I アメリカ

1 経済情勢

アメリカ経済は2001年3月から景気後退期に入ったが、2001年第4四半期に景気が反転して以降、19四半期連続でプラス成長となっており、2006年においても引き続き景気は拡大基調にある。

2 雇用・失業情勢

失業率は、2003年には6.0%まで上がったが、その後低下傾向であり、2005年は5.1%となった。

3 賃金・物価・労働時間等の動向

2005年の週当たり名目賃金(民間非農業、生産・非監督的労働者)の上昇率は、2000年の3.9%から年々縮小を続け、2004年には2.1%であったが、2005年には再び上昇し、2.9%となった。

4 労働施策をめぐる最近の動向

(1)移民法改正をめぐる動き

アメリカでは、不法移民労働者の取締りについて効果があがっていないため、ブッシュ大統領が2006年1月の一般教書演説において移民政策の改正をとりあげていた。その後、上下院においてそれぞれ移民法案が提出・可決された。下院で可決された法案は不法移民の取締りを強化するものであるのに対し、上院で可決された法案は取締りの強化に加え、条件付きで市民権を付与するものとなっており、両院で協議が行われているところである。

II イギリス

1 経済情勢

イギリスの2005年の実質GDP成長率は1.9%と2004年を1.4ポイント下回っている。ただし、2006年に入り、1〜3月期、4〜6月期、7〜9月期と3四半期連続で2%以上を記録しており上昇基調にある。

2 雇用・失業情勢

失業率は長期的な低下傾向にあり2005年の失業率は4.8%となった。なお、2005年後半以降、失業率は上昇に転じており、2006年7〜9月期には5.5%となった。

3 賃金・物価・労働時間等の動向

賃金上昇率は2004年以降物価上昇率を上回る上昇を見せており、2006年に入ってからは4%台で推移している。消費者物価は落ち着いた動きが続いており、2005年は2.1%となった。2005年のフルタイム雇用者の週当たり実労働時間は39.4時間とここ数年ほぼ同水準で推移している。

4 労働施策をめぐる最近の動向

(1)高技能移民プログラムの導入

内務省は、2006年11月7日、点数制に基づく移民制度の第一弾として12月5日から、従来の高技能移民プログラム(Highly Skilled Migrant Programme:HSMP)の内容を改訂した新たな制度に移行することを公表した。これに伴い、11月8日以降、現行の高技能移民プログラムによる審査を中止することとなった。

(2)2005年障害者差別禁止法の施行

2005年12月5日、2005年障害者差別禁止法(The Disability Discrimination Act 2005(DDA 2005))が施行された。主な内容は、(1)HIV/AIDS(エイズ)感染者、がん患者及び多発性硬化症患者を診断に基づいて保護の対象とすること、(2)精神障害者が保護を受けるための要件としての「医学的な認証」を不要とすること、(3)公共団体において障害者の機会均等を促進すること等である。

(3)雇用均等規則(性差別関連)

2005年10月1日、2005年雇用均等規則(性差別関連)(The Employment Equality Regulation 2005(Sex Discrimination))が施行された。当該規則は、EUの「雇用・職業訓練及び昇進へのアクセス並びに労働条件についての男女均等待遇原則の実施に関する指令」(1976年制定)を実施するために制定されたものである。内容は、いずれも従来、判例法により禁止されていたものであるが、今回の改正は、これを明文化したという点で意義を持つものである。

III ドイツ

1 経済情勢

2005年の実質GDP成長率は0.9%となり、2年連続のプラス成長となった。景気はゆるやかに回復しており、2006年7〜9月の実質GDP成長率は2.3%となった。

2 雇用・失業情勢

2005年1月以降、ハルツIV法に基づく改革の影響により新たに失業登録を義務づけられた者が発生したこともあり、2005年の失業者数は前年に比べ大幅に増加し486万人となり、失業率も11.7%と上昇した。しかし、失業情勢は2005年半ばから徐々に改善してきており、2006年7〜9月の失業者数は433万人、失業率は10.4%となった。

3 賃金・物価・労働時間等の動向

2005年の賃金上昇率は、ブルーカラー労働者が1.4%、ホワイトカラー労働者が2.0%といずれも前年を下回った。消費者物価上昇率は上昇基調であり、2005年には2.0%となった。また、製造業生産労働者の週当たり労働時間はここ数年ほとんど変化がなく2005年は37.9時間となった。

4 労働施策をめぐる最近の動向

(1)新連立政権発足

2005年秋の選挙において、ドイツの二大政党である社会民主党(SPD)とキリスト教民主社会同盟(CDU/CSU)の勢力が拮抗し、CDU/CSUのメルケル党首を首相とする大連立政権が発足した。新政権発足に伴い、省庁再編が行われ、連邦労働・社会省が発足し、新大臣には、連邦副首相兼任でミュンテフェリンク(SPD)が就任した。

(2)「個人創業助成金(Ich-AG)」と「橋渡手当(Überbruckungsgeld)」の統合

個人創業助成金が2006年6月末で期限切れになるため、ドイツ連邦参議院は、併存する2つの創業助成金を統合し、新たな助成金を創設することを決定することを含む「ハルツIV法最適化法案」を可決、同法は2006年8月1日に施行された。

IV フランス

1 経済情勢

フランスでは2001年以降の世界経済減速の影響を受け、実質GDP成長率は2000年をピークに減速傾向にあったが、2004年は2.0%まで回復した。2005年は原油高の影響等を受けて政府予測を大きく下回る1.2%の伸びにとどまったが、2006年4〜6月期は2.6%を記録し、年間成長率は2%程度と見込まれている。

2 雇用・失業情勢

2005年5月に発足したドビルパン内閣は雇用問題を最重要課題として、雇用契約手続きの簡素化や特に失業問題が深刻な若年層向けの各種雇用契約の導入を打ち出してきた。こうした中、同年末頃から緩やかに低下を続けた失業率は、2006年7月には4年3か月振りに9%を割って8.9%となった。

3 賃金・物価・労働時間等の動向

2005年の非農業労働者の時間当たり賃金上昇率は、2.8%と前年を上回った。また、2006年4〜6月期は前期比3.0%の上昇となっている。一方、消費者物価上昇率は2%前後の落ち着いた動きで推移しており、2005年は1.7%となった。

非農業労働者の週当たり実労働時間は、2000年2月1日(20人以下の事業所は2002年1月1日)の週 35 時間労働制度導入以来短くなっており、2005年3月にはこれを緩和する法律が成立したものの2006年4〜6月期で35.62時間となっている。

4 労働施策をめぐる最近の動向

(1)新卒雇用契約(CPE)の撤回

2006年1月10日、ドビルパン首相は緊急雇用対策第二弾の目玉として新卒雇用契約(CPE)を打ち出した。CPEは21人以上の企業を対象に、26歳未満の若者について2年間の試用期間を設け、この期間中事業主が事由を問わず簡易な手続で解雇可能とする雇用契約で、若年雇用創出を狙ったものであった。しかし国民の大規模な反対運動を受けて結局は撤回に追い込まれた。

(2)高齢者雇用促進のための5か年計画

高齢化の進展の中、フランスにおいて長年定着してきた早期引退志向を見直し、高齢者の雇用を促進するために、政府は2006年6月、(1)高齢者の雇用確保、(2)引退に関する制度の整備、(3)高齢者の再就職促進、(4)高齢者への偏見をなくすキャンペーン、という4つの基本方針を柱とする国家行動計画を発表した。

V 韓国

1 経済情勢

韓国の実質GDP成長率は、2005年上半期は少々成長率の低下が見られたが、下半期以降5%を超える成長を続けている。

2 雇用・失業情勢

労働力人口は、このところゆるやかではあるが増加傾向にある。就業者数は増加傾向にあり、特に雇用者数及び非正規雇用は多少の上下はあるが、確実に増加している。

失業率は、3%台後半で推移している。

3 賃金・物価・労働時間等の動向

1990年代に入ってから賃金は毎年前年比10%以上の伸びを示していたが、通貨・経済危機以後賃金の上昇は鈍化し、98年にはマイナスとなった。その後、経済の回復とともに伸びを回復し、2005年は、6.4%となった。

一方、労働時間は、2004年7月から段階的に週40時間制に移行させたこともあって減少傾向にあり、2005年の労働時間は48.1時間となっている。

4 労働施策をめぐる最近の動向

(1)労使ロードマップの妥結について

2006年9月11日、労使政代表者会議において、2003年9月に発表された労使関係法・先進化方策(ロードマップ)交渉が妥結した。これは労使自治の原則に基づく労使双方の責任権限の明確化や労働市場の柔軟かつ安定化を図ることにより、労使紛争の最少化、労働基本権の向上及び企業の競争力の強化を同時に実現していこうとするものである。

(2)2010年までに出生率を1.6へ 〜韓国政府少子化総合対策に5年間で19兆ウォン(約2.4兆円)投入概要

2006年1月15日、韓国保健福祉部は、2005年の推定合計特殊出生率が過去最低の1.08人となったことを受け、大規模アパートや団地における義務保育施設の拡大や、2010年までに全ての幼稚園を終日で運営することなどを柱とする少子化総合対策を発表した。韓国政府は、これらの施策により、合計特殊出生率を2010年までにOECD諸国の平均である1.6まで回復させることを目指すとしている。

(3)改正雇用保険法(2006年1月から施行)

2005年11月16日に国会を通過した改正雇用保険法及び施行令が2006年1月から施行された。今回の改正により失業手当の1日当たりの上限額が雇用保険制度創設以来初めて引き上げられたほか、高齢者、非正規職(契約社員、派遣社員など)に対する支援が手厚くなった。

VI 中国

1 経済情勢

2005年の実質GDP成長率は前年比10.2%増と、3年連続で10%を超える高い伸びを示している。

2 雇用・失業情勢

雇用情勢を見ると、2004年の失業者数(登録)は839万人で失業率は4.2%となっている。また、失業者にカウントされない下崗労働者(国有企業等の一時帰休者)が存在するが、この数は急減している。

3 賃金・物価・労働時間の動向

2005年の年間賃金は18,405元と対前年12.9%の増加になった。

2005年の消費者物価上昇率は、2004年のそれを上回ったとはいえ、1.8%と成長率・賃金の伸びをかなり下回った。


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