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(4-2-IV-ⅰ)
実績評価書
平成14年9月

政策体系 番号  
基本目標 経済・社会の変化に伴い多様な働き方が求められる労働市場において労働者の職業の安定を図ること
施策目標 雇用機会を創出するとともに雇用の安定を図ること
IV 円滑な労働移動を促進すること
労働移動を余儀なくされた労働者の円滑な労働移動を促進すること
担当部局・課 主管課 職業安定局業務指導課
関係課 職業安定局産業雇用構造調整室


1.施策目標に関する実績の状況

実績目標1 在職中からの計画的な再就職支援を行うことにより、できるかぎり失業を経ない労働移動の促進を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 平成13年の雇用対策法の改正によって、一の事業所において相当数の労働者が離職を余儀なくされることが見込まれる事業規模の縮小等を行おうとする事業主に対し、再就職援助計画を作成して公共職業安定所長の認定を受けることを義務付けるとともに、国はそれに対して認定された計画に基づく再就職援助措置を支援することとした。
 具体的には、経済的事情により、一の事業所において、常時雇用する労働者について1か月の期間内に30人以上の離職者を生じることとなる事業規模の縮小等を行おうとする事業主に対して、最初の離職者の生ずる日の1か月前までに再就職援助計画を作成することを義務付けた。また、離職者が1か月に30人未満の場合であっても、任意に計画を作成し、公共職業安定所長の認定を受けることを可能とした。
(評価指標)
 再就職援助計画作成状況(認定事業所数)
H9 H10 H11 H12 H13
2,336
(評価指標)
 再就職援助計画作成状況(対象労働者数)
H9 H10 H11 H12 H13
129,026
(備考)
(1)再就職援助計画の作成の義務が規定された改正雇用対策法は、平成13年10月から施行された。
(2)評価指標は、平成13年10月~平成14年3月の「再就職援助計画認定状況報告」(職業安定局調べ)による。
実績目標2 労働移動支援助成金の積極的な活用により、計画的な労働移動の促進を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 労働移動支援助成金には、求職活動等支援給付金、再就職支援給付金、定着講習支援給付金及び労働移動支援体制整備奨励金がある。
(1)求職活動等支援給付金
 雇用対策法に基づく再就職援助計画の認定を受けた事業主が、計画対象労働者に対して求職活動等のための休暇を付与し、通常賃金の額以上の額を支払う場合に、休暇1日当たり4,000円(計画対象労働者1人について30日分(平成13年12月から60日分)を限度)を支給する。
 また、教育訓練に必要な費用を事業主が全額負担した場合に限り、1日当たり1,000円(計画対象労働者1人について30日分(平成13年12月から60日分)を限度)を加算する。
(2)再就職支援給付金
 雇用対策法に基づく再就職援助計画の認定を受けた事業主が、民間の職業紹介事業者に計画対象労働者の再就職に係る支援を委託し、計画対象労働者の再就職を実現した場合に、委託費用の1/4(限度額1人当たり30万円)を支給する。
(3)定着講習支援給付金
 雇用対策法に基づく再就職援助計画の対象となる労働者を雇い入れた事業主が、定着講習(当該雇入れの日から起算して3か月以内に開始され、かつ、当該講習の期間が2週間以上のものに限る。)を実施する場合に、1人当たり10万円を支給する。
(4)労働移動支援体制整備奨励金
 中小企業事業主に対して再就職援助に関する情報の提供、相談その他の援助を行うために必要な体制を整備する中小企業事業主の団体又はその連合団体に対して、事業実施に要した費用(当該事業を開始した日から起算して1年を経過する日までの間に要したものに限る。)の1/2(限度額100万円)を支給する。
(評価指標)
 求職活動等支援給付金支給決定人数(人)
H9 H10 H11 H12 H13
2,390
(評価指標)
 求職活動等支援給付金支給決定金額(百万円)
H9 H10 H11 H12 H13
127
(備考)
(1)求職活動等支援給付金は、平成13年10月からの事業である。
(2)評価指標は、雇用・能力開発機構の調べによる。
(評価指標)
 再就職支援給付金支給決定人数(人)
H9 H10 H11 H12 H13
2
(評価指標)
 再就職支援給付金支給決定金額(百万円)
H9 H10 H11 H12 H13
0.3
(備考)
(1)再就職支援給付金は、平成13年12月からの事業である。
(2)評価指標は、雇用・能力開発機構の調べによる。
(評価指標)
 定着講習支援給付金支給決定件数(件)
H9 H10 H11 H12 H13
(評価指標)
 定着講習支援給付金支給決定金額(百万円)
H9 H10 H11 H12 H13
(備考)
(1)定着講習支援給付金は、平成13年10月からの事業である。
(2)雇入れの日の翌日から起算して6か月を経過した日から1か月以内の申請であるため、制度発足から6か月を経過していない平成13年度末時点での実績はない。
(3)評価指標は、雇用・能力開発機構の調べによる。
(評価指標)
 労働移動支援体制整備奨励金支給決定人数(人)
H9 H10 H11 H12 H13
(評価指標)
 労働移動支援体制整備奨励金支給決定金額(百万円)
H9 H10 H11 H12 H13
(備考)
(1)労働移動支援体制整備奨励金は、平成13年10月からの事業である。
(2)事業を開始した日から起算して1年を経過した日から2か月以内の申請であるため制度発足から1年を経過していない平成13年度末時点での実績はない。
(3)評価指標は、雇用・能力開発機構の調べによる。


2.評価

(1) 実績目標の達成状況の評価
実績目標1 在職中からの計画的な再就職支援を行うことにより、できるかぎり失業を経ない労働移動の促進を図ること
有効性  再就職援助計画は、法定義務として提出されたものが平成13年10月~平成14年3月の6か月間で1174件、法定義務以外の任意提出分が法定義務とほぼ同数の1162件となっており、全体で約13万人の離職を前もって把握しているところである。これらの約13万人の計画対象労働者に対して、再就職援助計画を作成した事業主が計画に基づいた再就職支援を行う一方で、ハローワークにおいては、事業主の支援策について必要な指導を行うとともに主体的に支援策を実施するなどの対応を行っており、離職予定のある在職者の計画的な再就職支援に役立っている。
効率性  再就職援助計画の義務付け等の措置及び公共職業安定所長の計画認定による助成金の支給により、事業主による離職者の再就職支援が促進されるとともに、再就職支援を行う事業主に対する公共職業安定所の協力も効率的に行えるようになった。
実績目標2 労働移動支援助成金の積極的な活用により、計画的な労働移動の促進を図ること
有効性  求職活動等支援給付金については、平成13年10月の創設以来、月を追うごとに実績が伸びており、再就職援助計画対象者の求職活動を行うための休暇の取得が進んでいる。これにより、同計画対象者の求職活動が円滑化しているものと考えられ、計画的な労働移動の促進に一定の役割を果たしている。
 再就職支援給付金については、再就職支援にはある程度時間を要すると思われ、平成13年12月の創設から間もないことから、実績に結びついていない面がある。しかし、本給付金に関する事業主からの相談が63件(平成14年3月時点)となっているなど、活用に向けた動きも見られた。
 なお、定着講習支援給付金及び労働移動支援体制整備奨励金については、支給申請期間が未到来のため、平成13年度末時点での実績はない。

(参考)求職活動等支援給付金の支給決定人数の推移(雇用・能力開発機構調べ)
  平成13年
10月

11月

12月
平成14年
1月

2月

3月
支給人数(人) 16 197 327 632 1,218

効率性  労働移動支援助成金については、送り出し事業主及び受入れ事業主に対して一定の助成を行うことにより、労働者の円滑な労働移動を促進することができるため、実績目標の達成において効率的な手段であると考える。

(2) 施策目標の達成状況と総合的な評価
現状分析  最近の労働移動の状況を見ると、平成11年以降、完全失業率が傾向的に上昇している状況下にあっても、入職率、離職率とも増加傾向にあり、労働移動は増加している(延べ労働移動率:平成11年、29.1%、平成12年、30.6%、平成13年、32.0%「雇用動向調査」)。
 また、雇用政策研究会報告「雇用政策の課題と当面の展開」によると、「今後、産業構造がサービス化する中で、産業間移動を主体として労働移動が増加する結果、これまで従事してきた産業から、新たな産業へ転職する者が増加する」とされており、円滑な労働移動が行われることを通じて、労働市場全体で雇用の安定を図ることが一層重要となっている。
施策手段の適正性の評価  求職活動等支援給付金は、制度創設後、月を追うごとに支給人数が増加している。
 なお、制度創設時は、再就職援助計画の認定主体(国)と労働援助支援助成金の支給主体(雇用・能力開発機構)が異なっていたため、両者間の連携不足という問題が見られた。
総合的な評価  平成13年10月の創設から間もない制度であることから、十分なデータに基づく評価は難しいが、再就職援助計画制度及び労働移動支援助成金は、離職を余儀なくされた労働者の円滑な労働移動の促進に一定の役割を果たしたと考えられる。
 今後は、制度の周知はもとより、再就職援助計画の認定の際に事業主が実施する再就職援助措置の実施に関する公共職業安定所の指導・援助の徹底、再就職援助計画の認定主体と労働移動支援助成金の支給主体の一体化による連携の強化等により、制度の積極的な活用を図る措置が必要である。


3.政策への反映方針

 再就職援助計画の認定の際に、事業主が実施する再就職援助措置の実施に関する公共職業安定所の指導・援助を徹底することとする。
 また、施策手段の適正性の評価欄で述べた、再就職援助計画の認定主体(国)と労働移動支援助成金の支給主体(雇用・能力開発機構)の連携不足を解決するため、労働移動支援助成金の支給業務について、平成14年4月から、国が直接実施することとしたところである。
 さらに、労働移動支援助成金については、雇用保険三事業の更なる見直しの必要性もあること等から、実績評価結果や労働政策審議会職業安定分科会等の意見も踏まえつつ、必要に応じて見直しを検討することとする。
 なお、平成13年度には、既に廃止されているが、本助成金と類似の労働移動に係る助成金について、大規模な不適正支給のあった事案が発覚したところであり、今後はこの事案の反省を踏まえ、助成金制度の適正な運営の確保を図ることとする。


4.特記事項

(1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
 「経済・産業構造の転換の中で、(略)失業を経ることなく労働移動が行われることを通じて、労働市場全体で雇用の安定を図ることが一層重要となる。このため、雇用安定事業の給付金については、(略)良好な雇用機会の創出や失業なき労働移動に対する支援により重点をおいて体系化していくことが必要である」(「中央職業安定審議会専門調査委員雇用安定等事業部会報告書」平成12年9月1日中央職業安定審議会専門調査委員雇用安定等事業部会)。

(2)各種政府決定との関係及び遵守状況
 再就職援助計画の対象者について、「民間の就職支援会社を活用して再就職支援を行う事業主への助成など再就職援助計画制度の一層の活用」を図る(「総合雇用対策」平成13年9月20日産業構造改革・雇用対策本部決定)。
 「新たに民間の就職支援会社(アウトプレースメント会社)を活用して従業員に再就職支援を行う事業主に対して助成を行う」(「改革先行プログラム」平成13年10月26日経済対策閣僚会議決定)。

(3)総務省による行政評価・監視等の状況
なし。

(4)国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
 「経済社会の変化に対応する円滑な再就職を促進するための雇用対策法等の一部を改正する等の法律案に対する附帯決議」において「事業主による再就職の援助を促進するための措置については、安易な解雇を促進することのないよう十分に周知するなど適切な運用が図られるようにすること」とされている(平成13年3月30日衆議院厚生労働委員会、平成13年4月12日参議院厚生労働委員会)。

(5)会計検査院による指摘
なし。


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