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(4−2−I)
実績評価書
平成15年8月

政策体系 番号  
基本目標 経済・社会の変化に伴い多様な働き方が求められる労働市場において労働者の職業の安定を図ること
施策目標 雇用機会を創出するとともに雇用の安定を図ること
I 中小企業、新規・成長分野企業等における雇用機会を創出するとともに労働力の確保等を図ること
担当部局・課 主管部局・課 職業安定局産業雇用構造調整室
関係部局・課 職業安定局民間需給調整課


1.施策目標に関する実績の状況
実績目標1 中小企業労働力確保法に基づく各種助成措置の積極的な活用により、中小企業における雇用機会の創出、雇用管理の改善を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
(1)中小企業雇用創出人材確保助成金
 新分野進出等に伴い、新たに雇い入れた労働者の賃金の1/4を半年間助成する。
(2)中小企業雇用創出雇用管理助成金
 新分野進出等に伴うソフト面の雇用管理改善に要した費用の1/3を助成する。(限度額100万円)。
(3)中小企業雇用創出等能力開発助成金
 事業所内外で事業の高度化等又は新分野進出等若しくは経営革新に必要な職業訓練等に要した費用及び賃金の1/2を助成する。
(4)中小企業雇用環境整備奨励金
 労働環境改善又は福祉施設の設置・整備に要した費用及び雇入れ数に応じ、75〜1,500万円を助成する。
(5)中小企業高度人材確保助成金
 新分野展開等に伴い、新たに受け入れた経営管理者・技術者など高度な人材の受け入れに要した費用の1/3を1年間助成する。
(6)中小企業人材確保推進事業助成金
 構成員たる中小企業者の雇用管理の改善を図るため、雇用管理の改善に関する調査研究等の事業(第1種事業)を行った事業協同組合等に対して、当該事業の実施に要した経費の2/3相当額を、3年間にわたり助成する。また、第1種事業を終了し、個別事業所への定着状況のフォローアップ事業(第2種事業)を行った事業協同組合等に対して、当該事業の実施に要した経費の1/2相当額を、2年間にわたり助成する。
(7)中小企業基盤人材確保助成金
 新分野進出等に伴い、経営基盤の強化に資する労働者(基盤人材)を新たに雇い入れた場合に、当該基盤人材1人あたり140万円(当該基盤人材の雇入れに伴い雇い入れられた当該基盤人材以外の労働者(一般労働者)1人当たり30万円)を助成する(基盤人材5人を上限。一般労働者は基盤人材と同数まで)。
(8)中小企業雇用管理改善助成金
 職業相談室の設置・整備、又は、職業相談者の配置に要した費用について、それぞれ1/2又は1/3(1年間)を助成する。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
中小企業雇用創出人材確保助成金支給決定人数(人) 9,159 89,772 136,670 68,171
39,291 105,452 183,281 121,144
中小企業雇用創出人材確保助成金支給決定金額(百万円) 7,119 73,190 98,176 28,629
22,445 75,820 107,887 55,669
(備考)
 中小企業雇用創出人材確保助成金は、平成11年1月からの事業であり、雇入れ6か月後に助成金を支給する制度であることから、平成11年度からの支給となる。
 評価指標の上段は雇用・能力開発機構の調べによる実績、下段は予算上の数値である。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
中小企業雇用創出雇用管理助成金支給決定件数(件) 0 327 2,517 2,641 898
1,340 5,361 5,750 12,091 12,770
中小企業雇用創出雇用管理助成金支給決定金額(百万円) 0 125 915 919 322
670 2,681 2,875 3,821 3,103
(備考)
 中小企業雇用創出雇用管理助成金は、平成11年1月からの事業であるが、助成金支給の前提となる改善計画の認定に一定の時間を要すること等から、平成11年度から実績が出てきている。
 評価指標の上段は雇用・能力開発機構の調べによる実績、下段は予算上の数値である。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
受給資格者創業特別助成金支給決定件数(件) 101 1,073 1,301 816
12,607 988 2,006 2,033
受給資格者創業特別助成金支給決定金額(百万円) 53 537 647 403
6,538 494 1,031 1,025
(備考)
 受給資格者創業特別助成金は、平成11年1月からの事業であり、雇入れ6か月後に助成金を支給する制度であることから、平成11年度からの支給となる。
受給資格者創業特別助成金は、平成13年度末までの臨時特例措置である。なお、14年度は経過措置である。
評価指標は、雇用・能力開発機構の調べによる。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
中小企業雇用創出等能力開発助成金支給決定人数(人) 33,229 41,768 35,934 25,434 16,203
128,019 73,480 75,427 91,838 100,744
中小企業雇用創出等能力開発助成金支給決定金額(百万円) 1,049 1,314 1,251 1,055 553
2,112 2,614 3,104 3,699 1,768
(備考)
 平成13年9月に中小企業雇用創出等能力開発給付金を廃止し、平成13年10月に中小企業雇用創出等能力開発助成金を創設。支給は平成14年度以降となるため、平成14年度の実績は、中小企業雇用創出等能力開発助成金、平成13年度以前の実績は中小企業雇用創出等能力開発給付金によるものとなっている。
 評価指標の上段は雇用・能力開発機構の調べによる実績、下段は予算上の数値である。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
中小企業雇用環境整備奨励金支給決定件数(件) 323 379 363 330 209
1,219 737 628 594 502
中小企業雇用環境整備奨励金支給決定金額(百万円) 1,458 1,363 1,287 1,255 788
5,428 3,096 2,828 2,158 1,775
(備考)
 評価指標の上段は雇用・能力開発機構の調べによる実績、下段は予算上の数値である。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
中小企業高度人材確保助成金支給決定人数(人) 678 1,222 1,108 860 1,599
2,837 2,019 2,598 1,550 4,795
中小企業高度人材確保助成金支給決定金額(百万円) 613 1,429 1,355 942 1,633
2,814 2,753 2,912 1,743 3,903
(備考)
 評価指標の上段は雇用・能力開発機構の調べによる実績、下段は予算上の数値である。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
中小企業人材確保推進事業助成金支給決定団体数(団体) 444 474 482 475 444
564 611 517 517 517
中小企業人材確保推進事業助成金支給決定金額(百万円) 2,116 2,077 2,048 1,971 1,784
3,196 3,309 2,820 2,820 2,355
(備考)
 評価指標の上段は雇用・能力開発機構の調べによる実績、下段は予算上の数値である。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
中小企業基盤人材確保助成金支給決定人数(人)
中小企業基盤人材確保助成金支給決定金額(百万円)
(備考)
 平成15年6月に新設した助成金であるため、支給実績はない。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
中小企業雇用管理改善助成金支給決定件数(件)
中小企業雇用管理改善助成金支給決定金額(百万円)
(備考)
 平成15年6月に新設した助成金であるため、支給実績はない。
実績目標2 中小企業の経営基盤の強化に資する人材ニーズを求人情報として「しごと情報ネット」に登録し、求職者に情報提供することにより、中小企業の経営基盤の強化に資する人材の確保を促進すること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 中小企業労働力確保法に基づく助成措置に係る実施計画の申請等の際に収集した中小企業の経営基盤の強化に資する人材ニーズを、求人情報として「しごと情報ネット」に登録し、求職者に情報提供する事業を実施することにより、中小企業の経営基盤の強化に資する人材の確保を促進する。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
「しごと情報ネット」に提供した求人数(人)
求人情報へのアクセス件数(件)
(備考)
 当該求人情報のしごと情報ネットへの提供は、平成15年4月からであるため、実績はない。
実績目標3 新規・成長分野雇用創出特別奨励金の積極的な活用により、新規・成長分野企業等における雇用機会の創出を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 新規・成長分野雇用創出特別奨励金は、新規・成長分野の事業を行う事業主が、中高年齢者の非自発的離職者等を、雇入れ時期を前倒しして常用労働者として雇い入れた場合又はOJTを中心として実践的な職業訓練を行う場合に、それぞれ一定額(雇入れの場合70万円、職業訓練の場合9万円等)の新規・成長分野雇用創出特別奨励金を支給する。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
新規・成長分野雇用創出特別奨励金の支給決定人数(人) 1,114 20,295 47,900 36,920
新規・成長分野雇用創出特別奨励金の支給決定金額(百万円) 693 13,661 29,244 20,155
(備考)
 新規・成長分野雇用創出特別奨励金は平成11年8月からの事業である。
 当初基金を創設した平成11年度から平成13年度末までで15万人を見込んでいた。その後、平成13年度補正予算で基金を増額した際に、平成11年度から平成16年度末までで、16万8千人を見込んでいる。 
 制度創設当初は、平成11年度から平成13年度末までの事業として900億円の基金を計上。平成13年度補正予算で、平成16年度末までの事業として190億円増額し、1,090億円となっている。
 評価指標は、高年齢者雇用開発協会の調べによる。
実績目標4 介護労働者法に基づく助成措置等により、雇用管理の改善等を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 介護労働者の雇用管理の改善等を図るため、雇用管理の改善等に関する専門的相談や調査を行う「介護サービスインストラクター」を介護労働安定センターの支部に配置するための、「介護労働者雇用管理改善等援助事業」や、民営職業紹介所団体と企業等との介護クーポン制度に関する提携を促進することにより在宅介護分野における受給システムの確立を図るための「介護労働者受給サービス事業」を講じている他、以下のような助成事業を行っている。
(1)介護人材確保助成金
 介護分野における新サービスの提供に伴い、新たな労働者を雇い入れる事業主に対して、雇い入れた労働者1人当たり90万円(短時間労働者の場合は25万円)を1年間助成する。
(2)介護雇用管理助成金
 介護分野における新サービスの提供に伴い、新たに雇い入れた労働者に対して雇用管理改善事業(健康診断の実施等)を実施した事業主に対して、当該事業に係る費用の1/2を助成する(限度額100万円)。
(3)介護雇用環境整備奨励金
 介護分野における新サービスの提供に伴い、労働環境改善整備又は福祉施設の設置・整備に要した費用の一部を労働者の雇い入れ数及び設置・整備に要した費用に応じ、75〜1,500万円を助成する。
(4)介護能力開発給付金
 介護分野における新サービスの提供に伴い、新たに雇い入れた労働者に対する教育訓練の実施、有給教育訓練休暇の付与を行う場合に、その費用の1/2又は賃金の1/2を1年間助成する(限度額10万円)。
(5)介護労働者福祉助成金
 ケアワーカーを対象とする福祉共済制度の運営事務に当たる職業紹介事業者等に対して、事務費を助成する。
(6)介護労働環境改善事業助成金
 介護労働者の労働環境の改善に関する研究調査を行う者に対して、助成を行う。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
介護人材確保助成金支給決定人数(人) 7,241 7,205 8,217
介護人材確保助成金支給決定金額
(百万円)
4,627 8,292 8,530
(備考)
 介護人材確保助成金は、平成12年4月からの事業である。
 評価指標は、介護労働安定センターの調べによる。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
介護雇用管理助成金支給決定件数(件) 98 2,018 2,020
介護雇用管理助成金支給決定金額(百万円) 22 176 148
(備考)
 介護雇用管理助成金は、平成12年4月からの事業である。
 評価指標は、介護労働安定センターの調べによる。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
介護雇用環境整備奨励金支給決定件数
(件)
10 47 36
介護雇用環境整備奨励金支給決定金額
(百万円)
12 102 90
(備考)
 介護雇用環境整備奨励金は、平成12年4月からの事業である。
 評価指標は、介護労働安定センターの調べによる。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
介護能力開発給付金支給決定件数(件) 87 217 140
介護能力開発給付金支給決定金額
(百万円)
15 49 28
(備考)
 介護能力開発給付金は、平成12年4月からの事業である。
 評価指標は、介護労働安定センターの調べによる。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
介護労働者福祉助成金支給決定件数(件) 942 900 839 844 836
介護労働者福祉助成金支給決定金額
(百万円)
84 79 74 72 72
(備考)
 評価指標は、雇用・能力開発機構の調べによる。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
介護労働環境改善事業助成金支給決定件数
(件)
8 13 14 15 17
介護労働環境改善事業助成金支給決定金額
(百万円)
37 57 65 72 76
(備考)
 評価指標は、雇用・能力開発機構の調べによる。
実績目標5 雇用保険の受給資格者自らが事業を開始した場合の支援措置を設けることにより、失業者の自立を積極的に促進すること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 雇用保険の受給資格者自らが事業を起こし、事業開始後1年以内に雇用保険の適用事業主となった場合に、その創業に要した費用の一部を助成。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
受給資格者創業支援助成金支給決定件数
(件)
受給資格者創業支援助成金支給決定金額
(百万円)
(備考)
 評価指標の受給資格者創業支援助成金については、平成15年2月からの事業であり、雇用保険の適用事業主となった日の翌日から起算して3か月後に1回目の支給申請を行うことから、平成14年度の支給実績はない。
実績目標6 緊急対応型ワークシェアリング等の積極的な活用により、既存の雇用を維持しつつ、中高年の非自発的失業者等の雇用機会の創出を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 雇用失業情勢が悪化し、完全失業率に基づく発動要件を満たした地域内に所在する事業主が中高年の非自発的失業者等を雇い入れる場合に、以下により緊急雇用創出特別奨励金を支給する。
(1) 中高年の非自発的失業者等を常用労働者として雇い入れた場合、30万円を支給。
(2) 労使の合意により、所定労働時間又は所定外労働時間の短縮とそれに伴う賃金の減額を行い(緊急対応型ワークシェアリング制度)、中高年齢の非自発的失業者等を常用労働者として雇い入れた場合、制度導入について30万円等、雇入れについて120万円等を支給。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
緊急雇用創出特別奨励金の支給決定人数
(人)
0 1,260 4,596 8,206 12,661
緊急雇用創出特別奨励金の支給決定金額
(百万円)
0 98 1,379 2,462 3,798
(備考)
 緊急雇用創出特別奨励金は平成11年1月からの事業である。
 当初基金を創設した平成10年度から平成13年度末までで20万人を見込んでいた。その後、基金の見直しに伴い、平成10年度から平成16年度末までで6万3千人を見込んでいる。
 制度創設当初は、平成10年度から平成13年度末までの事業として600億円を計上。その後、平成14年度の基金の見直しに伴い、緊急雇用創出特別奨励金分について、平成10年度から平成16年度末までの事業として200億円に減額。
 評価指標は、高年齢者雇用開発協会の調べによる。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
緊急雇用創出特別奨励金(うち緊急対応型ワークシェアリング分)支給決定件数
(件)
1
緊急雇用創出特別奨励金(うち緊急対応型ワークシェアリング分)支給決定金額
(百万円)
0.6
(備考)
 緊急雇用創出特別奨励金(うち緊急対応型ワークシェアリング分)は、平成14年6月からの事業である。
 平成14年6月に緊急雇用創出特別奨励金の1つとして創設し、平成15年2月に制度改正を行い、平成15年3月から平成16年度末までで対象者数10,000人を見込んでいる。
 予算額は平成14年6月の創設時に、平成16年度末までで約70億円を見込んでいたが、平成14年度の緊急雇用創出特別基金の見直しに伴い、基金から50億円、平成14年度補正予算で21億円を緊急対応型ワークシェアリング分として計上した。


2.評価

(1) 現状分析
現状分析
 総務省「事業所・企業統計調査」(平成11年〜13年)によれば、廃業率(4.5%)が開業率(3.1%)を上回っており、また、開業率については、厚生労働省「雇用保険事業年報」等によれば、10年単位の長期的傾向として低下傾向にあった。
 こうした中、平成11年の中小企業政策審議会の答申(「21世紀に向けた新たな中小企業政策の在り方」)において、「意欲ある中小企業者の成長、経営の革新へ向けての取組や創業への自助努力を積極的に支援していく必要がある。」とするとともに、中小企業を「魅力ある就業機会創出の担い手」と位置づけており、このような中小企業の活力を活かした雇用機会の創出が、我が国の重要な課題となっている。

 また、代表的な新規・成長分野である「情報サービス」、「医療・社会福祉・教育サービス」に係る新規求人数(常用)をみると、これらの分野の求人数は全産業と比較して伸び率がおおむね高く、今後も引き続き雇用の拡大が期待できることから、これら成長分野への就職の促進を図っていく必要がある。

(参考)代表的な新規・成長分野における新規求人数(常用)
  H11年度 H12年度 H13年度 H14年度
情報サービス 446,401 636,363 632,236 736,699
(8.97%) (42.55%) (-0.65%) (16.52%)
医療・社会福祉・教育 312,861 360,116 399,455 430,406
サービス (5.79%) (15.10%) (10.92%) (7.75%)
全産業 3,825,859 4,546,420 4,288,511 4,463,728
(1.51%) (18.83%) (-5.67%) (4.09%)
※()内は、対前年度伸び率
資料出所:「職業安定業務統計」

 介護分野についても、我が国における急速な高齢化の進展や介護保険制度の施行を背景として、今後も労働需要の拡大が見込まれる分野であり、介護分野における雇用管理の改善等を図っていく必要がある。

(単位:万人)
  平成12年度 平成16年度
要介護・要支援高齢者 270 310
介護分野労働需要見込み 47 80
(資料出所)厚生省推計(ゴールドプラン21による)

 また、平成14年度の完全失業率は5.4%と過去最高の水準で推移するなど依然として雇用環境自体も厳しく、中でも完全失業者の半数強を占める30歳以上60歳未満の中高年齢者は、その半数近くが非自発的離職者であり、中高年齢者の良好な雇用機会の創出が重要な課題となっている。

 このような状況を踏まえ、中高年齢者の非自発的離職者等の雇用機会の創出の手法としてワークシェアリングが脚光をあびており、平成14年3月、政労使で合意した「ワークシェアリングについての基本的な考え方」において、政府の財政的支援について検討していくこととされ、さらに平成14年12月に「多様な働き方と多様就業型ワークシェアリングに関する基本的な考え方」において、「緊急対応型ワークシェアリングに対する財政支援の改善・拡充を図ることが重要である」とされている。

(2) 評価結果
政策手段の有効性の評価
実績目標1について
 雇用機会の創出に対する支援のうち中小企業雇用創出人材確保助成金については、支給対象企業の支給前から支給後1年経過時にかけての雇用増の状況をサンプル調査したところ、助成対象企業が支給後1年経過時に平均して約7人の雇用増を実現(平成14年度)しており、中小企業における雇用機会の創出に有効に機能しているといえる。
 また、雇用管理改善に対する支援のうち中小企業人材確保推進事業助成金については、中小企業の労働力の確保を目的に、事業協同組合等(以下「組合等」という。)による傘下事業所の雇用管理の改善を図るものであり、444団体において雇用管理改善に係る取組が行われており、中小企業における雇用管理の改善に有効に機能しているといえる。その他の助成金については、支給件数自体も低迷しており、有効に機能したとは言い難い。

実績目標2について
 中小企業労働力確保法に基づく助成措置の相談業務等を通じて、把握した中小企業の基盤人材に係る人材ニーズを具体的な求人として顕在化し、「しごと情報ネット」を通じて、求職者に対し効果的に情報提供を行うことは、募集・採用のノウハウが不足している中小企業の有する基盤人材に係るニーズを求職者に幅広くかつ効果的に提供できるため、中小企業の経営基盤強化に資する人材の確保に有効と考える。ただし、平成15年度に開始した開始したばかりの事業のため、今後の実績を注視していく。現時点で評価はしない。

実績目標3について
 新規・成長分野雇用創出特別奨励金は制度創設以降、平成14年度末までの支給決定人数は106,299人となっており、新規・成長分野の事業主の前倒し雇用の意欲の促進及び中高年の非自発的離職者等の雇用機会の創出に一定の役割を果たしている。
 特に情報通信関連分野、ビジネス支援関連分野等の従来中高年の雇入れに消極的と思われる分野での雇入れが相当程度の比率を占めるなど、中高年の非自発的失業者等の雇用機会の創出に資していると考えられる。

実績目標4について
 雇用管理の改善等を図るための措置は、直接収益に結びつくものでないこと、事業の開始時又は拡充時に様々な初期投資費用を負担しなければならず財政的に厳しいこと等から、自ら雇用管理の改善等の取組みを開始する事業主は少ない。このため、(1)雇用管理の改善等に関心を有する事業主に対して、介護雇用創出助成金を用い、必要な経費を助成し、実際に措置を講じさせること、(2)福祉共済制度の運営事務に当たる職業紹介事業者等に対して事務費を助成すること、(3)介護労働者の労働環境の改善に関する研究調査を行う者に対して助成することは、事業主が雇用管理の改善等に取り組むきっかけを与えるものとして有効であると考えられる。
 また、実績から見ても
 介護人材確保助成金については、平成14年度において約8千人の雇用増を実現する等介護分野での雇用創出に資している。
 介護雇用管理助成金については、平成14年度には約2,000事業所(12,000人)において雇用管理改善に係る取組が行われ、介護分野における雇用管理の改善に有効に機能しているといえる。
 介護能力開発給付金については、平成14年度には、約900人の職業能力の開発が行われ、有効に機能しているといえる。

など、全体としては概ね好調に実績が推移しており、これらの助成措置は雇用管理の改善等に有効に機能していると考えられる。

実績目標5について
 雇用の需要が不足する中で、雇用保険の受給資格者の創業を支援することは、失業者本人の自立促進はもとより、新たな雇用創出を促進する観点からも有効な手段であると考える。ただし、平成15年2月に開始したばかりの事業のため、今後の実績を注視していく。

実績目標6について
 緊急雇用創出特別奨励金は平成13年8月の全国発動を機に、順調に実績が伸び、平成14年度末までの支給決定人数は26,723人となっており、事業主の雇入れ意欲の促進及び中高年の非自発的失業者等の雇用機会の創出に一定の役割を果たしている。
 また、緊急対応型ワークシェアリング分については、平成14年6月より実施しているが、現在のところ実績が伸びておらず、当初見込んでいた効果が十分にあがっておらず、有効に機能していない。
 その理由としては、現在雇用されている労働者自身は、労働時間の短縮に伴い、賃金を下げることに抵抗が強いこと、また使用者にとって生産性の維持と雇用の維持を両立することは難しいとの意識が強いことから緊急対応型ワークシェアリング制度そのものの導入がまだ進んでいないことにあると考えられる。
 なお、平成15年2月10日より、以下の拡充措置を講じたところである。
 イ 制度導入に係る奨励金の支給額の引き上げ
 ロ 雇入れに係る奨励金について中小企業における6ヶ月以上の有期雇用の場合を新たに追加
 ハ 雇入れに係る対象年齢の引き下げ
 ニ 労働時間の短縮要件に所定外労働時間を追加
 ホ 生産量の減少要件について対前年比で増加していなければ対象とする
政策手段の効率性の評価
実績目標1について
 中小企業雇用創出人材確保助成金については、助成金額の算定方法について、平成13年10月から労働保険料の一般保険料に係る確定保険料に基づく方法に合理化し、また創業事業所については、確定保険料を待たず、定額方式としており、効率的になった。
 中小企業雇用創出雇用管理助成金、中小企業雇用環境整備奨励金及び中小企業高度人材確保助成金については、利用実績が上がっておらず政策的効果が低下しており、特に、中小企業雇用環境整備奨励金については、その助成額が雇入れ労働者数と助成対象となる取組みに要した費用により決定される分かりづらい仕組みとなっており、効率的でない。
 中小企業雇用創出等能力開発助成金は、「中小企業労働力確保法」に基づく改善計画の他に、企業内における労働者の能力開発の向上のため、段階的かつ体系的な人材育成計画として、事業内職業能力開発計画を必要としていることから、労働者個々人に適合した職業訓練等を行うことを促進し、雇用の安定を図るためには効率的である。
 中小企業人材確保推進事業助成金については、組合等の取組によって傘下事業所における雇用管理の改善がどのように実現しているかの検証が十分なされていないため、効率性について現時点で判断できない。

実績目標2について
 本事業は、(1)中小企業労働力確保法に基づく助成措置の相談等の際に、あわせて中小企業の求人情報の収集が可能であること、(2)この情報を既存の「しごと情報ネット」を活用してインターネットで効率的に提供できるため効率的と考えられる。

実績目標3及び6について
 新規・成長分野雇用創出特別奨励金と緊急雇用創出特別奨励金の支給申請様式の見直しを行い、統一可能な様式については両奨励金で使用可能な様式に変更したことにより、支給申請に係る事務が簡素化されたことなどから、効率的な事務運営がなされていると言える。

実績目標4について
 介護労働者法に基づく助成措置については、上記のような状況を踏まえると、(1)雇用管理の改善等に取り組もうとする意思を有する事業主に対して、実際に措置を講ずるインセンティブを高めるために、必要な経費の一部を助成すること、(2)福祉共済制度の運営事務に当たる職業紹介事業者等に対して事務費を助成すること、(3)介護労働者の労働環境の改善に関する研究調査を行う者に対して助成することが、雇用管理の改善等を効率的にすすめることとなるものである。

実績目標5について
 本事業は、(1)受給資格者の開始した事業の継続性を担保する必要がある一方(2)創業支援のため、迅速な資金供給が求められることから、支給を事業開始3ヶ月後及び6ヶ月後の2回に分けて半額ずつ支給する方式をとっており、効率的と考える。
総合的な評価
 中小企業労働力確保法に基づく助成金については、前述のとおり、一定の役割を果たしてきたところであり、目標達成に向けて進展があった。なお、平成15年6月に、雇用保険三事業各種助成金の整理・合理化の一環で以下の見直しを実施した。
中小企業雇用創出人材確保助成金については、雇用創出の効果をより大きなものとするため、創業等を軌道に乗せるために必要な経営基盤の強化に資する人材の確保の支援に重点化し、助成水準を手厚くするとともに、定額化を通じた効率的な助成手段を用いた「中小企業基盤人材確保助成金」を新設し、本助成金は廃止した。
中小企業雇用創出雇用管理助成金、中小企業雇用環境整備奨励金及び中小企業高度人材確保助成金については、利用実績が上がっておらず政策的効果が低下していること等から廃止する一方、中小企業者のニーズを踏まえた効率的な助成措置を講ずるため、労働者の職場への定着を図るための雇用管理の改善に取り組み、労働力の安定的な確保を図る場合の助成措置である中小企業雇用管理改善助成金を創設した。
中小企業人材確保推進事業助成金については、調査研究等をはじめとする第1種及びそのフォローアップ事業である第2種と、その取組期間を画一的に設定してきたところであるが、調査研究等からフォローアップまでの雇用管理の改善のための一貫した取組を助成する効率的な制度にするため、これを統合した。

 新規・成長分野雇用創出特別奨励金については、平成14年度は前年度と比較し、支給決定人数が減少したものの、各年度の累計を年度ごとに平均した場合、支給決定人数に落ち込みはなく、順調に推移し、新規・成長分野における雇用機会の創出に寄与していると考えられる。
(参考)各年度ごとにおける、年平均支給決定人数
平成11年度平成12年度平成13年度平成14年度
1,114人10,704人23,103人26,573人

 緊急雇用創出特別奨励金については、その支給決定人数が順調に推移しているが、平成16年度末の制度終了を控え基金残高が少なくなる中で、中高年の非自発的失業者等の雇用創出を促進する観点から、基金のより有効な活用方策について検討する必要がある。

 介護労働者法に基づく助成金については、前述のとおり、一定の役割を果たしてきたところであり、目標達成に向けて進展があった。なお、平成15年6月に、雇用保険三事業各種助成金の整理・合理化の一環で以下の見直しを実施した。
介護人材確保助成金については、雇用創出の効果をより大きいものとするため、介護分野における雇用管理に関する調整及び介護従事者の教育において中核的な役割を担う労働者の確保の支援に重点化等した「介護基盤人材確保助成金」を新設し、本助成金は廃止した。
介護雇用環境整備奨励金については、近年の企業経営をとりまく厳しい情勢の下では、労働者の福利厚生施設の設置、整備によって雇用管理改善を行うニーズが乏しく、利用実績が低迷しており本助成措置の政策的必要性が低くなったため、平成15年5月末をもって廃止した。
以上のとおり、施策目標達成に向けて進展があった。
評価結果分類 分析分類
(3) (2)


3.政策への反映方針

 中小企業労働力確保法に基づく助成金について、平成15年6月に雇入れ助成における対象労働者の重点化や利用実績の低調な助成金を廃止するとともに、労働力の安定的な確保に対する助成を充実させるなどの見直しを実施したところであり、引き続き実施する。
 なお、新設の「中小企業基盤人材確保助成金」については、基盤人材の雇入れによる雇用の波及効果を確かなものとするため、助成後の雇用増について目標を設定し事後チェックを行い、政策効果を定期的に点検する仕組みを取り入れ、点検結果を基に不断の見直しを行う。また、中小企業人材確保推進事業助成金については、組合等の取組によって傘下事業所における雇用管理の改善がどのように実現しているかの検証が十分なされていないため、傘下事業所における雇用管理の改善の状況を把握する仕組みを設けるとともに、事業の在り方についても検討する。

 介護労働者法に基づく助成措置等については、平成15年6月に雇入れ助成における対象労働者の重点化や利用実績の低調な助成金を廃止するとともに、労働力の安定的な確保に対する助成を充実させるなどの見直しを実施したところであり、引き続き実施する。なお、新設の「介護基盤人材確保助成金」については、基盤人材の雇入れによる雇用の波及効果を確かなものとするため、助成後の雇用増について目標を設定し事後チェックを行い、政策効果を定期的に点検する仕組みを取り入れ、点検結果を基に不断の見直しを行うこととする。また、介護雇用管理助成金、介護能力開発給付金は、それぞれ助成金利用後の労働者の定着状況効果について把握していないため、当該定着状況について、事後チェックを行い、政策効果を定期的に点検する仕組みを取り入れ、点検結果を基に不断の見直しを行うこととするほか、予算額と実績額が乖離していることから、適切な予算計上に留意する。

 緊急雇用創出特別奨励金については、基金残高をより効果的に使用する観点から、本奨励金によって雇用創出が実際に図られているかについて改めて検証を行い、検証結果を踏まえ、必要に応じ、より雇用創出に資する仕組みとなるよう見直しを行うことについて検討する。
 なお、緊急対応型ワークシェアリング分については、今後のワークシェアリング自 体の普及状況やその要因等を分析し、必要に応じ検討を行う。
反映分類
(2)


4.特記事項

(1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
 なし

(2)各種政府決定との関係及び遵守状況
 平成13年12月19日に閣議決定された「特殊法人等整理合理化計画」において、雇用・能力開発機構の各種助成金業務につき講ずべき措置として、「国が明確な政策目標を定め、併せて当該目標が達成された場合又は一定期間経過後には助成措置を終了することを明記する。さらに、事後評価を行い、その評価結果を踏まえて助成の在り方を適宜見直す」こととされている。当該計画を踏まえ、中小企業労働力確保法に基づく各種助成措置については、本施策目標が達成された場合には、終了するものとする。
 また、介護労働安定センターの助成金事業については、平成14年3月29日に閣議決定された「公益法人に対する行政の関与の在り方の改革実施計画」の中で介護労働安定センターが補助金依存型公益法人として、実施計画の対象とされており、「個々の補助金等の政策的必要性を始めとした合理的理由を
 平成14年10月30日に財政諮問会議で決定された「改革加速のための総合対応策」において、民間企業による中高年齢者等の新たな雇用機会を創出するための「新規・成長分野雇用創出特別奨励金を積極的に活用する」こととされている。
 平成14年12月12日に経済対策閣僚会議で決定された「改革加速プログラム」において、「雇用保険の受給者の自立を促すため、自らが事業を開始した場合に助成を行う「受給資格者創業支援助成金(仮称)」を創設する。」こととされ、また、「緊急対応型ワークシェアリングを導入する企業が新たに雇い入れる場合の助成要件の見直し、助成額の増額を行う」こととされている。
 また、平成14年12月18日にまとめられた「労働政策審議会職業安定分科会「雇用保険制度の見直しについて」」において、「雇入れ助成については経営基盤等の強化に資する人材の確保への重点化や失業者の創業支援の充実等を行う必要がある。」とされた。

(3)総務省による行政評価・監視等の状況
 なし

(4)国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
 「雇用保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」において「雇用保険三事業の各種給付金等について、政策評価を適切に行い、今後とも必要な見直しを行うよう努めるとともに、中小企業の利用に配慮しつつ、不正受給の防止に万全を期すこと」とされている。(平成15年4月15日衆議院厚生労働委員会)
 「雇用保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」において「雇用保険三事業の各種給付金等については、政策評価を適切に行い、真に失業予防や再就職の促進に有用であると認められるものを実施するよう、不断の見直しを行うとともに、中小企業の利用促進に配慮しつつ、不正受給の防止にも万全を期すこと」とされている。(平成15年4月24日参議院厚生労働委員会)

(5)会計検査院による指摘
 なし


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