(3−2−II)
実績評価書
平成17年8月

政策体系 番号  
基本目標 労働者が安心して快適に働くことが出来る環境を整備すること
施策目標 労働者の安全と健康を確保すること
II 産業安全水準の一層の向上を図ること
担当部局・課 主管部局・課 労働基準局安全衛生部安全課
関係部局・課  


1.施策目標に関する実績の状況
実績目標1 建設業における労働災害について前年度と比較し減少を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 近年、建設業における労働災害は減少傾向にあるものの、依然として全産業における休業4日以上の死傷者数は2割以上を占めている。このため、専門工事業者、中小総合工事業者、木造家屋等低層住宅建築工事業者に対し、それぞれの実態を踏まえた、安全管理能力の向上等のための指導・支援を行う。
(評価指標)
建設業における労働災害発生状況(建設業における休業4日以上の死傷者数)
H12 H13 H14 H15 H16
33,599 32,608 30,650 29,263 28,414
(備考)
厚生労働省調べ
実績目標2 重点対象分野における労働災害防止活動の促進を図ること。
(実績目標を達成するための手段の概要)
 労働災害の一層の減少を図るためには、労働災害が多発している分野での労働災害防止対策の普及・活用促進を行うことが必要であることから、労働災害の多い建設業での労働災害防止対策、交通労働災害防止のための対策を積極的に講じていくことが求められている。
 これを踏まえ、重点対象分野における労働災害防止を図るため、建設業での労働災害防止対策として実績目標1に係る各手段を実施するとともに、交通労働災害防止対策として交通労働災害防止対策促進事業(交通労働災害を防止するため、モデル事業場の育成等を推進)を実施している。また、総合的な改善整備を必要とする事業場を安全管理特別指導事業場として個別に指定し、安全衛生改善計画の作成をさせるともに、継続的な安全指導等を実施している。
(評価指標)
専門工事業者安全管理活動等促進事業の利用状況等
H12 H13 H14 H15 H16
(安全衛生教育実施回数) 643 641 628 372 326
(安全衛生教育参加者数) 9,993 9,993 10,285 11,487 6,019
(備考)
・厚生労働省調べ
・専門工事業者等安全管理活動等促進事業については平成15年度に事業内容を一部見直しており、これに伴い安全衛生教育の実施回数を減らしている。
(評価指標)
木造家屋等低層住宅建築工事安全対策推進モデル事業の利用状況等
H12 H13 H14 H15 H16
(教育研修会開催回数) 71 60 53 52 42
(教育研修会参加者数等) 3,836 2,809 2,647 2,304 1,326
(備考)
・厚生労働省調べ
(評価指標)
中小総合工事業者指導力向上事業の利用状況等
H12 H13 H14 H15 H16
(現場所長研修会開催回数) 104 143 140 93 47
(現場所長研修会参加者数等) 3,641 4,412 5,063 3,203 1,326
(店社安全衛生管理担当者研修開催回数) 109 106 105 92 53
(店社安全衛生管理担当者研修参加者数) 5,024 4,592 4,539 3,673 2,552
(備考)
・厚生労働省調べ
(評価指標)
交通労働災害防止対策推進事業の利用状況等(指導員による個別事業場への指導件数)
H12 H13 H14 H15 H16
2,767 2921 1,904 2,217 2,017
(備考)
・厚生労働省調べ
(評価指標)
労働安全管理水準の改善の状況
H12 H13 H14 H15 H16
(安全管理特別指導対象事業場における度数率(対前年増減率)) 3.59 3.96 4.32 4.01 (集計中)
(▲59%) (▲59%) (▲57%) (▲59%)
(強度率(対前年増減率)) 0.48 0.42 0.53 0.29 (集計中)
(▲85%) (▲85%) (▲84%) (▲92%)
(備考)
・厚生労働省調べ
・度数率とは、100万延べ労働時間当たりの労働災害による死傷者数であり、その算式は以下のとおり。
 度数率=(労働災害による死傷者数/延労働時間数)×1,000,000
・強度率とは、1,000延労働時間当たりの労働損失日数をもって災害の重さの程度を表したものであり、その算式は以下のとおり。
 強度率=(労働損失日数/延労働時間数)×1,000


2.評価

(1) 現状分析
現状分析
 労働災害による死傷者数は、昭和43年の172万人を頂点として長期的に減少してきているが、今なお年間約53万人もの労働者が被災し、そのうち休業4日以上の死傷者が約12万人を占めている。また、死亡者数については、昭和36年の6,712人を頂点として、労働安全衛生法が施行された昭和47年から4年間で半減に近い減少を示してから漸減傾向にあったが、平成10年に2,000人の壁を破って以降、着実に減少しつつある。しかし、今なお年間1,600人以上もの労働者が労働災害により死亡している。他方、一度に3人以上が被災する重大災害の件数は昭和60年以降長期的には増加傾向にあり、平成16年においても重大災害が頻発した。
 平成16年の労働災害による死亡者数1,620人を、業種別にみると、建設業が594人と最も多く、また、事故の型別にみると、交通事故が444人と最も多くなっている。

(2) 評価結果
政策手段の有効性の評価
 第10次計画においては、重点対象分野における労働災害防止対策として建設業対策及び交通労働災害防止対策を掲げている。
 建設業においては、休業4日以上の死傷者数は、29,263人(平成15年)から28,414人(平成16年)と減少している。これは、専門工事業者、中小総合工事業者、木造家屋等低層住宅建築工事業者を対象とする研修会の開催回数は予算の減少の影響により減少したものの、必要に応じてその内容、実施方法等の改善を図っており、これらの研修会の開催等による指導・支援により、対象となった事業者の安全衛生水準の向上が図られたことによる寄与が大きく、当該施策は一定の成果を上げている。
 また、交通事故の死亡者数は、498人(平成15年)から444人(平成16年)に減少し、交通労働災害については、交通労働災害防止対策推進事業における指導員による個別事業場への指導を実施することにより、対象となった事業者の安全衛生水準の一層の向上が図られたことによる寄与が大きく、当該施策は一定の成果を上げている。
 また、平成15年度の安全管理特別指導対象事業場については、指導前の平均度数率9.84から指導中は4.01(対前年度59%減)となり、指導前の平均強度率が3.66から指導中は0.29(対前年度92%減)と大幅に減少しており、一定の成果を上げている。
政策手段の効率性の評価
 建設業における労働災害防止対策を推進するために、建設業の産業構造を考慮し、専門工事業者に対して自律的な安全管理能力を高めることを目的とする「専門工事業者安全管理活動等促進事業」、建設業における労働災害のうち高い割合を示す木造家屋建築工事における墜落災害を防止することを目的とする「木造家屋等低層住宅建築工事安全対策推進モデル事業」及び中小総合工事業者に対する関係請負人に対する労働災害防止に関する指導力向上を図ることを目的とする「中小総合工事業者指導力向上事業」を行うなど、対象、目的を絞った事業を行い、効率的なものとしている。また、これに加えて、必要に応じて研修内容、実施方法等の改善を図ることにより、事業をより効率的なものとしている。
 また、交通労働災害防止対策を推進するため、「交通労働災害防止対策推進事業」においては、交通労働災害を発生させる等安全管理上問題があると考えられる個別事業場に対し、交通労働災害防止のための管理体制の確立や適正な走行管理の実施等「交通労働災害防止のためのガイドライン」に定める事項について個々の事業場の問題点に即した指導を実施するなど、対象の選定、指導内容について効率的なものとしている。
 さらに、事業場における安全管理水準の向上を図るため、総合的な改善措置が必要であると認められる事業場を個別に指定し、安全衛生改善計画の作成をさせるとともに、継続的な安全指導等を実施するなど、対象の選定、指導内容について効率的なものとしている。
総合的な評価
 建設業における労働災害による死傷者数については、第10次計画期間中においても減少傾向にあること、また、同期間の交通労働災害による死亡者数も減少していることから、これらの分野における労働災害防止対策は一定の効果を上げているところであり、目標の達成に向けて進展があった。しかしながら、労働災害による死亡者数は、業種別では建設業が最も多く全体の約3分の1を占めており、また、事故の起因物別では交通労働災害が最も多く全体の約3割を占めているなど、産業安全対策の推進を図るに当たっては、建設業における死亡災害の主な原因である墜落災害に対する防止対策を一層推進するなど、労働災害が多発している分野における労働災害防止対策を推進していくことは適切である。
評価結果分類 分析分類
(2) (2)


3.特記事項
(1)  学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
 第10次労働災害防止計画については、平成14年11月20日に労働政策審議会安全衛生分科会において審議された第10次労働災害防止計画骨子案をもとに、第10次労働災害防止計画案を策定し、平成15年1月24日に開催された労働政策審議会安全衛生分科会に諮問、同年2月2日に開催された労働政策審議会安全衛生分科会において「妥当」との答申を得た。

(2)  各種政府決定との関係及び遵守状況
なし。

(3)  総務省による行政評価・監視等の状況
なし。

(4)  国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
なし。

(5)  会計検査院による指摘
なし。

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