(整理番号38)
事業評価書(
事前
・事後)
平成17年8月

評価対象(事業名) 認知症対策等総合支援事業
担当部局・課 主管部局・課 老健局計画課
関係部局・課  

1.事業の内容
(1) 関連する政策体系の施策目標
  番号  
基本目標 高齢者ができる限り自立し、生きがいを持ち、安心して暮らせる社会づくりを推進すること
施策目標 介護保険制度の適切な運営等を通じて、介護を必要とする高齢者への支援を図ること
II 質・量両面にわたり介護サービス基盤の整備を図ること

(2) 事業の概要
事業内容(
新規
・一部新規)
 本事業は、これまで区々に行われてきた認知症高齢者等に対する支援事業について、認知症となった本人やその家族に対し、認知症の各ステージに即した支援を行うことを目的とし、認知症対策を総合的に推進していくため、地域支援、医療体制の充実、認知症ケアの質の向上等を柱とした事業を取りまとめ「認知症対策等総合支援事業」として再構築するものである。
 主な事業は、下記のとおりである。
(1) 認知症介護実践者等養成事業
 認知症高齢者ケア従事者に対する指導者の養成、認知症対応型諸サービスにおいて介護に従事する者、サービス事業の開設者・管理者や認知症高齢者介護に携わる職員に対する研修を行う事業。
(2) 認知症地域医療支援事業
 認知症の早期診断・早期対応を行うため、かかりつけ医(主治医)に対する認知症の診断技術等の研修やかかりつけ医に対する助言等を行う認知症サポート医の養成を行う事業。
(3) 認知症早期サービス等推進事業
 各地域で行われ始めている認知症予防の取組について、各都道府県において情報収集を行い、管内の市町村に対して取組事例の周知を図り、各市町村における認知症予防の取組の推進を支援するための事業及び平成18年度より新設される「地域密着型サービス」について、各市町村における基準等の策定に携わる検討委員に対し、地域密着型サービスに対する知識や現状を把握してもらうための研修を行う事業。
(4) 認知症介護研究・研修センター運営事業費
 認知症高齢者支援対策の推進の基礎となる認知症介護の質の向上を図るために、全国3か所(東京都杉並区、愛知県大府市、宮城県仙台市)に認知症介護の研究・研修の中核機関として「認知症介護研究・研修センター」が整備されており、当該センターの事業実施に必要な経費を補助する事業。
(5) 身体拘束廃止推進事業
 身体拘束廃止(ゼロ)に向けた取組を推進するため、都道府県内の取組を推進する推進会議の設置、介護保険施設等の施設長や看護職員に対する研修並びに各施設等における取組事例を基に議論・検討を行う場を設けるなどの事業。
(6) 認知症理解普及促進事業
 認知症の本人や家族に対し、認知症介護経験者等による相談窓口の設置や交流会を通じた認知症当事者やその家族に対する精神面も含めた支援体制の構築、地域住民に対する認知症の理解普及促進を進め、地域包括支援センター等を中心とした地域における見守り・支援体制構築の基盤整備を促進し、認知症高齢者の徘徊等に適切な対応が可能な地域をつくるなど、認知症高齢者及びその家族が地域において安心して生活を営むことができるよう、地域全体で認知症高齢者等を支援する体制を推進する事業。
予算概算要求額 (単位:百万円)
H14 H15 H16 H17 H18
1,550

(3) 問題分析
(1) 現状分析
 認知症高齢者数は、平成14年9月の推計値によれば、平成17年度において約170万人、平成25年(2015年)には約250万人まで増加すると推計されていること、要介護認定者のうち2人に1人は認知症の高齢者であること等から、認知症高齢者に対するケアの充実は、今後の高齢者施策における重要な課題である。

(2) 問題点
 認知症に対する対策としては、これまでも認知症介護従事者や医師等に対する研修事業を中心とした取組を進めてきたところであるが、認知症高齢者が安心して暮らすことができるためには、地域で支える体制づくりが重要である。
 また、認知症の各ステージに即した支援体制を構築することが重要であることから、認知症高齢者や家族に対する総合的な支援を行う事業体制の整備が必要である。

(3) 問題分析
 認知症高齢者介護の質の向上については、平成18年4月から創設される地域密着型サービス(認知症高齢者グループホーム、小規模多機能型居宅介護等)においても重要な問題であることから、従事者に対する研修やそれを支援する者の養成等は、今後とも引き続き実施する必要がある。また、認知症の早期診断・早期対応のためには、かかりつけ医(主治医)に対する研修を行うなど地域医療体制の充実も必要とされている。
 認知症高齢者が安心して暮らすことができるためには、地域で支える体制づくりに重点化していくことが重要であり、それとともに「痴呆」を「認知症」へと呼称変更したことをきっかけとした、地域における認知症に対する正しい知識や理解を深める取組が不可欠である。

(4) 事業の必要性
 認知症に対する支援については、認知症当事者やその家族に対する支援に係る事業及び地域づくりを中心とした事業の展開が必要である。
 認知症当事者やその家族に対する支援については、認知症予防、早期診断・早期対応を行うための医療体制の充実、認知症介護従事者の質の向上、身体拘束廃止など、認知症の各ステージに即した事業展開が重要である。
 また、地域づくりに係る事業については、認知症に対する正しい知識の普及や理解の促進の取組をはじめ、地域資源の有機的な連携ネットワークの構築により、徘徊等の問題に対して円滑に対応できるような地域づくりを行うことが重要である。
 これらの各事業を推進していくことにより、認知症になっても安心して暮らすことのできる地域づくりが図られるものである。

(4) 事業の目標
目標達成年度  
政策効果が発現する時期  
アウトプット指標 H18 H19 H20 H21 H22 目標値/基準値
介護実務者・指導者・フォローアップ研修の受講者数           年間
約20,000人
(説明)
 平成12年度からの事業である。
(モニタリングの方法)
厚生労働省老健局計画課認知症対策推進室調べ
参考指標(過去数年度の推移を含む) H12 H13 H14 H15 H16
介護実務者・指導者・フォローアップ研修の受講者数 3,435 9,074 13,097 16,509 18,724
(説明)
 平成12年度からの事業である。(フォローアップ研修は平成16年度から実調べ施。)
(モニタリングの方法)
厚生労働省老健局計画課認知症対策推進室

2.評価
(1) 必要性
行政関与の必要性の有無(主に官民の役割分担の観点から)
 無 その他
(理由)
 地域社会において、認知症の方の自立生活を支え、認知症になっても安心して暮らせるまちづくりを推進するためには、家族をはじめ、地域住民の理解が不可欠であり、地域全体の意識改革や体制整備を進めていくためには、行政が各地域と密接な連携のもとに各種事業を推進していくことが必要である。
国で行う必要性の有無(主に国と地方の役割分担の観点から)
 無 その他
(理由)
 認知症対策を総合的に推進するためには、より地域社会に密着している地方自治体が、地域の実情に応じた支援体制を構築し、効果的な支援を行うことが必要であり、国は各地方自治体が認知症対策を展開していく上で、必要な指導者的役割を果たす者の研修等、側面的な支援・助言を行うものである。
民営化や外部委託の可否
   否
(理由)
 本事業は、行政(国・都道府県・市町村等)と地域が一体となって取り組むことにより効果を生ずるものであり、実施する事業のうち、より専門的な知識やノウハウを必要とするものについては、当該専門的な知識やノウハウを持った団体等に委託することが可能である。
緊要性の有無
   無
(理由)
 認知症高齢者数は、平成25年には約250万人に増加すると推計されており、地域支援、医療体制の充実、認知症ケアの質の向上等の認知症対策を総合的に推進していくことは喫緊の課題である。

(2) 有効性
政策効果が発現する経路
 別紙「認知症のステージに即した取組PDF:61KB)」参照。
これまで達成された効果、今後見込まれる効果
事業内容(1)
 認知症介護実践者等養成研修
今後見込まれる効果
 高齢者介護の指導的立場にある者及び介護実務者に対し、認知症高齢者の介護に関する研修を実施して認知症介護の専門職員を養成し、認知症介護技術の向上を図ることにより、認知症高齢者に対する介護サービスの質の確保・向上が図られる。

事業内容(2)
 認知症地域医療支援事業
今後見込まれる効果
 認知症サポート医に対する研修及びかかりつけ医に対する適切な認知症診断の知識・技術、家族からの話や悩みを聞く姿勢を修得するための研修を実施し、地域における認知症発見・対応システムの充実を図ることにより、認知症対応において最も重要な早期発見・早期対応の体制が構築される。

事業内容(3)
 認知症早期サービス等推進事業
今後見込まれる効果
 様々な場で認知症予防の重要性が指摘されているが、地方自治体においては、認 知症予防の取組は始まったばかりであり、それらの取組例を各市町村に周知してい くことにより、認知症の進行遅延等の効果が見込まれる。
 また、平成18年度より新設される「地域密着型サービス」について、各市町村における基準等の策定に携わる検討委員に対し、地域密着型サービスに対する知識や現状を把握してもらうための研修を行うことにより、各市町村の計画等に基づいた適切なサービス提供を図ることができる。

事業内容(4)
 認知症介護研究・研修センター運営事業費
今後見込まれる効果
 介護研究・研修センターにおいて、大学や研究機関等との連携を図りながら、学際的な共同研究を行うとともに、研究成果を踏まえ、都道府県等で認知症介護に携わる人材の育成や、国内外の人材交流や各種情報の収集・提供を行うこと、研修を通じて蓄積されたノウハウを介護現場に伝達することにより、認知症介護の質の確保・向上が図られる。

事業内容(5)
 身体拘束廃止推進事業
今後見込まれる効果
 身体拘束廃止(ゼロ)に向けた取組を推進するため、都道府県内の取組を推進する推進会議の設置、介護保険施設等の施設長や看護職員に対する研修並びに各施設等における取り組み事例を基に議論・検討を行う場を設けることにより、介護従事者等が身体拘束に対する認識を改め、実際の介護現場における身体拘束廃止(ゼロ)の取組の推進が図られる。

事業内容(6)
 認知症理解普及促進事業
今後見込まれる効果
 認知症の本人や家族が、認知症介護経験者等と関わりを持つことにより、単なる認知症の知識の普及にとどまらず、精神面も含めた支援が図られる。また、認知症に対する正しい知識の普及や理解の促進の取組をはじめ、地域資源の有機的な連携ネットワークを構築することにより、徘徊等の問題に対して円滑な対応が可能な、認知症になっても安心して暮らすことのできる地域づくりが図られるものである
政策の有効性の評価に特に留意が必要な事項
 特になし。

(3) 効率性
手段の適正性
 本事業は、行政が各地域と密接な連携のもとに各種事業を推進し、国は各地方自治体が認知症対策を推進していく上で側面的な支援・助言を行うものであり、効率的で適正な手段である。
費用と効果の関係に関する評価
 本事業は、行政が各地域と密接な連携のもとに各種事業を推進し、国は各地方自治体が認知症対策を推進していく上で側面的な支援・助言を行うものであり、費用面においても効率的である。
他の類似事業(他省庁分を含む)がある場合の重複の有無
  
(有の場合の整理の考え方)


(4) その他
 なし。

(5) 反映の方向性
 評価結果を踏まえ、平成18年度予算概算要求において所要の予算を要求する。

3.特記事項
(1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
 なし。

(2)各種政府決定との関係及び遵守状況
 なし。

(3)総務省による行政評価・監視等の状況
 なし。

(4)国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
 第162回通常国会における参議院厚生労働委員会で、次のような付帯決議がなされている(介護保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議)。「認知症予防の研究の推進や対策の確立、認知症に関する国民に対する正しい知識の普及、関連領域としての高齢者のうつ対策の推進など、総合的な認知症対策を講ずること。」

(5)会計検査院による指摘
 なし。

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