(1−11−I)
総合評価書
平成18年2月

政策体系 番号  
基本目標 安心・信頼してかかれる医療の確保と国民の健康づくりを推進すること
施策目標 11 全国民に必要な医療を保障できる安定的・効率的な医療保険制度を構築すること
I 適正かつ安定的・効率的な医療保険制度を構築すること
担当部局・課 主管部局・課 保険局総務課
関係部局・課 保険局保険課、国民健康保険課、医療課、調査課


1 評価対象の設定

評価対象 医療保険制度
評価の契機等  健康保険法等の一部を改正する法律(平成14年法律第102号)附則第2条第2項において、政府は、(1)保険者の統合及び再編を含む医療保険制度の体系の在り方、(2)新しい高齢者医療制度の創設、(3)診療報酬の体系の見直し、について、その具体的内容、手順及び年次計画を明らかにした基本方針を策定し、その基本方針に基づいて、できるだけ速やかに(新しい高齢者医療制度の創設についてはおおむね2年を目途に)、所要の措置を講ずるものとされている。これに基づき、平成15年3月に「医療保険制度体系及び診療報酬体系に関する基本方針」(以下「平成15年3月基本方針」という。)が閣議決定され、医療保険制度に関する改革については、平成20年度に向けて実現を目指すこととされている。
 また、「骨太の方針2005」(「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」(平成17年6月21日閣議決定))において、医療費適正化の実質的な成果を目指す政策目標を設定し、定期的にその達成のための必要な措置を講ずることとされ、政策目標と具体的な措置の内容とあわせて平成17年中に結論を得た上で、平成18年度医療制度改革を断行することとされている。
 さらに、「平成18年度予算編成の基本方針」(平成17年12月6日閣議決定)において、「「安心・信頼の医療の確保と予防の重視」、「医療費適正化の総合的な推進」、「超高齢社会を展望した新たな医療保険制度体系の実現」という基本的考え方の下、構造改革を推進し、平成18年度予算から反映させる」こととされている。


2 評価の方法等

評価の観点  我が国の医療制度は、急速な少子高齢化の進展、経済の低成長への移行、国民生活や意識の変化など、大きな環境変化に直面しており、国民皆保険を堅持し、将来にわたり持続可能なものとしていくためには、その構造改革が急務である。具体的には、「評価の契機等」に記載の各閣議決定等を踏まえ、以下のような観点に基づいて評価を行う。
1)医療費について
 我が国の医療費の動向を見ると、超高齢化が進行する中で、老人医療費を中心とする医療費は経済の伸びを相当に上回った伸び率で推移しており、今後も経済を上回った伸びを示すことが見込まれている。
 また、我が国においては、糖尿病等の生活習慣病の患者が増大し、加齢とともに増悪して、脳梗塞、心筋梗塞等を発症し、入院に至るケースが増加している。
 さらに、我が国の医療提供体制の構造として、平均在院日数の長さが指摘されており、また、都道府県ごとに医療費の格差がある。
 こうした中で、医療費の適正化に向けて、どのような対策を講ずるべきか。
2)高齢者医療制度について
 65歳以上の高齢者については、一人当たりの医療費が高く、国保(国民健康保険)、被用者保険(健康保険など)の制度間の偏在が大きい。
 また、現行の老人保健制度は、独立した保険制度ではなく、被用者保険と国保が、運営主体の市町村に対して費用を拠出する仕組みになっていることから、(1)高齢者自身の負担と若人による負担の分担のルールが不鮮明、(2)制度運営の責任主体が不明確等の問題点が指摘されている。
 こうした中で、高齢者医療制度の在り方について、どのように考えるべきか。
3)保険者について
 市町村国保(市町村を保険者とする国保)や組合健保(組合管掌健康保険)の小規模保険者について、財政運営の規模の適正化を図るため、どのような対策を講ずるべきか。
 また、政管健保(政府管掌健康保険)の組織形態の在り方について、社会保険庁改革の実施とあわせて、どのように考えるべきか。
収集した情報・データ及び各種の評価手法を用いて行った分析・測定の方法
1)医療保険制度の見直しについては、平成15年7月に社会保障審議会医療保険部会を設置し(再設置)、平成17年11月まで24回にわたり検討を行ってきた。
2)この間、同部会では、平成17年7月29日及び同年8月24日に中間的な議論の整理を行い、さらに、同年10月19日に厚生労働省として「医療制度構造改革試案」を公表した後、これを基に同部会で具体的な検討が進められ、同年11月30日に同部会としての「意見書」が取りまとめられた。
3)収集した情報・データとして、以下のような種々の資料を用いて、検討を行った。
   ・国民医療費の動向とそれに占める老人医療費の割合
   ・生活習慣病の医療費と死亡数割合
   ・年齢階級別受療率
   ・平均在院日数や医療提供体制の国際比較
   ・都道府県別一人当たり老人医療費
   ・病床数と老人医療費の相関
   ・医療機関における死亡割合の年次推移
   ・国保・被用者保険への世代別加入状況
   ・高齢者の疾病特性
   ・国保・政管健保・組合健保の財政状況  等


3 評価結果等

評価結果
(問題点及びその原因)
1)医療費適正化
 医療費の増加の主要因として、老人医療費の増加がある。老人医療費の増加の要因として、生活習慣病患者・予備群の増加による外来医療費の増加、在宅療養率の低さや病床数の多さに起因する入院の長期化、入院医療費の増加が上げられる。
 この対策を行っていく上で、生活習慣病の予防に有効な健診・保健指導が被用者保険の場合は被用者本人にとどまり、被扶養者には行き渡っていない、検診結果の活用がなされていないという問題点や、我が国は、ドイツなどの主要国と比べて、平均在院日数が長いが、高齢者が安心して退院できるよう在宅療養までの医療から介護に至る機能の分化、連携体制の構築が必要であるといった点が指摘されている。
 また、医療費には大きな都道府県格差があるが、これは地域における医療提供体制等に起因していると指摘されている。都道府県は病院の開設許可や、医療計画の策定、国保に対する指導監督権限等を有しており、都道府県単位で地域の実態に応じた対策を行い、医療費適正化の計画的な推進を図っていくことが必要である。
 さらに、医療費負担の世代間、世代内における公平を図るため、特に、1割の患者負担となっている70歳以上の高齢者のうち、現役並みの所得を有する者については、現役世代との負担の均衡の観点から、応分の負担を求めていく必要があるのではないかといった点や、療養病床に入院している高齢者については、介護保険において、食費、居住費の負担を求めていることとの均衡から、同様の負担を求めていく必要があるのではないか、といった点が指摘されている。
 以上のように、国民の求める医療の安心・信頼を確保しつつ、医療費適正化を総合的に推進する必要がある。
2)新たな高齢者医療制度の創設
 高齢者医療制度については、(1)で述べた背景から、平成15年3月基本方針において、「75歳以上の後期高齢者と65歳以上75歳未満の前期高齢者のそれぞれの特性に応じた新たな制度とする」こととされている。
 よって、以下のような論点に留意しつつ、高齢者に係る医療費を公平に負担する新たな仕組みを設けるなど、世代間の医療費負担の公平化や透明化を図るとともに、制度運営の責任主体の明確化を図る必要がある。
(1) 後期高齢者医療制度
新しい後期高齢者医療制度の運営主体
新しい後期高齢者医療制度の財政調整の仕組み
被保険者となる高齢者本人の負担の在り方
国保、被用者保険からの支援の在り方
(2) 前期高齢者医療制度
国保、被用者保険の制度間における前期高齢者の偏在による医療費負担の不均衡の調整の仕組み
3)保険者の再編・統合
 保険者については、(1)で述べた背景から、平成15年3月基本方針において、(1)保険者として安定的な運営ができる規模が必要であること、(2)各都道府県において医療計画が策定されていること、(3)医療サービスはおおむね都道府県の中で提供されている実態があること、を考慮し、都道府県単位を軸とした保険運営について検討することとされている。
 よって、以下のような論点に留意しつつ、各保険者の歴史的経緯や実績を十分尊重しながら、保険者の財政基盤の安定を図るとともに、保険者機能を発揮しやすくするため、都道府県単位を軸とした保険者の再編・統合を推進する必要がある。
  ・小規模保険者の再編・統合の推進
  ・国保の財政基盤の強化の在り方
  ・政管健保の組織形態等の在り方
今後の検討の方向性  上記の評価結果を踏まえ、各論点を検討した結果、以下の内容について、医療提供体制の見直しとあわせて、医療制度改革を行うこととし、平成17年12月1日には、政府・与党医療改革協議会において「医療制度改革大綱」が取りまとめられた。この内容に沿って、平成18年の通常国会に健康保険法等の一部を改正する法律案を提出する予定である(【】内は予定している施行日)。
.基本的な考え方
 医療制度について、国民皆保険を堅持し、将来にわたり持続可能なものとしていくため、医療提供体制の改革とともに、医療費適正化の総合的な推進、新たな高齢者医療制度の創設、保険者の再編・統合等所要の措置を講ずるものである。
.医療費適正化の総合的な推進
(1)医療費適正化計画の策定(中長期的な医療費適正化方策)
生活習慣病対策や長期入院の是正など中長期的な医療費適正化のため、国が示す基本方針に即し、国及び都道府県が計画(計画期間5年)を策定【平成20年4月】
(2)保険者に対する一定の予防健診等の義務付け
医療保険者に対し、40歳以上の被保険者等を対象とする糖尿病等の予防に着目した健診及び保健指導の実施を義務付け【平成20年4月】
(3)保険給付の内容・範囲の見直し等(短期的な医療費適正化方策)・現役並みの所得がある高齢者の患者負担を2割から3割に引上げ【平成18年10月】
療養病床に入院する高齢者の食費・居住費の負担を見直し【平成18年10月】
高額療養費の患者負担限度額の引上げ【平成18年10月】
傷病手当金・出産手当金の支給率等を見直し【平成19年4月】
70歳から74歳までの高齢者の患者負担を1割から2割に引上げ(65歳から69歳までの高齢者は3割負担で変更なし)【平成20年4月】
乳幼児に対する患者負担軽減(2割負担)の対象年齢を3歳未満から義務教育就学前まで拡大【平成20年4月】
(4)病床転換支援事業の創設【平成20年4月】及び介護療養型医療施設の廃止【平成24年4月】
.新たな高齢者医療制度の創設
(1)後期高齢者医療制度(仮称)の創設【平成20年4月】
75歳以上の後期高齢者の保険料(1割)、現役世代(国保・被用者保険)からの支援(約4割)及び公費(約5割)を財源とする新たな医療制度を創設
保険料徴収は市町村が行い、財政運営は都道府県単位で全市町村が加入する広域連合が実施
高額医療費についての財政支援、保険料未納等に対する貸付・交付など、国・都道府県による財政安定化措置を実施
(2)前期高齢者の医療費に係る財政調整制度の創設【平成20年4月】
65歳から74歳までの前期高齢者の給付費及び前期高齢者に係る後期高齢者支援金(仮称)について、国保及び被用者保険の加入者数に応じて負担する財政調整を実施
退職者医療制度について、平成26年度までの間における65歳未満の退職者を対象として、現行制度を経過措置として存続
.保険者の再編・統合
(1)国保の財政基盤強化
国保財政基盤強化策(高額医療費共同事業等)の継続【公布日(平成18年4月から適用)】
保険財政共同安定化事業(仮称)の創設【平成18年10月】
(2)政管健保の公法人化【平成20年10月】
健保組合の組合員以外の被用者を被保険者とする保険について公法人が管掌
都道府県ごとに、地域の医療費を反映した保険料率を設定
適用及び保険料徴収事務は、年金新組織において実施
(3)地域型健保組合【平成18年10月】
同一都道府県内における健保組合の統合を促進するため、統合後の組合(地域型健保組合)について、経過措置として、保険料率の不均一設定を認める
.その他
  ・保険診療と保険外診療との併用について、将来的な保険導入のための評価を行うかどうかの観点から再構成【平成18年10月】
  ・中央社会保険医療協議会の委員構成の見直し、団体推薦規定の廃止等所要の見直しを実施【平成19年3月】  等

 今般の医療制度改革においては、医療保険制度の見直しと一体のものとして医療提供体制の見直しが行われる予定である。本評価は、このうち前者に係るものである。




※ 以下は、原則としてフォローアップ時に記入する。

4 評価結果の反映状況

政策への
反映状況
 


5 その他

評価実施過程において明らかになった課題  
外部有識者等の活用状況  
パブリックコメント等を行った場合はその意見  

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