評価結果 |
(1) |
労働災害による死亡者数、労働災害総件数の減少について 労働災害による死亡者数については、平成10年に2,000人を割り、以降1,000人台の後半で推移している。また、第9次計画期間中における労働災害の総件数も減少していることから、第9次計画に基づく労働災害防止対策は一定の効果を上げたところである。しかしながら、依然として、労働災害により多くの労働者が被災していることから、事業場における安全衛生水準の一層の向上を図るに当たって、引き続き、労働災害発生状況に適切に対応した災害防止対策を講じていくことは妥当である。
○ |
労働災害による死亡者数、休業4日以上の死傷者数 平成10年 1,844人、148,248人 平成14年 1,658人、125,918人 (資料出所:厚生労働省調) |
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(2) |
安全衛生に関する自主的な取組の推進について 労働災害の一層の減少を図るためには、事業場において継続的な安全衛生管理を実施する仕組みを整備する必要があることから、一連の過程を定めて継続的な安全衛生活動を自主的に行う安全衛生管理の仕組みである労働安全衛生マネジメントシステムの導入を図ることが求められている。これを踏まえ、平成11年度から、労働安全衛生マネジメントシステム普及促進事業を実施しているところであり、労働安全衛生マネジメントシステムの普及・導入について一定の成果を上げている。
○ |
労働安全衛生マネジメントシステム普及促進事業実施状況(平成11〜14年度) 指針説明会 実施回数14回、受講者数1,258人 (資料出所:厚生労働省調) |
一方、労働安全衛生マネジメントシステムの導入状況については、事業所規模別にみると、1,000人以上の規模では導入している割合が比較的高いものの、全体的に一層の普及を図る余地があるといえる。
○ |
労働安全衛生マネジメントシステムの導入状況別事業所割合(平成12年度)
(事業所規模) |
1,000人以上 |
25.7% |
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500〜999人 |
18.1% |
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300〜499人 |
19.0% |
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100〜299人 |
17.4% |
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50〜 99人 |
13.4% |
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30〜 49人 |
11.5% |
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10〜 29人 |
9.0% |
(資料出所:労働安全衛生基本調査報告) |
このため、事業場における安全衛生水準の一層の向上を図るに当たっては、労働安全衛生マネジメントシステムの普及を通じて、引き続き、安全衛生に関する自主的な取組を推進していくことは適当である。
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(3) |
小規模事業場に対する安全衛生水準の向上について 小規模事業場においては、大企業等と比べ安全衛生対策に立ち遅れが見られるところであり、この安全衛生水準の向上を図るため、様々な施策を実施している。 全国347ヶ所に整備している地域産業保健センターにおいて、小規模事業場の事業者及びその労働者に対して相談等を実施している。その利用は大幅に拡大しているところである。
○ |
地域産業保健センターの利用状況
相談件数 |
平成10年度 |
26,850件 |
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平成14年度 |
57,890件 |
訪問指導事業場数 |
平成10年度 |
9,279事業場 |
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平成14年度 |
11,529事業場 |
(資料出所:厚生労働省調) |
また、産業医共同選任事業の利用事業場数が増加し、その事業場における健康診断受診率が向上するなど、一定の成果を上げているところである。
○ |
産業医共同選任事業の利用状況(利用事業場数)
平成10年度 |
1,344事業場 |
平成14年度 |
2,842事業場 |
(資料出所:労働福祉事業団調) |
その一方、小規模事業場にあっては、経営基盤が脆弱であること等の理由により、事業者が独自に医師を確保し、労働者に対する保健指導、健康相談等の産業保健サービスを提供することが困難な状況にある。 定期健康診断の実施状況を事業場規模別に見ると、事業場規模小規模事業場における実施率は、依然として大規模事業場に比べ概して低い状況にある。
○ |
事業場規模別定期健康診断実施率(平成14年)
5,000人以上 |
100.0% |
1,000〜4,999人 |
100.0% |
300〜999人 |
100.0% |
100〜 299人 |
99.4% |
50〜 99人 |
96.2% |
30〜 49人 |
93.3% |
10〜 29人 |
84.1% |
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(資料出所:労働者健康状況調査) |
このため、事業場における安全衛生水準の一層の向上を図るに当たっては、引き続き、小規模事業場に対する取組を推進していくことが必要である。
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(4) |
建設業における労働災害防止対策の実施について 専門工事業者自身の安全衛生管理能力の向上に当たっては、専門工事業者安全管理活動等促進事業を実施しているところであり、安全管理計画作成研修会等について一定の成果を上げている。
○ |
専門工事業者安全管理活動等促進事業実施状況(平成10〜14年度)
安全管理計画作成研修会 |
実施回数 |
855回、受講者数 29,925人 |
経営首脳安全衛生セミナー |
実施回数 |
1,308回、受講者数 57,552人 |
安全衛生教育 |
実施回数 |
3,252回、受講者数 97,560人 |
(資料出所:厚生労働省調) |
また、木造家屋等低層住宅建築安全対策の推進に当たっては、墜落・転落災害を減少させるため、木造家屋等低層住宅建築工事安全対策推進モデル事業を実施しているところであり、木造家屋等低層住宅建築工事における足場先行工法の普及・定着について一定の成果を上げている。
○ |
木造家屋等低層住宅建築工事安全対策推進モデル事業実施状況(平成10〜14年度) 教育研修会 実施回数 322回、受講者数 15,944人 (資料出所:厚生労働省調) |
さらに、元方事業者を中心とした総合的な労働災害防止対策の推進に当たっては、中小地場総合工事業者の専門工事業者に対する安全衛生管理についての指導力を高めるため、中小総合工事業者指導力向上事業を実施しているところであり、新任現場所長等研修等について一定の成果を上げている。
○ |
中小総合工事業者指導力向上事業実施状況(平成10〜14年度)
新規現場所長等研修 |
実施回数 |
571回、受講者数 20,016人 |
店社安全衛生担当者研修 |
実施回数 |
506回、受講者数 23,355人 |
(資料出所:厚生労働省調) |
一方、建設業における労働災害発生状況は、業種別にみると、死亡者数では全体の死亡者数の36.6%、休業4日以上の死傷者数では全体の│24.3%を占めており、依然として多くの労働災害が発生しており、一層の労働災害防止対策が強く求められている。
○ |
建設業における労働災害発生状況(平成14年)
死亡者数(全体に占める割合) |
607人(36.6%) |
休業4日以上の死傷者数(全体に占める割合) |
30,650人(24.3%) |
(資料出所:厚生労働省調) |
このため、産業安全対策の推進を図るに当たっては、引き続き、建設業における労働災害防止対策を推進していくことは適切である。
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(5) |
機械設備に係る労働災害防止対策の実施について 職場において使用される機械の種類は多岐にわたるとともに、技術革新等により新しい機械も導入されていること等から、すべての機械設備に適用される包括的な安全基準を整備することとし、「機械の包括的な安全基準に関する指針」を策定した。当該指針の周知に当たっては、機械の包括的安全基準普及促進事業を実施してきたところであり、リスクアセスメント教育等について一定の成果を上げている。
○ |
機械の包括的安全基準普及促進事業実施状況(平成10〜14年度) リスクアセスメント教育 開催回数 21回、受講者数 756人 (資料出所:厚生労働省調) |
一方、機械設備に係る労働災害発生状況は、起因物別にみると、死亡者数では全体の42.1%、休業4日以上の死傷者数では全体の30.1%を占めており、依然として多くの労働災害が発生しており、一層の労働災害防止対策が強く求められている。
○ |
機械設備に係る労働災害発生状況(平成14年)
死亡者数(全体に占める割合) |
692人(42.1%) |
休業4日以上の死傷者数(全体に占める割合) |
39,872人(30.1%) |
(資料出所:厚生労働省調) |
このため、産業安全対策の推進を図るに当たっては、引き続き、機械設備に係る労働災害防止対策を推進していくことは適切である。
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(6) |
交通労働災害防止対策の実施について 交通労働災害を防止するためには、事業者は、労働者に単に交通に関する法令の遵守を求めるだけでなく、一般の労働災害防止対策と同様に、事業場において組織的に取り組むことが重要である。このため、交通労働災害防止のためのガイドラインの徹底と、事業場における交通労働災害防止に係る管理水準の向上に当たっては、交通労働災害防止対策推進事業を実施してきたところであり、交通労働災害防止指導員による個別指導の実施等について一定の成果を上げている。
○ |
交通労働災害防止対策推進事業実施状況(平成10〜14年度) 交通労働災害防止指導員による個別指導件数 12,235件 (資料出所:厚生労働省調) |
一方、交通労働災害発生状況は、事故の型別にみると、死亡者数では全体の29.1%、休業4日以上の死傷者数では全体の6.3%を占めており、依然として多くの労働災害が発生しており、一層の労働災害防止対策が強く求められている。
○ |
交通労働災害発生状況(平成14年)
死亡者数(全体に占める割合) |
479人 | (29.1%) |
休業4日以上の死傷者数(全体に占める割合) |
8,326人 | (6.3%) |
(資料出所:厚生労働省調) |
このため、産業安全対策の推進を図るに当たっては、引き続き、交通労働災害防止対策を推進していくことは妥当である。
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(7) |
じん肺等職業性疾病及び化学物質に係る健康障害の予防について じん肺等職業性疾病及び化学物質に係る健康障害を防止するため、様々な施策を実施している。 我が国における職業性疾病による被災者、じん肺の新規有所見者は着実に減少しており、一定の成果を上げているところである。
○ |
・ |
業務上疾病者数
平成10年 |
8,574人 |
平成14年 |
7,502人 |
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・ |
じん肺新規有所見労働者数
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(資料出所:厚生労働省調) |
その一方、一酸化炭素中毒、酸素欠乏症等の災害は増加減少を繰り返しながら、依然として発生している。
○ |
・ |
一酸化炭素中毒死亡者数
平成10年 |
2人 |
平成11年 |
5人 |
平成12年 |
5人 |
平成13年 |
4人 |
平成14年 |
4人 |
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・ |
酸素欠乏症等死亡者数
平成10年 |
11人 |
平成11年 |
9人 |
平成12年 |
16人 |
平成13年 |
8人 |
平成14年 |
22人 |
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(資料出所:厚生労働省調) |
じん肺、一酸化炭素中毒など重篤な業務上疾病を防止するためにも、引き続き、職業性疾病対策及び化学物質に係る健康障害防止対策の取組を推進していくことが必要である。
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(8) |
心の健康づくりを含めた健康の確保及び産業保健に対する支援を図ること 心の健康づくりを含めた健康の確保及び産業保健に対する支援を図るため、様々な施策を実施している。 中小規模事業場健康づくり事業による中小企業事業場における健康づくりの支援を実施しており、着実に成果を挙げているところである。
○ |
中小規模事業場健康づくり事業(指導実施事業場数)
平成12年度 |
822事業場 |
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平成14年度 |
1,831事業場 |
(注:平成12年度からの事業) |
(資料出所:中央労働災害防止協会調) |
また、産業保健推進センターにおける産業保健スタッフに対する研修を実施しており、研修の実績が増加し、一定の成果を上げているところである。
○ |
産業保健推進センターの利用状況(産業保健スタッフに対する研修実施回数)
平成10年 |
1,091回 |
平成14年 |
1,916回 |
(資料出所:労働福祉事業団調) |
その一方、厳しい経済情勢等を背景に、仕事や職場生活に関する強い不安、ストレス等を感じる労働者の割合が6割を超えている。また、過労死等事案の労災認定件数も増加している。
○ |
脳血管疾患及び虚血性心疾患等(「過労死」等事案)の認定件数
(資料出所:厚生労働省調) |
このため、労働衛生対策の推進を図るに当たっては、特にメンタルヘルス対策、過重労働による健康障害防止対策に留意しつつ、健康確保対策及び産業保健に対する支援の取組を強化していくことが必要である。 |
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