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(4-3-I)
実績評価書
平成14年9月

政策体系 番号  
基本目標 経済・社会の変化に伴い多様な働き方が求められる労働市場において労働者の職業の安定を図ること
施策目標 労働者等の特性に応じた雇用の安定・促進を図ること
I 高齢者の雇用就業を促進すること
担当部局・課 主管課 職業安定局高齢・障害者雇用対策部高齢者雇用対策課
関係課 職業安定局高齢・障害者雇用対策部企画課


1.施策目標に関する実績の状況

実績目標1 事業主に対する指導・援助を推進することにより、65歳までの雇用の確保を促進すること
(実績目標を達成するための手段の概要)
(1).公共職業安定所による事業主への指導・援助
 希望者全員の65歳までの安定した雇用を確保していない企業に対して、公共職業安定所の職員が企業訪問等により個別指導等を実施する。
(2).高年齢者等雇用安定センターによる事業主への相談援助
 継続雇用導入等に係る相談・援助を行うアドバイザーの派遣、継続雇用制度に関する事例の蓄積・周知等により、事業主による継続雇用制度の導入等の促進を図る。
(3).継続雇用定着促進助成金
 希望者全員を65歳以上の年齢まで継続して雇用する制度を新たに導入する事業主等に対して助成する。
ⅰ継続雇用制度奨励金(第I種)・・・継続雇用制度の導入及び定着の促進
ⅱ多数継続雇用助成金(第II種)・・・高年齢者の多数雇用の促進
ⅲ定年延長等職業適応助成金(第III種)・・・定年延長制度等の円滑な運用の促進
(4).高年齢雇用継続給付
 60歳時点に比べて賃金が15%以上低下した状態で働き続ける被保険者に対して助成する。
(評価指標)65歳までの継続雇用制度を有する企業の割合(従業員30人以上規模企業) H9 H10 H11 H12 H13
54.3% 56.0% 59.4% 59.2% 60.9%
(備考)
評価指標は、雇用管理調査より算出した(一律定年制を有している企業を100%とした場合の割合)。
当該指標は、少なくとも65歳までの勤務延長制度、再雇用制度を有する企業の割合である。
従業員30人未満規模企業については対象外となっている。
(評価指標)65歳までの雇用を確保する企業割合(従業員30人以上規模企業) H9 H10 H11 H12 H13
25.1% 26.3% 28.6% 25.8% 28.0%
(備考)
評価指標は、雇用管理調査より算出した。
当該指標は、希望者全員について、65歳までの雇用を確保する企業の割合である(「定年制を定めていない企業」、「65歳以上定年企業」、「65歳までの勤務延長制度、再雇用制度を有する企業のうち、原則として希望者全員を対象とする企業」のデータを基に算出)。
従業員30人未満規模企業については対象外となっている。
評価指標については、「継続雇用制度導入企業数」から当該指標へ以下の理由により変更を行った。
政策目標は、継続雇用制度だけではなく65歳定年や定年廃止を含む65歳までの希望者全員の雇用の確保の普及を図ることである。
個別企業調査は高年齢者雇用安定法に基づく高年齢者雇用状況報告により行っているが、これは全企業調査ではなく65歳までの雇用を確保する企業数を正確に把握できない。
65歳までの雇用の確保という政策目標の観点からは、絶対的な企業数の変動により企業割合の方が政策的意味がある。
(評価指標)指導・援助の実施件数 H9 H10 H11 H12 H13
14,197 19,142 24,077
(備考)
評価指標は、高年齢者雇用確保措置推進指導実施状況報告による。
(評価指標)継続雇用定着促進助成金支給決定件数 H9 H10 H11 H12 H13
4,542 7,323 5,802 8,872 15,509
(備考)
評価指標は、中央高年齢者等雇用安定センター調べによる。
評価指標の継続雇用定着促進助成金は、平成9年度からの事業である。
評価指標は各年度とも新規申請分である。
(評価指標)継続雇用定着促進助成金支給決定金額(百万円単位) H9 H10 H11 H12 H13
5,601 9,113 7,307 11,280 16,318
(備考)
評価指標は、中央高年齢者等雇用安定センター調べによる。
評価指標の継続雇用定着促進助成金は、平成9年度からの事業である。
評価指標は各年度とも新規申請分である。
実績目標2 中高年齢者の再就職の促進を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
(1).再就職援助計画制度 
 事業主は、定年、解雇等により離職を余儀なくされる中高年齢者に対し、個別に再就職援助計画書を作成・交付し、これに沿って再就職援助を行うよう努めなければならないこととし、公共職業安定所長は、必要により、事業主に対し再就職援助計画の作成要請を行う(高年齢者雇用安定法)。
(2).公共職業安定所及び高年齢者等雇用安定センターによるきめ細かい相談・援助
(評価指標)再就職援助計画書交付者数 H9 H10 H11 H12 H13
- 21,664
(備考)
評価指標は、高年齢者雇用状況報告(概ね50人以上規模事業所)による。
報告時の過去1年間(前年6月1日から当年5月31日まで)の離職者のうち再就職援助計画を作成した対象者数である。
平成12年10月施行のため、平成13年は平成12年10月1日から平成13年5月31日までの数である。
(評価指標)要請に基づく再就職援助計画書交付者数 H9 H10 H11 H12 H13
17,257 56,512
(備考)
評価指標の平成12年度分については、改正高年齢者雇用安定法が施行された10月以降3月までの実績である。
実績目標3 高年齢者の意欲・能力に応じた多様な社会参加の促進を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
(1).シルバー人材センター事業
 定年退職後等において、臨時的かつ短期的な就業等を希望する高年齢者に対して、地域の日常生活に密着した仕事を提供するシルバー人材センター等を支援する。
(2).高年齢者職業経験活用センター事業(高年齢者雇用就業機会提供事業)
 高齢者に対し、その職業経験を通じて得られた知識及び技能の活用を図ることができる短期的な雇用による就業の機会を提供する高年齢者職業経験活用センター等を支援する。
(3).高年齢者共同就業機会創出支援事業
 高齢者が共同して事業を創業し知識や経験を活かして雇用就業機会の拡大を図る場合に助成する。
(4).高齢期雇用就業支援コーナーによる相談・援助
 高齢者等を雇用する事業主、離職予定高年齢者等に対して、高齢期の雇用就業に関する相談・援助を実施する。
(評価指標)シルバー人材センター会員の就業延人数(千人日) H9 H10 H11 H12 H13
37,907 41,415 45,689 51,311 54,865
(備考)
 ・評価指標は、(社)全国シルバー人材センター事業協会の調べによる。
(評価指標)高年齢者職業経験活用センターによる派遣延人数 H9 H10 H11 H12 H13
136 190 293 240 322
(備考)
 ・評価指標は、全国高年齢者職業経験活用センターの調べによる。
 ・評価指標の平成9年度の派遣延人数は3箇所の高年齢者職業経験活用センターの合計であり、平成10年度以降の派遣延人数は4箇所の高年齢者職業経験活用センターの合計である。


2.評価

(1) 実績目標の達成状況の評価
実績目標1 事業主に対する指導・援助を推進することにより、65歳までの雇用の確保を促進すること
有効性  定年の引上げ、継続雇用制度の導入等による65歳までの安定した雇用の確保については、高年齢者雇用安定法上、事業主の努力義務(罰則等は定められていない)とされており、労使間合意に基づく事業主の自主的取組が基本となっている。従って、これを推進していくためには、公共職業安定所による指導のほか、技術的な相談・援助や財政的な支援を組み合わせて、事業主の自主的な取組を促していくことが有効な手段となる。
 普及状況については、ここ数年、景気低迷の影響による早期退職勧奨、中高年齢者等の失業率の上昇等もあって、雇用の維持が大きな課題となり、65歳までの雇用確保措置の普及が非常に厳しい状況の中ではあるものの、65歳までの雇用を確保する企業は増加傾向にある(評価指標参照)。
 また、継続雇用制度奨励金は、制度導入を行った事業主への支給であり、支給件数が着実に伸びている状況をみると、特に中小企業において、継続雇用制度等の普及に有効に寄与しているものと考えられる。
 (参考)
  45歳以上の失業率
   H11年:3.8% H12年:3.8% H13年:4.1%
効率性  相談・援助の実施に当たっては、高年齢者雇用確保措置の導入状況に応じて対象事業主を6分類した上で、企業規模に応じた、重点的な指導を行うとともに、高年齢者等雇用安定センターのアドバイザー派遣をこれに組み合わせて効率的に実施している。
 また、継続雇用制度奨励金については、導入した制度の内容・企業規模等に応じて、制度導入に係る経費の一定割合を助成する水準で助成金額を定めており、費用対効果においても適正な制度である。
実績目標2 中高年齢者の再就職の促進を図ること
有効性  平成12年10月の高年齢者雇用安定法の改正により、対象者の拡大等、再就職援助計画制度の拡充を行ったところである。改正以前とは単純な比較はできないが、平成13年度の「要請に基づく再就職援助計画交付者数」は、平成12年度に比べて約3.27倍に増加している。これは、中高年齢者の雇用失業情勢の厳しさを反映している面もあるが、本制度が、公共職業安定所を始めとした周知・啓発により、事業主への理解が浸透してきていることを示していると考えられる。さらに、再就職援助計画を公共職業安定所に持参した中高年齢者に対しては、同計画書を参酌してきめ細かい相談・援助を実施することとしており、中高年齢者の在職中からの再就職の促進に一定の役割を果たしていると考えられる。
効率性  中高年齢者を離職させる事業主に対して高年齢者雇用安定法に基づいて再就職援助を行う努力義務を付し、これを実効のあるものとするため、事業主指導等の業務の一環として周知・啓発・指導を行うとともに、必要により公共職業安定所長が再就職援助計画の作成要請を行うこととしている。
 この結果、事業主による再就職援助を促し、離職予定者の早期の再就職の促進が図られることで、長期失業者の発生を防止し、中高年齢者の直接的な雇用就業対策に必要な経費を低減することが可能となる。
実績目標3 高年齢者の意欲・能力に応じた多様な社会参加の促進を図ること
有効性  高年齢者の多様な社会参加の形態としては、常用雇用のほか、裁量的な雇用、任意就業、創業等様々なものがあり、これを推進していくためには、相談体制を整備するとともに、それぞれの形態に応じた推進策を講じていくことが有効である。
 このうち、臨時・短期の任意就業を推進するシルバー人材センターについては、平成13年度末現在で1,688団体(前年度末に比して約100団体増加)設置され、就業延人数は増加傾向にあり、全国広範囲の地域で、就業機会の確保・提供体制は確実に広がっている。
 さらに、同事業は、介護・高齢者生活支援などの地域の福祉政策に貢献するとともに、地域社会の活性化にも大きく寄与している。
 また、裁量的な雇用(短期的派遣)を推進する高年齢者職業経験活用センターについては、既存施設での派遣延人数は着実に伸びており、一定の効果は上げているものの、新規のセンター指定はなく、政策効果は限定的なものに止まっている。
効率性  シルバー人材センターの運営にはその運営経費の一部について国庫補助(平成13年度約116億円交付)しているところであるが、シルバー人材センターによる仕事の受注に係る契約金額は約2,400億円に達している。
 高年齢者職業経験活用センターの運営には指定後当初の3年間についてその運営費の一部を助成することとしているが、現時点では、新規の指定がないことから、当該助成のための支出はない。

(2) 施策目標の達成状況と総合的な評価
現状分析  ここ数年、景気低迷の影響を受けて、雇用失業情勢は全体として厳しい中で、中高年齢者を対象とした早期退職勧奨等により中高年齢者は特に厳しい状況に直面しており、また、65歳までの雇用確保措置の普及が急速に進みにくい状況にある。
 こうした状況下ではあるが、65歳までの雇用に向けた事業主の認識・具体的な取組は進んでおり、中高年齢者の早期再就職に向けた諸制度も定着しつつある。さらに、団塊の世代が60歳台を迎える前に、シルバー人材センター等を通じた多様な社会参加の形態の普及が着実に進んでいる。
施策手段の適正性の評価  高齢者の雇用就業を促進するため実施している上記の3つの実績目標の体系に沿った諸施策は適正に機能している。
 ただし、全体の雇用失業対策の中で中高年齢者の再就職の促進を目標とした諸施策(各種助成金、再就職援助計画等)が一般対策と重なる部分が多い。また、高年齢者の多様な社会参加の形態の一つである裁量的な雇用(短期的派遣)については、派遣法の改正により、高齢者派遣の特例措置が解除されたため、高年齢者職業経験活用センターの優位性が低下し、政策効果が限定的なものに止まっている。
総合的な評価  厚生年金の支給開始年齢の段階的な引上げ、高齢化の更なる進展等を受けて、高齢者の雇用就業を促進していくことは一層重要になっている。
 現在の高齢者を取り巻く厳しい雇用失業情勢等に鑑みると、現在の3つの実績目標の体系の下に、諸施策を実施していくことが有効であると考える。
 ただし、中高年齢者の再就職の促進を目標とした諸施策(各種助成金、再就職援助計画等)が一般対策と重なる部分が多いので、今後、実績等を踏まえて、一層効果的なものとなるよう整理・合理化を検討していく必要がある。
 また、裁量的な雇用(短期的な雇用)の推進策についても、見直しを検討していく必要がある。
 中長期的には、年齢にかかわりなく働くことができる社会の実現に向けて、諸施策を重点化・強化していくことが重要である。


3.政策への反映方針

 現在、「年齢にかかわりなく働ける社会に関する有識者会議」において、今後の高齢者雇用対策等について検討が進められている。
 また、平成15年度概算要求において、継続事業のうち高齢者雇用対策関係事業(要求額14,407百万円)は、高齢者の雇用就業を促進することから、「新重点4分野」の「(3)公平で安心な高齢化社会・少子化対策」に資するため、優先性を有すると考える。
 なお、新規事業として要求する高齢者活用子育て支援事業(要求額1,733百万円)は、高齢者の就業機会を確保するとともに、子供が産みやすく、家庭生活と職業生活を両立できる環境を整備することから、「新重点4分野」の「(3)公平で安心な高齢化社会・少子化対策」に、環境保全推進事業(同1,005百万円)は、市区町村と連携して環境保全、リサイクル事業を推進することにより、地域社会における環境に対する意識を高め、地域住民のライフスタイルを環境への負荷の少ないものに転換することも目的とするため、「新重点4分野」の「(4)循環型社会の構築・地球環境問題への対応」に資することから各事業は優先性を有すると考える。
 さらに、総合的雇用環境整備推進事業(ジャンプ65推進事業)を強化することによって、より重点的かつ効果的に、高齢者の総合的な雇用環境の整備を推進することとする。


4.特記事項

(1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
なし

(2)各種政府決定との関係及び遵守状況
 平成11年8月に閣議決定された「第9次雇用対策基本計画」において、「向こう10年程度の間において、65歳定年制の普及を目指しつつも、少なくとも意欲と能力のある高齢者が再雇用又は他企業への再就職などを含め何らかの形で65歳まで働き続けることが出来ることを確保していくこととする。」とされている。

(3)総務省による行政評価・監視等の状況
 平成14年3月に、総務省の行政監察による勧告「高齢者雇用対策に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」がある。

(4)国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
なし

(5)会計検査院による指摘
なし


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