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○医薬品の製造販売業者における三役の適切な業務実施について

(平成29年6月26日)

(薬生発0626第3号)

(各都道府県知事あて厚生労働省医薬・生活衛生局長通知)

(公印省略)

平素より医薬品の品質管理業務及び製造販売後安全管理業務の着実な実施につきまして御協力賜り有り難うございます。

さて、医薬品の品質管理及び製造販売後安全管理については、昨今、製造販売承認書と製造実態に相違が生じた事例や報告義務の対象となる副作用を把握していたにもかかわらず、定められた期限内に報告されていなかった事例等、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号。以下「医薬品医療機器法」という。)に抵触する事例が散見されています。これまでに、「製造販売後安全管理業務に係る社内体制等に関する自主点検について(依頼)」(平成27年2月24日付け薬食安発0224第1号厚生労働省医薬食品局安全対策課長通知)及び「医薬品の製造販売承認書と製造実態の整合性に係る点検の実施について」(平成28年1月19日付け薬生審査発0119第1号厚生労働省医薬・生活衛生局審査管理課長通知)等により自己点検を依頼し、問題が判明した場合は改善の指導を行うとともに、「製造販売業者におけるGVP省令等の遵守について」(平成26年8月4日付け薬食安発0804第1号厚生労働省医薬食品局安全対策課長通知)、「◆医薬品の製造販売承認書に則した製造等の徹底につい◆て」(平成28年6月1日付け薬生審査発0601第3号、薬生監麻発0601第2号厚生労働省医薬・生活衛生局審査管理課長及び監視指導・麻薬対策課長連名通知)及び「製造販売業者における製造販売後安全管理業務に関する法令遵守の徹底について」(平成29年3月14日付け薬生安発0314第1号厚生労働省医薬・生活衛生局安全対策課長通知)により、法令遵守の周知徹底等を依頼してきたところです。

医薬品の品質管理及び製造販売後安全管理の適切な実施には、医薬品医療機器法第17条第1項に定める医薬品等総括製造販売責任者(以下「総括製造販売責任者」という。)、医薬品、医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品の品質管理の基準に関する省令(平成16年厚生労働省令第136号。以下「GQP省令」という。)第4条第3項で定める品質保証責任者並びに医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準に関する省令(平成16年厚生労働省令第135号。以下「GVP省令」という。)第4条第2項又は第13条第2項で定める安全管理責任者(以下総称して「三役」という。)がその責務を果たすことが重要であることに鑑み、今般、別添のとおり、「医薬品の製造販売業者における三役の適切な業務実施に関する留意事項」をとりまとめましたので、三役の業務実施に係る今後のあり方を示す留意事項として貴管下関係業者に周知徹底を図っていただくとともに、指導方よろしくお願いいたします。

(別添)

医薬品の製造販売業者における三役の適切な業務実施に関する留意事項

医薬品の製造販売業者は、医薬品医療機器等法第18条の2第1項に基づき、法令遵守体制を整備しなければならないこととされ、また、同法第18条第1項に基づき、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和36年厚生省令第1号。以下「施行規則」という。)第92条第2号及び第3号において、製造販売しようとする製品の品質管理及び製造販売後安全管理を適正に行うことが製造販売業者の遵守事項として定められている。

医薬品の製造販売業者は、品質管理及び製造販売後安全管理に関する法令遵守に関しては三役が実務上の中心的な役割を担うものであることを認識し、「製造販売業者及び製造業者の法令遵守に関するガイドライン」(令和3年1月29日付け薬生発0129第5号厚生労働省医薬・生活衛生局長通知別添)に示す内容のほか、以下の点を踏まえ、適切な社内体制等を確保し、三役に必要な措置を講じさせること。

また、医薬品の製造販売業者は、三役の責務を十分に理解し、医薬品医療機器等法第18条第2項に基づき、総括製造販売責任者の意見を尊重するとともに、法令遵守のために措置を講ずる必要があるときは、当該措置を講じ、かつ、講じた措置の内容(措置を講じない場合にあっては、その旨及びその理由)を記録し、これを適切に保存すること。

1 総括製造販売責任者に関する事項

(1) 総括製造販売責任者の選任

ア 製造販売業者は、医薬品医療機器等法第17条第2項に基づき、品質管理及び製造販売後安全管理のために必要な業務を遂行し、製造販売業者に対する意見申述を含む総括製造販売責任者の義務を遵守するために必要な能力及び経験を有する者を、総括製造販売責任者として選任すること。

イ 製造販売業者は、総括製造販売責任者の選任に当たっては、施行規則第85条に基づき、(ア)及び(イ)の要件を満たす者を選任すること。

(ア) 医薬品の品質管理及び製造販売後安全管理に関する業務を適正かつ円滑に遂行しうる能力を有する者であること。具体的には、薬事法規、製品の特性、原材料の調達から製品の市場への出荷に至る業務プロセス、製造方法及び製造管理、品質管理業務並びに安全確保業務に関する総合的な理解力及び適正な判断力を有する者であること。

(イ) 第一種医薬品製造販売業にあっては、医薬品の品質管理又は製造販売後安全管理に関する業務その他これに類する業務に3年以上従事した者であること。

(2) 総括製造販売責任者の職位等

製造販売業者は、総括製造販売責任者が品質管理及び製造販売後安全管理の責務を果たし、回収や注意事項等情報の改訂等の措置について、必要な場合に速やかに製造販売業者に意見することができるよう、適切な職務上の位置付けを十分に考慮すること。

また、製造販売業者は、総括製造販売責任者が製造販売業者への速やかな意見、関連部門への円滑な情報提供並びに品質管理業務及び安全確保業務等に必要な人員や予算等の確保の要請等を行えるよう、原則として総括製造販売責任者を経営会議等に直接出席させること。ただし、社内の規定上、同会議に総括製造販売責任者を直接出席させることが困難である場合は、あらかじめ指定した者を総括製造販売責任者に代えて出席させることでも差し支えない。

なお、総括製造販売責任者からの報告等、医薬品医療機器等法第17条第3項に基づく総括製造販売責任者の製造販売業者に対する書面による意見に該当しないものであっても、その記録を総括製造販売責任者に保管させることが望ましい。

(3) 三役会議等の開催

総括製造販売責任者は、総括製造販売責任者、品質保証責任者、安全管理責任者及びその他関係者で構成される会議(いわゆる「三役会議」)の定期的な開催等を通じて、品質管理業務及び安全確保業務等の監督が円滑に行えるよう努めること。

2 三役体制に関する事項

(1) 三役の指揮命令が機能する体制の整備

製造販売業者は、総括製造販売責任者が品質保証責任者及び安全管理責任者を適切に監督できるよう、職務上の位置付けを適切に行い、組織内の三役の指揮命令が機能する社内体制の整備に努めること。

(2) 三役の役割等に関する社内理解の醸成

製造販売業者は、関連部門が三役の職務及び職責を理解し、三役と円滑に連携できるよう、三役の役割や権限を明確化し、社内に周知すること。なお、具体的な対応としては、例えば、製造販売業者が三役を人事発令し、三役の役割や権限を社内に公示することなどが考えられる。

(3) 人的資源の確保

ア 製造販売業者は、GQP省令第4条第3項第3号及びGVP省令第4条第2項第3号又は第13条第2項第1号に基づき、品質管理業務又は安全確保業務等を適正かつ円滑に遂行しうる能力を有する者を、それぞれ品質保証責任者又は安全管理責任者に任命すること。

イ 製造販売業者は、三役の責務の遂行のために必要な教育訓練を継続的に行わせること。

また、製造販売業者は、安定的な人材確保の観点から、将来的な三役の候補となりうる人材の育成に努めること。

ウ 製造販売業者は、施行規則第92条第6号、GQP省令第4条第2項第2号並びにGVP省令第4条第1項第2号及び第13条第1項等に基づき、三役が適正かつ公正に業務を遂行するために必要な人員を配置すること。

3 品質管理業務に関する事項

(1) 製造業者の職員個人の意図的な不正行為を想定した対応

製造販売業者は、総括製造販売責任者及び品質保証責任者に、製造業者の職員個人の意図的な不正行為を防止するための対策を検討させること。なお、具体的な対応は、取り扱う医薬品の性質、製造業者の事業規模、製造業者との関係性等、個別の状況を踏まえて検討されるべきものであるが、製造販売業者と製造業者が同一法人又はこれに類する状況(以下「同一法人等」という。)である場合は、例えば、定期的な人事異動、内部通報制度の整備、製造区域への入退室管理、定期的なコンプライアンス(法令遵守)研修及び医薬品品質システムの積極的な活用等が考えられる。また、製造販売業者と製造業者が同一法人等でない場合は、製造販売業者は、製造業者の選定にあたり、当該製造業者における職員個人の意図的な不正行為を防止するための取組みの実施状況を考慮するとともに、当該取組みの推進を働きかけることが望ましい。

(2) 製造所に対する監査等

ア 製造販売業者は、GQP省令第7条に定める製造業者との取決めに基づき、製造所における逸脱並びに品質に影響を及ぼすと思われる製造方法及び試験検査方法等の変更等の情報が製造業者から遅滞なく報告されていることを、GQP省令第10条第1項に基づく製造所に対する製造管理及び品質管理の定期的な確認その他の機会を通じて適切に確認させること。

また、製造業者からそれらの情報が遅滞なく連絡されるよう製造所との連携を強化すること。

イ 製造販売業者は、製造所に対する定期的な確認に際して、当該製造所の逸脱報告数及び内容、製造方法及び試験検査方法の変更の有無並びにこれまでの実地の調査の有無やその結果等を踏まえ、必要な場合には、実地の調査を行わせること。

なお、製造業者が製造販売業者と同一法人等であって、製造業者の品質部門と製造販売業者の品質保証部門が同一又はこれに類する状況である場合にあっては、製造販売業者は、製造業者に対する管理監督機能を実効性のあるものとするため、製造所に対する定期的な確認は、製造所の製造管理又は品質管理に係る業務を行っていない者に実施させること。

4 安全確保業務等に関する事項

(1) 安全管理情報の収集の範囲等

ア 製造販売業者は、以下の点について、製造販売後安全管理業務手順書に規定すること。

(ア) 医薬情報担当者だけでなく、その他安全管理情報を収集しうる関係者も製造販売後安全管理に関する業務に従事する者であること、医薬情報担当者等が安全管理情報を入手した場合は、当該情報を安全管理統括部門等に報告する必要があること。

(イ) 医薬関係者から通常寄せられる自発的又は積極的な有害事象に係る情報だけなく、臨床研究及び医薬関係者を対象としたアンケートの結果等により得られた安全管理情報についても、安全管理統括部門等に報告する必要があること。

(ウ) (ア)及び(イ)について、具体的に報告が必要な範囲及びその報告手順。

イ 製造販売業者は、教育訓練計画に基づき、アの内容を含む医薬情報担当者等への教育訓練を行わせること。なお、効果的な教育訓練の方法としては、例えば、e―ラーニング、教育訓練を担当する部門等によるテレビ若しくは電話会議又は集合研修等が考えられる。

また、製造販売業者は、医薬情報担当者等が教育訓練の内容を理解していることを確認させるとともに、その結果を安全管理責任者に対して報告させ、必要に応じて、安全管理実施部門等に業務改善を行わせること。

(2) 職員個人の意図的な不正行為を想定した対応

製造販売業者は、総括製造販売責任者及び安全管理責任者に、職員個人の意図的な不正行為により安全管理情報の報告が行われないことを防止するための対策を検討させること。

なお、具体的な対応は、取り扱う医薬品の性質、これまでの副作用等の報告状況等、個別の状況を踏まえて検討されるべきものであるが、例えば、内部通報制度の整備及び副作用等報告の遅延や不正行為に係るこれまでの事例等を含むコンプライアンス(法令遵守)研修等が考えられる。

(3) 営業所等の点検

製造販売業者は、総括製造販売責任者及び安全管理責任者に、副作用等の報告漏れを防止するための営業所等への点検方法を検討させること。

なお、具体的な対応は、これまでの副作用等の報告状況等、個別の状況を踏まえて検討されるべきものであるが、例えば、優先順位や対象範囲等に留意しつつ、安全管理統括部門等の職員を営業所等に直接訪問させること、営業所等の責任者や医薬情報担当者等に対するインタビューを実施させることなどにより、安全確保業務等の実施状況を確認させることが考えられる。