各国比較表

1. 若者のキャリア形成及び就職支援
  アメリカ イギリス ドイツ フランス
(1) 学校における職業教育・職業体験
【テックプレップ(Tech-Prep)】
開始年月
 1990年代
管理運営主体
 テックプレップ推進組織(Tech-Prep consortium)
対象者及び適用要件
 高校生。11学年(日本における高校2年生)から開始し、14学年(日本における大学2年生)まで。
具体的内容
 中等教育の最後の2年間と準学士資格を取得可能な高等教育機関における2年間の教育を結合させた4年一貫教育。
 当該4年間で、専門的職業教育科目と、数学、自然科学、コミュニケーション科目の双方の履修が義務付けられる。

 このほか、「キャリア・アカデミー(Career Academy)」、「コーポラティブ(コオペラティブ)教育(Cooperative Education)」がある。
【仕事関連学習】
開始年月
 2004年
管理運営主体
 各学校
対象及び適用要件
 14〜16歳の全ての学生
具体的内容
 イングランドの基幹段階4(第10、11学年)の生徒のカリキュラムに組み込まれる。
 キャリア教育、勤労体験や学習支援などの様々な活動が行われている。
【普通教育における職業指導】
管理運営主体
 各学校
具体的内容
 職業活動体験は、ハウプトシューレ(基幹学校)では生徒の義務。レアルシューレ(実科学校)、ギムナジウムでは希望者による任意。職業体験の分野は、レストラン、郡役所、旅行代理店、運送会社、動物保護施設など多岐にわたっている。

(注) ハウプトシューレ、レアルシューレ及びギムナジウムは、いずれもグルントシューレ(日本の小学校に相当)修了後に入学する中等教育機関

【各種職業学校】
 上級学校非進学者の多数が、職業学校(Berufsschulen )、職業専門学校(Berufsfachschulen ;BFS)、専門学校(Fachschulen :貿易・技術学校)に進んでいる。
【交互教育】
開始年月
 1989年
管理運営主体
 学校と企業の産学連携
対象者及び適用要件
 中・高等教育の学生
具体的内容
 若者の能力向上と就職促進のため、学校での教育と職場での実習を行う。

【大学付設職業教育センター(IUP)】
開始年月
 1991年
管理運営主体
 大学
対象者及び適用要件
 大学生
具体的内容
 企業の要求に即した人材育成のため、工学、商学、一般行政、財務管理、情報・コミュニケーションの5専攻が設置され、全教育期間の1/3を企業実習にあてる。修了者には「高度技術者マスター」の免状が授与される。
(2) 養成訓練制度その他の訓練制度
【登録養成訓練制度(Registered Apprenticeship)】
開始年月
 1937年
管理運営主体
 事業主団体・労働組合団体の共同、個々の事業主、個々の事業主と事業主団体との共同など
対象者及び適用要件
 16歳以上で各実習プログラムの必要条件を満たす者。ただし、危険な業務については、18歳以上。
具体的内容
 実習プログラム(Apprenticeship program)の基準は連邦政府が定める。
 政府に登録された登録実習プログラムを修了した者には、登録養成訓練制度修了者として、公的にその知識と技術の水準が認証される。
 参加者は一定の時間は各企業でOJTを受け、その他の時間は、職種に関係する教育を教育機関等で受講する。
 プログラムの期間は平均すると3〜4年程度。参加者には事業主から賃金が支払われる。
【養成訓練制度(Apprenticeship)】
開始年月
 2004年から新制度開始
管理運営主体
 教育技能省
対象者及び適用要件
 16〜24歳の若者(25歳以上の者を対象とする制度もある。)
具体的内容
 事業主の下で働きながら訓練を受け、資格取得や技術の習得などを目指す。若者向けのものとしては、対象年齢や取得する資格のレベル等に応じ、次の4種類がある。
(1) 養成訓練(Apprenticeship)
 対象者は16〜24歳。NVQレベル2又は同等程度の資格取得を目指す。
(2) 上級養成訓練(Advanced Apprenticeship)
 対象者は16〜24歳。NVQレベル3又は同等程度の資格取得を目指す。
(3) E2E(Entry to Employment)
 就職等の準備が整っていない16〜18歳の若者を対象。参加者にはNVQレベル1等の取得を奨励。
(4) 若年養成訓練(Young Apprenticeship)
 第10学年(通常は14歳)から開始。NVQ等の資格取得を目指すことも可能。
【職業養成訓練生制度(養成訓練制度(Ausbildung )=「デュアルシステム」Duallensysytem )】
開始年月
 19世紀初頭
管理運営主体
 企業及び職業学校(Berufsschulen )
対象者及び適用要件
 年齢制限はなく、ハウプトシューレを修了した者が多く参加するが、ギムナジウムから参加する者もいる。社会人や高等教育を修了した者も参加できる。義務教育(9〜10年間)を修了していなくとも、門戸は開かれている。
具体的内容
 若者を主対象に、企業がその職場で実施する職業訓練と、職業学校等の教育機関での学習とを同時に行い、良質な若年技能労働者を養成する。
 事業主は養成訓練生との間で職業訓練契約を結び職業訓練を施す。
 ドイツの若者の職業生活への移行に際し、長期にわたって主柱を任っている。
【養成訓練制度(Apprentissage)】
開始年月
 1986年法律改正
管理運営主体
 国、地方公共団体
対象者及び適用要件
 義務教育を終了した16〜25歳の若者、26歳以上の若年障害者等
具体的内容
 CAP(職業適格証)に加えて、高等段階の職業教育又は技術教育の免状等を取得するため、理論教育を年間400時間以上受講しつつ、企業で賃金の支払いを受けながら、実地訓練を行う。使用者は年齢及び養成訓練生となってからの年数に応じて、SMIC(最低賃金)の25〜78%以上の賃金を支払う。

 このほか、「熟練契約(Contrat de professionalisation)」がある(2(2)を参照)。
(3) 情報提供をはじめとする就職支援
【O*NET (Occupational Information Network /Online)】
開始年月
 1998年10月
管理運営主体
 国立O*NET協会(O*NET Consortium)
具体的内容
 インターネット上で公表されている(http://online.onetcenter.org)職業に関する総合的なデータベース。求職者が自分の経験や能力を活かせる職業がどのようなものか検索することができる。

 このほか、就職困難な若者を対象とした「WIA若年プログラム(WIA Youth Formula-Funded Grant Program)」がある(2(3)参照)。
【コネクションズ・サービス】
2(3)を参照。

【イギリス政府サイト(Directgov)−若者(Young People)−】
 教育や就職などに興味を持った者がスムーズに支援や訓練を受けられるように、各種ページとリンクするなどにより、情報提供を行っている。
【仕事に関する博物館】
 バーデン-ヴュルテンベルク州のマンハイムには、州立の「技術と労働の博物館」がある。同館では、繊維技術機械工業の発達、自動車製造、化学と電気技術、エネルギー、鉄道と道路、技術と医学の7領域の技術史をコンセプトに、働く人々の生活と技術を体験・見聞できるよう展示が工夫されている。
 バイエルン州ミュンヘンにある「ドイツ博物館」は、農業、鉱業、航空工学から、鉄道、機械、宇宙に至るまで、ドイツの科学技術を若い世代に引き継ぎ、学ばせるための博物館である。
 これらの施設では、若者を含め、人々が職業に対する具体的なイメージを持つことができるよう工夫がなされている。

【職業情報センター(BIZ)】
 各所の公共職業安定所に付属されたセンター。若者を顧客の中心に、職業養成訓練や学業、継続訓練などについて相談・情報提供を行っている。
【しごと館(Cite des metiers)】
 職業選択の参考となる情報、(職業)訓練の検索、職業生活の転換(転職)・求職に関する情報、体験機会の提供等の機能を有し、常時、予約なしで個別相談を受けられ、無料の就職フォーラム等に参加することができる。

【地域ミッションセンター及び受入・情報・指導常設センター(PAIO)】
開始年月
 1989年
管理運営主体
 国、地方公共団体
対象者及び適用要件
 16〜25歳の若者
具体的内容
 社会的生活・職業訓練への参入に向けて個別指導を行うため、専門のカウンセラーを配置し、適職発見支援、求人情報の提供、求人企業との個別面接の機会提供、求職活動指導等様々な支援を行う。

 このほか、「国立教育・職業情報機構(ONISEP)」、「青少年情報・資料センター(CIDJ)」、「青年情報センター(CIJ)」、「進路情報・指導センター(CIO)」及び「職業訓練推進・資料・情報センター(CARIF)」がさまざまな情報提供を行っている。

2. 困難な状況にある若者に対する施策
  アメリカ イギリス ドイツ フランス
(1) 若者に対する義務付け
  【若者向けニューディール】
 次項参照
【労働機会提供(1ユーロジョブ)】
 3(2)参照。
 
(2) 教育・訓練の機会の提供
【ジョブ・コア(Job Corps;宿泊型若者集団教育訓練)】
開始年月
 1964年
管理運営主体
 連邦労働省のジョブ・コアの本部(National Job Corps office)、6か所の地区管轄支部(region office)及び全米122か所のジョブコアセンター。
対象者及び適用要件
 16〜24歳までの経済的に不利な立場にある若者。
具体的内容
 参加者は、原則として寮に宿泊し、社会生活を営む上での基本的なしつけから、読み書き、算数などの基礎的な学習及び職業訓練を受ける。
 参加費は基本的に無料。さらに、毎月小遣いが支給される。
 参加期間は、原則として最長2年間。
 研修中に高校卒業あるいはGED(高校卒業者と同様の素養を身につけていることの証明証書)の資格を取得可能。
【若者向けニューディール】
開始年月
 1998年4月に全国導入
管理運営主体
 ジョブセンタープラス
対象者及び適用要件
 18〜24歳の若者で、6か月以上失業状態にあり、求職者給付を受給しているすべての者。
具体的内容
 参加者にはパーソナル・アドバイザーが付けられる。参加を拒否した者は、求職者給付の受給資格を失う。
 プログラムは次の順に進められる。
(1)  ゲートウェイ
 就職相談と集中的な求職支援サービス(最長4か月)
(2)  オプション
 ゲートウェイ期間中に仕事を見つけられなかった者が以下のいずれかのプログラムに強制参加
(ア) 地方公共団体等での就労
(イ) 公的環境保護事業での就労
(ウ) フルタイムの教育や訓練の受講
(エ) 自営業開始準備
(3)  フォロースルー
 (1)及び(2)の段階で就職できなかった者が参加。助言等の就職活動支援を受けることができる(26週間)
【職業準備年(BVJ)】
 個人的・家庭の経済的・社会的理由によって義務教育を辞めた、又は授業についていけない者で、職業訓練を受ける(職業養成訓練生になる)機会を得られない者を対象にした制度である。
 フルタイムの職業教育を行う。生徒は、BVJを行うことで職業学校における修学義務を果たしたものと認められ、またハウプトシューレの卒業単位にも充当できる。

【職業基礎学習年(BGJ)】
 職業学校におけるプログラム。(1)1年間のフルタイムの授業か、(2)1年間のパートタイムの授業(同時にパートタイムでの事業所における職業訓練)である。
 対象となるのは、主にハウプトシューレの修了を予定している若者(職業教育義務がある)で、職業養成訓練生としての雇用の場を見つけられなかった者。
 その者が職業養成訓練生になった場合に事業主の許で行ったであろう職業養成訓練を、国が提供する。
【雇用支援契約(CAE)】
開始年月
 2005年5月1日
管理運営主体
 雇用庁(ANPE)
対象者及び適用要件
 長期的な失業で就職が困難な者
具体的内容
 長期失業者等の社会参入の難しい者を一時的に公共部門(地方自治体の組織、公的サービス提供法人等非営利団体)で雇用することを通じて社会の参加を支援。雇用主が国と結ぶ契約には、職業訓練を行うことを入れることが強く推奨されている。

【熟練契約(Contrat de professionalisation)】」
開始年月
 2004年11月
管理運営主体
 地方が主導的役割
対象者及び適用要件
 16〜25歳の若者及び26歳以上の求職者
具体的内容
 対象者は事業主との間で雇用契約を締結。被用者となった者は、職業訓練機関又は職業訓練を行う企業と訓練協定を結び、職業訓練を受けながら、社会で通用する資格取得や就職・再就職を可能とする
(3) 就職等に関する相談支援
【WIA若年プログラム(WIA Youth Formula-Funded Grant Program)】
開始年月
 1998年
管理運営主体
 連邦労働省(U.S.Department of Labor / DOL)が資金提供し、各州政府が実施。
対象者及び適用要件
 14〜21歳の就職困難者。
具体的内容
 公共職業安定所であるワンストップ(キャリア)センター(One-Stop [Career]Center)と提携した地方公共団体で実施される、14〜21歳の就職困難者のニーズに沿った各種の就職や進学のための支援に対して給付金を提供するプログラム
【若者向けニューディール】
前項参照

【コネクションズ・サービス】
開始年月
 2001年4月
管理運営主体
 教育技能省などの省庁、学校や企業やNPO法人など、様々な機関の連携により運営。
対象者及び適用要件
 13〜19歳までのイングランド在住の全ての若者
具体的内容
 パーソナル・アドバイザーが、学校において情報提供・ガイダンスを行うほか、義務教育終了後も若者に接触し、支援を行う。
 早期からの総合的サポートシステムであり、教育、職業選択、差別、健康問題、住宅、ドラッグやアルコール、家族関係等若者の全ての問題に対して支援を行う。
 このほか、電話、電子メール等により若者からの相談を受け付けるコネクションズ・ダイレクト等が行われている。
【職業相談・紹介サービス向上の取組み】
 25歳未満の若者に、(1)職を与える(紹介する)、(2)職業養成訓練の機会を与える、(3)就労等の機会を与えるべく、公共職業紹介機関において、(若年)求職者一人一人にオーダーメードの指導・助言を与えることを重視する観点から、ケースマネジャー式の職業指導の体制整備の導入が図られた。現在は若者75人に1人のケースワーカーを配置することとされている。
【TRACEプログラム】
開始年月
 1998年7月
管理運営主体
 各自治体
対象者及び適用要件
 学位や職業資格を得ないままに学業を終えた若者等、最も就職が困難な若者
具体的内容
 同一の相談員が、社会参入の道筋を立て、求職活動と職業訓練に関してアドバイスする。具体的には、(1)職業能力診断、社会参入支援、(2)職業訓練研修、(3)就労の経験、(4)雇用支援措置のアクセス、(5)単発的金銭支援、(6)医療及び住居へのアクセスなど。

 このほか、低水準資格しか持たない若者を対象とした「社会生活参入契約(CIVIS)」、失業者等を対象とした「ニュースタート」及び「雇用復帰支援計画(PARE)」がある。また、地域ミッションセンター(Missions Locales)及び受入・情報・指導常設センター(PAIO)では、社会生活・職業生活への参入に向けた個別指導等が行われている。

3. 就業機会を拡大するための施策
  アメリカ イギリス ドイツ フランス
(1) 最低賃金、社会保険料等に関する施策
【若年労働者に対する最低賃金の特例(連邦レベル)】
 20歳未満の労働者に対しては、勤務開始から90日間は、4.25ドル/時の最低賃金が適用される。90日経過後、又は労働者が20歳になった時点で、通常の労働者の最低賃金である5.15ドル/時が適用される。
若者に対する最低賃金の特例】
(1) 22歳以上(通常の労働者):5.05ポンド。ただし、22歳以上で新規に雇用された者で政府が認定する資格に向けた訓練コースに参加している者については、最初の6か月について4.25ポンド。
(2) 18〜21歳:4.25ポンド
(3) 16〜17歳:3.00ポンド
  【若者に対する最低賃金の特例】
(1) 年少者
 入職後6か月に達するまで、17才未満の者は20%、17才の者は10%、最低賃金額(SMIC)を減額可。
(2) 養成訓練契約による訓練生
 年齢と訓練期間に応じて、最低賃金額を22〜75%減額することができる。

【雇用主の社会保険料の減免等】
 雇用支援契約(CAE)などの特別な雇用契約を結んだ事業主に対して、社会保険負担の軽減、補助金の支給が行われる。
(2) 直接雇用的な雇用創出政策
  【若者向けニューディール】
 最長4か月のカウンセリング等にもかかわらず仕事を見つけられなかった者について、これらの者を雇い入れる事業主への助成金支給や、地方公共団体・ボランティア部門での短期就労などといった形の雇用を提供している。
 2(2)を参照。
【労働機会提供(1ユーロジョブ)】
 各種給付を受領しつつ、就職しない者を早期に労働市場へ参加させるために導入された制度。労働習慣がなくなった長期失業者に対して、僅少ながら手当を与えて就業経験をさせ、失業状態から脱却させることが目的。主に市町村での福祉の作業などに従事。なお、失業給付IIを受給する25歳以下の若年失業者がこれを拒否すると、最悪の場合、失業給付の全額の支給が停止される。

 このほか、東部ドイツにおける失業等に対応するため行われるようになった「雇用創出策(ABM)」がある。
【企業における若年者契約】
開始年月
 2002年7月1日
管理運営主体
 全国商工業雇用連合(UNEDIC)
対象者及び適用要件
 16〜22歳の若者、23〜24歳であって資格水準5又は6の者等
具体的内容
 全国商工業雇用連合(UNEDIC)に加盟する企業又は事業所と期間の定めのない雇用契約を締結。国から雇用主に対する金銭支援あり。
利用状況
 2004年末で約20万人

 このほか、地方公共団体等が雇用主となる「若年者雇用計画」等がある。

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