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(4−4−I)
実績評価書
平成14年9月

政策体系 番号  
基本目標 経済・社会の変化に伴い多様な働き方が求められる労働市場において労働者の職業の安定を図ること
施策目標 求職活動中の生活の保障等を行うこと
I 雇用保険制度の安定的かつ適正な運営及び求職活動を容易にするための保障等を図ること
担当部局・課 主管課 職業安定局雇用保険課
関係課  


1.施策目標に関する実績の状況

実績目標1 セーフティネットとして財政が安定していること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 雇用保険制度のうち、失業等給付は、労働者及び使用者から徴収される保険料と国庫負担とにより運営されているが、収入が支出を上回る場合には差額を積立金として積み立てることとしており、また、雇用情勢の急激な悪化による受給者の急激な増加により積立金の取崩しによっても対処し得ない場合においても、弾力条項による保険料率の引上げ等、必要な給付に支障を来さないような仕組みが制度化されている。
 また、三事業についても、積立金に準じた雇用安定資金を設けられているとともに、弾力条項が設けられている。
(評価指標)収支バランス(失業等給付関係)
 収入額
(億円)
H9 H10 H11 H12 H13
19,423 17,397 17,317 16,239 23,829
  うち 保険料収入 12,923 12,929 12,335 12,164 18,251
 支出額
(億円)
H9 H10 H11 H12 H13
23,203 27,018 27,806 26,660 27,275
  うち 失業等給付費 21,939 25,762 26,550 25,138 26,007
 積立金残高
(億円)
H9 H10 H11 H12 H13
38,975 29,354 18,865 8,444 4,998
(備考)評価指標は、各年度の決算値による。
失業等給付に係る収入は、事業主及び労働者から徴収される保険料、国庫負担及び積立金の運用による利子収入等からなる。
失業等給付に係る支出は、失業等給付に要する費用及び雇用保険事業の運営に必要な経費からなる。
(評価指標)収支バランス(三事業関係)
 保険料収入額
(億円)
H9 H10 H11 H12 H13
5,656 5,660 5,399 5,324 5,346
 支出額
(億円)
H9 H10 H11 H12 H13
5,037 4,680 5,392 6,015 5,839
 雇用安定資金残高
(億円)
H9 H10 H11 H12 H13
2,806 3,786 3,793 3,102 2,609
(備考)評価指標は、各年度の決算値による。
三事業に係る収入は、事業主から徴収される保険料からなる。
実績目標2 給付を適正に行うこと
(実績目標を達成するための手段の概要)
 雇用保険の失業等給付(求職者給付(基本手当等)、就職促進給付(再就職手当等)、教育訓練給付及び雇用継続給付(高年齢雇用継続給付、育児休業給付及び介護休業給付))については、全国の公共職業安定所において支給事務を実施しており、法令等に基づきその適正な給付に努めているところである。
(評価指標)適用状況
 適用事業所数(年度月平均)
(千所)
H9 H10 H11 H12 H13
1,978 1,995 2,002 2,018 2,028
(備考)評価指標は、雇用保険事業統計による。
 新規適用事業所数
(千所)
H9 H10 H11 H12 H13
83 77 87 98 90
(備考)評価指標は、雇用保険事業統計による。
 廃止事業所数
(千所)
H9 H10 H11 H12 H13
54 62 80 81 89
(備考)評価指標は、雇用保険事業統計による。
 被保険者数(年度月平均)
(千人)
H9 H10 H11 H12 H13
34,387 34,195 33,902 33,905 34,111
(備考)評価指標は、雇用保険事業統計による。
(評価指標)失業等給付給付状況
 基本手当基本分(受給者実人員)
(年度月平均)
(千人)
H9 H10 H11 H12 H13
899 1,053 1,068 1,029 1,106
(備考)評価指標は、雇用保険事業統計による。
基本手当基本分とは、基本手当のうち、延長給付部分を除くものをいう。
 基本手当基本分(給付額)
(億円)
H9 H10 H11 H12 H13
16,005 19,216 20,125 18,923 20,128
(備考)評価指標は、各年度の決算値による。
基本手当基本分とは、基本手当のうち、延長給付部分を除くものをいう。
 再就職手当(受給者数)
(千人)
H9 H10 H11 H12 H13
396 418 396 403 394
(備考)評価指標は、雇用保険事業統計による。
 再就職手当(給付額)
(億円)
H9 H10 H11 H12 H13
1,759 1,927 1,842 1,598 1,221
(備考)評価指標は、各年度の決算値による。
 教育訓練給付(受給者数)
(千人)
H9 H10 H11 H12 H13
0.2 150 270 285
(備考)評価指標は、雇用保険事業統計による。
10年度より支給開始。
 教育訓練給付(給付額)
(億円)
H9 H10 H11 H12 H13
0.1 131 271 395
(備考)評価指標は、各年度の決算値による。
10年度より支給開始。
 雇用継続給付(高年齢雇用継続給付)
(初回受給者数)
(千人)
H9 H10 H11 H12 H13
89 100 105 115 141
(備考)評価指標は、雇用保険事業統計による。
 雇用継続給付(高年齢雇用継続給付)
(給付額)
(億円)
H9 H10 H11 H12 H13
567 773 954 1,086 1,250
(備考)評価指標は、各年度の決算値による。
 雇用継続給付(育児休業基本給付金)
(初回受給者数)
(千人)
H9 H10 H11 H12 H13
65 71 76 85 93
(備考)評価指標は、雇用保険事業統計による。
 雇用継続給付(育児休業給付)
(給付額)
(億円)
H9 H10 H11 H12 H13
257 292 321 372 597
(備考)評価指標は、各年度の決算値による。
 雇用継続給付(介護休業給付)
(受給者数)
(千人)
H9 H10 H11 H12 H13
3 4 5
(備考)評価指標は、雇用保険事業統計による。
11年度より支給開始。
 雇用継続給付(介護休業給付)
(給付額)
(億円)
H9 H10 H11 H12 H13
5 6 12
(備考)評価指標は、各年度の決算値による。
11年度より支給開始。


2.評価

(1) 実績目標の達成状況の評価
実績目標1 セーフティネットとして財政が安定していること
有効性 平成13年度においては、改正雇用保険法が施行されたことにより、保険料率の引上げ及び国庫負担率の暫定措置廃止により収入が増加し、基本手当の所定給付日数の見直し等により支出が抑制されることが見込まれた。しかしながら、依然として厳しい雇用失業情勢(完全失業率5.2%)の下、受給者実人員もこれまでで最高の水準(年度月平均111万人)で推移したため、支出が保険料等収入を上回ったが、積立金の取崩し(3,446億円)により対処した。
実績目標2 給付を適正に行うこと
有効性 依然として厳しい雇用失業情勢を反映して失業者数が増加する中、基本手当の受給者実人員はこれまでで最高となった。また、教育訓練給付及び雇用継続給付については、制度発足以来着実に利用が伸びているところである。
効率性 支給業務を担当する公共職業安定所においては、受給者数が増加する中においても、一定の組織定員の範囲内において法令等に基づき適正な給付に努めているところである。

(2) 施策目標の達成状況と総合的な評価
現状分析 雇用保険制度については、厳しい財政状況にあることを背景として、雇用を取り巻く状況の構造的変化を見据えつつ、雇用保険が今後とも雇用に係るセーフティネットの中核として安定的かつ十分な役割を果たしていくことができるようにするという観点から、平成12年に雇用保険法の改正を行った。その主な内容は以下のとおり。
 (1) 基本手当の所定給付日数について、一般の離職者に対する所定給付日数を全体として圧縮する一方、中高年層を中心に倒産、解雇等による離職者に対して十分な給付日数を確保することにより重点化を図ったこと。
 (2) 失業等給付に係る国庫負担率及び保険料率に係る暫定措置を廃止するとともに、保険料率の引上げを行ったこと。
 平成13年度においては、この改正雇用保険法の施行により、収入が増加する一方、支出が抑制されることが見込まれたものの、依然として厳しい雇用失業情勢の下、受給者実人員もこれまでで最高の水準で推移したため、支出が保険料等収入を上回ったが、積立金の取り崩しにより対処した。
 こうした中、支給業務を担当する公共職業安定所においては、受給者数が増加する中においても、法令等に基づき適正な給付に努めているところである。
施策手段の適正性の評価 適正な給付の実施など制度の適正な運営に努めてきたところであるが、厳しい雇用失業情勢により受給者が傾向的に増加している結果、支給額の増大により、雇用保険制度は財政的に大変厳しい状況に直面している。
総合的な評価 雇用保険制度の安定的かつ適正な運営及び求職活動を容易にするための保障等に努めているものの、雇用保険制度が今後とも雇用のセーフティネットとしての役割を十全に果たしていくという観点から、給付と負担の両面において不断の見直しが必要である。


3.政策への反映方針

 今後も適正な給付に努める一方、雇用保険制度が今後とも労使の連帯からなる雇用のセーフティネットとしての役割を十全に果たしていくという観点から、労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会において、雇用保険制度の見直しについて検討している。
 同部会は、7月19日に中間報告をとりまとめたが、その中で、弾力条項の発動による保険料の引上げも含め、現行制度の範囲内で実施することが可能な措置については制度本体の改正に先行して早急に実施に移すことが適当とする一方、制度改正に係る個別の検討項目については、今後さらに具体的な検討を深めていくこととされたところである。
 この報告を踏まえ、現行制度の範囲内で実施することが可能な措置を速やかに実施に移し、雇用保険制度の適正な運営に努めるとともに、雇用保険部会における検討結果を踏まえ、次期通常国会へ所要の法案を提出する予定である。


4.特記事項

(1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
 労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会において雇用保険制度の見直しについて検討中。

(2)各種政府決定との関係及び遵守状況
○規制改革推進3か年計画(改定)(平成14年3月29日閣議決定)
II - 3 - (1)
 ア 能力開発プログラムの充実
 労働者の就業機会を拡大するためには、能力開発を促進し労働者のポテンシャルを向上させることが効果的である。今般、教育訓練給付制度については、大学・大学院等における高度な社会人向け教育訓練コースの指定拡大、職業との関連性確保等による講座の重点化等講座指定の在り方の見直しを図ったが、労働市場全体のポテンシャル向上という見地からは、制度創設以来の運用実態等を踏まえ、支給対象者の範囲なども含め、教育訓練給付制度等の在り方についてさらに検討する。
 イ 職業紹介規制の抜本的緩和
(オ)公共職業安定所紹介要件の緩和
 特定求職者雇用開発助成金を始めとする雇用関係助成金については、公共職業安定所の紹介要件を緩和し、都道府県労働局長への届出により、民間の職業紹介事業者の紹介による雇入れも支援対象とする措置を講じたが、不正防止にも留意しつつ、今後とも、要件緩和の趣旨・内容等の周知徹底を図る。なお、こうした助成金の在り方そのものについても、費用対効果の観点からその見直しを検討する。
 また、雇用保険法(昭和49年法律第116号)に定める就職促進給付のうち再就職手当の一部及び常用就職支度金についても、不正防止等の観点から公共職業安定所の紹介を支給要件としているが、厳しい雇用保険財政に留意しつつこれを緩和することの可能性も含め、その在り方について検討する。
II - 3 - (3)
 イ 社会保険制度の改革等【速やかに検討】
 就労形態の多様化に対応した社会保険制度の改革等を速やかに検討する必要がある。パートタイム労働者と派遣労働者に対する雇用保険の適用拡大については、平成13年4月に措置したが、年金・医療保険においても、パートタイム労働者への適用拡大について早急に検討する。派遣労働者については就業実態等を踏まえた健康保険組合の設立を認めるとともに、適用基準の明確化等を行うことについて早急に検討を進める。また、雇用保険法は原則としてすべての民間被用者を対象とした制度であり、現在、低い加入水準にとどまっている私立学校教員等については、雇用保険への加入を速やかに促進する。

(3)総務省による行政評価・監視等の状況
なし

(4)国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
なし

(5)会計検査院による指摘
 失業等給付金の支給の適正を期するため、受給資格者等に正しい失業認定申告書、再就職手当支給申請書等の提出を行わせるよう指導を徹底するとともに、失業等給付金の支給決定時における調査確認の一層の充実強化を図る必要があると認められる。
(平成12年度決算検査報告)


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