均等取扱い等職場環境の整備はどこまで進展しているのか。今後、女性の一層の能力発揮のためには何が必要となるのか。ここでは、産業ごとに進展度合いや必要な取組は異なるのではないかという問題意識のもと、第一に女性労働者の量的・質的変化と状況を把握し、第二に企業における均等取扱いや新規大卒就職者が感じた差別的状況について分析し、最後に女性の活用のためのポジティブ・アクションの必要性、今後の課題を探った。
1 女性労働者の変化と状況
(1)女性労働者の量的変化と状況
昭和60年と平成12年を比較すると、産業全体(非農林業計)の雇用者数は女性で586万人、男性で452万人と女性は男性を大きく上回って増加している。さらに、増加率に対する従業員属性(産業別、性別、時間別)別の寄与度が大きいのは、卸売・小売業,飲食店の女性35時間未満雇用者(4.1%)が最も大きく寄与し、次いで、サービス業の男女の35時間以上雇用者(男性3.8%、女性3.6%)と女性の35時間未満雇用者(3.7%)がいずれも増加に大きく寄与している。逆に、製造業では35時間以上雇用者がマイナスに寄与しており、特に女性の減少寄与度(−1.6%)が大きなものになっている(第2―1図・2図)。
第2―1図 昭和60年から平成12年にかけての雇用者数の増加数 |
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資料出所:総務省統計局「労働力調査」 |
第2―2図 全雇用者の増加率に対する寄与度 |
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資料出所:総務省統計局「労働力調査」 |
ロ 女性の非正社員数・比率が大きく増加
雇用者のうち非正規従業員(勤め先の呼び方による「パート、アルバイト、派遣・嘱託その他」)数は、昭和60年には645万人だったのが平成12年には612万人増加し1,257万人となった。特に、女性の増加数は458万人と増加数全体の75%を占めている(第2―3図)。
第2―3図 非正規従業員数の変化 |
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資料出所:総務省統計局「労働力調査特別調査」(非農林業) |
第2―4図 就業形態の多様化状況 女性 | |
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男性 | |
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資料出所:厚生労働省「就業形態の多様化に関する総合実態調査」
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ハ 女性の非正社員のうちでもパートタイマーの割合がさらに進展
平成11年調査ではパートタイマーを「短時間のパートタイマー(正社員より労働時間が短い)」と「その他のパートタイマー(正社員と労働時間がほぼ同じ)」に分けて調査している。6年調査の「パートタイマー」は、11年調査の「短時間のパートタイマー」とほぼ同じ定義となっているが、回答した事業所によっては正社員と労働時間がほぼ同じパートタイマー(11年調査の「その他のパートタイマー」にあたる)も「パートタイマー」に含めている可能性が高く、ここでは11年調査の「短時間のパートタイマー」と「その他のパートタイマー」を合わせて「パートタイマー」とし、6年調査の「パートタイマー」と比較している。
調査結果から、非正社員全体を100%として就業形態別割合をみると、平成6年から平成11年にかけて女性ではいずれの産業もパートタイマーが大きく上昇し、産業計で74.0%から10.4%ポイント増加し84.4%と突出して大きな割合を占めるようになった。平成11年においては、製造業、卸売・小売業,飲食店、サービス業では8割以上を占め、他の産業においても非正社員のうちパートタイマーの割合が最も大きくなっている。男性もパートタイマー比率は平成6年の33.8%から18.7%ポイント増加したが、52.5%にとどまっており、産業別にみても卸売・小売業,飲食店以外ではパートタイマーだけでなく契約社員など他の就業形態も多くなっている(第2―5図)。
第2―5図 非正社員の就業形態 女性(女性非正社員=100%) | |
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男性(男性非正社員=100%) | |
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資料出所:厚生労働省「就業形態の多様化に関する総合実態調査」
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(2)女性労働者の質的変化と状況
女性の平均勤続年数は伸長しており、さらに長期勤続者も増加傾向にある。産業別にみるとほとんどの産業で10年以上さらには15年以上の者の割合が増加しており、特に製造業、金融・保険業では大きく増加して平成11年の長期勤続者の割合が他産業より高くなっている(第2―6図)。
第2―6図 10年、15年以上の長期勤続者割合(女性)
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資料出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 |
また、学校卒業後直ちに就職し、同一企業に継続勤務している女性の割合(残存率)を昭和60年と平成11年とで比較すると、大卒者と比べて高卒、短大卒者で大きく残存率が高まり、25〜39歳層を中心に大きく上昇している。大卒者においても、30〜34歳層で残存率が大きく増加しているなど、学校卒業後就職した同一企業にとどまる割合が増えてきていることがわかる(第2―7図)。
第2―7図 年齢階級別残存率 | |||||
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資料出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
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ロ 大卒就職者の女性比率が大きく増加
平成12年の女性の大学進学率が31.5%と男性の水準(47.5%)に近づく中、企業の採用にはどのような変化が起こっているだろうか。平成12年と昭和60年を比較すると、大卒(大学院卒を含む)女性の就職者数はすべての産業で男性よりも大きく増加し、また、大卒就職者に占める女性比率も増加している(第2―8図)。
第2―8図 大卒就職者数 |
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資料出所:文部科学省「学校基本調査」 |
第2―9図 大卒就職者(大学院含む)における男女比 |
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資料出所:文部科学省「学校基本調査」 |
ハ 女性で多い事務従事者と企業の過剰感
女性就業者の職種別構成比をみると、産業計(非農林業)では、事務従事者が31.0%、専門的・技術的職業が15.3%、ブルーカラー職種計では38.6%となっており、女性の事務従事者は、男性と比べて大きな比率を占め、建設業、運輸・通信業、金融・保険業では7〜6割になっている。一方、サービス業では女性においても専門的・技術的職業従事者が38.6%と大きな割合を占めている(第2―10図)。
また、職種別の労働者の過不足状況をみると、労働者過不足判断D.I.は、女性事務従事者の割合の多い建設業などに「事務」の強い過剰感がある(第2―11図)。
第2―10図 職業別就業者割合 |
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資料出所:総務省統計局「労働力調査」 |
第2―11図 職種別過不足感(平成12年11月) |
D.I.(不足−過剰) |
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資料出所:厚生労働省「労働経済動向調査」 |
2 企業の均等取扱い・女性の活用状況
(1) 募集・採用の状況
男女雇用機会均等均等法が施行された昭和61年以前は一般的であった男女別求人は、法施行後減少したが、さらに平成11年の改正均等法の施行に伴い女性又は男性のみの募集・採用方針を見直し、男女不問にした企業は47.4%で、従来から男女不問としている企業47.3%と合わせると95.0%の企業が男女不問としている。産業別にみると、募集・採用の均等取扱いがあまり進んでいなかった建設業、製造業、運輸・通信業では、5割を超える企業が均等法の改正に伴い募集・採用方針を男女不問とし、従来から男女不問としている企業とあわせると、すべての産業で9割を超える企業が募集・採用方針は男女不問としている。
実際の採用状況をみると、大卒事務・営業系で男女とも採用内定を行った会社は61.2%、男性のみ採用内定を行った会社は27.4%、大卒技術系では男女とも採用内定を行った会社は35.7%、男性のみ採用内定を行った会社は60.2%となっている。これを産業別にみると、大卒事務・営業系については建設業、製造業、運輸・通信業で3割を超える企業が男性のみ採用内定、大卒技術系については建設業で約8割の企業が男性のみ採用内定を行っている(第2―12図)。
第2―12図 大卒者(平成12年3月卒業予定者)の採用内定状況別企業の割合 |
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資料出所:(財)21世紀職業財団「大卒者の採用状況及び総合職女性の就業実態調査」(平成12年) |
(2) 配置の状況
配置について改正均等法施行に伴う企業の対応状況をみると、女性又は男性のみ配置の職種を見直し、男女とも配置するようにした企業は17.3%で、以前から実施している企業(48.8%)とあわせると66.1%の企業が男女とも配置するようにしている。これを産業別にみると、金融・保険業、卸売・小売業,飲食店、サービス業については5割を超える企業が従来から男女とも配置するようにしており、製造業については、改正均等法施行に伴い約2割の企業が女性又は男性のみの配置の職種を見直し、男女とも配置するようにしている。従来から男女とも配置するようにしている企業と改正法施行に伴い男女とも配置するようにした企業をあわせると、金融・保険業が約8割と最も高く、従来から男女とも配置するようにしている企業の少ない建設業と運輸・通信業は5割台と依然低くなっている(第2―13図)。
第2―13図 女性又は男性のみの配置の職種を見直し男女とも配置するようにした企業割合 |
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資料出所:(財)21世紀職業財団「大卒者の採用状況及び総合職女性の就業実態調査」(平成12年) |
(3) 昇進の状況
管理職に占める女性割合は全体的に低いが、均等法施行以前に比べ徐々に増加してきている。女性管理職の割合を産業別にみると、サービス業は各役職で女性の登用が最も進んでおり、運輸・通信業では部長、課長の役職、卸売・小売業,飲食店は係長の役職への女性の登用が進んでいる。金融・保険業では、係長への女性の登用は進んでいるものの、部長、課長への登用は低くなっている(第2―1表)。
第2―1表 役職別管理職に女性が占める割合 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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資料出所:厚生労働省「女性雇用管理基本調査」(平成10年度) |
女性管理職が少ない理由をみると、「必要な知識や経験、判断力等を有する女性がいない」とする企業が51.5%と最も多く、次いで「勤続年数が短く、役職者になるまでに退職する」が36.9%、「将来役職に就く可能性のある者はいるが、現在、役職に就くための在職年数を満たしている女性はいない」が32.9%となっている。女性管理職が少ない理由を産業別にみると、「勤続年数が短く、役職になるまでに退職する」が、卸売・小売業,飲食店や比較的女性の長期勤続者の多い金融・保険業で約5割と高くなっている。また、「将来役職に就く可能性のある者はいるが、現在、役職に就くための在職年数等を満たしている女性はいない」が、金融・保険業で5割を超え、サービス業も4割を超え多くなっている。産業計では3.9%と少なかった「出張、全国転勤がある」は、金融・保険業では10.3%と倍以上になっている(第2―2表)。
第2―2表 女性管理職が少ない又は全くいない理由別企業割合(複数回答)
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資料出所:厚生労働省「平成10年度女性雇用管理基本調査」 (注):女性管理職が少ない(1割未満)あるいは全くいない管理職区分が1つでもある企業を100.0としている。 |
(4) コース別雇用管理の状況
コース別雇用管理制度を導入している企業は均等法施行後増加してきたが、産業別にコース別雇用管理制度の導入状況をみると、建設業及び金融・保険業が4割台と最も多く、運輸・通信業及びサービス業が15%程度と低くなっている。また、産業別に総合職に占める女性割合をみると、コース別雇用管理制度導入割合の高い建設業と金融・保険業で女性総合職の割合が低く、同制度導入割合の低いサービス業で11.6%と最も高くなっている(第2―14図)。
第2―14図 コース別雇用管理制度の導入状況及び総合職に占める女性の割合 |
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資料出所:(財)21世紀職業財団「大卒者の採用状況及び総合職女性の就業実態調査」(平成12年) |
女性総合職の就業継続率(各年度に新規学卒総合職として採用した女性総数に占める調査時点での在職者の割合)を産業別にみると、採用1年目では各産業で9割前後と大きな差はないが、採用2・3年目では、製造業が84.5%と高く、卸売・小売業,飲食店が65.5%、金融・保険業が67.5%と低くなっている。採用15年目以上をみると、逆に卸売・小売業,飲食店が45.5%、金融・保険業が46.7%と、他産業より高くなっている。総合職に占める女性割合が最も高かったサービス業は、就業継続率については低く、特に採用10〜14年目が25.0%、採用15年目以上が19.6%と低くなっている(第2―3表)。
第2―3表 産業、採用経過年別新規学卒総合職女性の継続就業率 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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女性総合職の側から、総合職として仕事を続けていく上での障害をみると、「仕事と育児・介護を両立していくための制度が不十分である」が28.1%と最も多く、次いで「男性優位の企業風土」が22.0%、「職場の受け入れ態勢・上司の意識に問題がある」が18.4%、「残業時間が多く、自分の時間が少ない」が18.3%となっている。これを産業別にみると、建設業と製造業で31.4%と約3人に1人が「仕事と育児・介護を両立していくための制度が不十分である」としている。また、建設業で27.4%と約3割が仕事を続けていく上での障害として「男性優位の企業風土」をあげており、「残業時間が多く、自分の時間が少ない」は、金融・保険業が23.8%、卸売・小売業,飲食店が20.9%と2割以上が仕事を続けていく上での障害として残業時間の多さをあげている。「自分の転勤」は、産業計では7.4%と多くないが、金融・保険業では19.1%と多くなっている(第2―4表)。
第2―4表 女性が総合職として仕事を続けていく上での障害(複数回答) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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3 新規大卒者の就職活動等実態調査にみる均等取扱い状況
(1) 就職活動中出会った差別
「新規大卒者の就職活動等実態調査」により、新規大卒就職者の目に映った企業の均等取扱い状況をみると、女性が「就職活動中出会ったこと」では、「面接の時、『結婚や出産をしても働き続けますか』ということを女性にだけ質問していた」が31.5%と最も多く、次いで、「男女で募集人数が異なっていた」が27.5%、「女性には会社案内を送付しない企業があった」が25.9%、「男性のみあるいは女性のみを募集していた」が21.5%、「女性にのみ自宅から通勤することを条件としていた」が19.0%、「男女とも募集の対象となっていたのに、応募の受付では男性のみあるいは女性のみを採用すると説明した」が17.9%となっており、差別がまだ残っていることが窺える(第2―5表)。
第2―5表 就職活動中に出会ったこと(複数回答) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(%) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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資料出所:(財)21世紀職業財団「新規大卒者の就職活動等実態調査」(平成12年) |
(2) 内定時期
平成12年3月卒業者が学校卒業後はじめて就職した企業の内定時期をみると、平成11年6〜7月が最も多く、男性の38.9%、女性の37.9%がこの時期に内定している。また、就職活動の開始時期は女性の方が早いにもかかわらず、同年4〜5月の内定をみると、男性が26.7%、女性が20.1%となっており、男性の方が若干内定時期が早くなっている。これを産業別にみると、内定時期の差が最も大きいのは金融・保険業で11年4〜5月に内定した男性が41.2%、女性が22.5%となっている。次いで製造業も差が大きく11年4〜5月に内定した男性が27.3%、女性が16.7%となっている。また、11年6〜7月までをみると、運輸・通信業が最も差が大きく、男性は86.4%と9割近くが内定しているのに対し、女性の内定は70.5%となっている(第2―15図)。
第2―15図 学校卒業後はじめて就職した企業の内定時期別新規大卒就職者割合 (4大卒) |
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資料出所:(財)21世紀職業財団「新規大卒者の就職活動等実態調査」(平成12年) |
(3) 昇進・昇格の基準
昇進の状況を入社半年後の新規大卒就職者からみると、現在の会社において「昇進・昇格の基準が女性と男性では異なっている」と回答した者が13.7%、「女性の管理職、役職者がほとんどいない」と回答した者が37.3%となっている。これを、産業別にみると、「昇進・昇格の基準が女性と男性では異なっている」と回答した者が最も多いのは建設業で26.0%、次いで金融・保険業が20.3%となっており、最も少ないのはサービス業の6.5%である。また、「女性の管理職、役職者がほとんどいない」と回答した者が多いのは建設業、製造業、運輸・通信業でそれぞれ5割を超えている。これについてもサービス業が最も少なく22.0%となっている(第2―16図)。
第2―16図 昇進・昇格基準の差異・女性管理職の有無別労働者割合 |
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資料出所:(財)21世紀職業財団「新規大卒者の就職活動等実態調査」(平成12年) |
(4) 結婚・出産退職の慣行
定年・退職・解雇については改正前の均等法で差別が禁止されており、均等法が施行された昭和61年の時点でもほとんどの企業で制度上は差別が解消されていたが、新規大卒就職者からみると慣行としての差別は残っており、現在の会社において「女性は結婚・出産を機に退職する慣行がある」と回答した者の割合は18.1%となっている。これを産業別にみると、建設業が最も多く28.0%、次いで卸売・小売業,飲食店が24.1%、金融・保険業が21.6%となっている。
また、妊娠・出産後も働き続けている女性がいないと回答した者の割合は18.2%で、これを産業別にみると卸売・小売業,飲食店が最も多く24.7%、次いで建設業が24.0%、製造業が18.9%、運輸・通信業が18.1%となっている(第2―17図)。
第2―17図 結婚・出産退職慣行、妊娠・出産後継続勤務女性の有無別新規大卒就職者割合 |
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資料出所:(財)21世紀職業財団「新規大卒者の就職活動等実態調査」(平成12年) |
4 女性の活用のためのポジティブ・アクション等今後の課題
均等法に基づき雇用管理上の制度面の整備は進みつつあるものの、男女間に事実上生じている差別や格差があることから、これらの解消を目指し、女性の能力発揮の促進のための積極的取組を行うポジティブ・アクションが必要である。
これまでみたように、均等取扱い等の進展度合いの違いなど産業特性に着目し産業別ポジティブ・アクションの方策を探った。
(1) 建設業
女性比が少なく男性中心の職場であり「男性の仕事、女性の仕事」といった性別役割分担意識が強く、女性が活躍できる職場風土にはなっていない状況である。
まずは、男女の役割分担意識に基づいた職場慣行をなくすよう意識啓発のための研修を行うとともに入口である募集・採用差別の改善に取り組むことが第一段階の目標となるだろう。
(2) 製造業
女性労働者は少なくないが、採用過程や職種などに性別役割分担意識があることなどから、職場の意識啓発や女性が少ない職種などへ配置を行うための職場環境の整備などが必要であろう。
さらに、女性が継続就業する上で重要な両立制度の整備については、できる限り早く法律に沿って取り組むことが必要である。
また、パートタイマーについては、正社員と比較して職務内容や職務上の責任について類似性があるかどうか、残業、配置転換など勤務に対する拘束度はどうなのか等を考慮しつつ、職務等に対し適切な処遇や労働条件になっているのか検討する必要がある。
(3) 運輸・通信業
男性中心の職場であるが、女性比率は増加しつつある。まだ、採用や配置など男性中心の考え方もみられるが、職場環境の整備の取組も進んでいる。より一層の女性の採用や職域拡大に取り組むとともに、女性の能力発揮のための次のステップとして、女性の管理職への計画的育成のための具体的取組を行うことも必要になろう。
(4) 卸売・小売業,飲食店
女性労働者の中でもパートタイマーの活用が最も進んでおり、主要な労働力として重要な役割を果たしていることから、パートタイマーと正社員との職務に応じて均衡を考慮した労働条件を確保すること、さらには雇用管理の改善を図ることが必要である。
一方では、均等取扱いは進んできているが、より一層有効な活用を図るためには、両立支援制度の充実を図り勤続年数を伸長させることや管理職を計画的に育成する取組が必要となろう。
(5) 金融・保険業
制度上の整備は進んでいるが実態との乖離が大きく、実態を十分把握し実質的な男女均等にむけた取組が必要である。そのためには、性別役割分担意識に基づく職場慣行を見直すよう職場の意識改革が最も必要である。
さらに、総合職女性においても家庭責任との両立が可能となるように配置や転勤、残業時間などへの配慮を図り、継続就業が可能となるような職場環境の整備が必要であろう。
(6) サービス業
専門的・技術的職業が主要な労働力となっており、それぞれの専門性を活かした活用が最も進展している。
今後は、均等取扱いのための推進体制を整備し、例えば、達成すべき女性の管理職比率など個別の数値目標を定め、段階的に目標を達成するよう取り組むことが必要であろう。
さらに、両立制度の充実を図るなどにより、働き続けやすい就業環境の整備や、正社員、非正社員に関わらず多様な就業形態においても専門能力を十分発揮できるよう、職務に応じた均衡性を配慮した処遇が必要である。
5 まとめ
以上のように、女性の労働者の状況と均等取扱い・女性の活用状況を産業別という角度から把握し、取り組むべき課題をみてきた。事実上生じている男女間の格差を解消するにはポジティブ・アクションが必要なこと、ポジティブ・アクションには女性雇用者の活用状況やその均等取扱状況などの進展に合わせ、産業ごと、さらには企業規模、地域、個別企業の実情による違いなども考慮して、現状にあわせた段階的取組が必要となろう。
また、女性労働者のうち非正規労働者が増加する中、均等取扱いについては、主に正規労働者を中心に考えられてきたが、今後は非正規労働者にも目を向け、女性を中心に採用するという意識になっていないかどうか、正規でないという理由で労働条件に不合理な格差が生じてはいないかどうかなど、結果的に女性に対する差別とならないよう十分注意する必要がある。
今後は、男女均等取扱いのための制度が整備されるだけでなく、制度の趣旨に即した実態が伴っていること、さらには、女性の活用に対して職場に十分な理解があることなどが総合的に実現されることが必要であり、そのための取組を企業、行政が一体となって行うことが求められる。