I アメリカ

1 社会保障年金改革

2005年2月、ブッシュ大統領は、一般教書演説(State of the Union Address)において、個人勘定の創設などの、公的年金制度改革の実施について提案した。

大統領は、現行の公的年金制度は放置すれば崩壊することを訴え、高齢者の年金をまかなう現役世代の社会保障税の一部を、新たに設ける個人勘定に移すことを提案した。

この制度改革は、現役世代が退職者の年金を負担する現行の年金形態を、自己責任型に変換していこうとするものであると考えられており、2006年の一般教書演説でも提案されたが、立法化には至っていない。

2 メディケア改革

2003年12月に成立したメディケア制度改革法(Medicare Prescription Drug Improvement and Modernization Act of 2003)によって新設されたメディケア・処方せん薬プラン(Medicare Prescription Drug Plans)が2006年1月にスタートした。

これまで保険の適用外だった外来患者に係る処方せん薬代を適用対象に加えることを主内容とするもので、この改正は1965年のメディケア制度発足以来初めての大きな改正となった。

処方せん薬プランは任意加入であり、補助を受けた民間保険会社がプランを提供するものである。

II イギリス

イギリスにおける目下の大きな課題と認識されているのは、医療と年金の改革である。

医療については、2005年度には、約512億ポンドのNHSの財政赤字の発生が明らかとなった。このため、年度末には、予算抑制のための受診抑制、病棟閉鎖、手術延期等が行われたほか、約15,000人に上る医療関係スタッフの削減が行われているとの指摘もあり、この問題をいかに克服していくかが2006年度の大きな課題となっている。

また、PFIによる病院建設やIT技術を活用したネットワークの構築などについては、膨大な費用と政策効果との関係について、当初の意図のとおりに機能しているとは言いがたく、また実施スケジュールも遅れ気味ということもあり、批判の対象となっている。

年金については、前述した年金改革のホワイトペーパーが5月に公表され、この内容のうち個人勘定制度の創設を除くほぼ全ての内容を盛り込んだ法案は2006年11月、国会に提出された。また、個人勘定制度に関する詳細な政府案が12月に公表された。

III ドイツ

2005年11月に発足した新連立政権は、今後4年間の政策指針となる連立協約を発表した。その中で、2012年から2035年にかけて段階的に年金支給開始年齢を現行の65歳から67歳へ引き上げる(その後、2006年2月に移行期間の終期を2029年に前倒しにすることに連立政権は合意)。ただし、45年間勤労し、保険料を納めた者については、従来どおり65歳から満額の年金支給を受給できるとしている。なお、年金保険料は、現行の19.5%から19.9%へ2007年に引き上げられた。

また、育児のために労働時間を短縮して週30時間未満とする親及び休業する(従前より就労していない者を含む)親は、現在、子供が2歳に達するまでの間、育児手当(Erziehungsgeld)を受給できるが、2007年1月1日以降生まれた子供については、育児手当に換えて、新制度である両親手当が支給されることとなった。両親手当は、育児休業を取得する親の場合、従前の手取り賃金(社会保険控除後の賃金)の67%が12か月支給(母親だけでなく父親も同様に最低2か月にわたって就業を制限して育児に従事する場合は14か月)支給される。

IV フランス

2003年7月、(1)公務員の満額年金受給資格取得のための保険料拠出期間を37.5年から2008年までに40年に延長する、(2)14〜16歳から就労を開始した者は、満期加入であれば60歳前の年金の繰上げ受給を認める、(3)満期加入者が60歳以降に年金受給開始を繰下げる場合に年金額を1年につき3%増額する等を内容とする年金改革法が成立した。2007年1月からは(3)の増額率が就業継続2年目以降さらに引き上げられた(1年につき4%)ほか、在職老齢年金の要件が一部緩和される等、就業継続へのインセンティブの導入が図られている。

医療部門においては、2004年の疾病保険改革法の実施により歳出削減の効果が現れ始めており、同部門の赤字額は2005年から2007年にかけても減少が見込まれている。同法では、(1)医療情報の個人ファイル化の徹底、(2)主治医指定制度の導入と主治医以外の診察の自己負担額の引上げ、(3)職域別疾病保険を統括する全国疾病保険連合の創設及び医療の質向上を図る保健高等委員会の創設、(4)年金生活者等の一般社会拠出金(CSG)の負担率引上げ、(4)診察ごとの自己負担(1ユーロ)導入等が行われている。 高齢者保健福祉部門における最近の動きとしては、2007年から家族介護休暇制度が導入されている。これにより、労働者は高齢家族の介護のために最長1年の介護休暇を取得することが可能となった。

V 韓国

2005年の韓国の合計出産率が1.08人を記録し(過去最低)たことに伴い、2005年 9月に「低出産・高齢社会基本法」が制定され、大統領直属の 「低出産・高齢社会委 員会」が設置され、2005年10月には保健福祉部内に低出産・高齢社会対策本部が設 置された。

2006年7月には5か年計画の「低出産・高齢社会基本計画」が発表された。子女養育負担の軽減、育児インフラの量・質の拡充、仕事と家庭の両立支援、等のために計32兆ウォンを投入する計画である。


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