施策目標
(法案名) |
施策目標4−1−II 民間労働力需給調整システムを整備すること
「職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案」 |
1 評価テーマの設定 |
評価の背景事情 |
〔背景事情〕
厳しい雇用失業情勢、働き方の多様化等に対応するため、職業紹介事業や労働者派遣事業が労働力需給の迅速、円滑かつ的確な結合を図ることができるよう、これらの事業に係る規制の見直し等所要の措置を講ずる必要がある。 |
〔契機等〕
・ |
改正職業安定法(平成11年)附則第9条において、「政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、新職業安定法の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、新職業安定法の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」とされている。
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・ |
改正労働者派遣法(平成11年)附則第9条において、「政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、新労働者派遣法の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、新労働者派遣法の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」とされている。
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・ |
「規制改革推進3か年計画(改定)」(平成14年3月29日閣議決定)において、「職業紹介制度については、改正職業安定法施行3年後(平成14年12月)の見直し規定にかかわらず、調査検討を開始したが、学校等以外の者の行う無料職業紹介事業の許可制については、許可制を届出制に改め行為規制(事後規制)に徹することも視野に入れて検討を行い、可及的速やかに所要の法案を国会に提出する」、「労働者派遣制度については、派遣事業許可制度の在り方等を含めて、既に開始されている調査・検討結果を踏まえ、可及的速やかに所要の法案を国会に提出する」等とされている。
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・ |
「規制改革推進3か年計画(再改定)」(平成15年3月28日閣議決定)において、「職業紹介制度については、既に有料職業紹介・無料職業紹介の双方について制度全体の見直しに向けて検討が行われているところであるが、(中略)無料職業紹介事業の届出制の範囲の拡大について検討し、その結論を早急に取りまとめ、第156回国会に法案の提出等所要の措置を講ずる」、「労働者派遣制度については、昨今の雇用情勢の急速な変化を踏まえ、労働者の働き方の選択肢を広げ、雇用機会の拡大を図る等の目的から、派遣事業許可制度の在り方、派遣期間の延長又はその制限撤廃や「物の製造」の業務の派遣禁止の撤廃等を含めて、調査・検討結果を早急に取りまとめ、第156回国会に法案の提出等所要の措置を講ずる」等とされている。 |
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担当局課 |
職業安定局民間需給調整課 |
2 |
評価の実施に当たっての設定条件、事前準備
→ 情報・データの収集、測定・分析の実施方法等 |
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実施時期
評価期間 |
労働政策審議会職業安定分科会民間労働力需給制度部会
(平成13年8月〜平成15年2月)
(建議 平成14年12月)
(法律案要綱諮問及び答申 平成15年2月) |
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評価対象 |
以下の2点を中心に評価を行うこととした。
1 職業紹介事業制度
2 労働者派遣事業制度 |
評価項目 |
・ |
職業紹介事業や労働者派遣事業による労働力需給の迅速、円滑かつ 的確な結合の促進 |
・ |
求職者の保護や派遣労働者の雇用の安定等 |
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評価に際して収集した情報・データ及び各種の評価手法を用いてこれらについて行った分析・測定の内容 |
・ |
平成14年3月〜4月に、労働政策審議会(民間労働力需給制度部会)において、以下の者からヒアリングを行い、制度見直しのための検討の材料とした。
(1) |
職業紹介事業者団体、職業紹介事業者 |
(2) |
職業紹介事業に係る紹介先企業 |
(3) |
職業紹介事業に係る求職者 |
(4) |
無料職業紹介事業を行う労働組合等 |
(5) |
労働者供給事業者等 |
(6) |
ハローワークに係る紹介先企業 |
(7) |
ハローワークに係る求職者 |
(8) |
労働者派遣事業者団体及び派遣元事業主 |
(9) |
派遣労働者 |
(10) |
製造業の事業者 |
(11) |
派遣先 |
(12) |
派遣先の労働者 |
(13) |
製造業の請負事業者団体、製造業の請負事業者 |
(14) |
製造業の労働者 |
(15) |
求人情報事業者団体 |
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・ |
また、平成14年6月〜7月に、現行制度の施行状況等を十分に把握するため、以下の者を対象とする実態調査を行い、同調査の結果を、労働政策審議会へ提出し、制度見直しのための検討の材料とした。
(1) |
職業紹介事業者 |
(2) |
求人企業 |
(3) |
求職者 |
(4) |
派遣元事業所 |
(5) |
派遣先 |
(6) |
派遣労働者 |
(7) |
請負事業者 |
(8) |
請負発注者 |
(9) |
請負労働者 (以上、有効回答計5322事業所、5116人) |
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3 評価結果のとりまとめ |
評価結果 |
1 |
職業紹介事業制度
〈許可・届出制関係〉
○ |
商工会議所、農協等の特別の法人がその構成員を対象として行う無料職業紹介事業について、届出による実施を可能とするのが適当である。
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○ |
地方公共団体が住民福祉の増進、地域産業の振興等のための施策に附帯して行う無料職業紹介事業について、届出による実施を可能とするのが適当である。
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○ |
有料、無料のいずれについても、職業紹介事業の許可の単位を、事業所単位から事業主単位とし、事業所の設置については、届出制とするのが適当である。 |
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2 |
労働者派遣事業制度
〈派遣期間関係〉
○ |
労働者派遣事業制度の「臨時的・一時的な労働力の需給調整に関する対策」としての位置付け、及び、これに基づく派遣期間の一定の限定は、いわゆる長期雇用慣行の我が国における位置付けを踏まえると、今回の見直しにおいては、引き続き維持することが適当である。
しかしながら、常用雇用との調和を図りつつ、派遣労働者や派遣先のニーズに的確に応える観点から、現行の一律1年という制限については見直すこととし、3年までの期間で臨時的・一時的と判断できる期間については、派遣を受け入れることができることとするのが適当である。
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○ |
この場合、臨時的・一時的と判断できる期間は、派遣先の事業の状況等によって異なるものとみられることから、1年を超えても臨時的・一時的と考えられる期間であると判断できるかどうかは、個別事業所ごとに、派遣先の事業主が判断することとし、派遣先の事業主が当該事業所の労働者の過半数代表の意見を聴いた上で判断することが適当である。 |
〈派遣労働者の直接雇用の促進関係〉
○ |
派遣先が派遣期間の制限に違反する場合には、派遣元事業主は当該派遣先及び派遣労働者に対し派遣停止を通知することとし、派遣停止の通知を受けたにもかかわらず当該派遣労働者をなお就業させる派遣先は、当該派遣労働者に対し雇用契約の申込みをしなければならないこととすることが適当である。
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○ |
3年を超えて同一業務に同一派遣労働者を受け入れている派遣先が、当該業務と同じ業務に従事させるため労働者を雇い入れようとするときは、当該派遣労働者に対し雇用契約の申込みをしなければならないこととすることが適当である。
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〈適用対象業務関係〉
○ |
「物の製造」の業務については、適用対象業務とすることが適当である。
なお、「物の製造」の業務については、改正法施行から3年間は、派遣期間を1年に制限することが適当である。 |
〈許可制関係〉
○ |
一般労働者派遣事業の許可の単位については事業所単位から事業主単位とし、事業所の設置については、届出制とすることが適当である。 |
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結果の取りまとめに当たって講じた措置 |
平成14年12月26日に労働政策審議会においてとりまとめられた厚生労働大臣あての建議をもとに、職業安定法及び労働者派遣法の改正法案要綱を策定し、平成15年2月13日に開催された労働政策審議会に諮問、同月21日に開催された労働政策審議会において「おおむね妥当」との答申を得た。 |
4 評価結果の公表 |
報告書等 |
「職業紹介事業制度、労働者派遣事業制度等の改正について」(労働政策審議会建議)(平成14年12月26日)
「職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案要綱」(諮問・答申)(諮問は平成15年2月13日、答申は平成15年2月21日) |
5 評価結果を受けて講じようとする措置 |
措置内容 |
厳しい雇用失業情勢、働き方の多様化等に対応するため、職業紹介事業や労働者派遣事業に係る規制の見直し等を内容とする「職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案」を作成し、第156回通常国会に提出した。(要綱は別紙1) |
6 その他 |
評価の実施体制 |
労働政策審議会職業安定分科会民間労働力需給制度部会(別紙2 委員名簿) |
第一 |
職業安定法の一部改正 |
一 |
職業紹介事業
(一) |
許可の手続の簡素化
職業紹介事業の許可について、事業所単位から事業主単位に改めるものとすること。(第三十条第一項及び第三十三条第一項関係) |
(二) |
保証金の廃止
有料職業紹介事業者に係る保証金を廃止するものとすること。(現行第三十二条の二関係) |
(三) |
取扱職種の範囲等の届出等
職業紹介事業者は、取り扱う職種の範囲その他業務の範囲を定めたときは、厚生労働大臣に届け出れば足りるものとするとともに、厚生労働大臣は、当該範囲が特定の者に対し不当な差別的取扱いをするものである場合には、その変更を命ずることができるものとすること。(第三十二条の十二関係) |
(四) |
職業紹介責任者の任務
職業紹介責任者は、職業紹介に関する業務を統括管理するものとすること。(第三十二条の十四関係) |
(五) |
学校等の行う無料職業紹介事業の対象者の拡大
学校等の行う無料職業紹介事業の対象者に、学生生徒等に準ずる者として厚生労働省令で定めるものを追加するものとすること。(第三十三条の二第一項関係) |
(六) |
特別の法人の行う無料職業紹介事業
特別の法律により設立された法人であって厚生労働省令で定めるものは、厚生労働大臣に届け出て、その構成員を対象とする無料職業紹介事業を行うことができるものとすること。(第三十三条の三第一項関係) |
(七) |
地方公共団体の行う無料職業紹介事業
地方公共団体は、当該地方公共団体の区域内における福祉サービスの利用者の支援に関する施策、企業の立地の促進を図るための施策その他当該区域内の住民の福祉の増進、産業経済の発展等に資する施策に関する業務に附帯する業務として無料職業紹介事業を行う必要があると認めるときは、厚生労働大臣に届け出て、当該無料職業紹介事業を行うことができるものとすること。(第三十三条の四第一項関係) |
(八) |
兼業の禁止の廃止
料理店業等と職業紹介事業との兼業を禁止する規定を削除するものとすること。(現行第三十三条の四関係) |
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二 |
労働者の募集
(一) |
委託募集の許可制の見直し
募集従事者に報酬を与えることなく行う委託募集について、届出制とするものとすること。(第三十六条第三項関係) |
(二) |
募集地域の原則の廃止
通常通勤することができる地域等から労働者を募集するように努めなければならないこととする規定を削除するものとすること。(現行第三十八条関係) |
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三 |
その他
その他所要の規定の整備を行うものとすること。 |
第二 |
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部改正 |
一 |
紹介予定派遣
(一) |
定義
紹介予定派遣は、労働者派遣のうち、派遣元事業主が労働者派遣の役務の提供の開始前又は開始後に、派遣労働者及び派遣先について、許可を受け又は届出をして職業紹介を行い、又は行うことを予定してするものをいい、当該職業紹介により、派遣労働者が派遣先に雇用される旨が、労働者派遣の役務の提供の終了前に派遣労働者と派遣先との間で約されるものを含むものとすること。(第二条関係) |
(二) |
労働者派遣契約の内容等
イ |
労働者派遣契約の締結に際し、紹介予定派遣に関する事項を定めなければならないものとすること。(第二十六条第一項関係) |
ロ |
紹介予定派遣については、派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならないこととする規定を適用しないものとすること。(第二十六条第七項関係) |
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(三) |
労働者に対する明示
派遣元事業主は、労働者を紹介予定派遣に係る派遣労働者として雇い入れようとする等の場合には、労働者にその旨を明示しなければならないものとすること。(第三十二条関係) |
(四) |
派遣元管理台帳及び派遣先管理台帳の記載事項
紹介予定派遣に係る派遣労働者については、派遣元管理台帳及び派遣先管理台帳に、紹介予定派遣に関する事項を記載しなければならないものとすること。(第三十七条第一項及び第四十二条第一項関係) |
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二 |
許可等の手続の簡素化
一般労働者派遣事業の許可及び特定労働者派遣事業の届出について、事業所単位から事業主単位に改めるものとすること。(第五条第一項及び第十六条第一項関係) |
三 |
派遣期間等
(一) |
派遣期間の制限に抵触することとなる最初の日の明示等
イ |
派遣元事業主は、派遣労働者に対し、派遣先が労働者派遣の役務の提供を受けることができる期間(以下「派遣期間」という。)の制限に抵触することとなる最初の日を明示しなければならないものとすること。(第三十四条関係) |
ロ |
派遣元事業主は、派遣先が派遣期間の制限に抵触することとなる最初の日の一月前の日から当該抵触することとなる最初の日の前日までの間に、当該抵触することとなる最初の日以降継続して労働者派遣を行わない旨を派遣先及び派遣労働者に通知しなければならないものとすること。(第三十五条の二第二項関係) |
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(二) |
派遣期間に制限がない業務の追加
派遣期間に制限がない業務に、次に掲げる業務を追加するものとすること。(第四十条の二第一項関係)
イ |
一箇月間に行われる日数が、派遣先の通常の労働者の所定労働日数に比し相当程度少なく、かつ、厚生労働大臣の定める日数以下である業務 |
ロ |
派遣先に雇用される労働者が育児・介護休業法に規定する介護休業及びこれに準ずる休業として厚生労働省令で定める休業をする場合における当該労働者の業務 |
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(三) |
派遣可能期間
イ |
派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務(派遣期間に制限がない業務を除く。)について、派遣元事業主から一年を超え三年以内の期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けようとするときは、あらかじめ、その期間を定めなければならないものとすること。(第四十条の二第二項及び第三項関係) |
ロ |
派遣先は、イの期間を定め、又は変更しようとするときは、あらかじめ、当該派遣先の事業所に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合に対し、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者に対し、当該期間を通知し、その意見を聴くものとすること。(第四十条の二第四項関係) |
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四 |
派遣元責任者及び派遣先責任者
(一) |
派遣元責任者の職務の追加
派遣元責任者の職務に、派遣労働者の安全及び衛生に関し、派遣元事業主の事業所の労働者の安全及び衛生に関する業務を統括管理する者及び派遣先との連絡調整を行うことを追加するものとすること。(第三十六条関係) |
(二) |
派遣先責任者の職務の追加
派遣先責任者の職務に、派遣労働者の安全及び衛生に関し、派遣先の事業所の労働者の安全及び衛生に関する業務を統括管理する者及び派遣元事業主との連絡調整を行うことを追加するものとすること。(第四十一条関係) |
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五 |
派遣先による派遣労働者の雇用
(一) |
派遣期間の制限を超えて派遣労働者を使用しようとする場合
派遣先は、三の(一)のロの通知を受けた場合において、派遣期間の制限に抵触することとなる最初の日以降継続して当該通知を受けた派遣労働者を使用しようとするときは、当該抵触することとなる最初の日の前日までに、当該派遣労働者であって当該派遣先に雇用されることを希望するものに対し、雇用契約の申込みをしなければならないものとすること。(第四十条の四関係) |
(二) |
三年を超えて同一の派遣労働者を受け入れている場合
派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務(派遣期間に制限がない業務に限る。)について、派遣元事業主から三年を超える期間継続して同一の派遣労働者を受け入れている場合において、当該同一の業務に当該三年が経過した日以後労働者を雇い入れようとするときは、当該派遣労働者に対し、雇用契約の申込みをしなければならないものとすること。(第四十条の五関係) |
(三) |
違反に係る勧告及び公表
厚生労働大臣は、(一)又は(二)に違反している者に対し、指導又は助言をした場合において、その者がなお(一)又は(二)に違反しており、又は違反するおそれがあると認めるときは、当該者に対し、雇用契約の申込みをすべきことを勧告することができるものとし、これに従わなかったときは、その旨を公表することができるものとすること。(第四十九条の二関係) |
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六 |
物の製造の業務への労働者派遣事業の拡大
(一) |
物の製造の業務について、労働者派遣事業を行うことができるものとすること。(現行附則第四項関係) |
(二) |
物の製造の業務について労働者派遣事業を行う事業所については、当分の間、その旨を許可申請書及び届出書に記載する等しなければならないものとすること。(附則第四項関係) |
(三) |
改正法の施行の日から起算して三年を経過する日までの間は、物の製造の業務に係る派遣期間を一年とするものとすること。(附則第五項関係) |
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七 |
その他
その他所要の規定の整備を行うものとすること。 |
第三 |
その他 |
一 |
施行期日
この法律は、公布の日から起算して九月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。(附則第一条関係) |
二 |
経過措置等
この法律の施行に関し必要な経過措置を定めるとともに関係法律について所要の規定の整備を行うものとすること。(附則第二条から第二十一条まで関係) |