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(5−4−I)
実績評価書
平成14年9月

政策体系 番号  
基本目標 労働者の職業能力の開発及び向上を図るとともに、その能力を十分に発揮できるような環境を整備すること
施策目標 技能の振興及びものづくり労働者の職業能力開発を推進すること
I ものづくり振興に係る環境を整備すること
担当部局・課
主管課 職業能力開発局技能振興課
関係課  


1.施策目標に関する実績の状況

実績目標1 表彰の実施や技能競技大会等を開催することにより技能尊重気運の醸成を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 広く社会一般に技能尊重の気風を浸透させ、技能者の地位及び技能水準の向上を図ることを目的として、我が国の最高水準にある優れた技能者を「現代の名工」として表彰している。
 また、国内の青年技能者に努力目標を与え、身近に技能に触れる機会を提供することにより、技能の重要性、必要性をアピールし、技能尊重気運の醸成を図ることを目的として技能五輪全国大会を実施している。
 さらに、技能士の技能の一層の向上を図るとともに、その熟練した技能を広く国民に披露することにより、その社会的地位の向上と技能の振興を図ることを目的として技能グランプリを実施しているところである。
(評価指標) H9 H10 H11 H12 H13
 卓越した技能者表彰
推薦者数(人) 383 375 385 363 391
被表彰者数(人) 150 150 150 150 149
 技能五輪全国大会 参加者数(人) 443 626 728 770 831
観客数(人) 110,000 69,500 121,000 82,137
 技能グランプリ 参加者数(人) 421 435 422 437 459
観客数(人) 66,000 66,000
(備考)
卓越した技能者表彰の評価指標については、厚生労働省職業能力開発局技能振興課調べである。
技能五輪全国大会、技能グランプリの評価指標については、中央職業能力開発協会調べである。
実績目標2
技能者による児童・生徒等に対するものづくり教育・学習の普及を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 小・中・高等学校や公民館、博物館等において技能士等の技能者を活用したものづくり教育・学習の円滑な推進を図るための環境を整備することにより、次代を担う児童・生徒等にものづくりの楽しさ・素晴らしさを認識してもらうために人材情報及び教材情報の収集・提供等やものづくり体験教室を行う技能者を活用したものづくり教育・学習の環境整備事業を実施した。
(評価指標)
技能者の活用人日
H9 H10 H11 H12 H13
274
(備考)
平成13年度は全国6県(北海道、茨城県、静岡県、大阪府、香川県及び熊本県)で上記事業を行ったところである。
評価指標は、中央職業能力開発協会調べである。
実績目標3 技能者の養成、技能の修得・承継に関して円滑な推進を図り、教育訓練機関、事業主に提供可能な情報等を集積するための調査・分析を行うこと
(実績目標を達成するための手段の概要)
 ものづくり技能継承円滑化推進事業において、ものづくりを代表する企業やものづくり産業において一定の成果をあげてきた中小企業等におけるものづくり人材の育成方法及び技能集積地における相互連携についての問題点等についての調査を実施した。
(評価指標)
調査研究を通じて得られた提供可能な情報(技能者養成等に関する情報、人材育成及び技能継承方法に関する事例)の件数(件)
H9 H10 H11 H12 H13
1,210
(備考)
評価指標は、ものつくり大学調べである。


2.評価

(1) 実績目標の達成状況の評価
実績目標1 表彰の実施や技能競技大会等を開催することにより技能尊重気運の醸成を図ること。
有効性  卓越した技能者表彰を受賞した者は、「現代の名工」として各種マスコミに取り上げられることが多く、多くの技能者の目標となっているところであり、平成13年度は149名の技能者が表彰され、昭和42年に第1回の表彰が行われて以来、3,788名が表彰されており、技能尊重気運の醸成を図る上で大いに役立っている。
 また、技能五輪全国大会については、近年、地方開催を行っており、平成13年度に福島県で開催されて、第39回大会では過去最高となる831名の選手が全国から参加するなど、技能に身近に触れる機会として多くの観客を集め、広く国民一般に対して技能の重要性、必要性をアピールし、技能尊重気運の醸成を図る上で役立っている。
 技能グランプリについても、熟練した技能を広く国民一般に披露し、多くの観客を集めており(6〜7万人)、技能士の社会的地位の向上や技能の振興に役立っており、平成13年度は島根県で開催され、過去最高の459名の技能士がその腕を競い合った。
効率性  卓越した技能者表彰は、受賞者がマスコミに取り上げられるなど、少ない行政コストで広く国民に技能の重要性を認知させる波及効果がある。
 技能五輪全国大会については、開催地において大会参加者はもとより、地元の小中高校生、親や教師に対して技能の重要性、必要性をアピールすることにより、技能尊重気運の醸成が図られている。
 また、技能グランプリについても、大会参加者はもとより、多くの者(観客)に効率的に熟練した技能を持つ技能士の素晴らしさをアピールすることが可能となっている。
実績目標2 技能者による児童・生徒等に対するものづくり教育・学習の普及を図ること
有効性  技能者の活用は274人日であり、学校や公民館等が主体となったものづくり教育・学習の実施により児童・生徒等に対するものづくり等の職業意識の啓発を行ったことは、将来的に有為な社会人の育成に資するものと期待される。
 さらに、学校において、新たに「総合的な学習の時間」が導入され、地域における人材の教育力を活かしたものづくり体験やボランティア活動等を行う時間が年間100時間以上設定されるとともに、完全学校週5日制へ移行したことから、学校や公民館等が主体となって、ものづくり教育・学習が広く実施されることが見込まれるため有効性は高いと思料される。
効率性  技能者による児童・生徒等に対するものづくり教育・学習を効率的に普及するため、ものづくり教育・学習の講師として活躍できる技能者・団体、教えられる内容等の人材情報を収集し、学校等に情報提供を行うとともに、ものづくり講師予定者に対して指導方法等の情報提供を行った。また、技能士等がものづくり教育・学習の講師として活躍する際に必要な教材情報を収集し、ものづくり講師予定者に情報提供を行うとともに、地域の特性を活かした教材や児童・生徒の発育段階に応じた教材の検討・開発を行っている。
実績目標3 技能者の養成、技能の修得・承継に関して円滑な推進を図り、教育訓練機関、事業主に提供可能な情報等を集積するための調査・分析を行うこと
有効性  ものづくりを代表する企業やものづくり産業において一定の成果をあげてきた中小企業等のものづくり人材育成及び技能修得に関する方策、技能集積地域において相互連携を行う上での問題点等について、実地調査により収集・分析した1,210件の情報を提供しており、これらは人材育成や技能継承に取り組もうとしている中小企業等にとって非常に有益であり、この情報の活用により当該取組が円滑に推進される効果がある。
効率性  事業で行った成果については報告書を作成し、都道府県、職業能力開発機関、中小企業等へ配布するほか、インターネットによる情報提供により効率的な活用を図っている。

(2) 施策目標の達成状況と総合的な評価
現状分析  生産拠点の海外移転、就業構造の変化や産業集積の空洞化等の進展が進む一方、少子・高齢化、若年者を中心としたものづくり離れや高度熟練技能者の高齢化等により、技能の担い手が少なくなり、我が国のものづくり基盤産業の発展を担う優れた技能の維持・継承が困難になっている。
 これらの状況を放置することは、我が国産業の発展にも重大な影響を及ぼすことにもなり、早急な対応が求められている。
 このため、卓越した技能を有する者の表彰等により、技能者の社会的評価の向上を図るほか、技能競技大会等の開催により、若年技能者に努力目標を与えるとともに広く国民 一般が優れた技能に身近に触れる機会を提供するなど、技能や熟練技能者が尊重され、適切に処遇されるための気運の醸成を積極的に推進していく必要がある。また、教育現場等においても、ものづくりの楽しさ、素晴らしさと同時に大切さについて次世代を担う若年者等に認識してもらうための施策を進めていく必要がある。
なお、「ものづくり基盤技術振興基本法」に基づき定められた「ものづくり基盤技術基本計画」(平成12年9月閣議決定)においても、国として基盤技術の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進することとされているところである。
施策手段の適正性の評価  卓越した技能者表彰、技能五輪全国大会、技能グランプリは、技能者の目標であり、広く国民に技能の重要性・大切さを理解してもらい、技能者の社会的評価の向上を図るという観点から大きな効果をあげており、施策手段としては適正であると考えられる。
 技能者を活用したものづくり教育・学習の環境整備事業については、ものづくり教育・学習の講師として活躍できる技能者・団体、教えられる内容等の人材情報を収集し、学校等に情報提供を行うとともに、ものづくり講師予定者に対して指導方法等の情報提供を行ってきたこと、技能士等がものづくり教育・学習の講師として活躍する際に必要な教材情報を収集し、ものづくり講師予定者に情報提供を行うとともに、地域の特性を活かした教材や児童・生徒の発育段階に応じた教材の検討を行ってきたことから、技能者による児童・生徒等に対するものづくり教育・学習の普及を図るという一連続性の観点からはその効率も含めて効果は高いと認められる。
 ものづくり技能継承円滑化推進事業については、これらの調査・分析に当たっては、技能者の人材育成や技能についての専門的知識が必要であり、これらの知見を有する専門家を擁するものつくり大学に実施を委託している。また、中小企業等がその実情に合った情報を入手し、活用できるよう報告書の配布及びインターネットの活用を図っており、有効性、効率性の観点からも適正な手段を講じている。
総合的な評価  我が国において、少子・高齢化の進展や若年者の技能離れにより、長年にわたり培われてきた優れた技能が失われることが懸念されており、我が国の産業基盤である技能については、今後とも発展させ、次世代へ受け継がれていかなければならない。
 このため、広く国民に技能の重要性・大切さを理解してもらうことが必要であり、これらを実施することにより、技能尊重の気運に資する上で大きな効果をあげていると考えている。
 また、技能士等の技能者を活用した児童・生徒等に対するものづくり教育・学習の円滑な推進を図るための環境整備については、次代を担う若年者にものづくりの楽しさ・素晴らしさを認識してもらうに留まらず、技能尊重気運の醸成、技能者の地位の向上、技能者の確保に資するものであり、技能者の養成、技能の修得・承継に関して円滑な推進を図り、教育訓練機関、事業主に提供可能な情報等を集積するための調査・分析を行うことは、上記(1)のとおり、人材育成や技能継承に取り組む教育訓練機関や事業主に有益であり、これらの活用により取組が円滑に推進される効果があると考えられる。
 しかし、今後の状況等を見極めた上で、提供する情報の内容等については必要に応じ所要の見直しを図ることとする。


3.政策への反映方針

 これらの事業は、技能振興を推進する重要な施策として位置づけられているところであり、更に継続して取り組む必要があるが、今後とも一層の活用を図るため必要に応じ見直しを図るなど、効率的かつ効果的な実施を図っていく。


4.特記事項

(1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
卓越した技能者の被表彰者の選考審査や競技大会等における入賞者の審査に当たっては、当該技能に関して学識経験を有する者の知見を活用している。(卓越した技能者表彰、技能五輪全国大会、技能グランプリ)
平成11年10月より平成13年3月までの間に学識経験者を集めて開催された「ものづくり教育・学習に関する懇談会」の報告書「若年者に対する熟練技能技術者によるものづくり教育・学習の在り方について」に基づき本事業が行われた。(技能者を活用したものづくり教育・学習の環境整備事業)
技術・技能の双方に通じ、かつ、マネジメントもできる新しいタイプの人材を養成することを目的としたものつくり大学に委託しており、当該大学の学識経験者の知見を活用している。(ものづくり技能継承円滑化推進事業)

(2)各種政府決定との関係及び遵守状況
 「ものづくり基盤技術基本計画」(平成12年9月閣議決定)において、卓越した技能者表彰、技能五輪全国大会、技能グランプリについては、「卓越した技能を有する者の表彰等により、その社会的評価の向上に努めるとともに、技能競技大会や技能展等の積極的な開催により、技能者に努力目標を与えるとともに、広く国民一般が優れた技能に身近に触れる機会を提供するなど、技能や熟練技能者が尊重され、適切に処遇されるための気運の醸成に努める」こととされている。
 技能者を活用したものづくり教育・学習の環境整備事業については、「小・中・高等学校におけるものづくりに関する体験的な学習等の充実」のため、「地域の熟練ものづくり労働者などの教育力を積極的に活用する」こととされている。
 また、ものづくり技能継承円滑推進事業については、「ものつくり大学の人材育成機能の積極的活用を図る」こととされているところであり、これらの事業は、当該決定に基づき施策を推進している。

(3)総務省による行政評価・監視等の状況
なし

(4)国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
なし

(5)会計検査院による指摘
なし


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