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〈 ポイント 〉

I 働く女性の状況

1 労働力人口、就業者、雇用者の状況

(1) 平成13年の女性の労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口の割合)は49.2%となり、前年に引き続き低下した。15〜59歳層の労働力率は62.2%と、前年(61.6%)に比べ0.6%ポイント上昇した。
 M字型カーブの底である30〜34歳層の労働力率は58.8%となり、平成3年と比較すると5.9%ポイント上昇し、M字型の底がさらに浅くなっているのが特徴的である(第1−1表第1−1図)。

(2) 女性の就業者数は2,629万人で前年と同数であり、そのうち雇用者数は男性雇用者が減少する一方で、女性は2,168万人で前年に比べ28万人増加(1.3%増)し、雇用者総数に占める女性の割合は、40.4%となった(第1−2表第1−3図)。

(3) 女性の完全失業率は、4.7%(男性5.2%)となり、男女とも過去最高となった。平成12年から13年にかけて「人員整理・会社倒産」を離職理由とする者の割合が大きく上昇している(第1−4図5図)。

(4) 女性の非農林業雇用者に占める短時間雇用者の割合が上昇し、39.3%となった。


2 学卒労働市場の状況

(1) 高校生の卒業後の進路は、無業者が増加しつつあり、女性では高校卒業者の1割以上を占めるようになってきている(第1−9図)。

(2) 大卒者の卒業後の進路は、卒業者全体の2割強を無業者が占め、一時的な仕事に就いた者を含めると女性では3割近くになり、安定した職に就けなかった者の割合が増加している(第1−10図)。


II 仕事と子育ての両立

1 結婚・出産等にかかわる女性の就業状況

 〜 25〜29歳層は未婚化により労働市場へ、
    30〜34歳層はM字型カーブのボトムであるが就業希望は高い 〜

 昭和50年から現在にかけて、M字型カーブを特徴づける25〜39歳層の女性の結婚、出産、就業の変化をみると、まず、25〜29歳層では、未婚化が進んだことや子どものいない既婚者世帯が増えたことから労働力率は大きく上昇した。30〜34歳層では、労働力率は、近年、特に上昇してきているものの、昭和50年から現在までM字型カーブのボトムとなっている。非労働力となっている者で就業を希望している者の割合は最も大きい。35〜39歳層では、既婚層が再び労働市場に参入し始めているものの、就業を希望している者の割合も大きい。また、子育てとの両立が容易になるよう短時間就業者となる場合が多い。
 女性の年齢階級別労働力率に就業希望者の割合を加えたものをみると、先進諸国の労働力率である台形型カーブに近づく(第2−1図2図3図)。
 出産による就業への影響をみると、既婚女性のうち第1子出産前に仕事に就いていた者は56.1%となっており、そのうち出産で仕事をやめた者は72.8%となる。第1子出産前に仕事に就いていた者の出産後の継続就業率をみると、勤務先の従業員規模が大きくなるほど低くなっていることや、自営・家族従業者が高いのに比べ雇用者では低く、なかでも事務職は最も低いことなどがわかった(第2−4図)。
 女性の働き方として「再就職」は理想・現実ともに多くなっているが、入職時では7割がパートタイム労働者となっている(第2−5図)。


2 仕事と子育ての両立や子育ての負担感

(1) 子育て期の夫と妻の就業時間、家事時間

 〜 子育て期である30歳代男性が最も就業時間が長い 〜

 子育ての最も大変な時期である30歳代の男女の就業時間や家事時間を把握した。1週間の就業時間を年齢階級別にみると、男性の20歳後半から40歳代では長時間就業者が多く、なかでも子育て期の30歳代の就業時間は最も長くなっている。パートナーであろう30歳代の女性は、逆に短時間就業となっている(第2−10図)。
 30歳代男性は、いわゆる働き盛りであり、進んで遅くまで就業をしているようにもみえるが、「仕事にうち込んでいる時」よりも「家族団らんの時」に充実を感じるとしている割合が他の年齢に比べて高くなっており、家庭を大切に思いながらも長時間就業をしている(第2−11図)。

(2) 高い子育てコスト

 妻の理想の子ども数と現実はギャップがあり、理想の子ども数を持とうとしない理由は、経済的な要因が大きい。子どもを育てるためにかかる費用について「子育てコスト」として推計した結果、子どもが大学に進学する時期に家計の負担が大きくなり、この時期の可処分所得に占める子育てコストは最も大きい(第2−14図)。

(3) 子どもに対する思い、子育ての負担感

 子どもを持つことは負担ばかりが増えるわけでなく、男女ともに、子どもを持ったことに対して肯定的に感じている者は多い。また、子育て中の女性のうち、子育ての負担感が大きいと回答しているのは、専業主婦よりも共働き女性の方が少ない(第2−15図17図)。


3 職場や地域における両立支援の状況

(1) 職場における仕事と子育てのための両立支援の状況

 〜 子どもの看護のための休暇の必要性 〜

 出産した女性の56.4%が育児休業を取得している。一方、男性の方も、配偶者が出産した者に占める育児休業取得者割合は平成11年で0.42%(平成8年0.12%)、また、育児休業取得者に占める男性の割合は2.4%(平成8年0.6%)と、ともに水準は低いもののわずかながら増加している。
 また、30歳代の子育て層では男女ともに「男性でも育児休業をとるべき」という意識は高いが、男性本人もしくは夫が育児休業を取るつもりかどうかについては、性別や子どもの有無にかかわらず「取得する希望はあるが、現実的には難しい」とする意見や「取得するつもりはない・取得できない」とする意見が多い。育児休業を取得しない理由は、経済的理由、仕事や職場の問題が大きい(第2−18図19図20図)。
 さらに、風邪や急な発熱等突発的に訪れる子供の病気や怪我の際の支援に対するニーズは高く、自ら子どもの看病を行うことを願う親に対しては子どもの看護のために休暇をとれるような制度が必要となっている(第2−21図)。

(2) 地域における保育サービスの状況 〜 保育所利用の児童の割合は上昇 〜

 近年の認可保育所の利用状況をみると、女性の職場進出、核家族化の進行を背景に保育ニーズは急速に高まってきており、3〜5歳児では全児童数の3割以上が保育所を利用している状況となっている(第2−23図)。
 また、サービス経済化の進展等により、労働者の就業時間が多様化していることなどを背景に延長保育に対するニーズが高まっている。さらに、3歳未満の子どもを持つ母親の労働力率は小さいが就業を希望している者は多く、核家族化が進む中で、低年齢児などの保育へのニーズが高まっている。


4 男女が仕事と子育てを両立するために

 こうした中、男女が仕事と子育てをバランスよく両立しながら、安心して子どもを産み育て生涯を通じて就業することが可能となるよう、今後の課題をまとめた。

(1) 男女が子育て期に仕事と家庭のバランスをとることへの取組

 子育て期にあたる30歳代男性の就業時間が最も長い反面、30歳代の女性は働きたくても働いていない者、短時間就業で子育てとの両立を図っている者が多い。
 30歳代の男性も、仕事よりも家族団らんに充実感を感じている者は多く、特に子育て期の男性の長時間就業に対して就業時間の偏りを見直し、仕事と子育ての両立が可能となる柔軟で多様な働き方ができるよう就業環境を整備することが必要である。これは、女性だけでなく若年層や高齢層へ雇用機会を与えることにもなり、男女間、世代間でのワークシェアリングにつながることになる。また、子育ての最も大変な時期に夫が育児を分担できることは、専業主婦層の子育て負担感や不安の解消にも役立つことになる。

(2) 職場や地域における両立支援の充実

 既婚の女性労働者の仕事と子育ての両立のストレスは大きく、さらに、働いていない場合でも子育ての負担感は大きい。こうした負担感を解消するためには、職場、地域における両立支援の充実が必要である。
 職場における両立支援対策については、平成13年の育児・介護休業法の改正により、育児休業から復帰した後に子育てをしながら働き続ける労働者の負担を軽減して子育ての時間をいかに確保するかという観点から、勤務時間の短縮等の措置義務の対象となる子どもの年齢が1歳未満から3歳未満に引き上げられた。また、子どもの看護のための休暇を導入することが努力義務とされたところであり、改正育児・介護休業法の定着を図る必要がある。
 特に、子育て期の労働者を対象とする短時間勤務制度を導入する企業が増加し、短時間勤務の正社員の働き方が普及することは、子育て以外の理由も含めて「短時間で働くこと」の有効性を高める契機になると期待できる。
 さらに、職場における両立支援制度を利用しやすいようファミリー・フレンドリー企業を目指す取組を促すための広報啓発や、地域においても、多様な保育ニーズを充足するなど、新エンゼルプラン等に沿った取組を実施することが望まれている。

(3) 子育て期の男性の育児の分担

 男性の子育て意識は高まっているが、実際の家庭責任は女性がより重く負っている。
 家事、子育てをどう分担するのかは夫婦の価値観の問題であるが、特に子育て期の女性に偏る家庭責任の分担、仕事の面における女性の能力発揮、さらに子どもの健全な発達のためには、父親である男性も家庭生活に責任を果たすことが求められている。長時間就業の実態を踏まえ、年間総実労働時間1800時間の早期達成、所定外労働時間の削減はもとより、子育て中の男女労働者に対しては家庭の状況を配慮した就業時間の管理、さらに、男性の育児休業取得の阻害要因を把握し、取得促進に向けた意識啓発などを積極的に行うことが必要である。

(4) 再就職への支援

 子育てのために就業を中断している者で、再び労働市場に参入することを目指す者に対しては、再就職のために必要な情報提供や仕事に有用な能力を身につけることができるよう支援体制を整備することが求められる。
 また、企業に対しても、再就職女性を雇用する場合の留意点や活用の好事例などノウハウを提供することや、再就職が難しい年齢層に対し、求人の年齢制限を緩和し年齢にかかわりなく均等な機会を与えるよう求めていく必要がある。

(5) ライフプランやキャリアプランへの支援

 働く女性にとって、結婚、出産・子育てといった各ライフステージにおいて、どのような働き方をするのかというプランの策定に役立つよう、行政は、両立に関する労働関係の法令や支援制度、女性が働きやすい制度をもつ企業や業界に関する情報、また地域において提供される保育サービスの情報、さらには妊娠・出産等に関する健康情報等を幅広く提供していくことが必要である。
 さらに、幅広い職業選択ができるよう、職業教育との連携により、女子学生、女子生徒に対して啓発を行っていくことが重要である。

(6) 男女が仕事と子育てにともに参加できるよう固定的な性別役割分担の解消

 子育ての最も大変な時期である30歳代においては男性で長い就業時間、女性で長い家事時間といった男女間での役割分担がみられた。このような役割分担は、働く女性にとって「女性は仕事も家事も」と大きな負担がかかり、男性にとっても「男性は仕事」という役割分担を前提とした雇用管理が根強いことから家庭責任を果たすことが難しい環境となっている。こうした固定的な役割分担の解消に取り組むことや、家庭や職場においても男女がともに仕事と子育ての両立が可能となるような風土をつくっていくことが必要である。
 また、次世代を担う子ども達に対しても、男女がともに職業生活と家庭生活の責任を分担することや、働くことの意義、子どもを育てることの意義を正しく理解させることが重要である。


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