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(10−2−II)
実績評価書
平成14年9月

政策体系 番号  
基本目標 10 国際化時代にふさわしい厚生労働行政を推進すること
施策目標 国際協力の促進により国際社会へ貢献すること
II 労使関係、労働分野における人材育成のための技術協力を推進すること
担当部局・課 主管課 大臣官房国際課
関係課 職業能力開発局海外協力課、外国人研修推進室


1.施策目標に関する実績の状況

実績目標1 開発途上国の健全な労使関係の構築に貢献する人材を確保すること
(実績目標を達成するための手段の概要)
(1)開発途上国労働問題労使協力事業
 (財)日本ILO協会を推進母体として、日本国内の労使団体がアジア・太平洋地域開発途上国の労使団体を対象に労働問題に関する過去の経験やノウハウを伝え、当該開発途上国の労働問題解決に役立ててもらうことを目的として、日本国内及び海外においてセミナーを実施する事業に対し、国庫補助を行う。
(評価指標)
セミナー参加者数  (人)
H9 H10 H11 H12 H13
314 264 278 248 335
(評価指標)
研修参加者からの事業評価
 H9 H10 H11 H12 H13
(備考)
 研修参加者からの事業評価は、各セミナー参加者による報告書に基づく定性的な評価である。
(2)開発途上国人事・労務管理者育成事業
 アジア地域及び東欧の開発途上国を対象に人事・労務管理能力の向上を図り、各国の経済発展を推進することを目的として、(財)日経連国際協力センターが、当該諸国の人事・労務管理を担当し、企業等の組織においてリーダーシップを有する中堅幹部を我が国の企業に受入れ、研修を行う事業に対し、国庫補助を行う。
(評価指標)
 研修参加者数  (人)
H9 H10 H11 H12 H13
33 29 26 28 29
(評価指標)
 研修参加者からの事業評価
H9 H10 H11 H12 H13
(備考)
 研修参加者からの事業評価は、研修終了後のアンケート、フォローアップ調査報告書等に基づく定性的な評価である。
実績目標2 開発途上国のIT人材の養成に貢献すること
(実績目標を達成するための手段の概要)
九州・沖縄サミット(平成12年7月開催)において採択された「グローバルな情報社会に関する沖縄憲章」の趣旨に基づき、国際的なデジタル・ディバイド(情報格差)の解消に資するべく、開発途上国のIT人材の養成に貢献するため、我が国ODAの重点地域であるアジア地域のうち、ITの導入が遅れている中国、インドネシア、フィリピン、タイ、ヴィエトナムの5ヶ国より現地企業のITに係る指導者等を招聘し、経営におけるITの活用方法やIT人材育成方法等に関する約1ヶ月間の国内研修を行い、さらに、国内研修修了者の帰国後に同研修修了者による研修成果の普及・伝達等を目的とした研修を、現地企業の指導者等を対象として上記5ヶ国において行う、ITに係る開発途上国を対象とした研修事業を実施。
(評価指標)
 国内研修修了者数  (人)
H9 H10 H11 H12 H13
36
(評価指標)
 現地研修修了者数  (人)
H9 H10 H11 H12 H13
971
(備考)
評価指標は、ITに係る開発途上国を対象とした研修事業実績報告に基づくものである。
本事業は平成13年度の単年度事業である。
実績目標3 開発途上国において職業訓練指導を担う者を養成すること
(実績目標を達成するための手段の概要)
開発途上国における工業化の進展等に伴う技能者不足に対処するため、開発途上国における職業訓練体制の整備充実を目的として、我が国で職業訓練指導員を養成する唯一の専門的施設として設置運営されている職業能力開発総合大学校長期課程(4年間)及び研究課程(2年間)において留学生を受入れ、職業訓練指導員として必要な専門科目、指導技法、訓練開発施設の運営管理ノウハウに至るまで幅広い分野にわたる技術、知識を付与する「外国人留学生受入事業」を実施。
(評価指標)
 外国人留学生受入事業における外国人留学生の受入人数  (人)
H9 H10 H11 H12 H13
10 16 16 18
(備考)
 ・平成13年度より職業能力開発総合大学校研究課程の受入れを開始。(2名)
 ・評価指標は、当該年度に受入れた留学生の数であり、前年度以前の受入れで当該年度に在学中の留学生については含まない。
 ・評価指標は、外国人留学生受入事業実績報告に基づくものである。
(評価指標)
 外国人留学生受入事業における帰国留学生の就職状況
H9 H10 H11 H12 H13
(備考)
 ・評価指標は、定性的な指標である。
実績目標4 開発途上国の労働者等の受入れを通して、開発途上国への技術移転を推進すること
(実績目標を達成するための手段の概要)
(1)開発途上国から民間企業の在職労働者を研修生として受入れ、将来これら諸国の民間企業において指導的立場に立つ者を養成する「国際技能開発計画」、(2)開発途上国で将来熟練労働者となる青年を我が国へ受入れ、高度な産業技術に係る職種を中心として技能を修得する「外国人基礎技能研修生受入事業」、(3)外国人研修生受入れ企業等に対する各種の指導、援助を行う「外国人研修指導、援助事業」、(4)技能実習制度の適正かつ円滑な推進を図るための「技能実習制度推進事業」を実施。
(評価指標)
 国際技能開発計画における外国人研修生受入人数  (人)
H9 H10 H11 H12 H13
202 197 162 158 141
(備考)
 ・評価指標は、当該年度に受入れた研修生の数であり、前年度以前の受入れで当該年度に在留している研修生については含まない。
 ・評価指標は、政府開発援助アジア労働技術協力費等補助金実績報告に基づくものである。
(評価指標)
 国際技能開発計画における帰国研修生の復職、就職、待遇、昇進状況
H9 H10 H11 H12 H13
(備考)
 ・評価指標は、定性的な指標である。
(評価指標)
 外国人基礎技能研修生受入事業における外国人研修生受入人数  (人)
H9 H10 H11 H12 H13
549 526 519 534 450
(備考)
 ・評価指標は、当該年度に受入れた研修生の数であり、前年度以前の受入れで当該年度に在留している研修生については含まない。
 ・評価指標は、外国人基礎技能研修生受入事業の委託業務実施結果報告に基づくものである。
(評価指標)
 外国人基礎技能研修生受入事業における帰国研修生の復職、就職、待遇、昇進状況
H9 H10 H11 H12 H13
(備考)
 ・評価指標は、定性的な指標である。
(評価指標)
 外国人研修指導、援助事業における、集合座学研修を効果的に実施するための公共職業能力開発施設での集合研修実施支援人数  (人)
H9 H10 H11 H12 H13
2,107 511 614 1,081 533
(備考)
 ・評価指標は、JITCO業務統計速報(2002年5月)に基づくものである。
(評価指標)
 外国人研修指導、援助事業における、中小企業に対する日本語教育における支援研修生人数  (人)
H9 H10 H11 H12 H13
153 1,098 1,475 1,871 2,288
(備考)
 ・評価指標の日本語教育支援事業は平成9年7月より実施。
 ・評価指標は、JITCO業務統計速報(2002年5月)に基づくものである。
(評価指標)
 技能実習制度推進事業における、セミナー参加者数  (人)
H9 H10 H11 H12 H13
264 324 342 251 350
(備考)
 ・評価指標におけるセミナーは、研修指導員セミナー及び日本語研修指導員セミナーである。
 ・評価指標は、JITCO業務統計速報(2002年5月)に基づくものである。
(評価指標)
 技能実習制度推進事業における、指導書等の作成数  (部)
H9 H10 H11 H12 H13
6,500 9,000 15,300 8,000 9,000
(備考)
 ・評価指標における指導書等は、技能実習ガイドライン、モデル技能実習契約、技能実習生の雇用管理ガイドブックである。
 ・評価指標は、2001年度JITCO事業報告に基づくものである。


2.評価

(1) 実績目標の達成状況の評価
実績目標1 開発途上国の健全な労使関係の構築に貢献する人材を確保すること
有効性  (1)については、我が国の労使団体の協力を得て(財)日本ILO協会が各開発途上国労使団体を対象に実施するセミナーであり、各途上国労働者団体は我が国の連合及び各産業別組合から、使用者団体は日経連(現日本経団連)等経営者団体から、それぞれ民間団体の特質等を踏まえたより詳細で具体的な労働問題解決のノウハウ等を学ぶことができるので、有効である。また、研修参加者からも、各テーマについて相互理解が深まり、当セミナーにおいて得られた経験を自国の状況に合わせて積極的に活用していきたい等の高い評価が得られた。
 (2)については、1988年に開催された国際経営者団体サミットにおいて、東アジアをはじめとする開発途上国経営者団体から出された日経連に対する人事労務に関する人材育成支援への強い要望を受けて開始されたものである。相手国経営者団体を通じて適正な研修対象者の選定に始まり、日本語を使用して行われる企業内実地研修に備えた日本語研修、日本の人事労務管理の基礎研修、企業内実地研修等日本の人事労務管理システムを学べるだけでなく、システムの背景にある日本文化や歴史等も無理なく学べるプログラムが組まれており、開発途上国から極めて高い評価を得ている。更に当該研修に参加した者は、研修終了後アンケートやフォローアップ調査報告書でも示されているように、研修で取得・経験した技術を実際の人事・労務管理に適用して実践し、各国の企業リーダーとして活躍するのみならず、研修中に培われた連帯感により継続した人的ネットワークを構築し、日本及び各途上国間の友好的で安定的な協力関係を持続させる効果も認められている。
効率性   (1)については、毎年事業内容の見直しや円滑な推進を行うため、推進母体である(財)日本ILO協会において、公益・労働者・使用者の三者代表で「開発途上国労使問題労使協力事業 労使国際協力推進委員会」を設置し、事業推進について検討を行い、事業をより効率的に実施するよう努めている。また、事業の実施においても、労働者団体としては日本の連合及び産業別労働組合に、使用者団体としては日経連にそれぞれ協力を求めることで、開発途上国労使団体のニーズに細かく対応できるように図られている。
 (2)については、対象国のニーズ・研修実施の必要性を考察するため、実地研修受入れ企業の担当者も交えて研修のフォローアップを行っており、研修員の帰国後の動向把握、研修員との会合、対象国における評価調査等を行い、事業をより効率的に実施するよう努めている。また、受入れ企業の担当者も交えてフォローアップを実施することは、受入れ協力への理解を深めることに寄与し、その結果、研修員が希望する業種における企業実習を受けることが可能となっている。
実績目標2 開発途上国のIT人材の養成に貢献すること
有効性  本事業は、国際的なデジタル・ディバイドの解消が求められる中、我が国の経験・知識・技術を活用し、開発途上国の民間企業のIT導入に伴い必要となる企業内での人材育成の手法等について研修を行い、さらにその内容が開発途上国の民間企業に広く伝達され、企業内でのITに関する職業訓練の必要性が理解されるよう実施した。国内研修については、5ヶ国から計36名が修了しており、内容についても非常に有意義であったとの評価を得た。現地研修については5ヶ国において計971名が参加し、国内研修修了者が中心となって日本での研修を伝達すべく企画・講義を行ったことから、参加者にとって説得力のある研修となった。IT導入の核となる人材の養成を段階的に実施した本事業は、両研修の参加者からの評価が共に高いことから、有効に活用されたと言える。
効率性  本事業は、国内研修と現地経営者団体及び国内研修修了者が中心となって企画する現地研修との2つの手段により実施した。国内研修参加者に対し、国内研修修了後に現地研修を企画・実施するという役割を予め設定することにより、国内研修に対する学習意識の向上、動機付けが図られたと言える。また、現地研修については、研修カリキュラムの作成や参加者の募集について現地経営者団体の協力を得て実施したことから、現地のニーズに合致した研修が実施された。以上より、本事業は、実施手段及び実施機関の的確な選定により広範な波及効果が得られ、効率的な実施が図られたと言える。
実績目標3 開発途上国において職業訓練指導を担う者を養成すること
有効性  外国人留学生受入事業における平成13年度の外国人留学生の受入れ状況は、長期課程16人、研究課程2人、合計18人となっており、職業訓練指導員として必要な専門科目、指導技法、訓練開発施設の運営管理ノウハウに至るまで幅広い分野にわたる技術、知識について、新たに18人を対象に付与していることから、開発途上国の職業訓練指導員の養成に有効であったと認められる。
 また、当該事業における帰国留学生の就職状況についてみれば、長期課程受入れ留学生の第6期生までの58名が卒業し、その多くが母国において公共職業訓練施設の職業訓練指導員又は職業能力開発行政に従事しており、母国の職業訓練体制の整備に大きな役割を果たしていることから、開発途上国における職業訓練指導を担う者を養成する効果が高く、有効性は高いものと認められる。
効率性  外国人留学生受入事業は、職業訓練指導員養成施設が整備されていない国を対象としていること、また、留学生の受入れを行う職業能力開発総合大学校は我が国唯一の職業訓練指導員養成の専門的施設であることから、職業能力開発総合大学校の有する貴重な資源やノウハウを開発途上国の職業訓練指導員の養成確保への協力に積極的に活用していくことが最も効率的であると認められる。
(参考)
 平成13年度外国人留学生受入人数 18人(延べ68人)
 平成13年度予算額 143,832千円
実績目標4 開発途上国の労働者等の受入れを通して、開発途上国への技術移転を推進すること
有効性  国際技能開発計画における平成13年度の外国人研修生の受入れは141人、外国人基礎技能研修生受入事業における平成13年度の外国人研修生の受入れは450人となっており、開発途上国の民間企業において指導的立場に立つ者や熟練労働者となる者への技術・技能の修得が、新たに591人に対して図られていることから、開発途上国への技術移転に有効であったと認められる。
 また、これら事業における、帰国研修生の復職、就職、待遇、昇進状況についてみれば、これまでに受入れた多くの開発途上国の研修生が、母国において管理職や熟練技能労働者として従事し、ILO等の国際機関のみならずアジア等世界各国における関係各界からも高い評価を得ているものであることから、開発途上国への技術移転を推進する効果が高く、有効性は高いものと認められる。
 さらに、平成13年度の外国人研修指導、援助事業における公共職業能力開発施設での集合研修実施支援人数は533人、中小企業に対する日本語教育における支援研修生人数は2,288人となっており、また、技能実習制度推進事業におけるセミナー参加者数は350人、指導書等の作成数は9,000部となっており、これらの事業により、我が国の有する技術・技能の開発途上国への移転を図ることを目的とする外国人研修・技能実習制度の適正かつ円滑な推進が図られているものであり、開発途上国への技術移転を推進する効果が高く、有効性は高いものと認められる。
(参考)
 「研修」を目的とした新規入国者数(法務省統計)
 ・平成12年 54,049人
 ・平成13年 59,064人
 「技能実習」への移行申請者数(JITCO統計)
 ・平成12年度 16,107人
 ・平成13年度 22,268人
効率性  国際技能開発計画は、(財)日本ILO協会への補助事業として実施しているものであるが、指導者養成のためには、我が国企業の既存の企業内訓練システムの活用、すなわち、民間企業の生産現場を活用しながら技能のみならず品質管理、生産・工程管理等の能力を付与する研修が最も効率的であり、また、労使の理解を得るためにも、公労使三者の協力の下設立された(財)日本ILO協会の補助事業とすることが最も適切かつ効率的であると認められる。
 また、外国人基礎技能研修生受入事業は、中央職業能力開発協会への委託事業として実施しているものであるが、熟練技能者の養成には、我が国企業の既存の企業内訓練システムを活用して技能を修得させることが最も効率的であり、また、当該研修の管理・指導を適切に行うという観点から、技能開発・向上のノウハウを有する能力開発の専門機関である中央職業能力開発協会及び地方職業能力開発協会において実施し、その蓄積された研修ノウハウを活用することが最も効果的かつ効率的であると認められる。
 さらに、外国人研修指導、援助事業及び技能実習制度推進事業は、(財)国際研修協力機構(JITCO)への補助及び委託事業として実施しているものであるが、これら事業については、外国人研修・技能実習制度の適正かつ円滑な推進を図るために実施しているものであることから、外国人研修生の受入れの拡大と開発途上国への技術、技能等の円滑な移転を支援することを目的として設立され、外国人研修・技能実習制度についてノウハウを有する(財)国際研修協力機構が一元的に実施することが、最も効果的かつ効率的であると認められる。
(参考)
 国際技能開発計画
 ・平成13年度研修生受入人数 141人
 ・平成13年度予算額 298,610千円
 外国人基礎技能研修生受入事業
 ・平成13年度研修生受入人数 450人
 ・平成13年度予算額 770,349千円
 外国人研修指導、援助事業
 ・平成13年新規入国研修生数 59,064人
 ・平成13年度予算額  80,590千円
 技能実習制度推進事業
 ・平成13年度技能実習移行申請者数 22,268人
 ・平成13年度予算額 560,202千円

(2) 施策目標の達成状況と総合的な評価
現状分析  開発途上国にとって、国造りの担い手となる優れた人材を育成・確保することは、持続可能な社会経済の開発を推進するための重要な基盤である。しかしながら、開発途上国においては、経済・産業発展のために必要とされる技術者及び技能労働者の人材不足はもとより、これら人材を指導する管理・監督者、職業訓練を行う指導員及び労使関係安定のための取組みを行う人材も非常に不足している現状にある。加えて、開発途上国からも、我が国に対し各種分野の技術、技能移転を通じた人材養成に係る国際協力の要請が強く、こうした人材の育成に対する支援を積極的かつ効果的に行うことが必要となっている。また、近年の情報技術(IT)の進展に伴い情報へのアクセス、情報の活用といった面で国際的な格差(情報格差)が発生している。この解消を図ることが国際社会全体の新たな課題となっており、その解決手段のひとつとしてITに係る人材育成の重要性も増しているところである。なお、東欧の対象国においては、市場経済移行国中心で比較的進んだ状況にあり、ある程度自力で人材育成事業を行えるようになってきている。
施策手段の適正性の評価  開発途上国労働問題労使協力事業については、日本の過去の経験から明らかなように、労使間問題の解決は、政府が直接介入するより当事者同士で解決を目指すことが有効である。各開発途上国において、労使団体が実践的に労使関係安定に資するための人材開発・育成等を行おうとしている現状において、我が国の労使団体の協力を得られ易い公益法人を推進母体として事業を行うことで、個別問題処理の好事例情報及び経験の共有等実践的なレベルの協力が行える。
 開発途上国人事・労務管理者育成事業については、開発途上国の人事・労務管理能力の向上を図るために、専門知識を有する人材の質的量的充実が不可欠であるが、限られた経費の中で多数の開発途上国の人材育成を支援する必要がある。そのため、日本における人事労務管理手法を伝授するための研修を行うことが最も効果的な手段である。
 ITに係る開発途上国を対象とした研修事業は、日本国内に招聘して行う国内研修と、開発途上国で行う現地研修を組み合わせ、36名の国内研修修了者数に対し、現地研修についてはその27倍に相当する971名が参加したことから、波及効果は十分に認められ、効率的・効果的な実施が図られており、施策手段は適正であったと言える。また、国内研修参加者の推薦や現地研修において、現地経営者団体の協力を得て実施したことにより効率的かつ現地のニーズに合致した研修の実施につながったと言える。
 外国人留学生受入事業、国際技能開発計画及び外国人基礎技能研修生受入事業については、我が国に外国人留学生・研修生を国費により受入れ、高度な技術・技能を付与するものであり、開発途上国の人材育成のための技術協力を推進するという点から一定の効果が期待できる。
 また、外国人研修指導、援助事業及び技能実習制度推進事業は、民間ベースの外国人研修・技能実習制度の適正かつ円滑な推進を図ることにより、民間企業が行う研修生・実習生に対する技術・技能の付与が適正に行われるよう各種の指導、援助を行うものであり、開発途上国の人材育成のための技術協力を推進するという点から一定の効果が期待できる。
 これらの事業は、我が国に受け入れた研修員の能力向上のみならず、研修員が我が国において習得した技術・技能をもって自国で活躍することによる技術移転の効果が期待できる効率的な手段であり、研修員受入れに関わる制度の推進事業とあいまって、事業全体の適正かつ円滑な推進を実現する効果的手段といえる。
総合的な評価  アジア・太平洋地域開発途上国における労使関係安定に資するための人材開発・育成に対し、我が国の労使団体の自主的な協力を得て支援を行うことは、各対象国に対し、より実践的で細かいニーズに沿った事業が行えるものであり、各国からの高い評価を得ているところである。また、継続的な支援により、日本企業の海外進出等に不可欠な人的ネットワークの構築及び最新情報の取得等のメリットもある。
 ITに係る開発途上国を対象とした研修事業は、開発途上国の民間企業におけるIT導入の際に必要な人材育成に焦点を当て、企業内の指導者層に対象を絞って実施したことや現地経営者団体の協力を得たことにより、波及効果が十分に得られ、効果的・効率的な実施が図られた。一般の労働者に対するITに関する基礎的な職業訓練と同様に必要となっているIT導入に伴う人材育成のノウハウを提供したことにより、開発途上国の企業内においてその必要性・重要度が認識されたと考えられ、人材の育成というソフト面から国際的なデジタル・ディバイドの解消に貢献できたと言える。
 外国人留学生受入事業、国際技能開発計画及び外国人基礎技能研修生受入事業については、我が国における技術・技能の開発途上国への移転を図ることを目的として実施しており、上記2.(1)のとおりの技術移転の効果が認められるとともに関係各国等から高い評価を受けている。しかし、より一層の効果的かつ効率的な技術・技能の移転を図る観点から、必要に応じ所要の見直しを行うこととする。
 また、外国人研修指導、援助事業及び技能実習制度推進事業は、我が国における技術・技能の開発途上国への移転を図ることを目的とする外国人研修・技能実習制度の適正かつ円滑な推進を図るために実施しており、上記2.(1)のとおりの技術移転の効果が認められる。なお、今後においても、より一層適正かつ円滑な制度の運営が図られるよう、また、効率的かつ効果的な指導、援助が行われるよう、必要に応じ所要の見直しを図ることとする。


3.政策への反映方針

 開発途上国労働問題労使協力事業及び開発途上国人事労務管理育成事業については、既にある程度自力での人材育成等事業が可能となってきている東欧諸国がある一方で、未だ脆弱な社会基盤しか持たない開発途上国も数多く存在し、これら諸国に対する支援の継続が必要となっていることから、今後は、日本企業が多く進出し、日本の労使団体への関係が深いアジア地域への支援を重視し、より支援のメリットを受けられる観点から事業の絞り込み等を行いつつ、引き続き推進していくこととしている。
 ITに係る開発途上国を対象とした研修事業は、平成13年度の単年度事業として実施されたものであり、上記の通り有効に活用され、成功裡に終了した。今後は、本事業で得られた成果を基に、関係機関との協力関係の強化を図りつつ、新規施策の検討を行い、IT人材の養成を含めた開発途上国の人材養成のための技術協力を推進していくこととしている。
 外国人留学生受入事業、国際技能開発計画及び外国人基礎技能研修生受入事業、さらに、これら研修生受入を含む外国人研修・技能実習制度の適正かつ円滑な推進を図る外国人研修指導、援助事業及び技能実習制度推進事業については、施策目標が達成されているものと認められることから、基本的には現状維持としつつ、外国人研修・技能実習制度の活用状況を見極めた上で、より一層効率的かつ効果的な事業の実施について、必要に応じ所要の見直しを図ることとする。


4.特記事項

(1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
特になし

(2)各種政府決定との関係及び遵守状況
特になし

(3)総務省による行政評価・監視等の状況
特になし

(4)国会による決議等の状況(警告決議、附帯決議等)
特になし

(5)会計検査院による指摘
特になし


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