(2−1−I)
実績評価書
平成17年8月

政策体系 番号  
基本目標 安心・快適な生活環境作りを衛生的観点から推進すること
施策目標 食品の安全性を確保すること
I 食中毒等食品による衛生上の危害の発生を減らし、食品の安全性の確保を図ること
担当部局・課 主管部局・課 医薬食品局食品安全部監視安全課
関係部局・課  


1.施策目標に関する実績の状況
実績目標1 食中毒発生を減少させること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 HACCP(※)の考え方に基づいた「大量調理施設衛生管理マニュアル」の普及・定着及び都道府県等による事業者に対する監視指導の徹底により給食施設等大量調理施設を原因とする食中毒の発生を予防する。

※ HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point:危害分析重要管理点)は、食品の衛生管理の手法であり、HACCPの手法では、最終製品の検査に重点をおいた従来の衛生管理の方法とは異なり、食品の安全性について危害を予測し(Hazard Analysis)、危害を管理することができる工程を重要管理点(Critical Control Point)として特定し、重点的に管理することにより、工程全般を通じて危害の発生を防止し、製品の安全確保を図るものである。

 ○ 関連する経費(平成16年度予算額)
 ・ 食品安全対策推進費  6,934千円
 ・ 食品高度衛生管理方式適正推進費  9,761千円
(評価指標)
食中毒統計を基礎に施策に対応した健康危害発生数(件)
H12 H13 H14 H15 H16
135 113 117 134 142
(備考)
 食中毒統計(厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課調べ)による50名以上の食中毒件数
実績目標2 HACCPによる衛生管理を普及すること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 HACCPの手法により衛生管理が行われる総合衛生管理製造過程についての承認審査を円滑に実施すること等により、総合衛生管理製造過程の承認取得率を向上させる。
 ○ 関連する経費(平成16年度予算額)
 ・ 食品高度衛生管理方式適正推進費 9,761千円
(評価指標)
業種毎の総合衛生管理製造過程承認取得率(%)
H12 H13 H14 H15 H16
 乳・乳製品 38.00 38.99 42.49 45.86 47.68
 食肉製品 4.19 4.28 4.64 4.01 3.92
 魚肉練り製品 0.32 0.60 0.57 0.59 0.60
 容器包装詰加圧加熱殺菌食品 0.33 0.85 0.88 1.03 0.92
 清涼飲料水 0 0.56 1.37 1.80 2.27
(備考)
  総合衛生管理製造過程承認取得率(%) 総合衛生管理製造過程の承認施設数
営業許可施設数
× 100

 参考文献:業種別営業許可件数(衛生行政報告例による)
実績目標3 食品等の違反率を減少させること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 都道府県等による事業者への監視指導を徹底する。法制度、規制に関する情報の発信、周知徹底を行う。
 ○ 関連する経費(平成16年度予算額)
 ・ 食品安全監視強化費 5,138千円
(評価指標)
食品の違反率(%)
H12 H13 H14 H15 H16
1.06 1.13 1.00 1.07  
(備考)
  違反率(%)    不良検体数   
試験した収去検体数
× 100   (衛生行政報告例による)

 ※H11年は1.41%。H16年の違反率は現在集計中。
実績目標4 全頭検査などBSE対策を含め、と畜場における衛生対策を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 BSE全頭検査を着実に実施するとともに、食肉処理時の特定部位(頭部、せき髄、回腸遠位部)の確実な除去・焼却を行う。
 ○ 関連する経費
 ・ BSE検査事業費(平成16年度交付決定額) 2,745百万円・
 ・ と畜場等衛生対策費(平成16年度予算額) 2,257千円
(評価指標)
全頭検査の実施状況(頭)
H12 H13 H14 H15 H16
52万 125万 125万 127万
(備考)
全頭検査は平成13年度(平成13年10月18日)からの事業である。


2.評価

(1) 現状分析
現状分析
(実績目標1及び3)
 平成10年以降平成13年まで、患者数50人以上の食中毒件数を一貫して減少させてきたが、平成14年以降は増加傾向にある。これは、ノロウイルスによる食中毒の増加が原因と考えられる(平成14年:44件→平成15年:50件→平成16年:62件)。ノロウイルス食中毒については、近年、各地方衛生研究所等でノロウイルスの検査が可能となったことがその増加の一因と考えられるが、科学的な予防対策の研究も課題となっている。また、貝類の病原微生物、中国産野菜の残留農薬などの輸入食品の違反事例が発生している。このような事件に対して、関係都道府県等と密接な協力・連携のもと、事件の未然防止や速やかな原因究明による被害の拡大防止等、迅速な対応が求められている。
(実績目標2)
 近年、国民から加工食品のより確実な安全性が求められており、食品製造者は科学的根拠に基づく高度な衛生管理手法を導入し、自主管理の一層の推進を図ることが重要になってきている。
 このため、食品製造施設に対し、国際的にも導入が推進されているHACCPの手法による衛生管理の導入を推進し、食品衛生のより一層の向上を図る必要がある。
(実施目標4)
 平成13年の我が国におけるBSEの発生により、食肉の安全性確保のより一層の徹底が求められている。

(2) 評価結果
政策手段の有効性の評価
(実績目標1)
 平成16年は、平成15年より患者数50人以上の食中毒件数は増加した。これはノロウイルスによる食中毒の増加が原因と考えられるが、ノロウイルス食中毒については、現在、発生予防対策に資するための調査研究を進めているところであり、今後これらの調査研究により有効な対策が確立すれば政策手段に加える必要がある。
 一方、大規模調理施設など大規模な食中毒が発生し得る施設への監視指導の強化により、平成16年は平成15年に比べ、給食施設や仕出店等の大量調理施設を原因とする食中毒件数(71件→59件)及び患者数50人以上の食中毒事件の患者総数(17,113人→15,755人)はともに減少しており、政策手段について一定の効果が確認された。今後も、引き続き「大量調理施設衛生管理マニュアル」の普及、監視指導の徹底等を行う必要がある。なお、全体の食中毒件数(※)は近年減少傾向または横ばいで推移している。
(※ 食中毒件数:平成12年(2,247件)、平成13年(1,928件)、平成14年(1,850件)、平成15年(1,585件)、平成16年(1,666件))
(実績目標2)
 総合衛生管理製造過程の承認審査を円滑に実施すること等により、平成16年では、乳・乳製品業、魚肉練り製品業及び清涼飲料水業の3つの業種について、承認取得率を上昇させた。特に、乳・乳製品及び清涼飲料水の製造・加工業者の承認取得率の上昇が著しく、HACCPによる衛生管理の普及に効果があった。
(実績目標3)
 平成11年以降、夏期及び年末の一斉取締り等を含む都道府県等の食品衛生監視員による事業者に対する監視指導により、食品衛生法及び関連法令の遵守を徹底させてきており、平成11年以降、違反率は減少傾向(1.41%(平成11年)→1.07%(平成15年))にあることから、これらの施策により食品等の違反率の減少が推進されたと認められる。また、平成15年5月の食品衛生法の改正により、事業者の責務が明確化され、食品の安全性確保に係る事業者自らの努力を促しているところである。
(実施目標4)
 全頭検査の着実な実施と特定部位の確実な除去・焼却を徹底しており、平成13年度には2頭、平成14年度には4頭、平成15年度には3頭、平成16年度には3頭のBSEり患牛を発見し、焼却処分とした。このように、BSE対策に一定の効果が見られる。
政策手段の効率性の評価
(実績目標1)
 1事件当たりの患者数が多い給食施設、旅館、仕出屋等の大量調理施設への監視指導を強化することにより、平成16年は、患者数50人以上の食中毒事件のうち、仕出店、給食施設等の大量施設を原因とするもの及び食中毒患者数が平成15年に比べ減少していることから、効率的に食中毒の発生を防止しているといえる。引き続き監視指導の更なる強化及び効率化を行い、事業者の法令遵守の徹底、衛生意識の向上を図る必要がある。
(実績目標2)
 HACCPに関する研修を行い、総合衛生管理製造過程の承認審査及び施設に対する監視指導を行う地方厚生局及び都道府県等の食品衛生監視員の資質の向上を図ると共に、関係団体の協力を得て、事業者に対してもHACCPに関する知識の普及に努めており、承認取得施設を増加させてきている。このことから、効率的に衛生管理の普及が進められているといえる。
(実績目標3)
 食品の生産段階の初期から衛生管理対策を実施することにより、効率的に食品の違反率を低下させている。また、事業者による食品衛生法及び関係法令の遵守は、日頃からの監視指導の徹底によるものと考えられる。
(実績目標4)
 流通段階における検査に比べ、食肉処理時に検査を実施することにより、効率的かつ確実にBSEり患牛の発見が可能である。
総合的な評価
 総合衛生管理製造過程の承認取得率の向上、BSE検査の着実な実施など、食品の安全性の確保に関し、着実に成果を上げており、4つの実績目標のうち1つのみ達成されなかったものの他は全て達成されており、施策目標の達成に向け大きな進展があったものと評価できる。また、食中毒件数及び食品の違反率については、単年度の動向のみならず、中長期的な推移に着目して評価することが適当であると考えられ、近年減少傾向または横ばいで推移していることから、目標の達成に向け進展していると言える。
 しかしながら、、全体としてみれば、改善の方向に向かっている一方で、患者数50人以上の食中毒事件数が増加するなど、引き続き警戒が必要な状況があり、大規模・広域食中毒対策、大量調理施設における高度な衛生管理手法の導入の推進、ノロウイルス対策などの個別課題については、一層の対策強化が必要であると考えられる。
評価結果分類 分析分類
(2) (2)


3.特記事項
(1) 学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
 食中毒については薬事・食品衛生審議会において、HACCPについては総合衛生管理製造過程に係る評価検討会において、それぞれ専門家の意見を聞いているところである。
(2) 各種政府決定との関係及び遵守状況
 なし。
(3) 総務省による行政評価・監視等の状況
 なし。
(4) 国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
 なし。
(5) 会計検査院による指摘
 なし。

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