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(5−1−I)
実績評価書
平成15年8月

政策体系 番号  
基本目標  労働者の職業能力の開発及び向上を図るとともに、その能力を十分に発揮できるような環境を整備すること
施策目標  雇用の安定・拡大を図るための職業能力開発の枠組みを構築すること
I  キャリア形成支援システムを整備すること
担当部局・課 主管部局・課  職業能力開発局総務課基盤整備室
関係部局・課  職業能力開発局能力開発課、育成支援課、キャリア形成支援室


1.施策目標に関する実績の状況
実績目標1  キャリア形成支援コーナーを拠点として、労働者、事業主に対するキャリア形成に係る相談援助・情報提供を行うこと等により、労働者個人ごとのキャリア形成を促進すること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 労働者個人のキャリア形成を促進するため、各都道府県ごとに設置されたキャリア形成支援コーナー等において、労働者・事業主等に対する相談援助・情報提供を行う。また、職業能力開発推進者講習(企業内において職業能力開発を推進する担当者に対し、キャリア形成支援に必要な知識・技法を習得させるための講習)、自己啓発推進セミナー(キャリア形成支援の好事例を事業主等に提供するためのセミナー)等を通じ、企業内におけるキャリア形成する。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
キャリア形成支援コーナー及び公共職業安定所における相談援助・情報提供件数 91,150 1,077,536
(備考)
雇用・能力開発機構調べ。
13年10月にキャリア形成支援コーナー設置のため、13年度は半年間の件数。
14年1月に公共職業安定所等に配置した能力開発支援アドバイザーによる相談等の数値を含む。
(評価指標)
企業内キャリア形成支援に係る指導、助言、情報提供件数
H10 H11 H12 H13 H14
358,398 363,937
(備考)
・中央職業能力開発協会調べ。
(評価指標)
職業能力開発推進者講習の受講者数
H10 H11 H12 H13 H14
11,018 9,067 21,546 13,119
(備考)
12年度までは都道府県において、13年度から中央職業能力開発協会において集計。
(評価指標)
自己啓発推進セミナー等参加者数
H10 H11 H12 H13 H14
5,970 5,762
(備考)
・中央職業能力開発協会調べ。
実績目標2  キャリア形成促進助成金を通して、労働者の自発的な能力開発を推進することにより、労働者個々人のキャリア形成を促進すること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 企業内における労働者のキャリア形成の効果的な促進のため、事業主が事業内職業能力開発計画及びこれに基づく年間職業能力開発計画において、能力開発の目標及び内容を明確化し、これを労働者に周知した上で、(1)職業訓練の実施、(2)職業能力開発休暇の付与、(3)長期教育訓練休暇制度の導入、(4)職業能力評価の実施、(5)キャリア・コンサルティングの機会の確保を行った場合、助成を行う。
 また(1)及び(2)の特例として、一定の要件を満たした場合、「中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の改善の促進に関する法律」に基づく中小企業雇用創出等能力開発助成金及び「地域雇用開発促進法」に基づく地域人材高度化能力開発助成金として高率助成を行う。
(13年10月生涯能力開発給付金等を整理統合し創設、14年度から支給開始)
(評価指標)(参考) H10 H11 H12 H13 H14
生涯能力開発給付金支給事業所数(件) 30,946 32,368 36,368 36,191 24,983
(評価指標)(参考) H10 H11 H12 H13 H14
生涯能力開発給付金支給額(百万円) 15,708 15,605 17,510 16,026 10,721
(18,079) (17,012) (17,385) (13,209) (11,085)
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
訓練給付金(人数) 192,119
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
訓練給付金(百万円) 2,517
        (3,134)
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
職業能力開発休暇給付金(人数) 116
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
職業能力開発休暇給付金(百万円) 2
        (427)
(評価指標)長期教育訓練休暇制度導入奨励金(人数) H10 H11 H12 H13 H14
12
(評価指標)長期教育訓練休暇制度導入奨励金(百万円) H10 H11 H12 H13 H14
9
(105)
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
職業能力評価推進給付金(人数) 2,122
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
職業能力評価推進給付金(百万円) 25
        (405)
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
キャリア・コンサルティング推進給付金(件数)          
13
(評価指標)キャリア・コンサルティング推進給付金(百万円) H10 H11 H12 H13 H14
3
        (227)
(評価指標)中小企業雇用創出等能力開発助成金(人数) H10 H11 H12 H13 H14
33,229 41,783 35,934 25,434 16,203
         
(評価指標)中小企業雇用創出等能力開発助成金(百万円) H10 H11 H12 H13 H14
1,049 1,314 1,251 1,055 553
(2,112) (2,614) (3,104) (3,699) (1,768)
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
地域人材高度化能力開発助成金(人数) 140,740 175,143 80,213 55,661 29,852
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
地域人材高度化能力開発助成金(百万円) 3,569 4,614 1,985 1,384 703
(316) (661) (1,518) (2,397) (1,183)
(備考)
雇用・能力開発機構調べ。
下段( )は予算額。
生涯能力開発給付金支給実績については、13年10月の整理統合後、14年度内は経過措置で支給。
キャリア形成促進助成金の支給は14年度からである。
中小企業雇用創出等能力開発助成金及び地域人材高度化能力開発助成金の13年度までの実績は、その前身として実施されていた中小企業雇用創出等能力開発給付金及び地域人材高度化能力開発給付金の実績である。
実績目標3  雇用・能力開発機構都道府県センター及び公共職業安定所に能力要件明確化アドバイザーを配置し、求人企業が求職者に求める能力の明確化を行うとともに、訓練受講者個々人の能力に即した訓練コースを設定し、求職者の再就職を促進すること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 能力要件明確化アドバイザーを公共職業安定所及び雇用・能力開発機構都道府県センターに配置し、求人の職業能力要件の情報開示を推進するための相談支援業務を実施するとともに、求人者のニーズに即し、求職者の個々人の能力・適性等に応じた訓練コースのコーディネート等を実施する。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
求職要件明確化アドバイザーの相談件数
(備考)
・ 15年度から相談事業を開始するため、現段階では実績はない。


1.評価

(1) 現状分析
現状分析
 労働移動の増加等により、これまでのような企業主導の能力開発だけでは限界が生じてきている。また、労働者に求められる職業能力は企業内外を問わず通用するものへと変化してきている。このような中、労働力需給における職業能力のミスマッチを解消し、雇用の安定を図るためには、労働者個人が適切な情報を入手し、自らの職業能力を確認しつつ、その職業生活設計に即して職業訓練・教育訓練を受け、キャリア形成を図っていく必要がある。
 このため、労働市場のインフラストラクチャーの1つとして、個人のキャリア形成を支援するシステム(キャリア・コンサルティング技法の開発、キャリア形成に関する情報提供、相談等の推進、民間におけるキャリア形成支援システムの確立及び人材育成、企業内におけるキャリア形成支援システムの確立)の整備が必要となってきている。

(2) 評価結果
政策手段の有効性の評価
 (実績目標1)
 キャリア形成支援コーナー等においては、労働者に対してキャリア形成に係る相談援助・情報提供を実施する一方、事業主等に対しては、
 (1)キャリア形成支援に関する専門的な相談援助
 (2)キャリア・コンサルティングの実施方法等についての指導
等を実施している。
 また、キャリア形成支援コーナーのおける受動的な相談業務以外に、各地で
 (3)キャリア形成支援に必要な知識・技法を習得させるための講習である職業能力開発推進者講習
 (4)キャリア形成支援の好事例を事業主等に提供するためのセミナーである自己啓発推進セミナー
等を実施している。
 これらにより、労働者に対する直接の効果に加え、事業主等が事業内職業能力開発計画を作成したり、キャリア・コンサルティングの実施方法を習得すること等を通じ、企業内労働者のキャリア形成支援を促進する波及的効果が見込まれる。
 (1)及び(2)については事業開始から14年度までに、労働者・事業主等をあわせ1,272,678件の実績、(3)については54,750人の実績、(4)については11,732人の実績があり、対象労働者のキャリア形成に一定の寄与があったものと考えられる。
(実績目標2)
 13年10月に、従来からあった生涯能力開発給付金、人材高度化能力開発給付金等を統合し、キャリア形成促進助成金を創設した。同助成金の中では、訓練給付金の対象者が約20万人にのぼり、労働者のキャリア形成支援に一定の寄与があったものと考えられる。一方、訓練給付金以外については、給付実績が伸び悩んでおり、要件の緩和、手続きの簡素化、制度の重点化など制度の見直しを行うとともに、事業所への一層の周知等を図る。
 中小企業雇用創出等能力開発助成金については約1万6千人、地域人材高度化能力開発助成金については約3万人が対象となっており、一定程度活用されているところである。
政策手段の効率性の評価
(実績目標1)
 労働者・事業主等がキャリア形成に関して専門的な相談援助・情報提供を受けられる機会は一般的にまだ少ないが、キャリア形成支援コーナー(各都道府県に1ヶ所ずつ)やハローワーク等において相談援助等を行うことにより、本人等の希望に応じ大きな負担感を持たずに、専門的なサービスを受けることが可能となっている。
 また、職業能力開発推進者講習や自己啓発推進セミナー等を通じ、企業内においてキャリア形成支援を担当する者に対し、キャリア形成に必要な知識・技法等を習得させることは、これらの者が企業内の労働者に対して広くキャリア形成支援を行うことにつながるため、効率的な手法といえる。
 これらの業務については、キャリア形成支援に関する情報やノウハウの蓄積を図りつつ業務を展開していることから、本施策は施策目標の達成にあたり効率的であると評価できる。
(実績目標2)
 労働者個人のキャリア形成を促進するためには、労働者個人の努力のみならず、事業主が訓練機会や能力開発休暇の付与等を行うほうが効率的である。また、個人の主体的な能力開発が、企業のニーズに合致した形で行われたほうが、労働者の能力発揮が促進されるため効率的である。
 よって、企業に対して労働者個人のキャリア形成の促進を働きかける本施策は、効率的であると評価できる。
総合的な評価
 キャリア形成支援コーナー等においては、キャリア形成に係る情報を収集し、整理した上で、労働者、事業主のニーズ等に応じた相談・情報提供を実施していることから、キャリア形成支援のあり方として効果的であるものと評価できる。ただし、利用者へのアンケート調査を行うことなどにより、情報提供等の結果を点検する仕組みを取り入れ、より適切な方法へと見直しを行う必要がある。
 キャリア形成促進助成金については、今後とも労働者個人の主体的なキャリア形成を促進するためには、企業による取組も重要であり、企業に対する助成措置の必要性は高いものと考える。しかし、訓練給付金以外の助成金は、制度利用者数が予想を下回っている。
 以上により、施策目標の達成に向け進展はみられたものの、なお十分な効果を得るために制度の見直しを要する。
評価結果分類 分析分類
(3) (2)


3.政策への反映方針

 今後、キャリア形成支援コーナー等における相談・情報提供等の結果が、労働者の訓練受講や、事業主による労働者のキャリア形成支援につながったか等の観点から、利用者へのアンケート調査等、本施策を点検する仕組みを取り入れ、コーナーの一層の充実を図りつつ所要の見直しを実施する。
 キャリア形成促進助成金については、訓練給付金以外実績が低調であったこともあり、制度の見直しを行う。また、予算額と実績額が乖離しているため、適正な予算計上に留意する。
 中小企業雇用創出等能力開発助成金及び地域人材高度化能力開発助成金については、政策的に継続する必要性があることから、実績を踏まえ、今後事業を見直し縮小を検討するとともに、実績に応じた予算要求を行う。
反映分類
(2)及び(4)


4.特記事項

(1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
 なし

(2)各種政府決定との関係及び遵守状況
(「地方分権推進計画」「国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本計画」「第10次定員削減計画」「行政改革大綱」等)
 13年12月19日に閣議決定された「特殊法人等整理合理化計画」において、雇用・能力開発機構の各種助成金業務につき講ずべき措置として、「国が明確な政策目標を定め、併せて当該目標が達成された場合又は一定期間経過後には助成措置を終了することを明記する。さらに、事後評価を行い、その評価結果を踏まえて助成の在り方を適宜見直す」こととされている。当該計画を踏まえ、キャリア形成促進助成金については状況に応じて見直すものとする。

(3)総務省による行政評価・監視等の状況
 なし

(4)国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
 なし

(5)会計検査院による指摘
 なし



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