(整理番号11)
事業評価書(
事前
・事後)
平成17年8月

評価対象(事務事業名) 標準的電子カルテ情報交換システム開発委託
担当部局・課 主管課  医政局研究開発振興課医療機器・情報室
関係課  


1.事務事業の内容

(1) 関連する政策体系の施策目標
  番 号  
基本目標 安心・信頼してかかれる医療の確保と国民の健康づくりを推進すること
施策目標 利用者の視点に立った、効率的で安心かつ質の高い医療サービスの提供を促進すること
医療のIT化を推進すること

(2) 事務事業の概要
事業内容(
新規
・一部新規)
 平成16年度から静岡県の医療機関間の診療情報交換を推進するために開発が進められている電子カルテシステムは、国が実施した標準的電子カルテ推進委員会や日本医療情報学会が示す方向性や国の研究事業の成果等も踏まえ、国の施策の動向を忠実に反映しており、当該システムの長所を礎に他の都道府県においても診療情報交換が可能な標準的な電子カルテシステムを静岡県と共同開発し、全国への展開を図る事業である。
予算概算要求額 (単位:百万円)
H14 H15 H16 H17 H18
125

(3) 問題分析
(1)現状分析
 電子カルテシステム普及の過程で、システム導入・維持に要する費用負担等の問題に併せて、システム間の相互運用性の不足等もあることから、医療施設間の情報連携のための標準化の必要性等が指摘されていた。
(2)原因分析及び(3)問題点
 電子カルテシステムは個別の医療機関内で完結するシステムとして発展してきたため、地域医療の連携への活用は十分ではなく、電子カルテシステムの導入を行った医療機関の関係者から、各医療機関毎に研究・開発を行う必要性から生じるシステム導入・維持に要する費用負担等の問題にあわせて、システム間の相互運用性の不足等の標準化に関連した問題が提起されるようになっている。
(4)事務事業の必要性
 適切な医療機関間の情報提供が推進されることにより、(1)より客観的なセカンドオピニオンが推進される(2)救急時、かかりつけ医等から搬送医療機関に患者情報が迅速に提供されることによる適切な初期診療の実施が可能となる等、患者の視点に立ったより効率的で質の高い医療サービスの提供につながると考えられる。
 電子カルテを用いた診療情報の交換、共有を行うためには標準化が必要不可欠であり、本事業の必要性は高い。

(4) 事務事業の目標
目標達成年度(又は政策効果発現時期) 平成18年度中にシステム開発
アウトプット指標 H18 H19 H20 H21 H22 目標値/基準値
電子的に診療情報の交換・共有等を可能とした医療機関数  
(説明)
平成18年度に開発を完了し、医療機関向けに提供を開始する。
(モニタリングの方法)
医療施設静態調査において、これまでの「電子カルテ導入施設数」に加えて「患者への情報提供、他の医療機関との連携に活用できる電子カルテを導入している医療施設数」を把握する。


2.評価

(1) 必要性
行政関与の必要性の有無(主に官民の役割分担の観点から)
 無 その他
(理由)
医療分野のIT化の推進はe-Japan重点計画2004、規制改革・民間開放推進三か年計画等に掲げられた政府決定の方針であり、普及の初期段階の期間においては、行政の主導の下にIT化を促進するための種々の施策を講じる必要がある。
かつ「標準的電子カルテ」は特定ベンダーの利益誘導に機能しないよう中立性を確保しつつ推進されるものであり、国としての関与が必要である。
国で行う必要性の有無(主に国と地方の役割分担の観点から)
 無 その他
(理由)
平成17年5月に取りまとめられた「標準的電子カルテ推進委員会」における最終報告において、標準的電子カルテシステムに求められる情報項目、機能等の基本要件等とともに、準拠すべき情報交換規格についても提言されたところである。
また医療におけるIT化の推進は政府決定でもあること、また、地域医療連携等の推進のためには、国レベルで統一的な標準的電子カルテシステムを開発することが、より効率的であると考えられる。
民営化や外部委託の可否
 
(理由)
 平成16年度より静岡県の医療機関間の診療情報交換を推進するために開発が進められている電子カルテシステムは、国が実施した標準的電子カルテ推進委員会や日本医療情報学会が示す方向性や国の研究事業の成果等も踏まえ、国の施策の動向を忠実に反映していることから、共同開発することとしている。
緊要性の有無
 
(理由)
医療分野のIT化の推進は、e-Japan重点計画等の政府決定であり、また、当該政府決定に基づく「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」(平成13年12月26日公表)において、電子カルテの普及率等に達成目標を設定していることから、国の主導のもとで早急に医療分野のIT化を推進する必要がある。

(2) 有効性
政策効果が発現する経路
 本システム開発により電子カルテの普及のみならず、今後、医療機関には、標準化された電子カルテが導入されていくこととなる。このことにより円滑な診療情報連携が推進されることとなるため、より客観的なセカンドオピニオンが推進される、救急時、かかりつけ医等から搬送医療機関に診療情報の迅速な提供が推進されることによる適切な初期診療の実施が可能となる等、患者の視点に立ったより効率的で質の高い医療サービスの提供につながると考えられる。
これまで達成された効果、今後見込まれる効果
 個別の医療機関内で完結する電子カルテシステムは発展してきたが、適切な医療施設間の診療情報連携を推進のためにも標準化の推進が必要となっていると指摘されているところである。また、電子カルテシステムを導入している医療機関は、診療情報の電子データを保持しているが、各施設に導入されている電子カルテシステムのメーカーが違うなど、データの種類や形式が異なっており、各施設間における電子的な交換は困難となっている。診療情報連携を推進するため、国際標準規格に準拠した医療用の定型文書情報(診療情報提供書等)の出入力を可能とするインターフェイス等の開発により、すでに診療情報等の電子化が進んでいる医療機関に対しては過大な費用負担を要せず診療情報の交換・共有を可能とし、かつ今後導入する医療機関等に対しては国際標準規格に則したシステムの導入を促進することで、医療の質や患者の利便性の向上につながる診療情報連携の推進を図ることが可能となる。
政策の有効性の評価に特に留意が必要な事項
 

(3) 効率性
手段の適正性
 本事業は、電子カルテシステムを既に導入済みである医療機関に新たな導入負担を強いることなく電子カルテシステム開発ベンダー間における互換性の問題を解決しつつ、未導入の医療機関に対しては、電子カルテの機能を備えた情報交換システムを提供するものであり、当該システムの開発に因らなければ、電子カルテの普及・標準化ともに医療機関の大きな負担を伴うこととなることが考えられ、進捗に遅れが出るおそれがある。
 HL7は「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」においても「医療機関で電子的に情報交換する際の標準的な規格」の方向性として標準実装を目指す、とされており、我が国においては保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)を核とした日本HL7協会がその普及推進、メンテナンスに当たってきたところ。これまでのこの種の事業において、各開発主体医療機関等が、個々のベンダーに対応を求めた結果、個々のベンダーの、特定のバージョンの病院情報システムのみの対応となり、技術移転に問題があった。
 今回、静岡県では5社のJV(この5社で静岡県のシェア90%、全国シェア75%)と開発を進めており、なおかつHL7への対応であればこれ以外の社でも可能としている。
 さらに静岡県は、新規導入病院での利用だけでなく、各ベンダーには、ここ1,2年内で導入した病院情報システムのバージョンは、HL7形式によるデータ出力に対応するよう求め、当該出力形式の更なる普及徹底を図るとともに、日本HL7協会による適合性検定を実施することとし、中立性を確保しつつ質の確保を図っているところである。
 静岡県の取組を踏まえ、これら開発果実をベースに18年度の全国版開発に当たっては、上記JVに参加していないベンダー製の病院情報システム等を網羅するために必要なインターフェイスの開発、導入に際しては、充実したドキュメンテーションが必要となる。また可搬型媒体により患者に提供する情報に添付するブラウザについて、医療機関等の端末のOSのバージョンも多岐にわたることから、必要となるインストーラについても逐次開発を予定する。
 さらには静岡県の開発・導入事例を分析、検討し、より強化したセキュリティ方策を講じることを予定している。
 したがってシステムの根幹をなす部分については静岡県において先行開発、導入がなされることから経費的、時間的効率性に鑑み共同開発としたところ。
効果と費用との関係に関する分析
 システムの根幹をなす部分については静岡県において先行開発、導入がなされることから経費的、時間的効率性に鑑み共同開発としたところ。
 グランドデザインに示された方針に基づき、各種コード(病名、薬剤、検査)の標準化が進んだことも、環境要因として重視すべきであることから、この機を逃さず開発・普及を図ることが、システムの開発、導入に伴う効果を最大とするためにも肝要と考える。
他の類似事業(他省庁分を含む)がある場合の重複の有無 有   無
(有の場合の整理の考え方)



(4) その他
 

(5) 反映の方向性
 評価結果を踏まえ、平成18年度予算概算要求において所要の予算を要求する。


3.特記事項
 








トップへ