(1−5−V)
実績評価書
平成17年 月

政策体系 番号  
基本目標 安心・信頼してかかれる医療の確保と国民の健康づくりを推進すること
施策目標 感染症など健康を脅かす疾病を予防・防止するとともに、感染者等に必要な医療等を確保すること
V 適正な臓器移植の推進等を図ること
担当部局・課
主管部局・課 健康局疾病対策課臓器移植対策室
関係部局・課  


1.施策目標に関する実績の状況
実績目標1 臓器移植法に基づく適正な臓器移植の普及・啓発を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 (1)  眼球以外の臓器については(社)日本臓器移植ネットワーク(以下「ネットワーク」という。)が、眼球については全国54のアイバンクが、それぞれ普及啓発・連絡調整等のあっせんを行っている(ネットワークの事業及びアイバンクの設備整備への国庫補助を実施)。
 平成16年度には、ネットワークより、各医療保険の被保険者、警察署、郵政公社及び地方公共団体等に対し、臓器提供意思表示カード・シール等の備付けについて働きかけを行っている。
 また、移植医療に関する理解を深めるために、厚生労働省より、全国の中学校等に対し、臓器移植に関する教育用の普及啓発パンフレットを作成し、送付している(約160万部を送付)。
 (2)  毎年10月を「臓器移植普及推進月間」と位置付け、各都道府県等の協力の下、国民大会を実施するなど、重点的に普及啓発事業を展開している。
 ○ 関連する経費(平成16年度予算額)
あっせん業務関係事業費  285,644千円
あっせん事業体制整備費  123,134千円
普及啓発事業費  62,935千円
教育用普及啓発資料作成費  20,831千円
(評価指標) H12 H13 H14 H15 H16
 臓器提供意思表示カード等の配布枚数          
 カード(千枚) 10,454 6,864 6,583 8,118 7,123
 シール(千枚)
平成16年度に従来の保険証用シールと運転免許証用シールを統合。
620 2,096 1,629 4,136 3,756
心臓移植実施件数(件) 6 3 4 2 8
肺移植実施件数(件) 4 4 3 3 6
肝臓移植実施件数(件) 7 5 5 3 4
腎臓移植実施件数(件) 126 161 118 154 166
膵臓移植実施件数(件) 3 5 2 5 5
小腸移植実施件数(件) 1 0 0 0 0
角膜移植実施件数(件) 1,525 1,494 1,509 1,490 1,442
(備考)
   臓器移植法の施行は平成9年10月(同法施行前は、角膜及び腎臓の移植に関する法律により、角膜及び腎臓の移植が行われていた)。
資料出所: (社)日本臓器移植ネットワーク(角膜移植数については財団法人日本アイバンク協会。なお、角膜移植数については、昨年度の実績評価書により報告した時点から修正が加えられている。)
実績目標2 造血幹細胞移植の普及・啓発を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 (1)  造血幹細胞移植のうち、骨髄移植については(財)骨髄移植推進財団(以下「財団」という。)が普及啓発・連絡調整等のあっせん業務を行っている。さい帯血移植については、全国で11のさい帯血バンクがさい帯血の採取・分離・保存を行っており、各バンクの連合体である日本さい帯血バンクネットワークがホームページ上で保存さい帯血の公開や普及啓発を行っている(財団、地方公共団体及び日本赤十字社に対し国庫補助を実施している。)。
 (2)  毎年10月を「骨髄バンク推進月間」と位置付け、各都道府県等の協力の下、重点的に普及啓発事業を展開している。
 (3)  平成17年3月に骨髄ドナー登録の登録要件を変更したことから、厚生労働省及び財団より、地方公共団体等に対し、当該変更に係る周知及び普及啓発活動に対する協力依頼を行っている。

  ○関連する経費(平成16年度予算額)
〔骨髄移植関係〕
 ・ あっせん業無関係事業費  329,931千円
 ・ あっせん業務体制整備費  11,782千円
 ・ 普及啓発事業費  108,002千円
〔さい帯血移植関係〕
 ・ さい帯血保存管理業務費  579,188千円
 ・ さい帯血情報管理費  40,950千円
(評価指標) H12 H13 H14 H15 H16
骨髄提供希望登録者数(人) 135,873 152,339 168,413 186,153 204,710
うち新規登録者数(人) 15,671 24,661 22,740 24,689 26,687
骨髄移植実施件数(件) 715 749 739 737 851
保存さい帯血公開個数(個) 4,343 8,384 13,431 18,424 21,335
さい帯血移植実施件数(件) 169 221 296 700 667
(備考)
  公的さい帯血バンクを介した移植の実施は平成11年度から開始。
なお、移植実施件数については、骨髄移植・さい帯血移植とも公的バンクを介したものに限り、保存さい帯血公開個数については公的バンクで保存・公開されているものに限る。
資料出所: (財)骨髄移植推進財団、日本さい帯血バンクネットワーク(なお、骨髄提供希望新規登録者数については、昨年度の実績評価書により報告した時点から修正が加えられている。)


2.評価

(1) 現状分析
現状分析
 (1)  臓器提供意思表示カード等の配布枚数は平成16年度末までの累計で、臓器提供意思表示カード97,966,165枚、臓器提供意思表示シール24,289,926枚となっている。
 (2)  臓器移植については、あっせん機関に登録して移植を待つ人の数(平成17年3月末日現在)は、心臓72名、心肺同時3名、肺102名、肝臓83名、腎臓12,328名、膵腎同時103名、膵臓15名、眼球(角膜)4,449名であり、移植を待つ人数に比べて年間の移植実施数は少ないものとなっている。
 (3)  平成16年度末の数字で、ドナー登録者数は204,710人、保存さい帯血公開個数は21,335個となっている。
 (4)  骨髄移植については、平成16年度新規登録患者のうち、ドナー登録者とHLA型が適合する率は約97.4%となっている。
 (5)  臓器移植・造血幹細胞移植ともに、あっせん機関の安定的な運営が課題となっている。
白血球の型のこと。

(2) 評価結果
政策手段の有効性の評価
【臓器移植】
 (1)  臓器提供意思表示カード・シールを所持する者の数の増加は、臓器移植に関する意思表示を行う者の増加につながり、ひいては我が国における臓器移植の普及につながる。平成16年度における配布枚数は、前年度比で、臓器提供意思表示カードについては7.8%増、臓器提供意思表示シールは18.3%増といずれも配布枚数を伸ばしており、ネットワークにおける関係機関等への働きかけによるものと評価できる。

【造血幹細胞移植】
 (1)  平成16年度新規骨髄提供希望登録者(ドナー登録者)数については、26,687人(前年度比8.1%増)となっている。現在骨髄バンク事業においては、ドナー登録者30万人を目標としているが、平成16年度末のドナー登録者数は204,710人となっていることから、今後とも一層の普及に努める必要がある。
 また、骨髄移植の実施件数は、前年度に比べ増加している。
 (2)  保存さい帯血公開個数については、平成16年度の保存さい帯血公開個数は前年度比15.8%増の21,335個となっており、当初目標としていた2万個の保存を達成したことから、今後は、移植成績を向上していくために、より多くの造血幹細胞が含まれるさい帯血を確保していく必要がある
 また、さい帯血移植の実施件数は、前年度と同様高水準になっている。
政策手段の効率性の評価
【臓器移植】
   ネットワークにおいては、平成15年度に引き続き、健康保険保険者や警察署、郵政公社等へのカード備付けへの積極的な働きかけ等を行い、結果として臓器提供意思表示カード等の配布枚数は前年度に比べて大きく増加している。また、厚生労働省においては、平成16年度には新たに教育用普及啓発パンフレットを全国の中学校等に配布し、移植医療に関する啓発活動が積極的に行われている。

【造血幹細胞移植】
 (1)  1回当たりの骨髄ドナー登録者数(平成16年度実績)で見ると、献血併行型登録会においては6.6人と、集団登録会における登録者数(19.9人)に比べて少ないものの、各都道府県等で実施される移動献血の機会に併せて登録会を開催できるため普及しやすく、より効率的に普及が図られたものと推測できる。
また、骨髄ドナー登録要件の緩和の機会を捉え、適切な啓発活動が行われている。
 (2)  さい帯血については、より多くの造血幹細胞が含まれるさい帯血の保存に向けた予算を着実に事業化し、保存さい帯血公開個数・移植件数の増加を実現している。これにより、造血幹細胞移植の普及が効率的に推進される。
総合的な評価
 昨年度に比べて、臓器提供意思表示カード・シールの配布枚数が大きく増加しており、また、新規骨髄提供希望登録者数も増加していること等から、臓器移植・造血幹細胞移植の普及に、一定の効果があったと認められる。
 今後とも引き続き現行の施策を実施するとともに、運用上の課題に適宜対応することなどにより、国民の移植医療に対する信頼を確保しながら、その普及に努めることが必要である。
評価結果分類 分析分類
(2) (2)


4.特記事項
(1) 学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
@  臓器移植をめぐる運用上の課題については、適宜、厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会で検討を行っている。
A  造血幹細胞移植をめぐる課題については、適宜、厚生科学審議会疾病対策部会造血幹細胞移植委員会で検討を行っている。
(2) 各種政府決定との関係及び遵守状況
 なし。
(3) 総務省による行政評価・監視等の状況
 なし。
(4) 国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
 なし。
(5) 会計検査院による指摘
 日本赤十字社に対し交付した骨髄提供者登録事業費等補助金に関する消費税の取扱いが適切でなかったことについて、平成16年9月に指摘を受け、平成17年3月に、日本赤十字社に対し消費税仕入れ控除税額の報告を行わせ、仕入控除税額を国庫に変換させる措置を講じた。

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