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○墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドラインの策定について

(平成30年6月22日)

(基発0622第2号)

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

(公印省略)

労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(平成30年政令第184号)が平成30年6月8日に、労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(平成30年厚生労働省令第75号)及び安全衛生特別教育規程等の一部を改正する告示(平成30年厚生労働省告示第249号)(以下「改正政省令等」という。)が平成30年6月19日にそれぞれ公布又は告示され、平成31年2月1日から施行又は適用することとされたところである。また、今後、改正政省令等の内容を踏まえ、安全帯の規格(平成14年厚生労働省告示第38号)の全部を改正し、平成31年2月1日から適用することを予定している。

今般、これらの施行又は適用等を見据えて、改正政省令等に規定された事項を含め、平成31年2月1日以後事業者が実施すべき事項を一体的に示すことで、事業者における墜落制止用器具の安全な使用を促し、墜落及び転落による労働災害防止をより一層推進するため、「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」を別添1のとおり策定したところである。

各労働局におかれては、関係事業者に対し、本ガイドラインの周知を図るとともに、墜落制止用器具の安全な使用を指導されたい。

なお、関係団体に対しても、別添2のとおり要請を行ったので、了知されたい。

別添1

墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン

第1 趣旨

高さ2メートル以上の箇所で作業を行う場合には、作業床を設け、その作業床の端や開口部等には囲い、手すり、覆い等を設けて墜落自体を防止することが原則であるが、こうした措置が困難なときは、労働者に安全帯を使用させる等の措置を講ずることが事業者に義務付けられている。

今般、墜落による労働災害の防止を図るため、平成30年6月8日に労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号。以下「安衛令」という。)第13条第3項第28号の「安全帯(墜落による危険を防止するためのものに限る。)」を「墜落制止用器具」と改めた上で、平成30年6月19日に労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)等及び安全衛生特別教育規程(昭和47年労働省告示第92号)における墜落・転落による労働災害を防止するための措置及び特別教育の追加について所要の改正が行われ、平成31年2月1日から施行される。

本ガイドラインはこれらの改正された安衛令等と相まって、墜落制止用器具の適切な使用による一層の安全対策の推進を図るため、改正安衛令等に規定された事項のほか、事業者が実施すべき事項、並びに労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「安衛法」という。)及び関係法令において規定されている事項のうち、重要なものを一体的に示すことを目的とし、制定したものである。

事業者は、本ガイドラインに記載された事項を的確に実施することに加え、より現場の実態に即した安全対策を講ずるよう努めるものとする。

第2 適用範囲

本ガイドラインは、安衛令第13条第3項第28号に規定される墜落制止用器具を使用して行う作業について適用する。

第3 用語

1 墜落制止用器具を構成する部品等

(1) フルハーネス型墜落制止用器具 墜落を制止する際に身体の荷重を肩、腰部及び腿等複数箇所において支持する構造の部品で構成される墜落制止用器具をいう。

(2) 胴ベルト型墜落制止用器具 身体の腰部に着用する帯状の部品で構成される墜落制止用器具をいう。

(3) ランヤード フルハーネス又は胴ベルトと親綱その他の取付設備(墜落制止用器具を安全に取り付けるための設備をいう。)等とを接続するためのロープ又はストラップ(以下「ランヤードのロープ等」という。)及びコネクタ等からなる器具をいう。ショックアブソーバ又は巻取り器を接続する場合は、当該ショックアブソーバ等を含む。

(4) コネクタ フルハーネス、胴ベルト、ランヤード又は取付設備等を相互に接続するための器具をいう。

(5) フック コネクタの一種であり、ランヤードの構成部品の一つ。ランヤードを取付設備又は胴ベルト若しくはフルハーネスに接続された環に接続するためのかぎ形の器具をいう。

(6) カラビナ コネクタの一種であり、ランヤードの構成部品の一つ。ランヤードを取付設備又は胴ベルト若しくはフルハーネスに接続された環に接続するための環状の器具をいう。

(7) ショックアブソーバ 墜落を制止するときに生ずる衝撃を緩和するための器具をいう。第一種ショックアブソーバは自由落下距離1.8メートルで墜落を制止したときの衝撃荷重が4.0キロニュートン以下であるものをいい、第二種ショックアブソーバは自由落下距離4.0メートルで墜落を制止したときの衝撃荷重が6.0キロニュートン以下であるものをいう。

(8) 巻取り器 ランヤードのストラップを巻き取るための器具をいう。墜落を制止するときにランヤードの繰り出しを瞬時に停止するロック機能を有するものがある。

(9) 補助ロープ 移動時において、主となるランヤードを掛け替える前に移動先の取付設備に掛けることによって、絶えず労働者が取付設備と接続された状態を維持するための短いロープ又はストラップ(以下「ロープ等」という。)をいう。

(10) 自由落下距離 作業者がフルハーネス又は胴ベルトを着用する場合における当該フルハーネス又は胴ベルトにランヤードを接続する部分の高さからフック又はカラビナ(以下「フック等」という。)の取付設備等の高さを減じたものにランヤードの長さを加えたものをいう(図1及び図2のA)。

(11) 落下距離 作業者の墜落を制止するときに生ずるランヤード及びフルハーネス若しくは胴ベルトの伸び等に自由落下距離を加えたものをいう(図1及び図2のB)。

2 ワークポジショニング作業関連

(1) ワークポジショニング作業 ロープ等の張力により、U字つり状態などで作業者の身体を保持して行う作業をいう。

(2) ワークポジショニング用ロープ 取付設備に回しがけするロープ等で、伸縮調節器を用いて調整したロープ等の張力によってU字つり状態で身体の作業位置を保持するためのものをいう。

(3) 伸縮調節器 ワークポジショニング用ロープの構成部品の一つ。ロープの長さを調節するための器具をいう。

(4) 移動ロープ 送電線用鉄塔での建設工事等で使用される、鉄塔に上部が固定され垂らされたロープをいう。

3 その他関連器具

(1) 垂直親綱 鉛直方向に設置するロープ等による取付設備をいう。

(2) 水平親綱 水平方向に設置するロープ等による取付設備をいう。

図1 フルハーネス型の落下距離等

図2 胴ベルト型の落下距離等

第4 墜落制止用器具の選定

1 基本的な考え方

(1) 墜落制止用器具は、フルハーネス型を原則とすること。ただし、墜落時にフルハーネス型の墜落制止用器具を着用する者が地面に到達するおそれのある場合は、胴ベルト型の使用が認められること。

(2) 適切な墜落制止用器具の選択には、フルハーネス型又は胴ベルト型の選択のほか、フック等の取付設備の高さに応じたショックアブソーバのタイプ、それに伴うランヤードの長さ(ロック付き巻取り器を備えるものを含む。)の選択が含まれ、事業者がショックアブソーバの最大の自由落下距離や使用可能な最大質量等を確認の上、作業内容、作業箇所の高さ及び作業者の体重等に応じて適切な墜落制止用器具を選択する必要があること。

(3) 胴ベルト型を使用することが可能な高さの目安は、フルハーネス型を使用すると仮定した場合の自由落下距離とショックアブソーバの伸びの合計値に1メートルを加えた値以下とする必要があること。このため、いかなる場合にも守らなければならない最低基準として、ショックアブソーバの自由落下距離の最大値(4メートル)及びショックアブソーバの伸びの最大値(1.75メートル)の合計値に1メートルを加えた高さ(6.75メートル)を超える箇所で作業する場合は、フルハーネス型を使用しなければならないこと。

2 墜落制止用器具の選定(ワークポジショニング作業を伴わない場合)

(1) ショックアブソーバ等の種別の選定

ア 腰の高さ以上にフック等を掛けて作業を行うことが可能な場合には、第一種ショックアブソーバを選定すること。

イ 鉄骨組み立て作業等において、足下にフック等を掛けて作業を行う必要がある場合は、フルハーネス型を選定するとともに、第二種ショックアブソーバを選定すること。

ウ 両方の作業を混在して行う場合は、フルハーネス型を選定するとともに、第二種ショックアブソーバを選定すること。

(2) ランヤードの選定

ア ランヤードに表示された標準的な条件(ランヤードのフック等の取付高さ(a):0.85メートル、ランヤードとフルハーネスを結合する環の高さ(b):1.45メートル。以下同じ。)の下における落下距離を確認し、主に作業を行う箇所の高さに応じ、適切なランヤードを選定すること。

イ ロック機能付き巻取り式ランヤードは、通常のランヤードと比較して落下距離が短いため、主に作業を行う箇所の高さが比較的低い場合は、使用が推奨されること。

ウ 移動時におけるフック等の掛替え時の墜落を防止するため、二つのフック等を相互に使用する方法(二丁掛け)が望ましいこと。

エ フルハーネス型で二丁掛けを行う場合、二本の墜落制止用のランヤードを使用すること。

オ 胴ベルト型で二丁掛けを行う場合、墜落制止用のランヤードのフック等を掛け替える時のみに使用するものとして、補助ロープを使用することが認められること。補助ロープにはショックアブソーバを備えないものも含まれるが、その場合、作業時に使用されることがないように、長さを1.3メートル以下のものを選定すること。

(3) 体重に応じた器具の選定

墜落制止用器具には、使用可能な最大質量(85kg又は100kg。特注品を除く。)が定められているので、器具を使用する者の体重と装備品の合計の質量が使用可能な最大質量を超えないように器具を選定すること。

(4) 胴ベルト型が使用可能な高さの目安

建設作業等におけるフルハーネス型の一般的な使用条件(ランヤードのフック等の取付高さ:0.85メートル、ランヤードとフルハーネスを結合する環の高さ:1.45メートル、ランヤード長さ:1.7メートル(この場合、自由落下距離は2.3メートル)、ショックアブソーバ(第一種)の伸びの最大値:1.2メートル、フルハーネス等の伸び:1メートル程度)を想定すると、目安高さは5メートル以下とすべきであること。これよりも高い箇所で作業を行う場合は、フルハーネス型を使用すること。

3 墜落制止用器具の選定(ワークポジショニング作業を伴う場合)

ワークポジショニング作業に使用される身体保持用の器具(以下「ワークポジショニング用器具」という。)は、実質的に墜落を防止する効果があるが、墜落した場合にそれを制止するためのバックアップとして墜落制止用器具を併用する必要があること。

(1) ショックアブソーバの種別の選択

ワークポジショニング作業においては、通常、足下にフック等を掛ける作業はないため、第一種ショックアブソーバを選定すること。ただし、作業内容に足下にフック等を掛ける作業が含まれる場合は、第二種ショックアブソーバを選定すること。

(2) ランヤードの選定

ア ランヤードに表示された標準的な条件の下における落下距離を確認し、主に作業を行う箇所の高さに応じ、適切なランヤードを選定すること。

イ ロック機能付き巻取り式ランヤードは、通常のランヤードと比較して落下距離が短いため、主に作業を行う箇所の高さが比較的低い場合は、使用が推奨されること。

ウ 移動時のフック等の掛替え時の墜落を防止するため、二つのフック等を相互に使用する方法(二丁掛け)が望ましいこと。また、ワークポジショニング姿勢を保ちつつ、フック等の掛替えを行うことも墜落防止に有効であること。

エ 二丁掛けを行う場合、2本の墜落制止用のランヤードを使用することが望ましいが、二本のうち一本は、ワークポジショニング用のロープを使用することも認められること。この場合、伸縮調整器により、必要最小限のロープの長さで使用すること。

(3) 体重に応じた器具の選定

墜落制止用器具には、使用可能な最大質量(85kg又は100kg。特注品を除く。)が定められているので、器具を使用する者の体重と装備品の合計の質量が使用可能な最大質量を超えないように器具を選定すること。

(4) フルハーネス型の選定

ワークポジショニング作業を伴う場合は、通常、頭上に構造物が常に存在し、フック等を頭上に取り付けることが可能であるので、地面に到達しないようにフルハーネス型を使用することが可能であることから、フルハーネス型を選定すること。ただし、頭上にフック等を掛けられる構造物がないことによりフルハーネス型の着用者が地面に到達するおそれがある場合は、胴ベルト型の使用も認められること。

4 昇降・通行時等の措置、周辺機器の使用

(1) 墜落制止用器具は、作業時に義務付けられ、作業と通行・昇降(昇降用の設備の健全性等を確認しながら、昇降する場合を含む。)は基本的に異なる概念であること。また、伐採など、墜落制止用器具のフック等を掛ける場所がない場合など、墜落制止用器具を使用することが著しく困難な場合には、保護帽の着用等の代替措置を行う必要があること。

(2) 垂直親綱、安全ブロック又は垂直レールを用いて昇降を行う際には、墜落制止機能は求められないこと。また、ISO規格で認められているように、垂直親綱、安全ブロック又は垂直レールに、子綱とスライド式墜落制止用の器具を介してフルハーネス型の胸部等に設けたコネクタと直結する場合であって、適切な落下試験等によって安全性を確認できるものは、当該子綱とスライド式墜落制止用の器具は、フルハーネス型のランヤードに該当すること。

(3) 送電線用鉄塔での建設工事等で使用される移動ロープは、ランヤードではなく、親綱と位置づけられる。また、移動ロープとフルハーネス型をキーロック方式安全器具等で直結する場合であって、移動ロープにショックアブソーバが設けられている場合、当該キーロック方式安全器具等は、フルハーネス型のランヤードに該当すること。この場合、移動ロープのショックアブソーバは、第二種ショックアブソーバに準じた機能を有するものであること。

第5 墜落制止用器具の使用

1 墜落制止用器具の使用方法

(1) 墜落制止用器具の装着

ア 取扱説明書を確認し、安全上必要な部品が揃っているか確認すること。

イ フルハーネス型については、墜落制止時にフルハーネスがずり上がり、安全な姿勢が保持できなくなることのないように、緩みなく確実に装着すること。また、胸ベルト等安全上必要な部品を取り外さないこと。胴ベルト型については、できるだけ腰骨の近くで、墜落制止時に足部の方に抜けない位置に、かつ、極力、胸部へずれないよう確実に装着すること。

ウ バックルは正しく使用し、ベルトの端はベルト通しに確実に通すこと。バックルの装着を正確に行うため、ワンタッチバックル等誤った装着ができない構造となったものを使用することが望ましいこと。また、フルハーネス型の場合は、通常2つ以上のバックルがあるが、これらの組み合わせを誤らないように注意して着用すること。

エ ワークポジショニング用器具は、伸縮調節器を環に正しく掛け、外れ止め装置の動作を確認するとともに、ベルトの端や作業服が巻き込まれていないことを目視により確認すること。

オ ワークポジショニング作業の際に、フック等を誤って環以外のものに掛けることのないようにするため、環又はその付近のべルトには、フック等を掛けられる器具をつけないこと。

カ ワークポジショニング用器具は、装着後、地上において、それぞれの使用条件の状態で体重をかけ、各部に異常がないかどうかを点検すること。

キ 装着後、墜落制止用器具を使用しないときは、フック等を環に掛け又は収納袋に収める等により、ランヤードが垂れ下がらないようにすること。ワークポジショニング用器具のロープは肩に掛けるかフック等を環に掛けて伸縮調節器によりロープの長さを調節することにより、垂れ下がらないようにすること。

(2) 墜落制止用器具の取付設備

ア 墜落制止用器具の取付設備は、ランヤードが外れたり、抜けたりするおそれのないもので、墜落制止時の衝撃力に対し十分耐え得る堅固なものであること。取付設備の強度が判断できない場合には、フック等を取り付けないこと。作業の都合上、やむを得ず強度が不明な取付設備にフック等を取り付けなければならない場合には、フック等をできる限り高い位置に取り付ける等により、取付設備の有する強度の範囲内に墜落制止時の衝撃荷重を抑える処置を講ずること。

イ 墜落制止用器具の取付設備の近傍に鋭い角がある場合には、ランヤードのロープ等が直接鋭い角に当たらないように、養生等の処置を講ずること。

(3) 墜落制止用器具の使用方法(ワークポジショニング作業を伴わない場合)

ア 取付設備は、できるだけ高い位置のものを選ぶこと。

イ 垂直構造物や斜材等に取り付ける場合は、墜落制止時にランヤードがずれたり、こすれたりしないようにすること。

ウ 墜落制止用器具は、可能な限り、墜落した場合に振子状態になって物体に激突しないような場所に取り付けること。

エ 補助ロープは、移動時の掛替え用に使用するものであり、作業時には使用しないこと。

(4) 墜落制止用器具の使用方法(ワークポジショニング作業を伴う場合)

ア 取付設備は、原則として、頭上の位置のものを選ぶこと。

イ 垂直構造物や斜材等に取り付ける場合は、墜落制止時にランヤードがずれたり、こすれたりしないようにすること。

ウ ワークポジショニング用器具は、ロープによじれのないことを確認したうえで、フック等が環に確実に掛かっていることを目視により確認し、伸縮調節器により、ロープの長さを作業上必要最小限の長さに調節し、体重をかけるときは、いきなり手を離して体重をかけるのではなく、徐々に体重を移し、異状がないことを確かめてから手を離すこと。

エ ワークポジショニング用ロープは、移動時の掛替え時の墜落防止用に使用できるが、作業時には、別途、墜落制止用器具としての要件を満たす別のランヤードを使用して作業を行う必要があること。ワークポジショニング用ロープを掛替え時に使用する場合は、長さを必要最小限とすること。

(5) フック等の使用方法

ア フック等はランヤードのロープ等の取付部とかぎ部の中心に掛かる引張荷重で性能を規定したものであり、曲げ荷重・外れ止め装置への外力に関しては大きな荷重に耐えられるものではないことを認識したうえで使用すること。

イ 回し掛けは、フック等に横方向の曲げ荷重を受けたり、取付設備の鋭角部での応力集中によって破断したりする等の問題が生じるおそれがあるので、できるだけ避けること。回し掛けを行う場合には、これらの問題点をよく把握して、それらの問題を回避できるように注意して使用すること。

ウ ランヤードのロープ等がねじれた状態でフック等の外れ止め装置に絡むと外れ止め装置が変形・破断して外れることがあるので、注意すること。

エ ランヤードのフック等の取付部にショックアブソーバがある形状のものは、回し掛けをしてフック等がショックアブソーバに掛かるとショックアブソーバが機能しないことがあるので、回し掛けしないこと。

2 垂直親綱への取付け

(1) 垂直親綱に墜落制止用器具のフック等を取り付ける場合は、親綱に取付けた取付設備にフック等を掛けて使用すること。

(2) 一本の垂直親綱を使用する作業者数は、原則として一人とすること。

(3) 垂直親綱に取り付けた取付設備の位置は、ランヤードとフルハーネス等を結合する環の位置より下にならないようにして使用すること。

(4) 墜落制止用器具は、可能な限り、墜落した場合に振子状態になって物体に激突しないような場所に取り付けること。

(5) 長い合成繊維ロープの垂直親綱の下端付近で使用する場合は、墜落制止時に親綱の伸びが大きくなるので、下方の障害物に接触しないように注意すること。

3 水平親綱への取付け

(1) 水平親綱は、墜落制止用器具を取り付ける構造物が身近になく、作業工程が横移動の場合、又は作業上頻繁に横方向に移動する必要がある場合に、ランヤードとフルハーネス等を結合する環より高い位置に張り、それに墜落制止用器具のフック等を掛けて使用すること。なお、作業場所の構造上、低い位置に親綱を設置する場合には、短いランヤード又はロック機能付き巻取り式ランヤードを用いる等、落下距離を小さくする措置を講じること。

(2) 水平親綱を使用する作業者は、原則として1スパンに1人とすること。

(3) 墜落制止用器具は、可能な限り、墜落した場合に振子状態になって物体に激突しないような場所に取り付けること。

(4) 水平親綱に合成繊維ロープを使用する場合は、墜落制止時に下方の障害物・地面に接触しないように注意すること。

第6 点検・保守・保管

墜落制止用器具の点検・保守及び保管は、責任者を定める等により確実に行い、管理台帳等にそれらの結果や管理上必要な事項を記録しておくこと。

1 点検

点検は、日常点検のほかに―定期間ごとに定期点検を行うものとし、次に掲げる事項について作成した点検基準によって行うこと。定期点検の間隔は半年を超えないこと。点検時には、取扱説明書に記載されている安全上必要な部品が全て揃っていることを確認すること。

(1) ベルトの摩耗、傷、ねじれ、塗料・薬品類による変色・硬化・溶解

(2) 縫糸の摩耗、切断、ほつれ

(3) 金具類の摩耗、亀裂、変形、錆、腐食、樹脂コーティングの劣化、電気ショートによる溶融、回転部や摺動部の状態、リベットやバネの状態

(4) ランヤードの摩耗、素線切れ、傷、やけこげ、キンクや撚りもどり等による変形、薬品類による変色・硬化・溶解、アイ加工部、ショックアブソーバの状態

(5) 巻取り器のストラップの巻込み、引き出しの状態。ロック機能付き巻取り器については、ストラップを速く引き出したときにロックすること。

各部品の損傷の程度による使用限界については、部品の材質、寸法、構造及び使用条件を考慮して設定することが必要であること。

ランヤードのロープ等の摩耗の進行は速いため、少なくとも1年以上使用しているものについては、短い間隔で定期的にランヤードの目視チェックが必要であること。特に、ワークポジショニング用器具のロープは電柱等とこすれて摩耗が激しいので、こまめな日常点検が必要であること。また、フック等の近くが傷みやすいので念入りな点検が必要であること。

また、工具ホルダー等を取り付けている場合には、これによるベルトの摩耗が発生するので、定期的にホルダーに隠れる部分の摩耗の確認が必要であること。

2 保守

保守は、定期的及び必要に応じて行うこと。保守にあたっては、部品を組み合わせたパッケージ製品(例:フック等、ショックアブソーバ及びロープ等を組み合わせたランヤード)を分解して他社製品の部品と組み合わせることは製造物責任の観点から行わないこと。

(1) ベルト、ランヤードのロープ等の汚れは、ぬるま湯を使って洗い、落ちにくい場合は中性洗剤を使って洗った後、よくすすぎ、直射日光に当たらない室内の風通しのよい所で自然乾燥させること。その際、ショックアブソーバ内部に水が浸透しないよう留意すること。

(2) ベルト、ランヤードに塗料がついた場合は、布等でふきとること。強度に影響を与えるような溶剤を使ってはならないこと。

(3) 金具類が水等に濡れた場合は、乾いた布でよくふきとった後、さび止めの油をうすく塗ること。

(4) 金具類の回転部、摺動部は定期的に注油すること。砂や泥等がついている場合はよく掃除して取り除くこと。

(5) 一般的にランヤードのロープ等は墜落制止用器具の部品の中で寿命が最も短いので、ランヤードのロープ等のみが摩耗した場合には、ランヤードのロープ等を交換するか、ランヤード全体を交換すること。交換にあたっては、墜落制止用器具本体の製造者が推奨する方法によることが望ましいこと。

(6) 巻取り器については、ロープの巻込み、引出し、ロックがある場合はロックの動作確認を行うとともに、巻取り器カバーの破損、取付けネジの緩みがないこと、金属部品の著しい錆や腐食がないことを確認すること。

3 保管

墜落制止用器具は次のような場所に保管すること。

(1) 直射日光に当たらない所

(2) 風通しがよく、湿気のない所

(3) 火気、放熱体等が近くにない所

(4) 腐食性物質が近くにない所

(5) ほこりが散りにくい所

(6) ねずみの入らない所

第7 廃棄基準

1 一度でも落下時の衝撃がかかったものは使用しないこと。

2 点検の結果、異常があったもの、摩耗・傷等の劣化が激しいものは使用しないこと。

第8 特別教育

事業者は、高さ2メートル以上の箇所であって作業床を設けることが困難なところにおいて、墜落制止用器具のうちフルハーネス型のものを用いて行う作業に係る業務に労働者を就かせるときは、当該労働者に対し、あらかじめ、次の科目について、学科及び実技による特別の教育を所定の時間以上行うこと。

1 学科教育

科目

範囲

時間

作業に関する知識

① 作業に用いる設備の種類、構造及び取扱い方法

② 作業に用いる設備の点検及び整備の方法

③ 作業の方法

1時間

墜落制止用器具(フルハーネス型のものに限る。以下同じ。)に関する知識

① 墜落制止用器具のフルハーネス及びランヤードの種類及び構造

② 墜落制止用器具のフルハーネスの装着の方法

③ 墜落制止用器具のランヤードの取付け設備等への取付け方法及び選定方法

④ 墜落制止用器具の点検及び整備の方法

⑤ 墜落制止用器具の関連器具の使用方法

2時間

労働災害の防止に関する知識

① 墜落による労働災害の防止のための措置

② 落下物による危険防止のための措置

③ ◆感電◆防止のための措置

④ 保護帽の使用方法及び保守点検の方法

⑤ 事故発生時の措置

⑥ その他作業に伴う災害及びその防止方法

1時間

関係法令

安衛法、安衛令及び安衛則中の関係条項

0.5時間

2 実技教育

科目

範囲

時間

墜落制止用器具の使用方法等

① 墜落制止用器具のフルハーネスの装着の方法

② 墜落制止用器具のランヤードの取付け設備等への取付け方法

③ 墜落による労働災害防止のための措置

④ 墜落制止用器具の点検及び整備の方法

1.5時間

別添2

○墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドラインの策定について

(平成30年6月22日)

(基発0622第3号)

(別紙の団体の長あて厚生労働省労働基準局長通知)

(公印省略)

労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(平成30年政令第184号)が平成30年6月8日に、労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(平成30年厚生労働省令第75号)及び安全衛生特別教育規程等の一部を改正する告示(平成30年厚生労働省告示第249号)(以下「改正政省令等」という。)が平成30年6月19日にそれぞれ公布又は告示され、平成31年2月1日から施行又は適用することとされたところです。また、今後、改正政省令等の内容を踏まえ、安全帯の規格(平成14年厚生労働省告示第38号)の全部を改正し、平成31年2月1日から適用する予定です。

今般、これらの施行又は適用等を見据えて、改正政省令等に規定された事項を含め、事業者が実施すべき事項を一体的に示すことで、事業者における墜落制止用器具の安全な使用を促し、墜落及び転落による労働災害防止をより一層推進するため、「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」を別添1のとおり策定したところです。

貴団体におかれても、本ガイドラインの趣旨を御理解の上、貴団体会員に対し周知徹底を図るとともに、墜落制止用器具の安全な使用につきまして、一層の推進を図られるようお願い申し上げます。

別紙

ガイドライン送付先団体

中央労働災害防止協会

建設業労働災害防止協会会

陸上貨物運送事業労働災害防止協会

林業・木材製造業労働災害防止協会

港湾貨物運送事業労働災害防止協会

独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所

一般社団法人日本鉄塔協会

一般社団法人送電線建設技術研究会

一般社団法人日本造船工業会

一般社団法人日本鉄鋼連盟

公益社団法人日本保安用品協会

公益社団法人産業安全技術協会

電気事業連合会

日本安全帯研究会

建設労務安全研究会

一般社団法人仮設工業会

一般社団法人合板仮設材安全技術協会

一般社団法人日本クレーン協会

一般社団法人軽仮設リース業協会

一般社団法人全国圧入協会

全国仮設安全事業協同組合

全国管工事業協同組合連合会

一般社団法人日本空調衛生工事業協会

一般社団法人日本建設機械施工協会

一般社団法人日本塗装工業会

一般社団法人全国建設業協会

一般社団法人日本左官業組合連合会

一般社団法人日本サッシ協会

一般社団法人日本電設工業協会

建設工業経営研究会

一般社団法人海外建設協会

一般社団法人日本道路建設業協会

一般社団法人日本埋立浚渫協会

一般社団法人鉄骨建設業協会

一般社団法人日本建設組合連合会

一般社団法人全国中小建設業協会

一般社団法人建設産業専門団体連合会

一般社団法人情報通信エンジニアリング協会

一般社団法人日本橋梁建設協会

公益社団法人全国鉄筋工事業協会

一般社団法人プレハブ建築協会

一般社団法人全国さく井協会

一般社団法人日本鳶工業連合会

日本室内装飾事業協同組合連合会

一般社団法人日本タイル煉瓦工事工業会

全日本板金工業組合連合会

一般社団法人日本エレベーター協会

一般社団法人情報通信設備協会

一般社団法人全国建設産業協会

一般社団法人全国クレーン建設業協会

一般社団法人日本造園建設業協会

一般社団法人日本冷凍空調設備工業連合会

一般社団法人日本機械土工協会

一般社団法人全国中小建築工事業団体連合会

一般社団法人日本シヤッター・ドア協会

一般社団法人全国建設室内工事業協会

一般社団法人日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会

一般社団法人カーテンウォール・防火開口部協会

一般社団法人プレストレスト・コンクリート建設業協会

全国建具組合連合会

一般社団法人日本保温保冷工業協会

全国基礎工業協同組合連合会

全国建設業協同組合連合会

一般社団法人日本ウエルポイント協会

一般社団法人日本グラウト協会

一般社団法人日本建設躯体工事業団体連合会

一般社団法人日本海上起重技術協会

一般社団法人日本造園組合連合会

せんい強化セメント板協会

一般社団法人日本建設業経営協会

全国浚渫業協会

一般社団法人土地改良建設協会

一般社団法人全国防水工事業協会

一般社団法人日本基礎建設協会

一般社団法人全日本瓦工事業連盟

一般社団法人日本型枠工事業協会

一般社団法人全国ダクト工業団体連合会

日本外壁仕上業協同組合連合会

一般社団法人日本建築大工技能士会

一般社団法人四国電気・管工事業協会

一般社団法人全国コンクリート圧送事業団体連合会

一般社団法人全国タイル業協会

一般社団法人日本厨房工業会

一般社団法人重仮設業協会

一般社団法人日本計装工業会

全日本電気工事業工業組合連合会

全国圧気工業協会

公益社団法人日本エクステリア建設業協会

一般社団法人全国道路標識・標示業協会

一般社団法人日本金属屋根協会

一般社団法人斜面防災対策技術協会

一般社団法人全国建設産業団体連合会

一般社団法人日本下水道施設業協会

一般社団法人日本内燃力発電設備協会

一般社団法人日本建築板金協会

消防施設工事協会

一般社団法人日本運動施設建設業協会

全国圧接業協同組合連合会

一般財団法人中小建設業住宅センター

全国マスチック事業協同組合連合会

全国ポンプ・圧送船協会

全国板硝子工事協同組合連合会

一般社団法人日本屋外広告業団体連合会

一般社団法人日本家具産業振興会

公益社団法人全国解体工事業団体連合会

公益社団法人日本推進技術協会

日本建設インテリア事業協同組合連合会

一般社団法人日本ウレタン断熱協会

一般社団法人日本配管工事業団体連合会

一般社団法人ビルディング・オートメーション協会

一般社団法人日本トンネル専門工事業協会

一般社団法人日本アンカー協会

一般社団法人日本ツーバイフォー建築協会

一般社団法人日本木造住宅産業協会

一般社団法人日本潜水協会

一般社団法人全国特定法面保護協会

一般社団法人日本在来工法住宅協会

ダイヤモンド工事業協同組合

一般社団法人日本建設業連合会

一般社団法人フローリング協会

一般社団法人全日本漁港建設協会

一般社団法人マンション計画修繕施工協会

一般社団法人プレストレスト・コンクリート工事業協会

一般社団法人全国建行協

全国建設労働組合総連合

一般社団法人全国ガラス外装クリーニング協会連合会