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(7−4−II)
実績評価書
平成14年9月

政策体系 番号  
基本目標 利用者の視点に立った質の高い福祉サービスの提供等を図ること
施策目標 戦傷病者、戦没者遺族、中国残留邦人等を援護するとともに、旧陸海軍の残務を整理すること
II 戦没者の遺骨の収集等を行うことにより、戦没者遺族を慰藉すること
担当部局・課 主管課 社会・援護局援護企画課外事室
関係課  


1.施策目標に関する実績の状況

実績目標1 戦没者の遺骨の収集を迅速かつ適切に行うこと
(実績目標を達成するための手段の概要)
 遺骨収集事業は、海外戦没者遺骨の速やかな収容、送還を目的として、昭和27年度以降、国が主体となって実施しているものである。
 旧ソ連抑留中死亡者の埋葬地の遺骨収集は、平成12年9月に森内閣総理大臣から指示があり、戦後処理問題の重要性及び遺族の高齢化にかんがみ、遺骨収集が可能な埋葬地については、平成14年度中に収集をおおむね終了させることとしている。
 なお、南方地域における遺骨収集は、相手国の事情、海没その他の自然条件等により収集ができない地域を除き計画的に進められ、遺骨収集がおおむね終了したものと考えており、現在は、確実な遺骨情報がある場合に迅速に実施することとしている。
(評価指標)
 旧ソ連抑留中死亡者について、平成13年度中に未調査の埋葬地の調査を終了する。
H9 H10 H11 H12 H13
97%
(備考)
 平成13年度に、未調査の埋葬地として把握していた67か所のうち、治安上の理由により調査できなかった2か所を除く65か所について調査を終了した。
 なお、平成13年度中に、新たに6か所の埋葬地が判明した。
(評価指標)
 旧ソ連抑留中死亡者について、平成14年度中に収集可能な埋葬地での遺骨収集をおおむね終了する。
H9 H10 H11 H12 H13
50%
(備考)
 平成13年度から2か年間で約4,500柱の収集を計画しているが、平成13年度においては、その約半数の2,271柱を収集したところである。
(評価指標)
 南方地域の遺骨収集について、遺骨の情報があってから収集を実施するまでの平均期間
H9 H10 H11 H12 H13
15 22 10
(備考) (月)
 業務上の統計である。なお、平成10年度以前は資料を保管していない。
実績目標2 旧主要戦域において、慰霊巡拝、墓参、慰霊碑の建立等を適切に行うこと
(実績目標を達成するための手段の概要)
(1) 慰霊巡拝事業は、戦域となった地域等において戦没者を慰霊するため、遺族を主体として昭和51年度から計画的に実施しているものであり、旧ソ連及びモンゴル地域における抑留中死亡者については、併せて墓参(埋葬場所が特定されている場所で実施するもの)を実施している。
(2) 慰霊友好親善事業は、戦没者遺児が、旧主要戦域における人々と戦争犠牲者の遺族という共通の立場で交流し、相手国の理解を深めることにより、今後の慰霊事業の円滑な推進を図りつつ広く戦争犠牲者の慰霊追悼を行うことを趣旨とし、平成3年度から(財)日本遺族会に委託して実施している。
(3) 小規模慰霊碑の建立については、旧主要戦域ごとに慰霊碑を建立する事業の一環として、旧ソ連地域において、遺骨収集がおおむね終了した地域及び事実上遺骨収集が実施できない地域に平成12年度から順次計画的に小規模な慰霊碑を建立することとしている。
(評価指標)
慰霊巡拝、墓参の実施(地域)数
H9 H10 H11 H12 H13
(備考)
 業務上の統計である。また、旧ソ連地域への墓参は、ロシア連邦内の州、地方ごとに数か所において実施しているが、統計上は旧ソ連で1地域として計上している。
(評価指標)
慰霊友好親善事業の実施(地域)数
H9 H10 H11 H12 H13
10
(備考)
 業務上の統計である。
(評価指標)
小規模慰霊碑の建立数
H9 H10 H11 H12 H13
(備考)
 業務上の統計である。


2.評価

(1) 実績目標の達成状況の評価
実績目標1 戦没者の遺骨の収集を迅速かつ適切に行うこと
有効性
(1) 旧ソ連地域における遺骨収集
 遺骨収集が可能な埋葬地における遺骨は、平成13年度及び平成14年度の2か年間で約4,500柱を収集する計画であるが、平成13年度にその約半数の2,271柱を収集し、当該年度においてはおおむね目標を達成できたものと考えている。
(2) 南方地域における遺骨収集
 平成13年度は、遺骨の情報のあった地域について、相手国側の収集許可が得られたタイ、ミャンマー等8地域において遺骨収集を実施したところであるが、これらの地域に関し、遺骨情報があってから遺骨収集を実施するまでに要した期間は、平均10か月であり、おおむね1年以内に実施することができた。遺骨情報があっても、外交ルートを通じての情報の確認に要する時間や、相手国側の治安や国民感情等の事情により遺骨収集の許可に要する時間等の制約があることを考慮すれば、平均値ではあるが、おおむね1年以内に実施できたことは適当であると考えている。
効率性  旧ソ連地域の遺骨収集の実施時期は、ロシアの気候条件の制約上、6月頃から10月頃までの夏期に限られるため、遺骨の埋葬地の場所の特定や遺骨の有無の確認調査は遺骨収集実施の前年度に行い、その調査結果に基づいて計画的に遺骨収集団を派遣するよう努めている。これにより、短期間に集中して行う遺骨収集の効率性が高まっていると考えている。
 また、平成13年度においては、厚生労働省OB職員や遺族会等の民間の協力を得て、省を挙げて取り組み、遺骨収集団の派遣回数の増や派遣期間の長期化に努めたところであり、こうした取組により、目標達成に向けての施策の効率性が高まったものと考えている。
実績目標2 旧主要戦域において、慰霊巡拝、墓参、慰霊碑の建立等を適切に行うこと
有効性
(1) 慰霊巡拝、墓参について
 旧ソ連地域の墓参は、当初は8地域を予定していたが、7月にロシア国内線旅客機の墜落事故が発生したため、参加遺族の安全の確保等を考慮して、6地域の墓参を中止し、2地域のみ実施した。
 また、南方地域の慰霊巡拝は、当初は硫黄島など7地域を予定していたが、9月に米国で同時多発テロ事件が発生したため、参加遺族の安全の確保等を考慮し、4地域のみ実施した。
 平成13年度は、こうした事件等の影響により一部中止せざるを得なかったために実施地域数が例年と比較して減少したものであり、これはやむを得ない結果であると考えている。
(2) 慰霊友好親善事業について
 この事業は、平成3年度の事業開始以来、安定した実施地域数を保っており、また、遺族の参加希望及び実際の参加数も維持されていることから、事業が有効に進められているものと考えている。
(3) 小規模慰霊碑の建立について
 旧ソ連地域における小規模慰霊碑の建立は、建立予定地の政府(ロシア連邦内にあっては、州、地方政府)との間に、建立地の無償提供及び慰霊碑の維持管理を現地政府が将来的に無償で行うことが約束された場合に、順次計画的に実施することとしているものであるが、平成13年度においては平成12年度と同じく2か所において建立することができた。
 この事業については、平成12年度から開始された事業であることもあり、建立に当たっては現地政府との交渉が難航する場合も今後あり得るところであるが、これまでのところ、計画的に建立が進められていると考えている。

(2) 施策目標の達成状況と総合的な評価
現状分析
(1) 遺骨収集事業は、昭和27年度以降計画的に進めてきているが、相手国の事情や海没などの自然条件等の理由から遺骨収集ができない地域があるため、これまでに本邦に送還した遺骨数は、海外戦没者約240万人に対して、約半数にとどまっている。
(2) 戦没者遺族の慰藉を目的とした事業は、戦没者の配偶者、子、兄弟姉妹など近親者の高齢化が進んでおり、早期に実施され目標を達成することが必要な状況にある。
施策手段の適正性の評価
(1) 遺骨収集事業については、昭和27年の国会決議により、海外等で戦没した同胞の遺骨や埋葬地が放置された状態にあることは遺族の心情を察するに余りあるものがあり、国民感情上忍び難い問題であるとして、国が主体となりこれら遺骨の収容、送還を図ることとされたものであり、戦没者を慰藉する事業として有効なものと考えている。
(2) 慰霊巡拝事業は、遺骨収集ができない地域があることを踏まえ、遺骨が戻らないまでも戦没者が死亡した場所を訪れ慰霊をしたいという遺族の心情を踏まえたものであり、また、慰霊碑の建立については、慰霊碑を象徴として、遺族等がゆかりの地域で慰霊巡拝等をする機会が増えることとなるものであるから、戦没者遺族を慰藉する事業として有効なものと考えている。
総合的な評価  戦没者遺族を慰藉することを目標として、政府では遺骨の収集や慰霊巡拝、墓参、慰霊碑の建立等の事業を行っている。
 遺骨収集事業については、平成13年度においては、旧ソ連地域の遺骨収集を平成14年度までにおおむね終了することを中心目標として実施し、今年度分についてはその目標をおおむね達成したものと考えている。
 なお、相手国の事情により遺骨収集が実施できていない地域があるところであり、関係遺族の高齢化を踏まえた早期の遺骨送還のため、今後はこうした地域での実施に向けて、相手国と交渉を粘り強く行うことが必要であると考えている。
 慰霊巡拝、墓参事業については、航空機事故や米国同時多発テロという予測できなかった事情のために、やむを得ず当初計画どおりに実施できなかった部分がある。


3.政策への反映方針

 現行の施策は、目標達成に有効なものであり、引き続き実施していく必要がある。


4.特記事項

(1) 学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
(財)日本遺族会の協力を得ている。

(2) 各種政府決定との関係及び遵守状況
なし。

(3) 総務省による行政評価・監視等の状況
なし。

(4) 国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
なし。

(5) 会計検査院による指摘
なし。


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