(9−1−II)
実績評価書
平成17年8月

政策体系 番号  
基本目標 高齢者ができる限り自立し、生きがいを持ち、安心して暮らせる社会づくりを推進すること
施策目標 老後生活の経済的自立の基礎となる所得保障の充実を図ること
II 公的年金制度の上乗せの年金制度(企業年金等)の適正な運営を図ること
担当部局・課 主管部局・課 年金局企業年金国民年金基金課
関係部局・課 年金局総務課


1.施策目標に関する実績の状況
実績目標1 厚生年金基金の健全な運営を確保すること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 平成14年4月より、厚生年金基金の代行部分を国へ返上し、上乗せ部分のみで確定給付型の企業年金を継続すること(代行返上)ができることとした(過去分の代行返上は平成15年9月施行)。
 「国民年金法等の一部を改正する法律(平成16年法律第104号)」(平成16年年金制度改正法)において、厚生年金基金の免除保険料率の凍結解除や、3年間の時限措置として責任準備金を満たしていなくても解散を可能とする措置を講ずる等、厚生年金基金の充実・安定化を図るための制度改正を行った(平成17年4月施行)。
(評価指標)
厚生年金基金の設立数 (件)
H12 H13 H14 H15 H16
1,801 1,737 1,656 1,357 838
(評価指標)
厚生年金基金の加入員数 (万人)

1,140

1,087

1,039

835

615
(評価指標)
代行返上した厚生年金基金数(上段:将来返上、下段:過去返上) (件)



481

771

815
203 641
(評価指標)
解散した厚生年金基金数 (件)

29

59

73

92

81
 うち特例解散した基金数 (件)
(評価指標)
積立水準の推移(上段:不足のあった基金数、下段:その割合) (件、%)

1,642

1,640

1,569


91 94 95
(評価指標)
財政再計算又は財政検証の結果について行った指導件数 (件)

55

22

61

33

67
(備考)
 年金局企業年金国民年金基金課調べ。積立水準の推移については、平成15年度以降の数値は集計中。また、厚生年金基金の特例解散については制度が未施行であるため、解散数を計上していない。
実績目標2 確定給付企業年金、確定拠出年金及び国民年金基金の普及の促進を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 公的年金に上乗せされる年金として、厚生年金基金に加え、確定拠出年金(平成13年10月施行)及び確定給付企業年金(平成14年4月施行)が加わり、また国民年金基金も併せて、加入者の老後の所得保障に対するニーズや事業主の実情等に応じた様々なタイプの年金が導入(加入)可能となっている。
 平成16年年金制度改正法において、確定拠出年金の拠出限度額の引上げ(平成16年10月施行)や企業年金のポータビリティの確保(年金通算措置、平成17年10月施行)等の措置を講ずる等、企業年金の充実・安定化を図るための制度改正を行った。
 なお、これらについては掛金の損金算入、給付の公的年金等控除適用など必要な税制上の優遇措置が講じられている。
(評価指標)
確定給付企業年金の実施件数 (件)
H12 H13 H14 H15 H16
15 316 992
(評価指標)
確定拠出年金(企業型)の実施件数(件)


70

361

845

1,402
(評価指標)
確定拠出年金(企業型)の加入者数 (千人)


88

325

708

1,255
(評価指標)
確定拠出年金(個人型)の加入者数 (千人)


0.4

14

28

46
(評価指標)
国民年金基金の設立数 (件)

72

72

72

72

72
(評価指標)
国民年金基金の加入員数 (万人)

76

79

77

79

75
(備考)
 年金局企業年金国民年金基金課調べ。


2.評価

(1) 現状分析
現状分析
 厚生年金基金は、昭和41年の創設以来順調に規模を拡大し、平成8年度末には1,883基金が設立されるに至った。しかし、近年の厳しい経済環境に伴う運用利回りの低下や、成熟度(受給者数/加入者数)の上昇等により財政が悪化し、掛金の追加負担が困難となるなどしたため、解散する厚生年金基金や代行返上により確定給付企業年金に移行する厚生年金基金が増加したこと等から、厚生年金基金数は平成9年度以降、加入員数は平成8年度以降、減少傾向にある。
 一方、確定給付企業年金及び確定拠出年金は、平成16年度末の確定給付企業年金の実施件数が前年度末の約3.1倍と大幅に増加し、また、平成16年度末の確定拠出年金(企業型)の実施件数及び加入者数並びに確定拠出年金(個人型)の加入者数が、それぞれ前年度末の約1.7倍、約1.7倍、約1.6倍に増加するなど、着実に普及しているところである。
 また、国民年金基金は、平成3年の制度開始以来、平成13年度末には加入者数が約79万人に達し、その後は堅調に推移している。

(2) 評価結果
政策手段の有効性の評価
 低金利や株価の低迷などで運用利回りが低下し、多くの厚生年金基金で積立不足が生じ、掛金の追加負担が困難となるなどしたために解散や確定給付企業年金への移行が増加し、厚生年金基金数及び加入員数は減少しているものの、基金は加入員の老後の所得保障を確保する上で依然として重要な制度である。そのため、国において、厚生年金基金が毎年行う財政検証に基づき、適切な掛金の引上げ等の指導を行い、財政の健全化を図っている。更に、厚生年金基金の安定化を図るため、平成16年年金制度改正において免除保険料率の凍結解除、過去期間代行給付に係る財政的措置、健全化計画を作成させて継続的に指導等を行うこととする指定基金制度等を導入した。
 確定給付企業年金及び確定拠出年金は、制度創設以来順調に普及しているが、これには、厚生年金基金における代行返上の導入(確定給付企業年金への移行)や確定拠出年金連絡会議を利用した周知活動、税制上の優遇措置等が大きな役割を果たしていると考えられる。更に、平成16年年金制度改正において確定拠出年金の拠出限度額の引上げや手続の簡素化、企業年金のポータビリティの確保(年金通算措置)等の措置を講ずることにより、これらの制度の利便性を高め、普及の促進を図っている。
 国民年金基金は制度創設以来堅調に加入員数が推移しているが、更なる加入促進を図るため、平成16年年金制度改正において、加入申出窓口を拡大する等の措置を講じた。
 事業主が拠出する掛金の損金算入や年金給付への公的年金等控除の適用など企業年金制度に対する税制上の優遇措置は普及に大きな役割を果たしており、特に、平成17年度税制改正大綱で決定された特別法人税の課税停止措置の3年間の延長(平成19年度まで)は、企業年金制度の健全な運営を確保するとともに、その普及を促進するために有効なものであると考えられる。
政策手段の効率性の評価
 近年の厳しい経済環境の中で残存する厚生年金基金の財政の健全化を図るため、国において、厚生年金基金が毎年行う財政検証に基づき、適切な掛金の引上げ等の指導を文書等で行っている。
 確定給付企業年金及び確定拠出年金は適切な普及促進策により順調に普及しているが、これらの制度は厚生年金基金、国民年金基金とともにそれぞれに特徴を有し、加入者や事業主の多様なニーズに応え得る選択肢を提供している。
 事業主が拠出する掛金の損金算入や年金給付への公的年金等控除の適用など企業年金制度に対する税制上の優遇措置は、老後の備えに対する民間の自主的な努力を側面から支援するものである。
総合的な評価
 厚生年金基金は、近年の運用利回りの低下等から基金数及び加入員数は減少しているものの、加入員の老後の所得保障を確保する上で依然として重要な制度であり、国において文書等による指導を適切に行い、財政の健全化を図っている。また厚生年金基金の安定化を図るため、平成16年年金制度改正において免除保険料率の凍結解除、過去期間代行給付に係る財政的措置、指定基金制度等を導入した。今後とも、これらの手続を活用することにより、厚生年金基金に対し、健全化・安定に向けた着実な取組を求めていくこととしている。
 新しい選択肢として導入された確定給付企業年金及び確定拠出年金は、確定拠出年金連絡会議等を利用した周知活動等により着実に増加した。更に平成16年年金制度改正において、確定拠出年金の拠出限度額の引上げや企業年金のポータビリティの確保(年金通算措置)等、事業主や加入者の利便性を高める制度改正が行われたところである。今後は、厚生年金基金及び国民年金基金に加え、確定給付企業年金及び確定拠出年金の普及をより一層進めていくことが重要である。
 企業年金制度に対する税制上の優遇措置は、その普及に大きな役割を果たしており、特に、平成17年度税制改正大綱で決定された特別法人税の課税停止措置の3年間の延長は、企業年金制度の健全な運営を確保するとともに、その普及を促進するために有効なものであると考えられる。
評価結果分類 分析分類
(2) (2)


3.特記事項
(1) 学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
 社会保障審議会年金部会「年金制度改正に関する意見」(平成15年9月12日)(別紙1参照)。
(2) 各種政府決定との関係及び遵守状況
 「規制改革・民間開放推進3か年計画」(平成16年3月19日閣議決定)(別紙2参照)。
(3) 総務省による行政評価・監視等の状況
 なし。
(4) 国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
 確定給付企業年金法案に対する附帯決議(平成13年5月25日衆議院厚生労働委員会、同年6月7日参議院厚生労働委員会)、確定拠出年金法案に対する附帯決議(平成13年6月8日衆議院厚生労働委員会、同年6月21日参議院厚生労働委員会)(別紙3参照)。
(5) 会計検査院による指摘
 なし。

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