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(10−1−I)
実績評価書
平成15年8月

政策体系 番号  
基本目標 10 国際化時代にふさわしい厚生労働行政を推進すること
施策目標 国際機関の活動に対し協力すること
I 国際労働機関が行う技術協力に対し積極的に協力すること
担当部局・課 主管部局・課 大臣官房国際課
関係部局・課 職業能力開発局海外協力課


1.施策目標に関する実績の状況
実績目標1 開発途上国における雇用開発、女性の就業・雇用機会の拡大に貢献すること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 ILOへの任意拠出を通じて、ILO専門家等の活用により、以下のプロジェクトを実施する。
(1)中国における創業訓練、マイクロファイナンス等による雇用開発を通じた小規模の創業希望者を支援するプロジェクト
(2)カンボジア・ベトナムにおける女性をターゲットとする職業訓練、意識啓発等を通じた女性の雇用・就業拡充を支援するプロジェクト
(評価指標)
 プロジェクトの対象人数 (人)
H10 H11 H12 H13 H14
72 654
(評価指標)
 プロジェクト参画者からの事業評価
H10 H11 H12 H13 H14
(備考)
(1)については平成12年度、(2)については平成13年度より実施しているが、それぞれ開始年度は、5年計画の初年度として、パイロット都市の選定、政府及び関係機関との調整等を行っていたため、直接対象者に対する訓練等は実施せず。
平成13年度のプロジェクトの対象人数については、(1)の創業訓練指導者の訓練及び小規模起業家の訓練を受けた者の数。
平成14年度のプロジェクトの対象人数については、(1)、(2)の合計数。
プロジェクト参画者からの事業評価については、年次報告書に基づく定性的なものである。
実績目標2 開発途上国の労働基準の向上のためのセミナー等を通じて、健全な労働環境の整備に貢献すること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 ILOへの任意拠出を通じて、アジア・太平洋地域を対象として、以下のセミナー及び研修事業を行う。
(1)「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言(中核的労働基準:i.結社の自由及び団体交渉権の効果的な承認、A.あらゆる形態の強制労働の禁止、B.児童労働の実効的な廃止、C.雇用及び職業における差別の排除)」の普及啓発を目的とした政労使三者構成地域セミナー(サブテーマ:結社の自由と団体交渉権)
(2)児童家内労働撲滅のための行動に関する政労使三者構成地域セミナー
(3)障害者の職業訓練及び雇用に関する技術協議を目的とした政労使三者構成地域セミナー
(4)アジア危機からの回復における労働市場政策と貧困撲滅を目的とした政労使三者構成地域セミナー
(5)途上国の労働・雇用政策行政官を対象に、日本を含むアジア2〜3か国の労働・雇用政策の制度に関する研修を行うことを目的とした労働政策フェローシップ・プロジェクト
(評価指標)
 参加者数 (人)
H10 H11 H12 H13 H14
75 81 304 261
(評価指標)
 参加者等からの事業評価
H10 H11 H12 H13 H14
(備考)
(1)については平成11年度から実施。(2)〜(5)は平成14年度実施。
参加者等からの事業評価については、年次報告書等に基づく定性的なものである。
実績目標3 アジア太平洋地域技能開発計画(APSDEP)への協力を通じて、アジア太平洋地域の職業能力開発の向上に貢献すること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 任意拠出金(平成14年度18万ドル)を拠出し、APSDEPの事業活動等を支援するとともに、我が国において、我が国の有する経験、専門知識、施設等を活かしたセミナーの開催等の支援事業を実施する。
 アジア太平洋地域技能開発計画(APSDEP)は、国際労働機関(ILO)が協力する地域プログラムであり、アジア太平洋地域における職業能力開発分野の知識、経験、施設等を相互に活用した技術協力を推進し、域内諸国の職業訓練の向上、雇用の拡大、ひいては経済社会開発を促進することを目的に昭和53年に設立された。
 我が国は、APSDEPの事業活動に対し拠出金を拠出するとともに、我が国が有する職業訓練分野における経験、ノウハウ等を活用したセミナー開催等の支援事業を実施している。
(評価指標)
APSDEP活動数(セミナー、会議等の件数)
H10 H11 H12 H13 H14
(備考)
 APSDEP事務局の事業報告から集計したもの。APSDEPが実施しているインターネットを通じた情報提供、職業能力開発分野における調査研究等は、定量的な把握が困難であるため、上記活動数には含めていない。
(評価指標)
支援事業の参加者数(人)
H10 H11 H12 H13 H14
49 38 40 40 23
(備考)
APSDEP事務局、(財)海外職業訓練協会の事業報告から集計したもの。
(評価指標)
支援事業の参加国数(国)
H10 H11 H12 H13 H14
17 19 14 22 13
(備考)
APSDEP事務局、(財)海外職業訓練協会の事業報告から集計したもの。
(評価指標)
支援事業の参加者満足度(ポイント)
H10 H11 H12 H13 H14
4.54 4.35
(備考)
 APSDEP事務局実施のアンケート調査結果(5段階評価)を集計したもの。(同調査がすべての支援事業で開始されたのは13年度からである。)


2.評価
(1) 現状分析
現状分析
 グローバル化が進展する中で、雇用・労働分野における諸問題は開発途上国の安定的で継続的な経済発展を妨げている主要因の一つともなっている。
 特に、労働者の職業能力開発は、急速な技術革新、産業構造の変化に伴い、労働者に求められる職業能力が高度化していることから、先進国も含めた各国共通の重要課題となっている。一方、アジア太平洋地域開発途上国においては、未だ非常に脆弱な基盤しか備えていないため、このような諸問題を自立的に解決するための体制が十分ではない。
 こうした状況において、アジア太平洋地域の安定的で継続的な経済発展に資するためには、雇用・労働分野において見識、ノウハウ等を豊富に有するグローバルな組織である国際労働機関の枠組みを活用することが効果的であることから、国際労働機関の行う技術協力に対する資金・技術両面での積極的な協力が重要となっている。

(2) 評価結果
政策手段の有効性の評価
実績目標1
 フィリピン・タイ・インドネシア・ネパール等で同様の方法によるプロジェクトを実施した実績があり、開発途上国の自立性と持続可能な開発を確保する上で有効性が確認されている手法を用いており、雇用開発、女性の就業・雇用機会の拡大に対し効果的である。
 なお、本事業は5年計画で実施しており、プロジェクトの成果については、今後、中間、最終評価によって確認する予定。年次報告書によると、参画者からも本事業は有効であると評価されており、創業訓練等のプログラムについても、プロジェクト試行地区のみならず、国内の他地区への波及が確認され、現在プロジェクトは順調に進行していることが認められる。
実績目標2
 (1)については、日本との経済的な結び付きが強いアジア・太平洋地域開発途上国では、特有の歴史的・社会的背景のために中核的労働基準の実施が進んでいない現状がある。そこで、政労使代表を参加させて三者が一体的に中核的労働基準の普及・啓発を図ることは、当該諸国における適正な雇用を促すことになり、有効であった。また、政労使三者を対象に行うことにより、バランスのとれた施策の推進が可能となり、アジア・太平洋地域全体における経済の安定的かつ均衡の取れた発展に資することができる観点からも非常に有効であった。
 (2)については、児童労働の撲滅を図ることは世界共通の責務となっているが、アジア地域開発途上国では特に児童労働が深刻な問題となっている。そこで、ILO児童労働撲滅国際計画に基づき実施される様々なプロジェクトの事例等の情報提供を行うことにより、アジア地域の開発途上国の児童労働撲滅を促進させる機会を提供し、政労使それぞれが児童労働撲滅対策のノウハウや情報を得られることから、有効であった。
 (3)については、1992年からの「障害者の10年」におけるアジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の活動のうち、職業訓練と雇用分野に関する活動を調査・検討し、その結果を各国に普及・啓発し、更に「新しい10年」に対する、障害者の訓練と雇用を重点とした各国活動計画策定のための勧告の案出を行うことができたので、有効であった。
 (4)については、労働市場政策と貧困撲滅へのアプローチに焦点をあて、アジア経済危機からの回復期におけるインドネシアの経験を中心に、アジア地域内の各国の経験を広く討議し、知識・経験の共有を図ることができたので、有効であった。
 (5)については、アジア・太平洋地域開発途上国においては労働雇用政策の諸問題解決を行う人材が不足している。そこで、途上国の行政官がテーマに即した先進の受入れ国において労働・雇用政策の実情・制度・ノウハウを学ぶとともに、研修員同士で情報・意見交換・交流を行うことで、労働雇用分野における人材を養成し、自国における自立性と持続可能な開発に資することができたので、有効であった。またプログラム評価レポートにおいても、研修員より、当プログラムから理論的かつ実践的な知識が得られたと高い評価を得ている。
実績目標3
 任意拠出金については、技能開発と生産性に関する政労使三者会合を始めとする会議や各種研修等APSDEPの主要な活動の一部経費として充当されており、有効に活用されている。
 支援事業については、14年度は、13カ国から23名の参加者が、我が国の有する職業能力開発分野における知識、経験等を学んでおり、また、支援事業のアンケート結果(14年度)によると、5段階評価で平均4.35ポイントとの評価を得るなど、有効に実施されている。
政策手段の効率性の評価
実績目標1
 プロジェクト実施に当たっては、ILOにおいて過去のノウハウを活かすのみならず、試行都市・地域NGOを有効に活用し、効率的な運営を行っている。また、ILOは、毎年プロジェクト実施国政府・NGO等と協議の場を設けているほか、援助国である日本から派遣される行政官を通じてプロジェクトの運営についての検討あるいはモニタリングを行うなど、常に効率的でオープンなプロジェクト運営を行っている。
実績目標2
 セミナーの実施に当たっては、ILOの持つ専門的知識やノウハウを活用して実践的で有用な内容で実施するだけでなく、ILOの特質を活かした政労使三者構成で実施することで、三者別々ではなく三者一体となってセミナーの成果を生かせることからより効率的である。
実績目標3
 活動の実施にあたっては、APSDEPと我が国との間で協議の場を設け実施するなど、効率的な運営を行っている。また、地域プログラムのネットワークを活かし、域内共通の課題等に対応した二国間協力では難しい効率的な国際協力を推進している。
総合的な評価
 ILOやAPSDEPを通じた本事業は、国際機関の豊富なネットワークと専門知識、ノウハウに加え、加盟国同士が相互に協力し合う仕組みにより、二国間協力ではカバーできない国々を含め、アジア太平洋地域の雇用・労働分野における諸問題の解決に関して、幅広くかつ効率的に貢献している。
 我が国の協力についても、セミナー等開催に際する事前の情報提供や開催日数の増を求める声も見られる。個々の活動の進め方については改善の余地があるものの、ILOとしても改善には積極的であり、全体として、各国政府及び労使団体より高い評価を得ており、国際機関の活動に協力し、国際化時代にふさわしい厚生労働行政を推進する目標の達成に貢献している。
評価結果分類 分析分類
(3) (2)


3.政策への反映方針
 アジア・太平洋地域において、かつて開発途上国であったブルネイ・シンガポール・韓国が中進国になり、マレーシア・タイなどはこれに向かって順調に発展しつつあり、自国での雇用・労働問題対策事業も行えるようになってきた。また、中国については2003年1月に発表された援助受取国リストにより、低所得国から低中所得国に評価が上がっていることは、各種の支援事業の成果とも言えるが、アジア・太平洋地域には未だ社会基盤が脆弱で、自立的で持続可能な開発を行えずにいる国が多い。今後は、グローバル化による地域経済統合を念頭に置いて、雇用・労働分野において地域経済の活性化に資する事業を優先し、またはそのための重点分野の絞り込み等も行いつつ、引き続き雇用・労働分野における支援を行っていくことが重要である。
反映分類
(4)


4.特記事項
(1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
なし
(2)各種政府決定との関係及び遵守状況
 (「地方分権推進計画」「国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本計画」「第10次定員削減計画」「行政改革大綱」等)
なし
(3)総務省による行政評価・監視等の状況
なし
(4)国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
なし
(5)会計検査院による指摘
なし


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