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(8−2−I)
総合評価書(新方式)
平成17年2月

政策体系 番号  
基本目標 障害のある人も障害のない人も地域でともに生活し、活動する社会づくりを推進すること
施策目標 必要な保健福祉サービスが的確に提供される体制を整備すること
I 地域における療育システムや社会復帰支援、相談支援体制を整備すること
担当部局・課 主管部局・課 社会・援護局障害保健福祉部精神保健福祉課
関係部局・課  


1 評価対象の設定

評価対象 精神保健福祉施策
評価の契機等  精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律(平成11年法律第65号)附則第6条において、施行後5年を目途として見直しを検討する旨定められている。


2 評価の方法等

評価の観点  精神保健福祉施策について、精神障害者が地域において自立した生活を営むことができるよう、「入院医療中心から地域生活中心へ」という基本的な方策を推し進めるため、精神保健医療福祉体系の再編と基盤強化を今後10年間で進めることを基本方針としている。
 このため、精神保健福祉施策について、以下の観点から評価することとした。
(1)精神医療の改革
 (1)  現在の精神医療の提供体制について、「入院医療中心から地域生活中心へ」という基本的な方策の実現に向けて、どのように改善すべきか。
 (2)  精神病床の入院患者の動態を踏まえた上で、入院患者の早期退院を促すためには、どのような方策が考えられるか。
 (3)  入院患者の処遇について、どのように改善を図るべきか。
 (4)  精神障害者通院公費負担制度には、どのような課題があるか。

(2)地域生活支援の強化
 精神障害者のニーズと適性に応じた自立支援を行うという観点から、地域での生活を促進する仕組みをどのように構築するか。
収集した情報・データ及び各種の評価手法を用いて行った分析・測定の方法
(1)  精神医療の現状
(1) 精神医療の提供体制
精神病床の外国との比較
精神病床数の年次推移
精神病床数等における地域差
(2) 精神病床の入院患者の動態
退院患者の退所先の状況
入院期間別の患者数
受け入れ条件が整えば退院可能な患者数の推移
精神病床の入院患者の病態
(3) 精神病床の入院患者の処遇の現状
精神病床の入院患者数(都道府県別、入院形態別)
任意入院者の処遇の現状
(4) 精神障害者通院公費負担制度の現状
精神障害者通院公費負担制度の医療費の年次推移

(2)  地域生活支援の現状
精神障害者社会復帰施設退所者の勤務先
精神障害者のホームヘルプサービス利用者数(都道府県別)
在宅サービスを実際に提供した市町村数(障害種別)


3 評価結果等

評価結果(問題点及びその原因) (1) 精神医療の現状
(1)精神医療の提供体制
 我が国の精神医療の現状を把握するために、精神病床数を国際的に比較すると、各国における精神病床の定義の違いを考慮する必要があるが、諸外国が一様にここ数十年間で病床削減・地域生活支援体制強化等の施策を通じて人口当たりの病床数が減少しているのに対し、我が国では関係施策が必ずしも十分でなかったことから、平成5年の36.3万床をピークに、平成15年には35.4万床となっており、病床数は概ね横ばいで推移している。(資料1)

 人口当たりの精神障害者数と精神病床数の関係については、障害者数に比べて病床数が少ない地域や多い地域があるなど、都道府県間の格差が見られる。(資料2)

(2) 精神病床の入院患者の動態
 退院患者の退所先については、入院期間1年未満で退院した者の約8割が家庭に復帰しているのに対し、1年以上で退院した者は、家庭復帰と他の病院への転院が平均してそれぞれ3割強となるなど、現状では入院後1年までという期間が、社会復帰を促進する一つの重要なポイントとなっている。

 最近、精神保健福祉施策の抱える問題として指摘されている「受入条件が整えば退院可能な者約7万人」については、1年以内の入院期間の者が約2万人(約3割)、1年以上の入院期間の者が約5万人(約7割)となっているが、全体的に見れば、入院患者全体の構成とほぼ同様の動きをしている。(資料3)
 一方、平成11年と平成14年の患者調査で動態をみると、「受入条件が整えば退院可能」な者約7万人のうち、約3.7万人が3年間で退院しており、残りの約3.4万人が継続して入院しているが、さらに、その3年間に約6.3万人が新たに入院し、このうち約3.4万人が平成14年時点まで継続して入院していることから、結果として、平成14年時点では、ほぼ横ばいの約7万人となっており、全体的に見れば、入院患者全体の動態と同様の動きをしている。(資料4)
 したがって、これらの入院患者の退院方策については、精神医療全体の改革の中で解決を図っていくべきである。

 現在の入院患者層は、50歳代から60歳代が中心の歴史的長期在院者、比較的短期で退院している患者層、ADL(日常生活自立)が低下している等の長期在院化予備軍、痴呆患者等の高齢者の概ね4つのグループに分けて考えられるため、それぞれの患者に応じた医療を提供する体制の整備が必要である。(資料5)

(3) 精神病床の入院患者の処遇の現状
 措置入院、医療保護入院、任意入院のそれぞれの入院形態において、入院期間の点で都道府県間で差異が大きく、また、入院患者に占めるそれぞれの入院形態の割合についても同様である。(資料6、7、8)

 入院患者本人の意思の尊重という観点から、本来、任意入院患者は原則として「開放処遇」を受けるべきであるが、任意入院患者の約7割が開放処遇にある一方、任意入院患者の約16%が「開放処遇を制限」されており、14%が「患者の意思による開放以外の処遇」にある。
 したがって、任意入院患者は原則として開放処遇を受けることを徹底する必要がある。

(4) 精神障害者通院公費負担制度の現状
 精神障害者に対する通院医療は、精神障害者の地域生活を支援する上で、在宅精神障害者に対して医療を確保をするという役割を果たしている。しかし、精神障害者通院公費負担制度の対象者の増加に伴い、医療費が年々増加しており、現行の制度をそのまま維持することは財政的に困難である。また、医療費に応じた応益負担となっているため、低所得者であっても医療費が高額の場合には医療費に応じた負担を求められる制度となっていることから、必要な医療を確保しつつ、費用を皆で負担し支え合う制度にする必要がある。

(2)地域生活支援の現状
 精神障害者の社会生活機能の回復等を目的とした施設としては、精神障害者社会復帰施設があるが、例えば、精神障害者授産施設についてみると、雇用されることが困難な精神障害者に対して、職業訓練等を行うことにより、社会復帰の促進を図ることを目的としているところ、授産施設からの退所者が利用者の約2割で、そのうち就労に移行した者は約2割(うち常用雇用は約6%)に過ぎず、就労支援、自立支援等の機能が不十分である。
 したがって、精神障害者社会復帰施設の機能を障害者の自立に向けた支援ニーズに応じて再編することが必要である。

 精神障害者社会復帰施設等(入所系・通所系)の整備状況やホームヘルプサービス等の利用状況は、他障害に比較してその水準が低いとともに、都道府県・市町村ごとの差異が大きい。(資料9、10)
 また、市町村の精神保健福祉に係る人的体制も、その規模等により格差が大きく、精神障害者の地域生活支援体制を整備するため、精神保健福祉に係る人材の育成等を進めることが必要である。
今後の検討の方向性 (1) 精神医療体系の再編
 精神病院の入院患者の早期退院を促進し、地域生活への円滑な移行を図るために、(1)都道府県単位で精神障害者の地域における実態を正確に把握した上で、医療提供体制の整備に計画的に取り組むとともに、(2)精神病床の機能分化を促進し、患者の病態に応じて適切な医療を効率的に提供できる体制を構築する必要がある。さらに、(3)入院中の処遇についても、入院形態に応じて適切に病状を把握し、早期に退院を促すとともに、入院患者の処遇内容を改善する必要がある。
 また、(4)精神障害者通院公費負担制度についても、給付の重点化を図る等、効率的かつ持続可能性の高い制度にする必要がある。

(2)地域生活支援体系の再編
 現行の障害保健福祉サービスに係る施設及び事業の体系を機能ごとに見直し、市町村を中心とし、障害種別を超えた障害保健福祉サービス体系へ再編するとともに、就労を含め、地域で自立して暮らせるような地域生活支援体制を確立する必要がある。


※以下は、原則としてフォローアップ時に記入する。

4 評価結果の反映状況

政策への反映状況  


5 その他

評価実施過程において明らかになった課題  
外部有識者等の活用状況  
パブリックコメント等を行った場合はその意見  


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