戻る  次ページ

第I部 平成14年労働経済の推移と特徴

第1章 雇用・失業の動向

 2002年の労働市場を総括すると、一部に改善への動きがみられるものの、完全失業率が引き続き高水準となるなど依然として厳しい状況となった。
(1)  有効求人倍率は2002年初めから緩やかに上昇した。
(2)  雇用者数は男性の雇用者数が減少傾向で推移する一方で、女性の雇用者数が増加傾向で推移する動きが続き、男女計では3年ぶりの減少となった。
(3)  完全失業率は高水準で推移し、2002年平均では5.4%となった。
(4)  長期失業者や世帯主失業者も引き続き増加した。

(求人・求職の動向)
 新規求人は2002年初めから増加基調で推移している。産業別にみると、2002年に入ってサービス業が前年比で増加する中で、製造業においても前年比の減少幅が縮小し、2002年半ばより増加に転ずるなど回復がみられたが、建設業では前年比減少が続いている(第1図)。また、パートの求人が全体の求人を下支えしている。
 新規求職は2002年以降も高水準で推移しており、特に離職以外の求職者の寄与が拡大している。

(求人倍率の動向)
 有効求人倍率は2002年初より緩やかな上昇傾向にあるものの、2002年平均では0.54倍と前年(0.59倍)を0.05ポイント下回った。新規求人倍率も2002年初より緩やかな上昇傾向にあるものの、2002年平均では0.93倍と前年(1.01倍)を0.08ポイント下回った(第2図)。雇用形態別に有効求人倍率(2002年平均)をみると、一般は0.41倍、パートは1.32倍となった。

(学卒労働市場の動向)
 2003年3月の新規学卒者の就職率は依然として低水準となっている(第3表)。また、学卒労働市場の厳しさを反映して若年層で無業者等が増加している。

(就業者・雇用者の動向)
 2002年平均の就業者数は6,330万人(前年差82万人減)と5年連続の減少となった。雇用者数は2002年平均で5,331万人(前年差38万人減)と3年ぶりの減少となった。
 2002年の雇用者数の動向をまとめると、
(1)  臨時・日雇は持ち直しているものの、常雇の減少が依然として大きい(第4図)。
(2)  男性に比べて女性の方が良い動きとなっている。
(3)  サービス業は依然として前年比で増加しているのに対し、建設業、製造業、運輸・通信業、卸売・小売業,飲食店は前年比で減少している。
といった特徴がみられる。
 また、自営業主・家族従業者は依然として減少している。

(完全失業者の動向)
 2002年平均(原数値)の完全失業者数は359万人(前年差19万人増)となり、過去最高を更新した。求職理由別にみると、景気の悪化に伴う勤め先や事業の都合等による非自発的理由による離職者が増加している(第5図)。
 長期失業者も増加しており、2003年1〜3月期において失業期間1年以上の者は112万人(完全失業者の30.9%)を占めており、長期失業率(長期失業者の労働力人口に占める比率)も1.7%となっている。
 世帯主失業者も高水準となっており、2002年平均で99万人となっている。
 2002年平均(原数値)の完全失業率は男女計で5.4%、男性で5.5%、女性で5.1%と過去最高を更新した(第6図)。

(労働力人口及び非労働力人口の動向)
 労働力率は低下傾向となっているが、この背景には労働力人口から非労働力人口への流出の動きが強まっていることがある。非労働力人口のうち「適当な仕事がありそうにない」ことを理由に求職活動を行っていない者(求職意欲喪失者)は2003年1〜3月期で207万人となっている。

(失業頻度、失業継続期間の推移)
 男女とも長期的に失業率は上昇しているが、景気循環による変動を伴いつつも1990年頃より失業頻度は上昇傾向、失業継続期間は長期化傾向にある。

(残業の増加と雇用)
 近年では景気が回復し所定外労働時間が増加しても常用雇用がなかなか改善しない傾向があるが、この背景として、1990年代に総じて低い成長が続き、企業の期待成長率が低下する中で雇用過剰感が高く、雇用面での調整に時間を要し、しかも、景気の回復力が弱く、こうした調整が十分に終了しないうちに景気が反転するという状況がある。


トップへ
戻る  次ページ