度4物質)について、簡易な毒性試験法による毒性調査を実施する。

 国民の健康保護のための食品安全対策の推進  177億円(163億円)

(1)新食品衛生法に基づく基準の策定等の推進  18億円

  ○ 残留基準が設定されていない農薬等の基準策定の計画的な推進(ポジティブリスト制の導入)  6.2億円
 残留基準が設定されていない農薬、動物用医薬品等の食品中への残留を禁止する措置の導入(新食品衛生法公布後3年以内)に向けて、基準等の設定を計画的に推進する。
残留基準の設定に必要な分析法の開発
 農薬  平成16年度 70品目
 動物用医薬品等  平成16年度 59品目

  ○ 食品添加物の安全性確認の計画的な推進  12億円
 長い食経験等を考慮して使用が認められている既存添加物について、安全性に問題がある場合は使用を禁止できる制度が導入されたことから、既存添加物の毒性試験等の安全性確認を計画的に推進する。
 さらに、国際的に安全性が確認され、かつ、広く用いられている食品添加物について必要な場合には、国が指定のための安全性確認を行う。
既存添加物の安全性確認
 90日間反復投与毒性試験  平成16年度 24品目
 慢性毒性・発がん性併合試験  平成16年度 18品目

  ○ 食品汚染物質の安全性検証の実施(新規)  44百万円
 長期にわたる摂取による健康への影響が懸念される食品中の汚染物質のうち、重金属について各食品別の濃度や摂取量を調査し、安全性の精密な検証を行う。

(2)消費者等への情報提供の充実  29百万円

  ○ 食品安全に関する情報提供や意見交換等(リスクコミュニケーション)の充実  21百万円
 食品安全に関する施策についての国民の理解や信頼を構築するため、的確な情報提供や消費者等との意見交換を行う懇談会、シンポジウムの開催などリスクコミュニケーションの取組を一層充実する。
消費者等との懇談会、シンポジウムの開催  年14回

  ○ 消費者の視点に立った食品表示制度の推進  8百万円
 食品表示について、関係府省との連携・協力のもとに、引き続き消費者の視点に立った一元的な見直しを行うとともに、相談及び普及啓発等を推進する。

(3)輸入食品等の安全対策の強化  141億円

  ○ 輸入食品の監視体制等の強化  19億円
 輸入食品の過去の違反状況、危険情報等を踏まえた輸入食品監視指導計画に基づき検疫所が行うモニタリング検査の充実を図るとともに、港湾の24時間フルオープン化に対応するため、輸入食品監視支援システムの機能改善を行うなど輸入食品監視体制等の強化を図る。
モニタリング検査計画件数  平成16年度 73,981件

  ○ 健康食品等に対する監視体制等の充実強化  88百万円
 いわゆる健康食品等について、健康保持増進効果等に関する虚偽誇大広告等禁止制度や不適正表示の改善指導のための啓発指導、インターネットによる監視を行うとともに、自治体の食品衛生監視員及び薬事監視員に対する研修を実施するなど、監視体制の充実強化を図る。

  ○ 食肉の安全確保対策の推進  42億円
 と畜検査におけるBSE全頭検査の実施について、引き続き特別措置として、検査キットの整備に対する補助を行うとともに、検査技術の研修等を実施する。
 また、食肉・食鳥肉の安全性を確保するため、新たに獣畜及び家きんの疾病に関する診断法を最新の科学的知見に基づいて再評価し、標準化を図る。

(4)食品の安全に関する研究の推進  18億円
 食品の安全管理体制の高度化に関する研究のほか、先端科学を応用した遺伝子組換え食品の検知法及び安全性評価手法の開発、重金属等汚染物質の健康影響評価のための安全性調査研究など、食品の安全性確保に係る研究を推進する。

 安全で良質な水の安定供給  1,239億円(1,064億円)

  ○ 水道施設の整備  1,237億円
 すべての国民に安全で良質な水道水の供給を行うとともに、地震・渇水に強い水道づくりを着実に推進する。

 麻薬・覚せい剤等対策の推進  14億円(14億円)

  ○ 青少年に対する薬物乱用防止の普及啓発(新規)  14百万円
 児童生徒以外の青少年に対する薬物乱用防止の啓発活動の強化を図るため、未成年労働者等を対象とした予防啓発活動を展開する。

  ○ 取締体制の強化  5.7億円
 潜在化・巧妙化する外国人薬物密売組織や暴力団等による組織的な薬物密輸を摘発するため、取締体制を強化する。

第9 科学技術の振興

 最先端科学を活用したがん等の予防・診断・治療法を開発するとともに、国民の健康と安全を守るため、国際的な健康危機管理体制の強化や食品、医薬品等の安全確保に関する研究を推進する。
 また、医薬品・医療機器産業の国際競争力を確保するため、治験推進体制の充実や疾患関連たんぱく質解析等の基盤研究を推進するとともに、基盤技術の研究開発体制を整備する。

 最先端科学の活用による疾病の予防と診断・治療法の開発  66億円(55億円)

  ○ 最先端科学を活用したがん研究の推進  50億円
 厚生労働科学研究として、ゲノム等の最先端科学を活用したがんの革新的な予防・診断・治療法の開発等を推進する。

  ○ 循環器系疾患等の生活習慣病対策の推進  15億円
 心臓病、脳卒中、糖尿病等に対する効果的な治療技術を確立するための臨床研究を推進するとともに、新しい治療法の有効性評価等を行う。

 国民の健康上の安心・安全の確保  97億円(80億円)

  ○ 健康危機管理体制の強化  19億円
 BSEやSARS等の発生に対する国際的な感染症分野での研究を強化するとともに、国民の健康被害を最小限にするため、感染症等の発生動向の監視評価、国内外の情報収集と解明のための国際機関等とのネットワークのあり方や、国際的な健康危機管理に必要な人材養成に関する研究を推進する。

  ○ 食品・医薬品等の安全確保に関する研究の推進  57億円
 食品の安全性確保のための研究のほか、医薬品・医療機器の製造承認段階から市販後までの総合的な規制手法や生物由来医薬品等のリスク評価・管理手法の開発、化学物質の迅速かつ効率的な毒性評価法の開発等を推進する。

  ○ 医療安全確保に関する研究の推進  20億円
 医療事故の発生頻度を把握する事や医療機関の安全性と質に関する合理的な指標の開発など、医療の安全と質の確保等に向けた研究を推進する。

 医薬品・医療機器産業の国際競争力の確保  93億円(31億円)

(1)基盤研究の推進  80億円

  ○ 治験推進体制の充実  17億円
 国内における治験の空洞化を防ぐため、がんや循環器病などの疾患群ごとに複数の医療機関によって形成する大規模治験ネットワークを拡充する。

  ○ 疾患関連たんぱく質解析の推進  35億円
 高血圧、糖尿病、がん、痴呆等の患者と健康な者との間のたんぱく質の種類・量を比較し、疾患に特有のたんぱく質を同定し、データベース化することによって、画期的な医薬品開発を支援する。

  ○ ナノメディシン関連研究の推進  21億円
 ナノテクノロジーを応用し、より精密な画像診断技術や生体適合性の高い新材質、より有効性・安全性の高い医療機器・医薬品の研究開発等を推進する。

  ○ 身体機能の解析・補助・代替のための機器開発の推進  7億円
 バイオテクノロジー、IT等の先端的要素技術を効率的に組み合わせ、生体機能を立体的・総合的に解析し、補助・代替する機能を持つ、新しい医療機器の開発を推進する。

(2)医薬基盤技術研究施設の整備(新規)  13億円
 医薬品・医療機器分野における、ゲノム科学、たんぱく質科学等の先端的技術を活用し、その成果を医薬品等の開発に橋渡しするための基盤的な研究開発及び研究資源の適切な提供を目的とする中核的な研究施設を整備する。
 また、平成17年度における独立行政法人医薬基盤研究所(仮称)への移行を図る。

第10 各種施策の推進

 国際社会への貢献等  283億円(287億円)

(1)国際機関を通じた国際的活動の推進  179億円

  ○ 世界保健機関(WHO)等を通じた活動の推進  113億円
 世界保健機関(WHO)、国連合同エイズ計画(UNAIDS)への拠出等を通じ、SARSをはじめとする新興感染症、エイズ及び結核等の再興感染症それぞれへの対応や食品の安全対策の国際的な活動を推進する。

  ○ 国際労働機関(ILO)を通じた活動の推進  63億円
 国際労働機関(ILO)への拠出等を通じ、労働者の基本的な権利の実現、人材育成、能力開発等の国際的な活動を推進する。

(2)開発途上国に対する国際協力等の推進   42億円

  ○ ASEAN諸国に対する保健医療、福祉、労働分野の協力  1.6億円
 ASEAN+日本社会保障ハイレベル会合の開催を通じた福祉、保健医療分野の政策協議の実施及び労使関係の安定化に関する支援など、ASEAN諸国への支援を行う。
 なお、技術協力事業が総合的かつ効率的に行われるよう、開発途上国の行政官等への研修等の一部について、国際厚生事業団(JICWELS)から国際協力事業団(JICA。平成15年10月から独立行政法人国際協力機構)に移管する。

(3)不就労・不法就労対策の強化等外国人雇用対策の推進  10億円
 日系人無業者による犯罪の増加等に対処するため、地元日系人コミュニティへの訪問相談等、日系人不就労対策を新たに実施し、不法就労の防止に向けた関係機関との情報交換体制を強化するとともに、外国人労働者の適正な就労を推進する。

 戦傷病者・戦没者遺族の援護等  619億円(669億円)

  ○ 戦没者遺骨のDNA鑑定の実施  45百万円
 DNAを抽出することができ、かつ埋葬者資料が残っており、DNA鑑定を行えば遺族が判明する可能性が高いなど一定の条件を満たす戦没者の遺骨について、引き続きDNA鑑定を実施する。

  ○ 戦傷病者等の労苦継承に関する検討(事業計画の設計)  50百万円
 戦傷病者等が体験した労苦を後世代に伝えることを目的とした戦傷病者等労苦継承事業(仮称)について、これまでの調査検討を踏まえ、事業計画の設計を行う。

 中国残留邦人等の支援  17億円(18億円)

  ○ 中国帰国者自立研修センターにおける職場体験学習の実施(新規)  6百万円
 帰国者2・3世の就労意欲の向上を目的として、自立研修センターにおける日本語研修を強化するとともに、新たに実際の職場を経験させることにより、日本の雇用慣行等の体得及び職場で必要な実践的日本語能力の習得を図る。

  ○ 中国帰国者支援・交流センターの充実  63百万円
 数多くの帰国者等が定着している九州地域における継続的自立支援の拠点として、九州中国帰国者支援・交流センター(仮称)を新たに開設し、より地域性を生かした支援体制の整備を図る。
 また、高齢帰国者の引きこもり防止施策として、高齢帰国者が恒常的に通える日本語教室を各地のボランティア等の協力を得て開催し、親しみやすい日本語習得及び他の帰国者等との交流の場を提供する事業をモデル的に実施する。

 原爆被爆者の援護  1,558億円(1,586億円)

  ○ 保健、医療、福祉にわたる総合的な施策の推進
 原爆被爆者に対する健康診断の実施、医療の給付及び諸手当の支給のほか、在外被爆者に対する支援、調査研究及び国立原爆死没者追悼平和祈念館の運営等を行う。

 生活衛生関係営業の指導及び振興の推進  27億円(19億円)

  ○ 生活衛生関係営業の振興のための支援
 生活衛生関係営業者の再生等を支援するため、新たに都道府県生活衛生営業指導センターに「再生支援等特別相談窓口」を設け、経営指導体制の強化を図るほか、地域住民の身近な場所である一般公衆浴場(銭湯)を活用し、健康増進の観点から入浴に関する正しい知識の普及や実践的な指導等を行う。






 義務的経費については、概算要求基準額(6,871億円)の範囲内に収めるための方策について予算編成過程において引き続き検討することとしている。
 このため、削減に必要な額の内訳は、従来のように概算要求段階において特定していないことから、平成16年度要求額としては、年金等の物価スライドに関する経費を除いて、削減・合理化を織り込んでいない額としている。


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