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(1−5−V)
実績評価書
平成15年8月

政策体系 番号  
基本目標 安心・信頼してかかれる医療の確保と国民の健康づくりを推進すること。
施策目標 感染症など健康を脅かす疾病を予防・防止するとともに、感染者等に必要な医療等を確保すること。
V 適正な臓器移植の推進等を図ること
担当部局・課 主管部局・課 健康局疾病対策課臓器移植対策室
関係部局・課  


1.施策目標に関する実績の状況
実績目標1 臓器移植法に基づく適正な臓器移植の普及を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
(1)  眼球以外の臓器については(社)日本臓器移植ネットワークが、眼球については全国52のアイバンクが、それぞれ普及啓発・連絡調整等のあっせんを行っている(ネットワークの事業・アイバンクの設備整備への国庫補助を実施)。
 特に、平成14年度には、日本臓器移植ネットワークにおいて意思表示カード等の配付のアイディア募集を新聞紙上等で行い、その結果も受けてコンビニエンスストアや警察署等への設置に向けた働きかけを行っている。
(2)  毎年10月を臓器移植普及推進月間と位置付け、各都道府県等の協力の下、国民大会を実施するなど、重点的に普及啓発事業を展開している。
(3)  平成14年7月には、臓器提供先に係る本人の生前意思の取扱いについて、当面する法運用に当たってのルールを明確化するため、「「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)」を改正した。
(4)  平成15年3月には、「腎臓移植及び角膜・強膜移植の推進に関する協力依頼について」(平成15年3月19日健発第0319001号)を発出し、正しい知識の普及啓発を行うとともに、医療機関の理解・協力が得られるよう依頼を行った。
(5)  臓器移植を通じたウエストナイル熱等への感染を防止するため、あっせん機関等に対し臓器提供候補者に係る問診強化の指導を行っている。
(評価指標)
臓器提供意思表示カード・シールの配付枚数
H10 H11 H12 H13 H14
カード(単位:千枚) 32,860 21,296 10,454 6,864 6,583
保険証用シール(単位:枚) 3,932,890 7,437,755 428,290 1,736,355 478,300
運転免許証用シール(単位:枚) 456,800 231,550 185,000 359,736 1,151,150
心臓移植実施件数(単位:件) 1 3 6 3 4
肺移植実施件数(単位:件) 0 2 4 4 3
肝臓移植実施件数(単位:件) 1 3 7 5 5
腎臓移植実施件数(単位:件) 158 148 126 161 118
膵臓移植実施件数(単位:件) 0 0 3 4 2
小腸移植実施件数(単位:件) 0 0 1 0 0
角膜移植実施件数(単位:件) 1,717 1,589 1,525 1,494 1,523
(備考)
 臓器の移植に関する法律の施行は平成9年10月(同法施行前は、角膜及び腎臓の移植に関する法律により、角膜及び腎臓の移植が行われていた)。
 評価指標は、(社)日本臓器移植ネットワーク調査による(角膜移植数については財団法人日本眼球銀行協会調査による)。
実績目標2 造血幹細胞移植の普及を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
(1)  造血幹細胞移植のうち、骨髄移植については(財)骨髄移植推進財団が普及啓発・連絡調整等のあっせん業務を行っている。さい帯血移植については、全国で10の公的さい帯血バンクがさい帯血の採取・分離・保存を行っており、各バンクの連合体である日本さい帯血バンクネットワークがホームページ上で保存さい帯血の公開や普及啓発を行っている。(骨髄移植推進財団、地方公共団体及び日本赤十字社に国庫補助)
(2)  毎年12月を「骨髄バンク推進月間」と位置付け、各都道府県等の協力の下、重点的に普及啓発事業を展開している。なお、平成14年度の月間においては、献血併行型ドナー登録会の有効性にかんがみ、都道府県にその実施に係る協力を依頼している。
(3)  造血幹細胞移植を通じたウエストナイル熱等への感染を防止するため、(財)骨髄移植推進財団・日本さい帯血バンクネットワークに対し造血幹細胞提供候補者に係る問診強化の指導を行っている。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
骨髄提供希望登録者数(人) 114,354 127,556 135,873 152,339 168,413
うち新規登録者数(人) 23,716 18,675 15,672 24,212 22,753
骨髄移植実施件数(件) 482 589 715 749 739
保存さい帯血公開個数(個) 4,343 8,384 13,431
さい帯血移植実施件数(件) 77 114 169 221 295
(備考)
 評価指標は、(財)骨髄移植推進財団及び日本さい帯血バンクネットワークの調査による。
 日本さい帯血バンクネットワークに加入している公的さい帯血バンクを介した移植の実施は平成11年度から開始、保存さい帯血の公開は平成12年度から実施。
 なお、移植実施件数については、骨髄移植は(財)骨髄移植推進財団、さい帯血移植は公的さい帯血バンクを介したものに限る。保存さい帯血公開個数については公的バンクで保存・公開されているものに限る。


2.評価

(1) 現状分析
現状分析
(1) 臓器提供意思表示カード等の配付枚数は平成14年度末までの累計で、カード82,724,961枚、運転免許証用シール2,384,236枚、医療保険の被保険者証用シール14,013,590枚。
(2) 臓器移植については、あっせん機関に登録して移植を待つ人の数は、心臓67名、心肺同時1名、肺69名、肝臓56名、腎臓12,425名、膵腎同時85名、膵臓7名、眼球(角膜)4,787名(15.6末日。眼球については15.5末日)であり、移植を待つ人数に比べて年間の移植実施数は少ないものとなっている。
(3) 平成14年7月の内閣府世論調査によれば、前回調査時(平成12年5月)と比較し、臓器提供意思表示カード等の存在を知っていると答えた者の割合は前回に比べ低くなっている傾向があるが、これらを所持している者の割合はほぼ同じとなっている。(「カード(シール)について知っていた」H12:81.1%(14.0%)→H14:68.9%(10.3%)、「カードを所持している」H12:9.4%→H14:9.0%)
(4) 平成14年度末の数字で、ドナー登録者数は168,413人、保存さい帯血公開個数は13,431個。
(5) 骨髄移植については、平成13年度新規登録患者のうち、ドナー登録者とHLA型が適合する率は約93%となっている。
(6) 臓器移植・造血幹細胞移植ともに、あっせん機関の安定的な運営が課題。

(2) 評価結果
政策手段の有効性の評価
【臓器移植】
(1) 臓器提供意思表示カード・シールを所持する者の数の増は、臓器移植に関する意思表示を行う者の増につながり、ひいては我が国における臓器移植の普及につながる。平成14年度における配付枚数は、前年度比で、カードについては95.9%と前年並みであり、保険証用シールは配付枚数を大きく伸ばした前年度に比べ27.5%と減少しているが、運転免許証用シールは約320%と配付枚数を伸ばしており、日本臓器移植ネットワークにおける警察署等への働きかけによるものと評価できる。
(5) 平成14年7月の世論調査の結果、腎臓・角膜は遺族の書面承諾のみで提供できることについての認知度は30.1%となっている。一方、腎臓移植の実施件数は前年度161件から118件と減少している。平成13年8月に続き、平成14年度末にも再度正しい知識の普及を行ったところであるが、今後とも機会をとらえて関係者の理解を深めるための普及啓発に努めることが必要である。
(5) ガイドラインの改正や感染症への対応等運用上の課題に適切に対処することにより、移植医療に対する国民の信頼を確保し、その普及に資することとなるものと認められる。

【造血幹細胞移植】
(1) 平成14年度新規骨髄提供希望登録者(ドナー登録者)数については、22,753人(前年度比約94%)となっている。現在骨髄バンク事業においては、ドナー登録者30万人を目標としているが、平成14年度末のドナー登録者数は168,413人と半分を越す程度であることから、今後とも一層の普及に努める必要がある。
 また、骨髄移植の実施件数は、前年度と同程度である。
(2) 保存さい帯血公開個数については、平成14年度の保存さい帯血公開個数は前年度比で約160%の13,431個となっているが、現在さい帯血バンク事業においては2万個を目標として保存さい帯血の整備を進めており、今後とも着実な整備に努める必要がある。
 また、さい帯血移植の実施件数は、着実に増加している。
(3) 感染症への対応等運用上の課題に適切に対処することにより、移植医療に対する国民の信頼を確保し、その普及に資することとなるものと認められる。
政策手段の効率性の評価
【臓器移植】
 日本臓器移植ネットワークにおいては、臓器提供意思表示カード等の配付・補充は、配布先として協力いただいている各都道府県の保健所や運転免許試験場等からの連絡を待って行っているのが主であったが、新聞紙上での配付のアイディア募集の結果を受けてコンビニエンスストアや警察署へのカード設置の働きかけ等を行い、結果として運転免許証用シールの配付枚数は前年度に比べて増加している。

【造血幹細胞移植】
(1) 1回当たりの登録者数(平成13年度実績)で見ると、献血併行型登録会は11.5人と、集団登録説明会の22.5人に比べて少ないものの、各都道府県等で実施される移動献血の機会に併せて登録会を開催できるため普及しやすく、より効率的に普及が図られたものと推測できる。
(2) さい帯血移植については、保存さい帯血公開個数2万個の目標に向けて増額した予算を着実に事業化し、保存さい帯血公開個数・移植件数の増加を実現している。
総合的な評価
 臓器移植・造血幹細胞移植の普及に、一定の効果はあったと思われる。
 今後とも引き続き現行の施策を実施するとともに、運用上の課題に適宜対応することなどにより、国民の移植医療に対する信頼を確保しながら、その普及に努めてまいりたい。
評価結果分類 分析分類
(3) (2)


3.政策への反映方針

 臓器移植については、より効果的な臓器提供意思表示カード・シール等の普及に向けて、都道府県やコンビニエンスストアに対する働きかけの強化など日本臓器移植ネットワークにおける一層の配付方式の工夫を求めることを始め、広く国民に対して効果的な普及啓発を行うための方法を検討予定。
 骨髄移植については、効果的なコーディネートの実施体制整備や、都道府県等においてよりドナー登録をしやすくするための方法のほか、公共広告機構の一層の活用など広く国民に対して効果的な普及啓発を行うための方法を検討予定。
 さい帯血移植については、保存さい帯血の細胞数基準を引上げてより移植に適したさい帯血の保存を行うなど、効果的なさい帯血の提供体制整備のための方法を検討予定。
 なお、平成15年度より、移植対策については、これまでの補助金を廃止して新たに「移植対策事業費補助金」を創設し、いわゆる制度的補助金としての位置づけを行ったところ。
 そのほか、
 より効率的な臓器移植のあっせん体制及び骨髄移植コーディネート体制を構築するための経費
 より骨髄ドナー登録をしやすくするための経費
 さい帯血バンク体制の拡充強化のための経費

等に係る国庫補助を行っている。
 さらに、平成15年度より、都道府県臓器移植コーディネーターの設置と保健所等におけるドナー登録受付に係る事業については、各自治体に同化定着したものと判断し、今後地方の裁量により事業が行える体制を作り、一層の事業の推進を図るため、一般財源化している。
 なお、若年世代への臓器移植・造血幹細胞移植の普及啓発に資するため、平成15年度において中高生向けのパンフレットを作成・配付予定。
反映分類
(4)


4.特記事項

(1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
@ 臓器移植をめぐる運用上の課題については、適宜、厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会での検討を行っていただいている。
A 造血幹細胞移植をめぐる課題については、適宜、厚生科学審議会疾病対策部会造血幹細胞移植委員会での検討を行っていただいている。
(2)各種政府決定との関係及び遵守状況
(「地方分権推進計画」「国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本計画」「第10次定員削減計画」「行政改革大綱」等)
なし
(3)総務省による行政評価・監視等の状況
なし
(4)国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
なし
(5)会計検査院による指摘
なし


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