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(5−3−VI)
実績評価書
平成14年9月

政策体系 番号  
基本目標 労働者の職業能力の開発及び向上を図るとともに、その能力を十分に発揮できるような環境を整備すること
施策目標 労働者の就業状況等に対応した多様な職業訓練・教育訓練の機会の確保を図ること
VI 勤労青少年が有為な社会人、職業人として成長しその責任を果たすように支援すること
担当部局・課 主管課 職業能力開発局キャリア形成支援室
関係課  


1.施策目標に関する実績の状況

実績目標1 勤労青少年福祉対策として勤労青少年指導者等の育成・能力の向上のための施策を推進すること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 勤労青少年指導者等の育成・能力の向上のための施策として、次の講習会及び研修会を実施した。
 勤労青少年ホーム指導員講習会(以下「指導員講習会」という。)
 東京において、主に新任の勤労青少年ホームの指導員を対象に、勤労青少年ホームの運営のための基礎的な知識・手法に関する講習会を実施
 勤労青少年ホーム館長・指導員相談事例研修会(以下「事例研修会」という。)
 全国10ブロックごとに勤労青少年ホームの館長、指導員を対象に、勤労青少年の相談・指導に係る問題事例に関する研修会を実施
 勤労青少年指導者実務能力向上研修(以下「向上研修」という。)
 全国8ブロックごとに勤労青少年指導者(勤労青少年ホーム館長・指導員、企業内の勤労青少年福祉推進者)、企業の労務管理者等を対象に、勤労青少年福祉に関する実務能力の向上を図るための研修を実施
(評価指標)
指導員講習会修了者数(人)
H9 H10 H11 H12 H13
76 63 48 42 44
(備考)
評価指標は各年度毎に業務上得られる数を集計。
評価指標は厚生労働省職業能力開発局調べである。
(評価指標)
事例研修会参加者数(人)
H9 H10 H11 H12 H13
474 473 497 383 518
(備考)
評価指標は各年度毎に業務上得られる数を集計。
評価指標は(社)全国勤労青少年ホーム協議会調べである。
(評価指標)
向上研修修了者数(人)
H9 H10 H11 H12 H13
658 697 567 515 494
(備考)
評価指標は、各年度毎に業務上得られる数を集計。
評価指標は(社)全国勤労青少年ホーム協議会調べである。
実績目標2 ワーキング・ホリデー制度利用者に対する支援を行うこと
(実績目標を達成するための手段の概要)
 勤労青少年を国際感覚豊かな職業人として育成するため、ワーキング・ホリデー制度(※)を利用する青少年に対し、(社)日本ワーキング・ホリデー協会(以下「ワーキング・ホリデー協会」という。)を通じ、ワーキング・ホリデー制度に関する情報の提供、説明会・オリエンテーション等の支援事業を実施した。

 ワーキング・ホリデー制度は、両国間の相互理解の促進、友好関係の増進及び国際的視野を持った青少年の育成を図るため、両国の青少年が、長期にわたり休暇を過ごす目的で相手国に入国し、その間の旅行資金を補うための付随的な就労を認める制度である。

(評価指標)
ワーキング・ホリデー協会利用者による評価(アンケート調査等)
H9 H10 H11 H12 H13
(備考)
評価指標は、定性的指標である。
アンケート調査は(社)日本ワーキング・ホリデー協会調べである。


2.評価

(1) 実績目標の達成状況の評価
実績目標1 勤労青少年福祉対策として勤労青少年指導者等の育成・能力の向上のための施策を推進すること
有効性  勤労青少年に対する福祉の増進のためには、直接勤労青少年の指導にあたる勤労青少年ホームの指導者や企業内の勤労青少年福祉推進者等に対する指導能力の向上が不可欠なことから、これらの指導者の育成及び能力向上を内容とする「指導員講習会」、「事例研修会」及び「向上研修」を実施することは、勤労青少年福祉対策において有効性が高いと考える。
 平成13年度においては、勤労青少年指導者等の育成・能力の向上のために、「指導員講習会」、「事例研修会」及び「向上研修」の3種の講習会・研修会を実施したが、「事例研修会」以外は、過去5年間の傾向として、参加者の減少が見られる。
 参加人数(定量的な指標)から判断すれば、「指導員講習会」及び「向上研修」については、事業主全体としてみた場合、その有効性が年々低下していると評価せざるを得ない。
効率性  事業の実施方法として、「指導員講習会」は、受講生を東京に集めて1カ所で開催し、「事例研修会」及び「向上研修」は、地域ブロック単位に開催した。
 「指導員講習会」については、受講者の旅費等を負担する市町村の経費負担を考慮すると、地域ブロック単位での開催のほうが、参加者の増加が見込まれるものと考えられる。しかし、仮に地域ブロック単位を開催した場合、実施にかかる負担、例えば、講師謝金、会議借料等の経費負担及び実施に携わる職員の業務量の増加を鑑みると、対費用及び対業務の効果からは、現在の実施方法が最も効率的であると評価する。
 「事例研修」については、対象となる全国の勤労青少年ホーム指導員がほぼ全員出席している実績があり、現在の地域ブッロク開催による方法が一定の効果をあげていると評価できる。
 一方、同じ地域ブロック開催でありながら、「向上研修」については、年々、参加者が減少しており、また、その参加者の割合にしても、近年は実施する県内からの参加者に偏る傾向があり、従来と比較して事業経費に見合うだけの効果が薄れてきていると評価せざるを得ない。
実績目標2 ワーキング・ホリデー制度利用者に対する支援を行うこと
有効性  ワーキング・ホリデー制度は、相手国における就労の機会を通じて、青少年がこれから急速に発展する国際化時代にふさわしい職業人、社会人として成育するために極めて有効な制度であることから、本制度の活用促進のため、本制度を利用しようとする青少年に対し、本制度に係る情報提供や説明会・オリエンテーション等の支援事業を行うことは、勤労青少年を有為な社会人、職業人に育成するための施策として有効性が高いと考える。
 平成13年度においては、ワーキング・ホリデー制度の利用希望者を対象にして、説明会・オリエンテーションを全国18カ所の都市で計49回実施し、2,629人の参加があった。そのうちの参加者1,139人に対し、ワーキング・ホリデー協会の事業に関するアンケート調査を実施した(有効回答数 1,105人)。
 アンケート調査によれば、説明会・オリエンテーションについて「大変良い」「良い」と回答した者は合わせて79.4%となっており、逆に「少し悪い」「悪い」と回答した者はわずか2.1%だった。また、具体的感想として、「もっと説明会・オリエンテーションの数を増やしてほしい」、「他の地方でも実施してほしい」、「今後もこのような機会をもっと増やしてほしい」などの拡充を求める要望が多かった。
 このアンケート調査(定性的な指標)から判断すると、ワーキング・ホリデー制度利用者に対する支援は、ワーキング・ホリデー協会利用者にとっては、有効なものだったと評価できる。
効率性  ワーキング・ホリデー協会では、東京本部を中心に、大阪、北九州の各支部において、各種の情報提供及び説明会・オリエンテーションを実施しているが、支部のない地方都市においても、ボランティアによる協力員を配置し、同様のサービスの提供を行うことに努めており、また、協力員を配置できない地域においても、インターネットによる情報提供を充実することにより、より多くの青少年が簡易にサービスを受けられるようにすることで、ワーキング・ホリデー制度への支援の効率化を図っている。
 また、ワーキング・ホリデー制度の支援及び促進を目的とする専門的な団体であるワーキング・ホリデー協会に事業委託することにより、効率性の高い事業運営を実施しているところである。

(2) 施策目標の達成状況と総合的な評価
現状分析  厚生労働省では、平成12年12月に策定した「勤労青少年福祉対策基本方針」の中で、勤労青少年の現状を以下のように分析している。
 青少年人口(15〜29歳)は、2010年には現在の約4分の3にまで減少することが見込まれ、急激に若年労働力が減少していく。
 青少年の雇用環境は、完全失業率は高水準、有効求人倍率は低く推移するなど厳しい状況が続いている。
 新規学卒者等若年者の雇用環境が厳しい一方、職業意識の多様化等の要因もあり、学卒未就職者、フリーターが増加している。また、離転職者も多く見られる。
 青少年の意識には、人生の目標が見つからないなどの不安が強いものの、自己実現への意欲は強い。仕事の内容を重視する一方で、企業とは意識の上で一定の距離を置く傾向が見られる。
 青少年の社会貢献の意識は低いといわれているが、「何か新しい体験をしたい」、「人のために役立ちたい」という理由で、ボランティア活動への参加を希望し、また、国際交流についても「視野を広める」、「外国語が上達したい」等の理由で活動をしたいという者が認められる。
施策手段の適正性の評価  未だ肉体的、精神的に成長過程にあり、また情緒面で動揺期である勤労青少年の職業生活への適応を容易にするために、職場における勤労青少年福祉推進者、勤労青少年ホームにおける勤労青少年ホーム指導員等、勤労青少年を指導する者に対し現状を踏まえたテーマに応じた講習を受けさせることや、研究討議や情報交換の場を提供することは、勤労青少年が有為な社会人、職業人として成長しその責任を果たすように支援することになるため、適正である。
 また、ワーキング・ホリデー制度を推進するために、各種の情報提供及び説明会、オリエンテーションを実施することは、両国間の相互理解の促進や友好関係の増進及び国際的視野を持った青少年の育成を図ることになるため、適正である。
総合的な評価
 前記(1)の実績目標の達成状況の評価で述べたとおり、「向上研修」については、事業の有効性及び効率性が低下している状況にある。また、平成14年度にあっては、予算の制約上、実施ブロック8カ所を5カ所に統合したため、その有効性が益々失われることが予測される。
 今後一層経済のグローバル化、国際化が進むことにより、国際的視野を持つ人材が必要とされることから、若い時期に広い視野と国際感覚を養成し国際化時代にふさわしい社会人、職業人を育成していくことが大きな課題である。そのため、ワーキング・ホリデー制度の利用者に対する支援及び同制度の活用の促進は、勤労青少年の国際的相互理解を深め、国際感覚と自主性を培う手段として適正である。
 現状分析で述べたとおり、現在、若年者層において、学卒未就職者やフリーターが増加しており、また早期離転職者も多く見られる状況にある。このような職業生活の初期のつまずきは将来のキャリア形成を阻害する可能性が大きいことから、これらの学卒未就職者や早期離職者等に対し、キャリア形成への動機づけを行うことが今後の課題となる。
 以上を踏まえると、勤労青少年が有為な社会人、職業人として成長しその責任を果たすための支援として、従来より、勤労青少年の福祉に重点をおいて施策を展開してきたが、今後、施策目標の達成のためには、勤労青少年個人に対し適切なキャリア形成を支援していくための取り組みも併せて重要であると考える。
 また、勤労青少年指導者等の育成については、健全な勤労青少年を育成するために、その実施方法の改善に向けて検討を行う必要がある。


3.政策への反映方針

 勤労青少年個人に対するキャリア形成支援については、現在、勤労青少年ホーム等において、体験学習やキャリア・カウンセリングを取り入れた「勤労青少年キャリア形成支援講座」を実施しているところである。この事業は、平成13年度から平成14年度にかけてのパイロット事業であり、平成15年度においては、このパイロット事業を踏まえ、本格的に実施に向けての検討をしている。
 また、勤労青少年指導者等の講習会等については、一部参加者が重なる「指導員講習会」と「向上研修」を併合して実施することにより、参加者の増加と費用の効率性を高めることを検討している。


4.特記事項

(1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
なし

(2)各種政府決定との関係及び遵守状況
 (「地方分権推進計画」「国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本計画」「第10次定員削減計画」「行政改革大綱」等)
なし

(3)総務省による行政評価・監視等の状況
なし

(4)国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
なし

(5)会計検査院による指摘
なし


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