(3−2−III)
実績評価書
平成17年8月

政策体系 番号  
基本目標 労働者が安心して快適に働くことができる環境を整備すること
施策目標 労働者の安全と健康を確保すること
III 労働衛生対策の推進を図ること
担当部局・課 主管部局・課 労働基準局安全衛生部労働衛生課
関係部局・課 労働基準局安全衛生部化学物質対策課


1.施策目標に関する実績の状況
実績目標1 じん肺、職業がん等の重篤な職業性疾病、死亡災害に直結しやすい酸素欠乏症、一酸化炭素中毒等を減少させるとともに業務上疾病者数を前年と比較し減少させること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 職業性疾病の予防推進を図るため、労働衛生について改善措置を講ずる必要があると認められる事業場を指定し指導等を行う衛生管理特別指導制度等を行うとともに、化学物質に係る健康障害の予防を図るため、化学物質管理支援事業等を実施し、事業場における化学物質の自主的管理の推進の支援等を行う。
(評価指標)
業務上疾病者数
H12 H13 H14 H15 H16
8,083 7,984 7,502 8,055 7,609
(備考)
厚生労働省調べ
(評価指標)
酸素欠乏症等死亡者数
H12 H13 H14 H15 H16
16 8 22 3 5
(備考)
厚生労働省調べ
(評価指標)
一酸化炭素中毒死亡者数
H12 H13 H14 H15 H16
5 4 4 7 4
(備考)
厚生労働省調べ
(評価指標)
化学物質管理支援事業の利用状況(化学物質管理者研修受講者数)
H12 H13 H14 H15 H16
6,175 4,362 4,076 1,451 4,035
(備考)
中央労働災害防止協会調べ
実績目標2 過重労働による健康障害防止、心の健康づくりを含めた健康の確保及び産業保健に対する支援を図ること。
(実績目標を達成するための手段の概要)
 健康の確保及び産業保健に対する支援を図るため、(1)中小規模事業場健康づくり事業による中小規模事業場における健康づくりの支援、(2)メンタルヘルス対策の推進事業によるメンタルヘルス指針に関する研修、(3)産業保健推進センターにおける産業保健スタッフに対する研修等、(4)過重労働総合対策の普及・定着のための活動を実施する。
(評価指標)
中小規模事業場における心とからだの健康づくり(THP)の普及状況
H12 H13 H14 H15 H16
(THP導入指導の実施事業場数) 822 1,385 1,831 2,049 1,783
(THP導入指導の実施対象者数) 29,047 37,907 45,981 47,732 34,197
(小規模事業主THP体験研修実施回数) 191 220 179 81 68
(小規模事業主THP体験研修参加人数) 2,964 2,596 1,452 679 476
(備考)
中央労働災害防止協会調べ
(評価指標)
メンタルヘルス指針の普及状況
H12 H13 H14 H15 H16
(研修事業開催回数) 79 74 68 69
(研修事業参加者数) 6,057 5,048 4,462 4,536
(モデル事業場数) 52 61 61 61
(モデル事業場におけるメンタルヘルスの専門家による取組指導回数) 446 936 849 894
(備考)
中央労働災害防止協会調べ
(評価指標)
産業保健推進センターの利用状況
H12 H13 H14 H15 H16
(産業保健スタッフに対する研修の実施回数) 1,640 1,738 2,000 2,307 2,574
(事業者等からの相談件数) 11,362 9,142 9,098 9,552 9,897
(備考)
労働者健康福祉機構調べ
(評価指標)
過重労働による健康障害防止対策の状況(過重労働総合対策関係パンフレット配布件数)
H12 H13 H14 H15 H16
100万部 60万部 56万部
(備考)
厚生労働省調べ


2.評価

(1) 現状分析
現状分析
 業務上疾病については、依然としてじん肺や酸素欠乏症等の職業性疾病が後を絶たない。また、一般定期健康診断の結果何らかの所見を有する労働者の割合は年々増加する傾向にあり、仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じる労働者が6割を超えている。さらに、過重労働による健康障害や、精神障害として労災認定される件数も高い水準で推移している。
 このような中で、平成15年3月に第10次労働災害防止計画が策定され、新たにメンタルヘルス対策及び過重労働による健康障害の防止対策が、重点対象分野として追加された。

(2) 評価結果
政策手段の有効性の評価
(実績目標1について)
 実績目標を達成するために実施している各手段のうち、衛生管理特別指導制度については、件数が170事業場であり、指導により各事業場において改善計画が作成されるなど、効果を上げている。
 また、化学物質管理者研修については、平成16年度には、4,035人に対して研修を行うなど一定の化学物質管理に係る人材の育成がなされた。
 一酸化炭素中毒対策については、災害の発生状況等を踏まえて、平成16年には、アーク溶接における対策及び鉄鋼業における定期自主検査の徹底を図った。
 以上の結果、業務上疾病者数が平成16年度は7,609人に減少し、また、一酸化炭素中毒死亡者数も減少するなどの効果が見られたことから、各手段は目標達成に向けて有効であった。
 なお、平成17年度は、石綿を原因とする労働災害が着目されたことから、石綿による健康被害が生じている事業場に対する立入調査、石綿を製造・取扱っている事業場に対する監督指導等、石綿業務に従事していた労働者に対する健康診断の実施、石綿暴露防止等に関する相談窓口の設置等を行っている。
(実績目標2について)
 実績目標を達成するために実施している各手段のうち、中小規模事業場健康づくり事業については、予算削減の影響により対象を導入の進んでいない事業場に絞ったため全体として事業規模は縮小したが、平成16年度は1,783事業場に対して指導を実施し、実績目標の達成に寄与している。
 また、メンタルヘルス指針の研修事業においても、69回開催(4,536名参加)し、モデル事業場として新たに61事業場を選定するとともに、指導を894回実施するなど、実績目標の達成に寄与している。
 産業保健推進センターが行う研修は、平成16年度は2,574回の実施と増加傾向にあり、健康管理一般や作業管理、メンタルヘルスに関することなど幅広い相談を行っており、目標達成に向けて成果が上がっている。
 過重労働による健康障害防止対策については、事業場に対してパンフレットの配布による普及、定着が図られているほか、労働者本人とその家族を対象とした労働者の疲労蓄積度チェックリストをインターネット等により広く周知し、多数の労働者に利用されている。
政策手段の効率性の評価
(実績目標1について)
 実績目標を達成するために実施している各手段については、指定事業場が自ら改善計画を作成するなど、実施に当たり事業主の自主的取り組みを促す手法を取っており、効率性の高い手段となっている。
 また、化学物質管理者研修については、対象を限定し災防団体を通じて研修を実施するなど、効率的な事業実施を行っている。

(実績目標2について)
 実績目標を達成するために実施している各手段については、対策の遅れている中小規模事業場への支援の充実、モデル事業場による計画目標の作成、過去の事例の公表、事業場における労働衛生管理の中核である産業保健スタッフの能力向上など健康確保対策を推進する上で効率性の高い手段となっている。また、中小規模事業場健康づくり事業についてはこれまでの成果として一定の導入が進んだこと、予算の削減などから事業規模を縮小したものの、参加事業場に対するアンケート調査を行い、本事業に対する評価、意見、要望等を把握し、その結果を事業に反映させるなど各手段について状況に応じて効率的に行っている。
総合的な評価
 業務上疾病者数は途中多少の増減はありつつも、この20年間で約半数にまで減少講じてきた労働衛生対策は、長期的に見れば一定の成果を上げてきたものであると評価できる。
 また、第10次災防計画において新たに重点対象分野に加わったメンタルヘルス対策、過重労働による健康障害防止対策については、重点対策として着実に実施しており、施策目標の達成に向けて進展があった。
 今後とも職業性疾病対策については、状況を踏まえて必要な見直しを行いつつ積極的に推進するとともに、今後は、過重労働による健康障害や精神障害として労災認定される件数も高い水準で推移していることから、過重労働対策、メンタルヘルス対策のさらなる充実を図る必要がある。
 また、石綿ばく露防止対策について、今後、さらに建築物の解体作業等における対策の充実等を図り、作業者等へのばく露防止に資するものとする。
評価結果分類 分析分類
(2) (2)


3.特記事項
(1)  学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
なし。

(2)  各種政府決定との関係及び遵守状況
なし。

(3)  総務省による行政評価・監視等の状況
なし。

(4)  国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
なし。

(5)  会計検査院による指摘
 中小規模事業場健康づくり事業の実施にあたり、健康測定における医学的検査に係る経費の負担内容を明確にし、その支払いを適切に行うよう指摘を受け、改善した。(平成15年度決算検査報告)

トップへ