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(1−9−I)
実績評価書
平成14年9月

政策体系 番号  
基本目標 安心・信頼してかかれる医療の確保と国民の健康づくりを推進すること
施策目標 新医薬品・医療用具の開発を促進するとともに、医薬品産業等の振興を図ること。
I 医薬品・医療用具の製造業や販売業等の振興を図ること
担当部局・課 主管課 医政局経済課
関係課 大臣官房厚生科学課、医政局研究開発振興課等


1.施策目標に関する実績の状況

実績目標1 質の高い医薬品・医療用具等の安定供給等を確保する観点から、医薬品・医療用具に関する事業者の振興を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
これまで下記の施策を実施。
(1)研究開発に対する支援
 医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構の基礎研究推進事業や出融資事業、産学官連携の創薬等ヒューマンサイエンス総合研究事業、増加試験研究税制等
(2)治験の推進
 治験施設整備補助、治験推進ネットワークモデル事業等
(評価指標) H9 H10 H11 H12 H13
  (医薬品) 66,568
64,349
69,061
66,850
市場規模(単位:億円) (医療機器) 15,140 15,074 14,879 14,867
(備考)
薬事工業生産動態統計(厚生労働省医政局経済課)(平成13年分は集計中)
(評価指標) H9 H10 H11 H12 H13
  (医薬品) 1,562 1,627 1,427 1,396
製造業者数 (単位:社) (医療機器) 1,555 1,647 1,589 1,580
(備考)
医薬品・医療用具産業実態調査(厚生労働省医政局経済課)(平成13年度分は集計中)
(評価指標) H9 H10 H11 H12 H13
(単位:社) (医薬品) 405 372 336 309 278
販売業者数(卸売業者) (医療機器) 1,664 1,664 1,595 1,385
(備考)
医薬品については、(社)日本医薬品卸業連合会・日本医薬品販社協会加盟事業者数
医療機器については、日本医療機器販売業協会(平成10年設立)加盟事業者数
(評価指標)
   (上段:医薬品、下段:医療用具)
新医薬品・新医療用具の承認取得件数
H9 H10 H11 H12 H13
15 21 39 39 23
67 33 33 13 6
(備考)
 厚生労働省医薬局審査管理課調べ(医薬品については、医療用医薬品における新成分による承認取得数を記載)


2.評価

(1) 実績目標の達成状況の評価
実績目標1 質の高い医薬品・医療用具等の安定供給等を確保する観点から、医薬品・医療用具に関する事業者の振興を図ること
有効性  産業発展は各企業が市場原理に基づき自由に競争を行っていく中で進むことが基本であるが、国の役割として、
 (1) 国の制度の改善に関すること及び市場競争原理が有効に機能することを阻害している条件や要因を排除すること
 (2) 民間企業では採算上なかなか手を出せない分野における研究開発を進めること
 (3) 国が国家戦略上重点的に支援すること
が考えられる。
 また、医薬品・医療機器産業は、他の産業と比べて、
 (1) 医薬品の研究開発には多大な時間と費用を要し、成功確率は低く、ハイリスクであるにもかかわらず模倣が簡単である。また、他の製品は一つの製品に数百から数千の特許が絡みクロスライセンスが進みやすいが、医薬品は基本特許が原則として一つであることから、特許取得が製品生命に与える影響が非常に大きい、
 (2) 医薬品・医療機器は上市する前に治験が必要であり、医療機関及びその医療関係者の協力が不可欠である、
 (3) 医薬品・医療機器は、国民の生命・健康に重大な影響を与えるため、その品質、有効性及び安全性の確保を目的として薬事制度等によって規制されているほか、安定供給の確保や情報提供が不可欠である、
 (4) 医療保険で適用する医療用医薬品・医療材料の価格は公定されており、企業が自由に設定できない、
 (5) 最近の科学技術の進歩により、ヒト組織・細胞を用いた研究開発が進展し、提供者の意思確認(インフォームド・コンセント)や倫理的側面からの配慮が一層必要となってきている、
といった、国民の保健衛生の向上に貢献し信頼を獲得するために不可欠なハードルがある。施策目標を実現するためには、国と産業界が一体となって、このようなハードルを越える努力を行っていくことが重要である。
 このような状況の中で、今まで行ってきた、診療所での治験を推進するためのネットワークモデル事業、治験管理室・専門外来の設置促進、全国約550医療機関の長からなる治験推進協議会の開催等による治験の推進、増加試験研究税制をはじめとする税制措置、医薬品副作用被害救済・研究振興調査の基礎研究への出資金、厚生科学研究費補助金等の融資による研究開発の支援、産業活力再生特別措置法による企業組織再編の支援といった施策は、医薬品・医療機器産業において各企業が市場原理に基づき、自由に競争を行うための環境整備に資すると考えられるため、概ね有効であると考える。

(2) 施策目標の達成状況と総合的な評価
現状分析
(1)医薬品
 我が国の医薬品産業は21世紀におけるリーディング産業として期待されている。しかし、産業を取り巻く環境は、「ゲノム創薬」を巡る国際的な新薬開発競争の激化による研究開発費の急増、治験等の創薬環境の不十分さ、医療保険財政の悪化など非常に厳しい状況にあるため、このままでは産業の国際競争力は弱体化してしまうおそれがある。
(2)医療機器
 我が国の医療機器市場は、近年輸入が増加し、平成3年に輸出と同程度であった額は、平成12年には倍以上になった。このため、約2兆円の医療機器市場において、国内企業の生産額の占める比率は8割を切るまでに低下している。分野別では、生体機能補助・代行機器(ペースメーカ等)や処置用機器(チューブおよびカテーテル等)など、いわゆる医療材料の輸入依存度が高い一方、「既に市場が顕在化している」「患者の身体に直接与える影響が少ない」といった相対的にリスクの小さい分野で産業競争力を有する特徴がある。
施策手段の適正性の評価  産業発展は各企業が市場原理に基づき自由に競争を行っていく中で進むことが基本であるが、国の役割として、
 (1) 国の制度の改善に関すること及び市場競争原理が有効に機能することを阻害している条件や要因を排除すること
 (2) 民間企業では採算上なかなか手を出せない分野における研究開発を進めること
 (3) 国が国家戦略上重点的に支援すること
が考えられる。
 具体的には、医薬品・医療機器産業に関するビジョンの策定、治験の迅速化と質の向上をもたらす国際競争力のある治験環境の実現、増加試験研究税制をはじめとする税制措置、医薬品副作用被害救済・研究振興調査の基礎研究への出資金、厚生科学研究費補助金等の融資による研究開発の支援、産業活力再生特別措置法による企業組織再編の支援などの施策が挙げられる。これらの施策を実施することにより、医薬品・医療機器産業の振興が図られると考えられることから、概ね適正であると考えている。
 また、医薬品・医療機器産業は、他の産業と比べて、
 (1) 医薬品の研究開発には多大な時間と費用を要し、成功確率は低く、ハイリスクであるにもかかわらず模倣が簡単である。また、他の製品は一つの製品に数百から数千の特許が絡みクロスライセンスが進みやすいが、医薬品は基本特許が原則として一つであることから、特許取得が製品生命に与える影響が非常に大きい、
 (2) 医薬品・医療機器は上市する前に治験が必要であり、医療機関及びその医療関係者の協力が不可欠である、
 (3) 医薬品・医療機器は、国民の生命・健康に重大な影響を与えるため、その品質、有効性及び安全性の確保を目的として薬事制度等によって規制されているほか、安定供給の確保や情報提供が不可欠である、
 (4) 医療保険で適用する医療用医薬品・医療材料の価格は公定されており、企業が自由に設定できない、
 (5) 最近の科学技術の進歩により、ヒト組織・細胞を用いた研究開発が進展し、提供者の意思確認(インフォームド・コンセント)や倫理的側面からの配慮が一層必要となってきている、
といった、国民の保健衛生の向上に貢献し信頼を獲得するために不可欠なハードルがある。施策目標を実現するためには、国と産業界が一体となって、このようなハードルを越える努力を行っていくことが重要である。
総合的な評価
 (1) 医薬品産業政策については、これまで基礎研究の推進、薬事承認の迅速化等を図り一定の成果を挙げてきているが、技術移転等の産学官連携、実用化の促進等の面で課題がある。
 (2) 医療機器産業政策については、医薬品産業政策と比べ遅れている面があったが、今回の薬事法改正等により承認の迅速化や治験の推進が図られるものと考えている。
 このような状況において、我が国の医薬品産業・医療機器産業の国際競争力を強化していくためには、国と製薬企業・医療機器メーカーが現状や課題、将来像等において認識を共有し、各企業が戦略的な経営を行うとともに、国は国家戦略として必要な施策を総合的に行っていく必要がある。このため、厚生労働省としては、ビジョンを策定し、ビジョンに盛り込まれる具体的施策(アクション・プラン)の着実な実施を図る。


3.政策への反映方針

 上記評価を踏まえ、厚生労働省が本年8月30日に公表した医薬品産業ビジョンに掲げる具体策(アクション・プラン)で主なものは下記のとおりである。
 ・疾患関連タンパク質解析プロジェクト
 ・厚生労働省所管の国立試験研究機関等の研究成果の技術移転、産学官連携プロジェクトのリエゾン(仲介・連絡)を行う体制・機能を備えた組織の設置(TLO)
 ・独立行政法人医薬品医療機器総合機構(仮称)による実用化研究の促進
 ・「大規模治験ネットワーク」の構築等を盛り込んだ「全国治験活性化3カ年計画」の策定
 ・医薬品の製造全面委託を可能とする制度の導入
 ・中長期的な観点から、急速な高齢化の進行や技術革新の進展等による医療ニーズの増大に対応しつつ、医薬品産業の国際競争力の強化にもつながるような薬価制度・薬剤給付のあり方について検討


4.特記事項

(1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
 本年4月に「医薬品産業ビジョン案」を公表し、本年5月から6月にかけて3回にわたり「医薬品産業ビジョンに関する懇談会」を開催し、関係団体や学識経験者等からの意見を聴取した。

(2)各種政府決定との関係及び遵守状況
 (「地方分権推進計画」「国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本計画」「第10次定員削減計画」「行政改革大綱」等)
なし

(3)総務省による行政評価・監視等の状況
なし

(4)国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
なし

(5)会計検査院による指摘
なし


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