添付一覧
○民生委員法の一部を改正する法律の施行について
(昭和二八年八月一日)
(発社第七九号)
(各都道府県知事あて厚生事務次官依命通達)
民生委員法の一部を改正する法律は、昭和二八年法律第一一五号として本日公布、一部を除き即日施行され、これに伴う民生委員法施行令の一部を改正する政令も同日公布施行されたが、本改正は、公私社会福祉事業の体系の中における民生委員制度の確立を図り、もつて民生委員本来の使命たる自主的活動を活溌ならしめるとともに、公的社会福祉行政機関との協力をより緊密ならしめようとするものであるからその運営に当つては、特に左記事項留意のうえ、本改正の趣旨の周知徹底に努めるは勿論のこと、本制度の適正なる運用とその効果的な実施について格別の意を用いられ、この法律の所期する目的の達成に万遺憾のないようせられたく、命により通知する。
記
第一 改正の趣旨
一 本改正は、民生委員制度の本質的な内容には、何等変更を加えたものではなく、公的保護との関係その他について、制度の本質をより明確ならしめるために、必要な改正を行つたものであること。
二 民生委員の職務中公的保護の実施に関する協力関係については、生活保護法第二二条において保護の実施機関、福祉事務所長又は社会福祉主事に協力することを規定しているのみで、民生委員法においては、その点が必ずしも明確でなく、そのため、従来社会福祉主事等との関係について両者の職務内容が重複し、或は間隙を生ずる等、相互の緊密なる連絡協調に円滑を欠き、ひいては、保護の効果的な実施に支障を来す虞れがあつたので、今回の改正によつて、民生委員の職務についてその内容と責任分野を明確にし、特に福祉事務所その他の社会福祉関係行政機関との協力関係を明らかにしたこと。
なお、右の趣旨を則り、生活保護法第二二条の規定につき、所要の改正を加えたこと。
三 従来、民生委員推薦会の委員は、市町村の議会の議員、社会事業の実施に関係のある者及び学識経験者について、市町村の議会の意見を聞いて、市町村長が委嘱することになつていたが、このような方法では、社会福祉に関する各分野の意見を十分に反映するような適任者が必ずしも委嘱されない憾みがあり、又委員に欠員を生じた場合、議会の閉会中には、その早急なる補充に支障を来す虞れがあるのでこれらについて必要な改正を行つたこと。
四 民生委員の職務に関する規定の改正と対応して、民生委員協議会の任務中に福祉事務所その他の関係行政機関との連絡に当るべきことを加え、且つ民生委員協議会が民生委員活動を通して地域社会の福祉増進を図るものであることにも鑑み、民生委員協議会は進んで市町村の社会福祉協議会の組織に参加し、これと一体となつて社会福祉の増進に努めることができるようにしたこと。
五 常務委員及び常務委員協議会の制度は、民生委員協議会の運用上の問題として、その自主的運営に委せるのが適当であるので、今回これらに関する規定は、すべてこれを削除したこと。
六 民生委員事務所は、福祉事務所の設置及び社会福祉主事の制度の確立に伴つて、既にその大半の意義を失い、これらの制度に吸収され、これに発展的解消を遂げたものであるので現状に即して廃止したこと。
七 従来、民生委員の任期は、すべて委嘱後三年とされていたため、各民生委員の任期がまちまちであつて、その任期満了の都度後任者を補充することになつており、事務処理上も極めて煩瑣たるを免れなかつたので今回補欠の民生委員の任期は、前任者の残任期間とすることに改めるとともに、経過措置として現在民生委員の職にある者の任期は、一一月末日に終るものとして今後は一斉に改選を行い得るようにしたこと。
八 民生委員に関する費用の国庫負担の規定は、昭和二五年度及び昭和二六年度は、予防接種法等による国庫負担の特例等に関する法律により、昭和二七年度以降は、同年五月の地方財政法の一部改正によつてその適用を停止されているので今回国庫負担の規定を削るとともに、新に国庫が予算の範囲内で補助し得る途を講じたこと。
第二 民生委員の職務に関する事項
民生委員は、社会奉仕の精神をもつて自主的に社会福祉の増進に努めることをその本来の使命とするものであつて、その職務は、地域内の要援護者についての生活調査、その援護指導及び社会福祉事業施設との連絡に当ることであり、その内容については既に通知したとおりであるが、これらの業務は、公的保護の実施と密接不可分の関係にあるため、福祉事務所等の関係行政機関と連絡する必要があり、又これらの機関は、民生委員の協力に俟つところが多いので今回このような協力関係を明確にするため、民生委員の職務の中に福祉事務所その他の関係行政機関に協力することを規定したのであるかその具体的内容は次のとおりであること。
(一) 生活保護事務についての協力
イ 要保護者を発見した場合の連絡
民生委員は、生活調査を職務としているので、これによつて要保護者を発見した場合等は、速かに市町村長、福祉事務所長又は社会福祉主事に連絡すること。
ロ 保護申請等の連絡
本人に限らず、その親戚知人又はその近隣者から保護の相談なり申出のあつた場合に申請手続を教えたり、自ら福祉事務所に連絡すること。
ハ 生活実態調査についての協力
社会福祉主事が要保護者の生活実態調査を行う際には、民生委員は、参考資料を提供する等積極的にこれに協力すること。
ニ 保護の決定についての意見具申
保護の要否、種類、程度及び方法の決定は、すべて保護の実施機関の責任と権限に属するものであるが、民生委員は、これに役立たしめるため必要に応じ参考意見を述べること。
ホ 保護開始後の指導についての協力
保護開始後の被保護者に対する生活指導の責任は、すべて社会福祉主事にあることは云うまでもないが、民生委員は、福祉事務所が指導方針及びその方法を決定をするに当り、必要に応じ参考意見を述べることのほか、社会福祉主事が行う生活指導をより一層効果あらしめるため、福祉事務所の方針に従つて、積極的に生活指導の協力を行うこと。
ヘ 保護の変更、停廃止の措置を必要とする事由が生じた場合の連絡
被保護者から相談を受けた場合その他被保護者の生活状態に変動がある等保護の変更、停廃止の措置を必要とする事由を発見したときは、市町村長、福祉事務所長又は社会福祉主事に連絡すること。
(二) 身体障害者福祉事務についての協力
イ 身体障害者を発見した場合の連絡
身体障害者又は戦傷病者戦没者遺族等援護法による更生医療、補装具の受給対象者若しくは国立保養所の入所対象者を発見した場合等は、身体障害者福祉司等の関係機関に連絡すること。
ロ 相談及び援助
身体障害者又はその家族等の相談に応じ、身体障害者援護に関する制度を説明することのほか、自立更生意欲を向上させるよう援助し、必要に応じて身体障害者福祉司等の関係機関に連絡すること。
ハ 就職のあつ旋
民生委員は、身体障害者の就職あつ旋、求人の開拓等につき、公共職業安定所の業務に協力すること。
ニ 後指導
民生委員は、援護の実施機関による更生援護の措置が、一応終了し、社会経済活動に参加している身体障害者に対しても必要に応じ、相談相手となり或は、激励する等の後指導を行うこと。
ホ 広報活動
民生委員は、身体障害者援護の制度を一般国民に周知徹底させ、身体障害者、援護思想の啓発に努めること。
(三) 母子福祉資金の貸付事務等についての協力
母子福祉資金の貸付等に関する法律及び戦傷病者戦没者遺族等援護法等の実施についての協力は、前記(一)、(二)の趣旨に準じて行うものであること。
第三 民生委員の委嘱に関する事項
一 民生委員の定数の基準については、別途通知する予定であるが、特にその委嘱に当つては、民生委員制度の重要性にも鑑み、欠員のないようその充足につき十分配意せられたいこと。
二 改正法律施行の際現に民生委員の職にある者及びその後においても従来の民生委員推薦会の推薦によつて委嘱された民生委員の任期は、一一月末日までとされたのであるが、これは、一二月一日に一斉改選を行い、各民生委員の任期を揃えようとするためであるから、一二月一日までは、民生委員の委嘱を停止するとともに、一二月一日付一斉に委嘱し得るよう準備に遺漏のないようせられたいこと。
三 補欠の民生委員の任期は、前任者の残任期間とすることに改められたが、なお定数の増加等によつて新たに民生委員を委嘱された者の任期は、従来通り委嘱後三年となるのであるから、このような改選時以外の新たな委嘱は、一斉改選に改めた今回の改正の趣旨にも反するので、今後定数を増加する必要がある場合は、これを改選時に行われたいこと。
四・五 削除
第五 民生委員協議会に関する事項
一 民生委員協議会は、民生委員相互の連絡協議機関であり、民生委員活動の推進母体でもあるので民生委員の職務に関し、特に民生委員の公的諸機関に対する協力活動について、その円滑且つ効果的な実施を図るため、福祉事務所その他の関係行政機関との間に常に緊密なる連絡を保つようにすることが肝要である。すなわち定期的な連絡会議を開催し、相互に資料の提供を行い、意見を交換し、具体的な協力方法を検討する等積極的な連絡活動を行うものであること。
二 民生委員協議会の任務に福祉事務所その他の開係行政機関との連絡に当ることを加えたことに対応して、市町村長のほか新たに福祉事務所その他の関係行政機関の職員も、民生委員協議会に出席し、意見を述べることができるとしたのであるから民生委員協議会には、努めてこれらの職員は出席し、その連絡を密にされたいこと。
三 民生委員協議会は、当該市長村に社会福祉協議会が結成されており、その内部組織として民生委員部会又はこれに準ずる組織が置かれる場合には、進んでこれら民生委員部会等の組織として社会福祉協議会に加わり、相互に一体となつて地域社会の福祉増進に努めることか望ましいこと。なお、これは民生委員協議会の構成員たる民生委員全員が、社会福祉協議会に会員として参加することを前提とするものであること。
四 民生委員協議会が、その本来の任務以外に自ら社会福祉事業等を経営することは、その性格を曖昧にし、その任務をおろそかにすることにもなるので極力避けられといこと。特に当該市町村における社会福祉協議会の行う社会福祉活動との調整には十分意を用いられたいこと。
第六 常務委員及び常務委員協議会に関する事項
常務委員制度は、民生委員協議会の自主的運営に委ねられることとなつたが、今後においても、実情に即した方法によつてその活用を図ることは何等差し支えないものであること。
第七 民生委員の指導訓練に関する事項
一 民生委員の指導訓練の必要性に鑑み、その実施について格別の意を用られたいこと。
二 民生委員の指導訓練に従事する吏員の資格は、社会福祉主事としての資格を有する者と改められたので留意されたいこと。
第八 経費に関する事項
民生委員に関する経費については、別途通知する予定であること。
第九 その他
一 昭和二四年一○月三一日発社第七二号「公的保護事務における民生委員(児童委員)の活動範囲について」通牒及び昭和二六年六月二八日社乙発第九○号「民生委員の改選等について」通牒は、これを廃止すること。
二 昭和二三年七月二九日発社第八五号「◆民生委員法の施行に関する件◆」通牒中左記事項を次のように改めること。(略)
三 昭和二三年九月二一日社乙発第一五五号「民生委員の指導訓練に関する件」通牒中左記事項を次のように改めること。(略)