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(5−1−I)
実績評価書
平成14年9月

政策体系 番号  
基本目標 労働者の職業能力の開発及び向上を図るとともに、その能力を十分に発揮できるような環境を整備すること
施策目標 雇用の安定・拡大を図るための職業能力開発の枠組みを構築すること
I キャリア形成支援システムを整備すること
担当部局・課 主管課 職業能力開発局育成支援課、キャリア形成支援室
関係課  


1.施策目標に関する実績の状況

実績目標1 キャリア形成支援コーナーを拠点として、労働者、事業主に対するキャリア形成に係る相談援助・情報提供を行うこと等により、労働者個人ごとのキャリア形成を促進すること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 労働者個人のキャリア形成を促進するため、各都道府県に設置されたキャリア形成支援コーナーにおいて、労働者・事業主等に対する相談援助・情報提供を行う。また、職業能力開発推進者講習(企業内において職業能力開発を推進する担当者に対し、キャリア形成支援に必要な知識・技法を習得させるための講習)、自己啓発推進セミナー(キャリア形成支援の好事例を事業主等に提供するためのセミナー)を通じ、企業内においてキャリア形成支援を担当する者に対する講習等を実施する。
(評価指標)
キャリア形成支援コーナーにおける相談援助・情報提供件数
H9 H10 H11 H12 H13
31,483
(備考)
平成13年10月にキャリア形成支援コーナー設置のため、半年間の件数
評価指標は雇用・能力開発機構調べである。
(評価指標)
職業能力開発推進者講習の受講者数(人)
H9 H10 H11 H12 H13
21,546
(備考)
評価指標は平成13年度から中央職業能力開発協会において集計したものである。
(評価指標)
自己啓発推進セミナー等参加者数(人)
H9 H10 H11 H12 H13
5,459
(備考)
評価指標は平成13年度から中央職業能力開発協会において集計したものである。
実績目標2 キャリア形成促進助成金を通して、労働者の自発的な能力開発を推進す
ることにより、労働者個々人のキャリア形成を促進すること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 事業主が事業内職業能力開発計画及びこれに基づく年間職業能力開発計画において能力開発の目標及び内容を明確化し、これを労働者に周知した上で、(1)職業訓練の実施、(2)職業能力開発休暇の導入、(3)長期教育訓練休暇制度の導入、(4)職業能力評価の実施、(5)キャリア・コンサルティングの機会の確保を行った場合について助成を行う。(平成13年10月に創設、平成14年度より支給)
(評価指標)
キャリア形成促進助成金支給事業所数(件)
H9 H10 H11 H12 H13
(備考)
平成14年度より支給を行うため、現段階では実績はない。


2.評価

(1) 実績目標の達成状況の評価
実績目標1 キャリア形成支援コーナーを拠点として、労働者、事業主に対するキャリア形成に係る相談援助・情報提供を行うこと等により、労働者個人ごとのキャリア形成を促進すること
有効性  キャリア形成支援コーナーにおいては、労働者に対して相談援助・情報提供を実施する一方、事業主等に対しては、
 (1)キャリア形成支援に関する専門的な相談援助
 (2)キャリア・コンサルティングの実施方法等についての指導
等を実施している。
また、キャリア形成支援コーナー以外においても
 (3)キャリア形成支援に必要な知識・技法を習得させるための講習である職業能力開推進者講習
 (4)キャリア形成支援の好事例を事業主等に提供するためのセミナーである自己啓発推進セミナーの開催
等を実施することとしており、労働者に対する直接の効果に加え、事業主等がその後企業内において、キャリア・コンサルティングの実施方法等キャリア形成支援に必要な知識・技法の活用等を通じ、企業内労働者のキャリア形成支援を促進する波及的効果が見込まれる。
 (1)(2)については、労働者・事業主等をあわせ31,483件の実績、(3)については21,546人の実績、(4)については5,459人の実績(1.を参照)があることから、労働者個人のキャリア形成促進という本施策の効果の対象となる労働者は相当数にのぼることが想定される。
効率性  労働者・事業主等がキャリア形成に関して専門的な相談援助・情報提供を受けられる機会は一般的にまだ少ないが、キャリア形成支援コーナーが各都道府県に1ヶ所ずつ設置されていることにより、本人等の希望により大きな負担がなく、専門的なサービスを受けられる体制となっている。
 一方、職業能力開発推進者講習や自己啓発推進セミナーを通じ、企業内においてキャリア形成支援を担当する者に対しキャリア形成に必要な知識・技法等を習得させることは、これらの者を通じ企業内の労働者に対して広くキャリア形成支援を行うことにつながることから、効率的である。
 これら業務を一元的に扱うことは、キャリア形成支援に関する情報やノウハウの蓄積を図りつつ効率的に業務を行っていることから、本施策は施策目標の達成にあたり効率性があると評価できる。
実績目標2 キャリア形成促進助成金を通して、労働者の自発的な能力開発を推進することにより、労働者個々人のキャリア形成を促進すること
有効性  技術革新、労働移動の増加等、社会経済情勢の様々な変化の中で、労働者自らがその適性や職業能力を的確に把握しつつ効果的に職業能力を発揮できるようにするために、労働者個人が自ら主体的にキャリア形成を行うことが重要となってきている。職業能力開発に対する企業責任が今後とも高いと見込まれる中で、こうした労働者のキャリア形成が効果的に行われるためには、企業内におけるキャリア形成を支援することが必要であり、本制度により目標が明確化された職業訓練の実施、職業能力開発休暇の付与等を行うことにより、総合的に労働者のキャリア形成を支援する事業主に対して経費や賃金の助成を行うことが効果的である。
(参考)
 能力開発責任主体の比率(厚生労働省「平成13年度能力開発基本調査」(平成 14年)
 これまで → 企業責任75.6%:個人責任20.1%
 今後 → 企業責任69.4%:個人責任26.6%
効率性  企業内における労働者のキャリア形成の取組を促進し、その効果を高めるため、従前より実施していた生涯能力開発給付金、人材高度化能力開発給付金等を整理合理化して総合的なキャリア形成促進の手段として新たに設けたものであり、支給手続きの一元化等により、利用者にとって内容の理解が容易になっている。

(2) 施策目標の達成状況と総合的な評価
現状分析  労働移動の増加等により、企業主導の能力開発だけでは限界が生じてきている一方、労働者に求められる職業能力が企業内外を問わず通用するものへと変化してきている。このような中、労働力需給における職業能力のミスマッチを解消し、労働者が雇用の安定を図るためには、適切な情報を入手したり、自らの職業能力を確認しつつ、その職業生活設計に即して職業訓練・教育訓練を受け、キャリア形成を図ることの重要性が増している。
 このため、労働者のキャリア形成を促進するための、労働市場のインフラストラクチャーとして、キャリア形成支援システム(キャリア・コンサルティング技法の開発、キャリア形成に関する情報提供、相談等の推進、民間におけるキャリア形成支援システムの確立及び人材育成、企業内におけるキャリア形成支援システムの確立)の整備が必要となってきている。
施策手段の適正性の評価  キャリア形成支援コーナーの各事業を通じ、労働者・事業主等に対する相談援助・情報提供を行う一方、キャリア形成促進助成金の支給を通じ、経費の面から、企業内における事業主によるキャリア形成支援を促進を図ることとしている。これらは、専門的知識・技能の付与と経費の支援の両方の側面から、労働者個人のキャリア形成を促進するものであり、総合的に判断して、施策目標の達成に効果的であると評価できる。
 さらに、キャリア形成支援コーナーの相談援助・情報提供件数について、平成13年10月からの3ヶ月間と平成14年1月からの3ヶ月間を比較すると、後者が大幅に多くなってきている。今後の見極めが必要であるが、各事業の実施によりキャリア形成支援の概念が社会に普及するに伴い、一定の水準までは利用件数の増加が期待できると考えられる。
(参考)
キャリア形成支援コーナーにおける相談援助・情報提供件数
 平成13年10月から12月 10,466件
 平成14年 1月から 3月 21,017件
総合的な評価  キャリア形成自体の概念がまだ一般に社会に普及していないこともあり、キャリア形成支援コーナーが、労働者個人に対するキャリア形成支援の機能を十分に果たしているとは言えないが、今後とも、各事業の実施に力を入れていく必要がある。
 なお、各種の相談等の事業についても実施期間が短く、現場での課題が明らかになってないため、事例を重ねることにより課題を明らかにし、最適な方法へと改良していく必要がある。
 さらに、キャリア形成支援コーナーは開設されてまだ6ヶ月である一方、キャリア形成促進助成金の支給は平成14年度からであるため、今後、引き続き適切な評価を実施していく。


3.政策への反映方針

 キャリア形成支援コーナーについては、事業開始から6ヶ月であり、今後の相談件数等の状況により、相談員等の増員等、所要の見直しについて検討する。
 また、キャリア形成促進助成金については、平成14年 より支給開始であるため、今後の活用状況を見極めた上で、必要に応じ所要の見直しを図ることとする。


4.特記事項

(1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
なし

(2)各種政府決定との関係及び遵守状況
 平成13年12月19日に閣議決定された「特殊法人等整理合理化計画」において、雇用・能力開発機構の助成金事業につき講ずべき措置として、「国が明確な政策目標を定め、併せて当該目標が達成された場合又は一定期間経過後には助成措置を終了することを明記する。さらに、事後評価を行い、その評価結果を踏まえて助成の在り方を適宜見直す」こととされている。

(3)総務省による行政評価・監視等の状況
なし

(4)国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
なし

(5)会計検査院による指摘
なし


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