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各国比較表

表9 失業保険、公的扶助制度等の概要と受給者の就労促進施策の比較表

  アメリカ イギリス ドイツ
1 失業保険、公的扶助制度等の概要 ・失業保険と公的扶助がある。公的扶助は包括的なものではなく、対象者の属性等に応じた各制度が分立している。 ・失業保険(拠出制・非拠出制)と公的扶助がある。公的扶助はいくつかの制度が分立している。 ・失業保険、失業扶助と社会扶助がある。
  (1) 失業保険 ・根拠法令は、連邦失業税法と連邦社会保障法
・管理運営主体は、連邦政府及び各州政府

・財源は、使用者の連邦失業税

・受給資格、欠格条項、給付額、支給期間等については各州が決定

・給付の内容は前職賃金の50〜70%

・給付期間は、州により異なるが最大26週の州が多数
・根拠法令は、求職者給付法

・管理運営主体は、雇用年金省

・財源は、労使の保険料及び国庫負担

・受給要件は、過去2年間に1年以上被保険者であった者等

・給付の内容は、通常の労働者(25歳以上の者)で週54.65ポンド
・給付期間は、最大182日(26週)
・根拠法令は、社会法典

・管理運営主体は、連邦雇用庁

・財源は、労使の保険料によるが、近年国庫が多額の補填
・受給要件は、離職前に12ヵ月(季節労働は6ヵ月)以上被保険者であった者等

・給付の内容は、前職賃金の67%(扶養する子がいない場合は60%)
・給付期間は、雇用期間の長さ・年齢により6〜32ヵ月
(2) 補足的な失業者扶助 なし (所得調査制求職者給付)
・根拠法令は、求職者給付法

・管理運営主体は、雇用年金省

・財源は、国の一般財源
・制度の対象者は、失業保険の受給資格を持たない失業者(資力調査による)


・給付の内容は、所得補助と同一

・給付期間は、無期限
(失業扶助)
・根拠法令は、社会法典

・管理運営主体は、連邦雇用庁

・財源は、国の一般財源
・制度の対象者は、失業保険の受給が終了した生活困難者(資力調査による)


・給付の内容は、前職賃金の57%

・給付期間は、65歳になるまで原則無期限
(3) 公的扶助 (貧困家庭一時扶助(TANF))
・根拠法令は、社会保障法


・管理運営主体は、州

・財源は、連邦及び州の一般財源
・制度の対象者は、未成年の児童、妊婦のいる世帯等
・給付内容は、州ごとに決定

(その他の扶助)
(1)補足的保障所得(SSI)
 高齢者、障害者等が対象
(2)メディケイド
 貧困家庭の児童、妊婦等が対象
(3)食料スタンプ
 所得水準が連邦の基準を下回る世帯等が対象
(4)一般扶助
 州、自治体の独自扶助
(勤労所得税額控除)
・所得税額から勤務所得税額控除を差し引くとマイナス額が算出される者への税の還付(実際は給付)
(所得補助)
・根拠法令は、社会保障に関する拠出及び給付法並びに社会保障管理法
・管理運営主体は、雇用年金省
・財源は、国の一般財源

・制度の対象者は、高齢者、 一人親、 障害者等
・給付内容は、年齢等の属性に応じ個別に算定

(社会基金)
・所得補助では対応できない突発的な必要に対応するための給付金又は種々の貸付金
(その他の扶助)
(1)住宅給付
 賃貸住宅居住者に賃料相当額を支給
(2)地方税給付
 地方税納付者に地方税相当額を支給
(3)就労税額控除、児童税額控除
 就労している低所得者、子供を養育する低所得者を対象として税の還付の形式で給付
(社会扶助)
・根拠法令は、社会扶助法


・管理運営主体は、地方自治体
・財源は、自治体の一般財源

・制度の対象者は、生活困窮者(資力調査による)
・必要な生計費を保障する生活扶助と困難の内容に応じた特別扶助があり、生活扶助の一環として就労扶助を実施
・給付内容は、生計費を基礎に個別に算定
・生活扶助は世帯への給付であり、給付水準は子供が多いほど高くなるよう設定
・失業扶助との併給が可能
2 現行制度に至る改革 (1) 現行制度に至る改革前の問題点 ・公的扶助受給者数の増加
・受給者の公的扶助への長期依存の傾向
・公的扶助受給者の子どもが受給者となる「受給者の再生産」
・失業保険受給者数の増加
・給付費の増大
・失業扶助と社会扶助受給者数と財政支出の増大
・失業扶助と社会扶助制度の区分の不明確化
・労働行政と社会福祉行政の協力の不足
(2) 失業保険、公的扶助制度等の改革
●改革の内容
・貧困家庭一時扶助(TANF)の導入(1996年)
 給付の制限(生涯で5年間)、就職促進プログラムの実施、両親の揃った家庭育成の促進、就労が有利となる仕組みづくり等
・求職者給付の導入(1996年)
・ニューディール政策の実施(1998年〜)
・税額控除制度の導入及び改正(1999年、2003年)
・失業者削減への労働市場改革(2002年〜)
・社会扶助受給者の就労促進(1990年代〜)
・労働行政と社会福祉行政の協力の推進(2001年〜)
●改革の成果と問題点 ・貧困家庭一時扶助受給者の大幅な減少
・経済雇用状況の変化に伴う受給者数の増加への懸念
・再就職後の職場への定着と生活水準の向上の問題
・黒人とヒスパニックの受給者割合上昇、人種間の格差の問題
・失業保険受給者数の減少、就業者数の増加等
・失業の改善は好調な経済によるものであり、就労支援政策自体の寄与度を疑問視する考え方あり
・労働市場改革については、まだ評価が確定していない状態
・社会扶助受給者の就労促進及び労働行政と社会福祉行政の協力の推進については、中間的には一応の評価あり
3 今後のあり方 ・改革は成功
・今後、雇用情勢の急激な改善が見られない中で、受給者数を低いレベルに維持するとともに、受給を終えた者が公的扶助に戻ることなく就業を継続し、より良い仕事に移っていけるようにすることが課題
・公的扶助制度については、制度の簡素化が必要
・就労支援施策は一定の効果を上げているとの評価を受けており、さらなる改善を図りつつ引き続き実施
・失業扶助と社会扶助の整理・統合については、2004年初めの実施に向けて取組み
・負担が増加すると思われる国家財政の問題をどう解決するかが焦点
・失業者及び社会扶助受給者の就労促進支援に重要な役割を果たす対人サポート(カウンセリング、ソーシャルワーク等)を行う人材の育成・確保が必要



フランス スウェーデン デンマーク
・失業保険、連帯失業手当(ASS)と最低社会復帰扶助(RMI)がある。 ・失業保険(拠出・非拠出)と社会扶助がある。 ・失業保険、現金援助金がある。
・根拠法令はなく、労使協約に基づき実施
・管理運営主体は、民間の商工業雇用協会(SSEDIC)、全国商工業雇用協会(UNEDIC)
・財源は、労使の保険料及び政府の補助金

・受給要件は、離職前に22ヵ月以上雇用され、6ヵ月以上被保険者であった者等

・給付の内容は、前職賃金により異なるが、月額990.40ユーロ未満の場合で前職賃金の75%
・給付期間は、雇用期間の長さ・年齢により7〜42ヵ月
・根拠法令は、失業保険法及び失業保険基金法
・管理運営主体は、労働者又は自営業者の団体である失業保険基金
・財源は、労働者の拠出する保険料及び国からの補助金(割合が大きい)
・受給要件は、離職前12ヵ月間に6ヵ月以上月70時間以上、又は連続する6ヵ月間に450時間以上被保険者であった者等
・給付の内容は、前職賃金の80%


・給付期間は、最大600日(その後活動保障プログラムに移行)
・根拠法令は、失業保険法

・管理運営主体は、労働者又は自営業者の団体である失業保険基金
・財源は、労働者の拠出する保険料及び国からの補助金(割合が大きい)
・受給要件は、離職前3年間に52週間以上雇用され、12ヵ月以上被保険者であった者等

・給付の内容は、前職賃金の90%


・給付期間は、最大4年で、1年経過後は教育訓練参加が要件
(連帯失業手当(ASS))
・根拠法令は、労働法典

・管理運営主体は、商工業雇用協会(ASSEDIC)、全国商工業雇用協会(UNEDIC)
・財源は、国の一般財源
・制度の対象となる者は、失業手当の受給期間が終了した長期失業者



・給付の内容は、収入及び配偶者の有無によって異なり、月406.80ユーロから月1,491.60ユーロ
・給付期間は、原則6ヵ月で、更新可能
(基礎保険)
・根拠法令は、失業保険法及び失業保険基金法
・管理運営主体は、失業保険基金アルファ

・財源は、国の一般財源
・制度の対象者は、失業保険基金に加入していない者、加入期間が12ヵ月に満たない者で就労要件を満たす者又は一定の要件を満たす学生
・給付の内容は、一律日額320クローネ

・給付期間は、 最大600日 (その後活動保障プログラムに移行)
なし
(最低社会復帰扶助(RMI))
・根拠法令は、社会福祉・家族法典


・管理運営主体は、県

・財源は、国の一般財源

・制度の対象者は、25歳以上65歳未満のフランス居住者で、生活に困窮し、かつ就業努力を行っている者
・給付内容は、最低賃金の一定割合を基礎に個別に算定する生計費補助
(社会扶助)
・根拠法令は、社会扶助法


・管理運営主体は、コミューン(市町村)
・財源は、コミューンの一般財源

・制度の対象者は、生活に困窮し、かつ就業努力を行っている者(資力調査による)

・給付内容は、個別に算定する生計費補助
(現金援助金)
・根拠法令は、積極的社会政策法


・管理運営主体は、市

・財源は、 国と市の一般財源、 1/2ずつ負担
・制度の対象者は、デンマークに居住又は在留している者で、失業、疾病、妊娠等、自己又はその家族に関して自己の状況が実際に変化し、自己又はその家族の生活を維持することができないもの等
・給付内容は、個別に算定する生計費補助
・若年者の高失業率と失業の長期化
・最低社会復帰扶助(RMI)の受給者数の増加
・失業保険、社会扶助受給者の増加
・労働行政と社会福祉行政の協力の不足
・構造的な失業者の増大と現金援助金への依存
・福祉施策と失業対策の協力の不足
・高い国民負担
・雇用復帰援助プラン(PARE。失業手当の受給と並行して積極的な求職活動を求める制度)の実施(2001年)
・貧困・社会的疎外者対策全国行動計画(低資格若年者を対象とするTRACEプログラム及び長期失業者等の社会的疎外者を対象とするニュースタートプログラム)の実施(2001年)
・失業保険制度の改革(1998年)
・活動保障プログラム(長期失業者支援)の創設(2000年)
・社会扶助制度の改革(1990年代末〜)
・労働行政と社会福祉行政の協力の推進
・失業保険制度の改革(1994年)
・現金援助金制度の改革(1994年)
・社会福祉改革(1998年)
・現金援助金受給者に対する積極的労働市場政策の強化(2001年)
・失業保険基金の職域独占制度の廃止(2002年)
・雇用復帰援助プランの適用者については一定の成果
・給付を受けるためには求職活動等の義務が伴うということについて抵抗感を持つ者が多く、効果が上がるまでにはまだ時間が必要
・活動保障プログラムの1年目の評価は、参加者の就労チャンスを高めると言う点では評価できるが、一般雇用への就労の点では限定的 ・1994年から開始された労働市場改革以降、失業率及び現金援助金の受給者数は減少
・麻薬・アルコール中毒者、低学力者、基本的生活習慣のできていない者等に対する就労促進の問題
・度重なる改革による、従来の事業枠組との整合性というような実務的な問題
今後以下のような政策を実施予定
・社会生活復帰契約(CIVIS)の導入
・就労最低所得保障制度(RMA)の導入
・起業家支援策「経済イニシアティブ関連法案」(国会で審議中)
・失業者を労働力を必要としている産業・分野にうまく転換していくことが必要
・就労困難者の支援に経験の蓄積のある社会福祉行政と労働行政の協力の推進がさらに必要
・就労促進のための労働市場・福祉改革は、概ね成功しているとみられるが、さらなる改革が必要
・2002年10月7日、「より多くの人々を労働市場に向かわせる」ための就労促進措置について、与野党が合意


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